リーフレット [Leaflet]

電力中央研究所報告
経
営
地熱発電開発に関する社会的動向調査
キーワード:地熱発電,法制度,社会的受容性,動向調査
背
報告書番号:V15010
景
国による 2030 年のエネルギーミックスにおいて、
地熱発電は現状の約 3 倍の導入目標
が掲げられた。近年、規制緩和や固定価格買取制度(Feed-in Tariff: FIT)の導入、債務保
証等の経済的支援による開発リスクやコスト低減施策が講じられ、開発案件は増加傾向
にある。しかしながら、未利用地熱資源の約 8 割が自然公園内に偏在し、温泉事業者等
が反対意向を示している地域も一部あることから、自然環境や地域への更なる慎重な配
慮に基づく持続可能な開発が求められている。
目
的
地熱発電開発の進捗状況、国や地方自治体の政策・法制度、および受容性の最新状況
を把握し、今後取り組むべき課題を明らかにする。
主な成果
ヒアリング調査と現地視察、文献調査により得られた結果を以下に記す。
1. 地熱発電開発の進捗状況
FIT 導入以降の 2013 年 1 月~2015 年 11 月の間、地熱発電所は 19 件増加し、FIT 認定件
数も 51 件となった。これらは主に環境アセスメント対象外の小規模発電所(~数千 kW)
で、温泉事業者が発電事業者となる例や、地域振興目的も多い。ただし、新規掘削を伴
う場合や複数計画が近接した地域では、
既存の温泉や地熱発電所との共存が課題である。
2. 国や地方自治体の政策・法制度動向
2015 年度、自然公園内での建築物高さ規制と、第 1 種特別地域に対する傾斜掘削規制
が新たに緩和された(表 1)。これにより開発可能な地域は拡大されたが、電力系統への
接続に伴う費用負担等の事業リスクは残されている。一方、小規模開発の増加を受け、
乱開発防止等を目的とした条例等を制定する地方自治体が増加傾向にある。
3. 受容性動向
3 万 kW 以上の大規模開発計画においては、掘削に対する地元合意が難しい等により、
事業遅延の案件が複数存在する。国による自治体連絡会や地熱開発理解促進事業、温泉
に影響を及ぼした場合の代替掘削費補助等の取り組みを通じ、情報共有や理解向上が進
んでいるが、これら施策だけでは個別地域の課題解決に十分対応できていない。
今後の課題
資源有望地域では、系統連系費用等の事業リスク低減、規模別の開発戦略や環境配慮
対策が優先的課題である(図 1)
。その中で、地元合意が難しい地域では、地域事情に応
じて相互理解や信頼を高める対応が必要なため、汎用性の高い方策を検討していく。
表 1 地熱開発に対する法制度の規制緩和状況
資源賦存量
地種区分
万kW
特別保護地区
第1種
自然
特別
第2種
公園内 地域*
第3種
普通地域
自然公園外
合計
%
700
260
250
520
110
500
2340
30
11
11
22
5
21
100
地熱開発の可否
地下掘削
地表
(区域外からの
(建設含む)
傾斜掘削含む)
×
×
×
〇
〇
〇
(条件付き**)
〇
〇
〇
〇
〇
規制緩和
時期
-
2015年
2012年
-
-
出典:JOGMEC資料2015.11 (http://geothermal.jogmec.go.jp/data/file/data03.pdf)より作成
注記*: 第1種「特別保護地区に準ずる景観を有し、特別地域のうちでは風致を維持する必要性が最も高い地域であつて、
現在の景観を極力保護することが必要な地域」、第2種「第一種特別地域及び第三種特別地域以外の地域で
あつて、特に農林漁業活動についてはつとめて調整を図ることが必要な地域」、第3種「特別地域のうちでは風致
を維持する必要性が比較的低い地域であつて、特に通常の農林漁業活動については原則として風致の維持に
影響を及ぼすおそれが少ない地域」
注記**:地域での合意形成がなされている等、優良事例と環境省に認められた場合に開発が許可される。
地熱資源量
多い
電源構成に寄与しうる大規模開発が求められる地域
有望地域にも関わらず、
地元合意が得られない地域
相互理解・
信頼構築
大小複数の地熱開発計画が増加
⇒ 温泉・観光・地熱事業の共存・共栄
環境配慮
対策
規模別の
開発戦略
系統連系
対策
地元
反対
地元
合意
地熱資源量が少なく、
開発に適さない地域
地熱資源量は少ないが、
地元ニーズが高い地域
既存温泉や熱の
有効活用
地熱資源量
少ない
図 1 地域状況に応じて優先されるべき地熱開発の課題
研究担当者
窪田 ひろみ(環境科学研究所 環境化学領域)
問い合わせ先
電力中央研究所 環境科学研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
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平成28年5月発行