セールスレターを書く前に 知っておかなければならない 6つの深層心理

セールスレターを書く前に
知っておかなければならない
6つの深層心理
著:今中
1
優美
目
次
はじめに .......................................................................................................................................................... 3
第1章 一貫性を保ちたい欲求 ................................................................................................ 4
第2章 ギブ&テイクのルール .............................................................................................. 14
第3章 一貫性のへの欲求 ......................................................................................................... 27
第4章 やさしい泥棒 .................................................................................................................... 43
第5章 権威への服従 .................................................................................................................... 52
第6章 希少性の原理 .................................................................................................................... 66
終わりに...................................................................................................................................................... 76
2
はじめに
これからの時代はコピーライティングのスキルが重要だ、なんていう言葉をよ
く耳にするようになりました。それは事実です。
日本でもダイレクトレスポンスマーケティングが主流になりつつあります。主
流になりつつあるのですが、それが効果を発揮するのもセールスレターがしっか
りしているというのが前提です。
そこでセールスレターを学ぶことになるのですが、テクニックを述べている教
材は山ほどあります。
『ではなぜそのテクニックが有効なのか?』
わたしもたくさんのコピーライティング教材を読んできましたが、これに十分
な答えをしめしてくれる教材はありませんでした。これが、私がこの教材を書い
た理由です。
筋肉トレーニングをする際に、タダひたすら運動をくり返している人と、今ど
この筋肉を鍛えているのかを意識しながら運動をする人とでは、その効果は雲泥
の差です。
つまり、コピーを書く際にも今使っているテクニックが、相手の深層心理にど
ういう影響を与えるのかを意識して書くのと、書かないのとではその効果は時に
は何十倍も変わってきます。
ビジネスの流行は日々移り変わりますが、人間の深層心理は未来永劫変わるこ
とはありません。この教材を読んで、流行に流されないコピーライティングスキ
ルの土台を作り上げてください。
3
第1章
一貫性を保ちたい欲求
■ あの商品は本当に自分の意志で購入したものですか
販 売 サ イ ト を 見 て い て 、無 意 識 に ク リ ッ ク し た こ と は あ り ま せ ん か ?
販売サイトの言葉に興奮して数万円もする商品をあまり考えずに、
買ってしまった経験はありませんか?
似たような経験は誰にでもあると思います。
思い出してよく考えてみてくださいね。購入したあの商品の値段は、
あ な た に と っ て 本 当 に 適 正 な 価 格 だ っ た の で し ょ う か 。他 の 類 似 商 品 と
たいした比較もせずに購入したのではないでしょうか。
普 段 は 慎 重 に 買 い 物 す る あ な た が 、あ の 時 な ぜ 、貴 重 な お 金 を た や す
く使ってしまったのでしょう?
あなたの商品購入までの一連のステップが、
実はあなたの意思ではなく(一見自分で決定したように思うが)、
売り手から意図的に引き起こされたものだとしたら・・・
■
高すぎる商品
『 そ ん な こ と は な い 。 あ の 商 品 は 自 分 の 意 志 で 購 入 し た も の だ 。』 と
4
思うあなたは、このレポートが必要かもしれません。
結論から言いましょう。
現 在 イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 販 売 さ れ て い る 情 報 商 材 の ほ と ん ど は 、内 容
に 対 し て 価 格 が 見 合 っ て い ま せ ん 。適 正 価 格 は 販 売 価 格 の 1 0 分 の 1 く
らいの値段でちょうどいいものばかりです。
これは情報商材だけに限らず、他の商品でも言えることです。
驚 く べ き こ と に 化 粧 品 の 原 価 は 、販 売 価 格 の 1 0 0 分 の 1 く ら い で す 。
ま た コ ー ラ を は じ め と す る 清 涼 飲 料 水 も 、原 価 は 販 売 価 格 の 1 0 分 の 1
以下の値段です。
にもかかわらず、なぜ売れるのか?
なぜ私たちは買ってしまうのか?
