第 6 学年国語科学習指導案 平成 22 年 10 月 19 日(火) 国頭村立安田小学校 6年1組 授業者 男子 0 名 上地 女子 3 名 計3名 利枝子 1 単元名「人間を見つめて読もう」 2 単元設定の理由 (1)教材観 『川とノリオ』は,いっときも休まず流れ続けながら,いつも変わらずそこにある川と,戦争に翻弄 される中でもたくましく生きるノリオとその周囲の人々を,優れた表現で描き出した物語である。 この作品の主題は,「いっときも休まず流れ続けているひと筋の川のそばで,時代状況に翻弄され, 悲しみを抱えながらも懸命に生きていくノリオの姿」である。 母ちゃんやじいちゃんが生まれるもっと前から流れている川。その川とともに,ノリオは成長してい く。母ちゃんは日に日にやつれていっても,幸せな小さい神様だったノリオ。ところが突然,母ちゃん がいなくなる。父ちゃんも小さな箱になってしまう。懸命にノリオを育てるじいちゃん。 小学二年になったノリオは,川のそばでやぎのエサかりの仕事をしている。父ちゃんがこぐ自転車の後ろ に乗るタカオ(友人)を見て,子どもの手をひいた白い日傘の女の人を見て,ノリオは何を思うのだろう。 ザアザアと音を増す川の響き。ノリオは現実に引き戻され,同時に母を恋しく思う感情があふれ出す。「ザ アザア」という音は,ノリオにとって母の愛。母の思い出なのだ。思いを押さえようとカマを使い出すノリ オ。しかし,やはり呼ばずにはいられなかった。「母ちゃん帰れ。」と。 この作品は,ノリオの視点で描かれている。ノリオの言葉で描かれるその叙述の中に,優れた文学的 表現が数多く盛り込まれている。このような直接的ではない表現の中から,児童同士の検討によって,作 品の分析を深めていく活動を取り入れたい。 (2)児童観 本学級の児童は,文を書くことに苦手意識がある。その理由として,テーマや内容を考えるのが難し いという声が上がっている。日頃の日記や作文を見ていても,語彙が尐なく,三人中二人は表記の間違 いも多々みられる。 児童別に一人ひとりの能力をみていく。 ~ (省略) ~ 上記のように,文章力に課題があるが,定型をあたえ,書くことがはっきりしていると,比較的 抵抗なく文章が書ける。その為,細分化して指導にあたる必要がある。その点,本学級は尐人数とい う利点を生かし,細かく区切って一人ひとり助言を入れていく事が可能である。これにより,その都 度見直しができ,最後に大幅な書き直しをする等の負担を減らすことができる。 (3)指導観 『川とノリオ』は文学教材単独の「読むこと」単元である。「登場人物の心情や場面について,優れた 描写を味わいながら読み,自分の感想を持つ」という単元目標が設定されている。 しかし,ただ登場人物の心情を主観的に推測したり,自分なりの感想を書いて終わるのではなく,手 がかりとなる表現をもとに,作品を分析していく力を育てたいと考えた。 この作品は,登場人物の心情が直接描写されることがほとんどない。そこで,人物の様子・変化,作 者の意図などを文章中の言葉を根拠として検討する活動を中心に組み立てた。さらには,検討した内容 を自分なりに解釈し,評論文にまとめていくことは,これからの時代を生きる子どもたちに身に付けさ せたい能力の1つである。 文科省が出した『PISA 調査(読解力)の結果を踏まえた指導の改善』によると,次の3つの方向に 指導の改善を行う必要があるとされている。 (1)テキストを理解・評価しながら読む力を高めること (2)テキストに基づいて自分の考えを書く力を高めること (3)様々な文章や資料を読む機会や,自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実すること 以上のねらいを踏まえ,授業を組み立てていくこととした。 具体的な能力として, ①表現の細部が全体においてどのような役割を果たしているのか等,筆者の表現意図を解釈する力(1) ②短時間で分析的な読みを行い,相手を明確に意識し相手に訴えかける表現や発表を行う能力(1) ③テキストで述べられている事柄を相互に関連づけて解釈したり,それらを総合して自分の考えや生活 経験と結びつけて考えをまとめ,表現する能力(2) などを高める必要をあげている。 これらはまさに本単元で取り組む事項である。 また,解釈には「本文の内容相互を関連づけ意味づける能力」と「筆者やそのテキストの背景となる 現実や文化と関連づけ意味づける能力」が必要だとも書かれている。 本単元で学習する「言葉を根拠に登場人物の心情や作品の構成,主題などを分析・検討する活動」は, これらの能力を鍛えるものである。 さらには,分析・検討した後,自分なりの考えを文にまとめていく活動を取り入れている。 【(2) (3)】 しかし,このような作品を分析する活動に慣れていない児童にとって,いきなり評論文を書かせる事に はあまりに大きい壁がある。そこで,毎回の課題の検討後,アウトラインを示しながらミニ評論文にま とめる活動を繰り返していく。そして単元の最後に,これまで書きためたミニ評論文をつなげていき, 1つの評論文を完成させることとした。このようにスモールステップ化してあれば,児童にとって無理 なく評論文が書けるものと考える。できあがった評論文を互いに読みあい,評価しあうことで,さらな る自信をつけ,作文に対する苦手意識をなくすきっかけとしたい。 (4)校内研修テーマとの関連 本校は「表現力を高める指導の工夫~国語科『書く領域』を通して~」をテーマとし,日々取り組 んでいる。 朝の短作文指導,全校読書,様々な行事体験をもとにお礼文・絵日記,学習のまとめ新聞の作成など あらゆる機会を捉えて表現力の向上に努めてきた。 