生徒同士で学び合う授業づくり ~ペア活動・グループ活動を取り入れた

生徒同士で学び合う授業づくり
~ペア活動・グループ活動を取り入れた数学授業を通して~
篠岡中学校
1
沢海あさ
はじめに
私の受けもっている2年生の生徒は、どんな課題に対しても一生懸命に取り組む良さを持ってい
る。ところが、多くの生徒は自分たちの良さに目を向けることなく「数学は苦手」と答えている。
筋道を立てて考えたり、それらを自分の考えとして説明したりすることに抵抗を示しているからで
ある。ところが、他の授業や学活の様子を見ていると、4人グループの中では比較的活発な話し合
い活動が行われている。そこで、課題の解決方法を考察する際も、グループ活動を取り入れること
によって、グループ内で考えを深め、自信をもたせてから全体で共有させられるのではないかと考
えた。また、グループ活動を通して、わからないことを聞き合ったり、教え合ったりして、学び合
うことができると考え、以下のような実践を行った。
2
実践
1
単 元
図形の性質と証明
2
本時の指導
(1) 指導の力点
○ 前時に学習した平行線を使った等積変形を利用して問題を解くため、初めの復習で丁寧
におさえたい。ペア・グループ活動で生徒同士の関わりをもたせ、考えを深め、自信をも
たせてから全体で解き方を共有させたい。
(2) 目標
○ 図形の性質に関心をもち、課題を解決しようとする。
(関心・意欲・態度)
○ 平行線を使った等積変形を問題の解決に利用することができる。
(見方や考え方)
○ 平行線を使った等積変形を利用して、問題を解くことができる。
(技能)
(3) 指導過程
時間
8
学
1
習 活
動
指 導 上 の 留 意 点
平行線を利用した等積変形 ○ 図を提示する。
評
○
価
前時の内容を理解
について復習する。
した上で、説明する
△
ことができたか。
(観
前回の授業で学習したこ
とはなんですか。
△
ペアで確認しましょう。
・2直線が平行ならば 2 つの三
角形の面積は等しい。
察)
○
ペアで確認した内容を発表さ
せる。
・2つの三角形の面積が等しい ○
ならば2直線は平行である。
・PQ//ABならば,
△PAB=△QAB
・△PAB=△QABならば,
PQ//AB
何名かの生徒を指名して、
三角形の底辺が共通である
ことをおさえる。
○
平行線の性質を利用すれ
ば、形は違っても面積が等し
い三角形ができることをおさ
える。
37
2 本時の課題を確認する。
〔見方や考え方〕
(45)
等積変形を利用して、面積
平行線を使った等
が等しい図形を作ろう。
積変形を問題の解決
3 課題に取り組む。
○ ワークシートを配布する。
に利用しようとした
(1)問題に取り組む。
○
か。(観察・ワークシ
▲
それぞれの土地の面積を
相談をせず個人で考えさせ
る。
ート)
変えないで、
点Aを通る直線
B:自分なりの考えを
をひくとき、
どのようにひけ
ワークシートに記述
ばよいでしょうか。
しようとする。
○
グループ内で自分
の考えを説明するこ
とができたか。(観
(2)グループで話し合う。
△
グループで話し合いまし
ょう。
○
机をグループの隊形にさせ
る。
〔技能〕
進んでいないグループがあ
平行線を使った等
解き方を自分の言葉で説
れば中断し、進んでいるグル
積変形をして、問題を
明できるようにしましょう。
ープの一人を指名してヒント
解くことができたか。
を出させる。
(観察・ワークシー
△
4 全体で共有する。
△
どういう方法で解きまし
たか。
・点Aと点Cを結ぶ。
・点Bを通りACに平行な線
を引く。
・△ABCを底辺ACとして
等積変形させる。
○
察)
○
三角形を作り平行線をひい
たことで等積変形が利用でき
B:平行線を使った等
ることをおさえる。
積変形を利用して、問
○
何名かの生徒を指名して、
全体で発表させる。
○
△
教科書 P131 問2を解きま
しょう。
題を解くことができ
る。
机間指導をして、進んでい
ない生徒がいれば、例題を参
〔関心・意欲〕
図形の性質に関心
考にして考えるように助言す
る。
5 問題演習をする。
ト)
○
時間があれば、五角形を提
示し、面積の等しい三角形を
つくるにはどうしたらよいか
をもち、課題を解決し
ようとしたか。
(観察)
B:例題を利用して、
問題を解こうとする。
考えさせる。
5
6 本時のふり返りをする。
(50)
△
今日の授業でわかったこと ○
はなんですか。
本時のふり返りをワークシ ○
ートに記入させる。
○
次回の授業の内容について
ふれる。
本時のまとめをす
ることができたか。
(ワークシート)
3
考察
すぐに解き方がわかった生徒がいるグルー
プは、その生徒が教え始めた。自分から教えて
と言えない生徒もいるが、できている生徒は一
生懸命に教えようという姿が見られた。おせっ
かいな感じではなく、わかってもらいたいとい
う素直な気持ちに見えた。しかし、4人グルー
プで話すというよりは、1対1になってしまっ
ていた。そのため、うまく関われていないよう
な生徒もいたが、説明している生徒の手元の図
を見たり、自分の図と見比べたりしていた。ど
の生徒もわかりたいという気持ちがあるのだと感じた。一方で、解き方がわかった生徒が1人もい
ないグループは、手詰まり状態であった。一端グループ活動をとめて、あるグループに「まず何を
したか」と問いかけてヒントを出させ、再びグループ活動に戻したが、苦戦していたようであった。
問題の意味を把握していないまま進んでしまったので、問題文を読んだ際に確認したり、生徒にど
ういう問題かを説明させたりする必要があった。最終的には、ほとんどのグループは正解を導き出
すことができた。しかし、なぜそれが土地の面積を変えないことになるのかうまく説明できないよ
うであった。全体の場で指名された生徒は、前に出て一生懸命に説明をしようとしたが、一つひと
つの説明にまとまりがなく何度も同じ説明を繰り返し、時間となってしまった。
4
まとめ
生徒同士で理解させたいと思い、グループ活動を取り入れたり、全体で発表させたりしたが、生
徒の説明は必ずしも他の生徒にすんなりと受け入れられるわけではない。教師には、聞き手のわか
らないところを確認して、説明の足りないところを補ったり、整理したりする必要がある。教師が
意識的に生徒の説明を区切って整理をし、生徒を指名して確認したり、説明を求めたりして共有さ
せることが大切だということが分かった。こうすることで、生徒たちは他の生徒の説明をじっくり
と理解でき、説明する生徒は、自分の考えをどのように整理して説明すれば伝わるのかを学ぶこと
ができる。生徒の説明を教師がただ黙って見ていることが多く、切り返して深めることや言葉を繋
いで共有していくことがまだまだ足りないこと、教材の理解が不足していることを学んだ授業であ
った。