■
反射的に引き起こされる行動パターン
5
人 間 も 含 め て 、動 物 の 行 動 の ほ と ん ど は 、自 分 の 意 志 で は な く 反 射 的
に生じていることが研究によりわかっています。
例えば、七面鳥の子育てをみてみましょう。
母鳥は自分の翼の下で、とても大切にヒナ鳥を世話します。しかし、
母鳥の世話を観察していると、変なところがあることに気づきます。
母鳥は、ヒナ鳥が『ピヨピヨ』と鳴くと世話をはじめます。
そ こ ま で は 普 通 な の で す が 、ヒ ナ 鳥 が 鳴 か な け れ ば ま っ た く 世 話 を し
ま せ ん 。ヒ ナ 鳥 を 無 視 し た り 、時 に は 殺 し て し ま っ た り す る こ と だ っ て
あるのです。
つ ま り 、 ヒ ナ 鳥 に は た く さ ん の 特 徴 が あ る に も か か わ ら ず 、『 ピ ヨ ピ
ヨ』という鳴き声のみが、母鳥の行動の引き金となっているのです。
そこで、このような実験をしてみました。
七面鳥の天敵はイタチです。
そ の イ タ チ の ぬ い ぐ る み の 中 に 、ヒ ナ 鳥 の 鳴 き 声 を 録 音 し た テ ー プ を
入れて、母鳥に近づけるという実験をしました。
6
そ う す る と 、母 鳥 は そ の イ タ チ の ぬ い ぐ る み を 自 分 の 翼 の 中 に 引 き 入
れ 、大 切 に 世 話 を は じ め た の で す 。 テ ー プ が 切 れ る と 、 母 鳥 は そ の イ タ
チのぬいぐるみを攻撃し、ぼろぼろにしてしまいました。
まさに母鳥は鳴き声のみに反応して行動しているのです。
と て も バ カ ら し く 、ま る で ロ ボ ッ ト の よ う で す 。し か し 、こ の よ う な
例 は 、七 面 鳥 だ け に 見 ら れ る の で は あ り ま せ ん 。さ ま ざ ま な 動 物 に お い
て、このような反射的な行動パターンがあることがわかっています。
■
考えるのはとても疲れること
なぜこのような行動パターンをとるのでしょうか?
少し考えれば納得のいく話です。
当 然 七 面 鳥 の 母 鳥 は 、自 分 の ヒ ナ だ け を 世 話 し た い は ず で す 。し か し 、
そ の ヒ ナ は 本 当 に 自 分 の 生 ん だ ヒ ナ と 言 え る で し ょ う か 。も し か し た ら 、
違う種類のヒナがまぎれ込んでいるかもしれません。
ヒ ナ 鳥 に は 、鳴 き 声 以 外 に も た く さ ん の 特 徴 が あ り ま す か ら 、確 か め
よ う と 思 え ば 、確 か め る こ と が で き る か も し れ ま せ ん 。し か し 、毎 回 確
7
か め る と な る と 、日 々 移 り 変 わ る 自 然 界 の 中 で は 、も の す ご い 労 力 に な
り、とても非効率だと言えます。
『ピヨピヨ』と鳴くのは自分のヒナ鳥だけです。ですから、母鳥は、
『 ピ ヨ ピ ヨ 』と い う 鳴 き 声 を 聞 く と 、そ れ が 自 分 の ヒ ナ だ と わ ざ わ ざ 確
かめる必要がないと無意識に判断するのです。
つまり、鳴き声のみで反応することで、ヒナ鳥であるという確認の
手間を自動的に省いているわけです。
人間にもこのように、ある出来事により、反射的に引き起こされる
行動パターンがいくつもインプットされています。
これからそのいくつかのパターンについてお話していきましょう。
このような話があります。
あ る 宝 石 店 で ト ル コ 石 を 売 っ て い ま し た 。値 段 の 割 に は 質 の 良 い も の
ばかりなのですが、なかなか売れません。