そこで今回は,評論文に挑戦することとした。 優れた叙述の指す意味・登場人物の様子などを分析・検討する中で,様々な表現法があることに気付 かせたい。 さらには,言葉を根拠とした分析をもとに評論文を書くことによって,自己の意見を論理的・客観 的に表現する能力が高まるものと考える。 3.指導計画(全13時間) 活 動 内 容 第 1 時 ・全文音読をして,感想を書く。 (時間があれば,辞書引きをする。) 第 2 時 ・全文音読。視点の効果に気づかせる。 ・接続語を使って,文を作る。 以下,毎時間音読をする。 評 価 ・全文を読み,思ったことや勉強し てみたいことを簡潔に書くこと ができたか。 ・スラスラと音読ができたか。 ・視点の効果に気づくことができた か。 第 3 時 ・キーワード選定。 ・「ひと言で言うと,どんな話か。」一文でまとめる。 ・これまでの学習を生かし, キーワードを選定して一文で表 すことができたか。 第4時 ・物語の設定を考え,表にまとめる。検討事項があれば, ・自分の意見を持ち,発表すること ~ まとめてミニ評論文を書く。 ができたか。 予定(すすきの検討:すすきは登場人物か) ・言葉に着目して,設定を検討し, 第5時 (登場人物の検討:川は登場人物か) 表にまとめることができたか。 第6時 ・対比されている表現をみつける。 ・1 番大きな対比を検討する。 ・ミニ評論文にまとめる。 第7時 ・物語を 2 つに分け,前半と後半を比べる。 ~ (色のイメージ化・ノリオの変化) 第8時 ・ミニ評論文にまとめる。 第9時 ・クライマックスの検討をして,ピナクルを確定する。 ・ミニ評論文にまとめる。 第10時 ・主題を検討する。 ・ミニ評論文にまとめる。 第11時 (本時) ~ 第12時 ・「川とノリオ」の評論文を書く。 (文の構成・接続語の確認) ・評論文を読み合い,感想を書く。 4 ・ベン図などを利用し,1 番大きな 対比を検討することができたか。 ・言葉を根拠に,物語を 2 つに分け, 前半・後半を比較することができ たか。 ・自分なりの意見を持って,クライ マックスやピナクルの検討がで きたか。 ・今までの学習をもとに,主題を検 討し,文にまとめることができた か。 ・これまでのミニ評論文をつなげ て,評論文を書くことができた か。 本時の学習 (1)本時の目標(11/12) 出だし文と締めくくり文にどの評論文を持ってきたら効果的か考え,つながりに気をつけて全体の 構成を決めることができる。 (2)一時間一工夫 ・どちらが終始の文にふさわしいか判断する際に,児童が書いた例文を用いて比較させる。 (3)本時の展開(11/12) 主な学習活動 導 入 1.ウォーミングアップと漢字練習 ・詩の暗唱 ・漢字スキル ・音読 など 2.めあて 指導上の留意点 評 価 ・テンポを意識させる。 ・自分たちで意欲的 ・基本的に,児童(学習リーダー) に 学習を進 める にまかせ,見守る。 ことができたか。 全体のつながりに気をつけて,評論文を書こう 展 開 3.構成を考える。 ・これまでの評論文に番号を打って ・始めと終わりにふさわしい文はど 順番を考えさせる。 れか検討する。 ・実例文を提示し,どちらがふさわ しいか考えさせる。 ・つながりを考えて,順番を決める。 ・接続語(順接・逆接も含む)の効 ・接続語の確認をする。 果的な使い方を確かめる。 4.出だし文を作る。 ・ 「分析したこと→理由」または「事 ・文のつながりに気をつけて,でき 実→感想」という風に,自分の意 るだけ各々の意見を入れたり付け 見をできるだけ入れていくこと 足したりする。 を確認する。 ・発表する。 ・どんな意見も褒める。 ・各自の状況に応じて,接続語をあ えて使わずつなげる場合もある ことを伝える。 ・全体の構成を考え る ことがで きた か。 【書く】 ・出だし文を作るこ とができたか。 【話す・聞く】 ・作った出だし文を 堂 々と発表 する ことができたか。 ま と め 5.評論文の続きを書く。 ・行間は空けて書かせる。 (訂正用) 【書く】 ・文のつながりや接続詞に気をつけ ・1つの区切りごとに教師の元へ持 ・文のつながりを意 て,文をつなげていく。 ってこさせる。 識 して文章 をつ ・個々の進み具合が分かるようにマ な げること がで グネットを移動させる。 きたか。 6.できた所までを発表する。 ・時間で区切って,発表させる。 【話す・聞く】 ・各自の良いところを褒め,参考に ・友達の評論文の良 させる。 いところ・発表の 仕 方の良い とこ ろ 等をみつ ける ことができたか。 (4)評価 出だし文と締めくくり文にどの評論文を持ってきたら効果的か考え,つながりに気をつけて全体の 構成を決めることができたか。 (5)板書計画 出 だ し 文 → ② → ③ → ④ → ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 終 わ り の 文 ( 前 の 文 の 当 然 の 結 果 ) ( 前 だ し の が か 文 し と 反 対 の 意 味 ) ( 最 次 ま 順 後 に ず 序 に を あ ら わ す ) そ だ れ か で ら ○ つ な ぎ 言 葉 ○ ○ 構 番 成 → ○ 番 → ○ 番 → ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ○ 番 ○ 終 わ り の 文 例文 例文 ○ 出 だ し の 文 め あ て
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