店 長 は 、 買 い 付 け の 旅 に で る 前 の 日 に キ レ て 、『 全 部 の 商 品 の 値 段 に
8
1/2を か け て 売 る よ う に ! 』 と な ぐ り 書 き の メ モ を 売 り 場 の 主 任 に 残 し
ていきました。
数 日 後 、ト ル コ 石 が す べ て 売 れ て い ま し た 。買 い 付 け の 旅 か ら 帰 っ て
きた店長は、別に驚きませんでした。
し か し 、 売 上 報 告 を 見 る と 、 売 り 場 の 主 任 が 、 “ 1/2” を “ 2” と 読 み
間 違 え た た め 、 す べ て の ト ル コ 石 が 最 初 の 価 格 の 2倍 で 売 れ て し ま っ て
いたのです。
これには店長もびっくり仰天しました。
つまりこういうわけです。
お客はトルコ石について大した知識持ち合わせていません。そこで、
ト ル コ 石 を 買 お う と し た と き に 、「高 価 = 良 い も の 」と い う 標 準 的 な 原 理
に 照 ら し 判 断 し た の で す 。「良 い ト ル コ 石 」を 欲 し い と 思 っ て い た お 客 は 、
価 格 だ け が つ り 上 げ ら れ た ト ル コ 石 を 見 て 、こ れ は 買 う 価 値 が あ る も の
だと反射的に信じてしまったというわけです。
■
合理的な方法に賭ける
これはあながちバカにできません。
9
愚 か な な 買 い 物 を し た 彼 ら で す が 、 彼 ら は 「払 っ た 金 額 に 見 合 う も の
が 手 に 入 る も の だ 」と い う ル ー ル を 聞 か さ れ て 育 っ て き ま し た 。
そ し て 、こ の ル ー ル が 当 て は ま る こ と を 何 度 も 何 度 も 体 験 し て き た の
で す 。 そ う し て い る う ち に 、 こ の ル ー ル を 、 「高 価 = 良 い も の 」と 反 射 的
に置き換えて使うようになったのです。
実際、この反応は役立ちます。
通常価値の高いものは、価格も高いからです。
角 度 を 変 え て 見 る と 、価 格 の み に 反 応 す る と い う 安 易 な 方 法 は 、1 つ
の賭けだと言うことができるかもしれません。
有 利 な 買 い 物 を し よ う と す れ ば 、ト ル コ 石 の 価 値 を 自 分 で 見 分 け る こ
と が で き る よ う に な る 必 要 が あ り ま す 。し か し 、そ れ を す る に は も の す
ごい労力、時間、お金が必要です。
だ か ら 、そ の 代 わ り に 価 格 か ら そ の 価 値 を 予 測 す る と い う 、カ ン タ ン
な方法に反射的に賭けたのです。
10
ま た 、今 ま で の 経 験 に 照 ら し 合 わ せ て み て も 、こ の よ う な 手 っ 取 り 早
い 方 法 に 賭 け る こ と が 、結 局 は 無 駄 な 労 力 を 使 わ ず に す む 妥 当 な 判 断 だ
ということが言えるでしょう。
こ の よ う に 、よ く 考 え ず に 反 射 的 に 行 動 す る パ タ ー ン は 、他 に も あ り
ます。
例 え ば 、人 は あ る 話 題 の 権 威 者 の 言 う こ と は 、盲 目 的 に 信 じ て し ま う
傾 向 が あ り ま す 。権 威 者 の 言 う こ と を 鵜 の み し て 、そ の 意 見 の 中 身 を よ
く調べてみることはほとんどないはずです。
あ な た は ニ ュ ー ス や 評 論 家 の 言 っ て い る こ と を 、全 て 自 分 で 本 当 か ど
うか検証しますか?
そ ん な こ と を い ち い ち し て い て は 、い く ら エ ネ ル ギ ー が あ っ て も 足 り
ません。
こ の よ う に 、人 間 の 行 動 を 見 て み る と 、こ の よ う に あ る 特 徴 を 引 き 金
として反射に反応していることが多いことに気付きます。
そ の 理 由 は 、多 く の 場 合 、そ れ が 最 も 効 率 の 良 い 方 法 で あ る か ら で す 。
私 達 の 生 活 す る 環 境 は と て つ も な く 複 雑 で す 。私 達 が 出 会 う 人 や 出 来
事 、状 況 な ど を す べ て 理 解 し 、 分 析 す る こ と は 不 可 能 で す 。 そ ん な 時 間
11
も、労力も、能力も私達にはありません。
だ か ら 、あ る 特 徴 を 引 き 金 と し て 反 応 す る と い う 一 見 安 易 な 方 法 を 用
い る の で す 。こ れ に よ っ て 、私 た ち は 、貴 重 な 時 間 や エ ネ ル ギ ー を 消 耗
せずにすむようにしているのです。
し か し 、こ の よ う な あ る 特 徴 を 引 き 金 と し て 反 射 的 に 行 動 す る と い う
ことで、ある間違いを犯しやすくなります。
第 三 者 が こ の よ う な 人 間 の 行 動 原 理 を 知 っ て い て 、第 三 者 が 、そ の 引
き金を引けるように仕掛けたとします。
そ し て 、第 三 者 が 自 分 の 利 益 の た め に 、あ な た に そ の 反 射 的 な 行 動 を
起こさせようとしているとき、あなたが間違った判断をする可能性は、
より一層高くなるでしょう。
少 し 前 に な り ま す が 、あ る 番 組 の 納 豆 ダ イ エ ッ ト 問 題 は 、典 型 的 な 例
だといえるでしょう。番組作成者側は、意図的に権威者の映像を用い、
視聴者をだまそうとし、そして多くの人がだまされました。
また、世に出回る多くの情報商材の価格設定についてもそうです。
人は
良いもの=高いもの
と無意識に判断する傾向がありますので、
12
数万円という価格設定がなされ、そして売れるのです。
ちょっと大きな書店の専門書のコーナーに足を運んでみてください。
も の す ご く 分 厚 い 、 中 身 ぎ っ し り の 本 で も 1万 円 も す る も の は ほ と ん ど
見つけられないと思います。
でもこういう反論をしてくる人もいるでしょう。
『 満 足 い た だ け な い 場 合 、全 額 返 金 し ま す 』と 保 証 さ れ て い ま す よ !
こ れ に つ い て は 第 3 章 で 詳 し く 話 す 予 定 で す が 、人 は 一 度 あ る 行 動 し 始
め る と 、そ の 行 動 を 途 中 で 止 め る こ と を 嫌 が る 傾 向 が あ り ま す 。一 貫 性
を保ちたいと、無意識に感じるからです。保証を仕掛けている側は、
この原理も知っています。
すべてが計算されているのです。
こ の よ う な 様 々 な 人 間 の 行 動 原 理 を 利 用 す る こ と で 、人 々 を 自 分 の 思
う方向へと導いているのです。
13
第2章 ギブ&テイクのルール
場所、人種を問わず、人間社会に共通するルール。
これが『ギブ&テイクのルール』です。
そ の 名 の 通 り 、他 人 か ら 何 か を も ら っ た ら 、自 分 も 何 か お 返 し を 与 え
な い と い け な い よ う な 気 持 ち に さ せ る と こ ろ に 、こ の ル ー ル の 特 徴 は あ
ります。
「な ん だ 、 そ ん な こ と か 」と 思 っ た 方 も い る と 思 い ま す 。
しかし、すべての人間社会に行き渡るこのルール、よく見てみると、
ものすごい影響力を持っています。
そ し て 、こ の 影 響 力 の 大 き さ を 知 っ て い る 悪 意 の あ る 人 は 、た く み に
このルールを使いこなし、あなたから『イエス』を引き出します。
■ なぜこのルールが強力に作用する?
全 世 界 の ほ と ん ど の 人 が 、こ の『 ギ ブ & テ イ ク の ル ー ル 』が 守 ら れ な
ければ不快な気持ちになります。
14
あなたも経験あるはずです。
例えば、たいして親しくない知り合いにプレゼントをもらったとき、
自 然 と『 な ん か 悪 い な ぁ 。い つ か お 返 し し な く ち ゃ 』と い う 気 持 ち が わ
いてくるでしょう?
ま た 、反 対 に 、他 の 人 に 何 か を プ レ ゼ ン ト し た と き 、何 の お 礼 も な け れ
ば、正直に言うと、少し不快な気持ちになるでしょう?
なぜ多くの人が、このような気持ちを抱いてしまうのか?
こ の ル ー ル が ど う い う 意 味 を 持 つ か を 考 え て み れ ば 、な ぜ こ う い う こ
とが起こるのかを理解することができます。
『ギブ&テイクのルール』は、誰かに何かをしてもらったら、
将来それに対してお返しをすることを無意識に義務付けるという
ルールです。
人 は 生 き て い く 上 で 、自 分 の も の が 失 わ れ て い く こ と に 強 い ス ト レ ス
を 受 け ま す 。し か し 、こ の『 ギ ブ & テ イ ク の ル ー ル 』が 守 ら れ る と い う
条 件 の 中 で は 、人 は 他 人 に 対 し て も 何 か を あ た え て も 、そ れ が 決 し て 失
われることを意味するのではない、と安心感を得ることができます。
15
こ の ル ー ル は 、お 互 い 助 け 合 う と い う 人 間 関 係 の 発 展 を 手 助 け し て く
れます。そして、人間関係の発展により、社会が発展していきます。
もし、『ギブ&テイクのルール』が守られるという前提がなければ、
今のこの社会はあり得なかったでしょう。
こ の『 ギ ブ & テ イ ク の ル ー ル 』を 忠 実 に 守 る こ と 、そ し て 、守 ら な け
れ ば 、社 会 の 発 展 を 妨 害 す る も の と し て 、仲 間 は ず れ に さ れ る と い う こ
とを、この社会で生きる私たちは、子どもの頃からすり込まれます。
そ の 結 果 、こ の ル ー ル が 守 ら れ な い 時 、人 は 無 意 識 に 不 快 感 を 感 じ る
よ う に な り ま す 。そ し て 、こ の 不 快 感 か ら 逃 げ る た め に 、人 は こ の ル ー
ルをなんとか守ろうとします。
最 近 の 例 で い う と 、ホ リ エ モ ン や 村 上 フ ァ ン ド が こ の キ ブ ア ン ド テ イ
クのルールを守らなかったということで社会から追放されてしまいま
し た 。( 知 識 レ ベ ル で い う と と て も 優 秀 彼 ら で す 。 法 律 ス レ ス レ だ っ た
かもしれませんが、一線は超えていなかったかもしれません。ですが、
社会はテイクだけを求める人を許さなかったということです。)
16
■
『ギブ&テイクのルール』が強力に作用する 3 つ特徴
さ て 、こ の『 ギ ブ & テ イ ク の ル ー ル 』が 、商 品 や サ ー ビ ス を 購 入 す る
かどうかの決定に大きく影響を及ぼすことはよくあります。
大 き な 実 績 を あ げ る セ ー ル ス マ ン や ア フ ェ リ エ イ タ ー は 、よ く こ の ル
ールを使っています。
よくある方法として、はじめに無償で何かを与えておいて、
相手からお返しを引き出すというものがあります。
この方法は非常に効果的です。
そ の 理 由 は 、 『ギブ&テイクのルール』が持つ3つの特徴によります。
【特徴1】
『ギブ&テイクのルール』は、無意識にとても強く影響をおよぼします。
そ の 影 響 力 は 、通 常 、相 手 の 要 求 を 受 け 入 れ る か 否 か を 判 断 す る 材 料
(価格、質、期間など)の影響力をはるかに上回ります。
17
【 特 徴 2】
『ギブ&テイクのルール』は、こちらが望みもしない好意を受けた場合にも
適用されます。つまり、他人の一方的に受けた好意に対しても、
“借りをつくって
・
・
・
しまった”、という不快な感じを無意識に受けてしまうということです。
これは、借りをつくる相手をこちらが選ぶことができない、ということを意味し
ており、その選択権を他人にゆだねることになります。
(“ありがた迷惑”という言葉がありますね。この言葉は、本当は行為そのものが
迷惑なのではなくて、一方的な好意にもかかわらず、借りをつくってしまったと
負担に感じさせるところが迷惑なのです。)
【 特 徴 3】
『ギブ&テイクのルール』によって、不公平な交換が導かれることがあります。
“恩義を受ける”というのは、不快な感情を導きます。
人はこの不快感を取り除こうと行動します。そのために、人は親切を受けた相
手から何かを頼まれると、そのお返しに、受けたもの以上のことをしてあげるこ
とがたびたび起こります。
18
情報商材などのセールスで標準的に行われている、
“●●日間お試しください!その後の返金受け付けます!”
というコピー。
こ の コ ピ ー が 効 果 的 な 理 由 は 、無 意 識 に 訴 え る さ ま ざ ま な 要 素 が 含 ま
れ て い る か ら で す 。 そ の う ち の 1 つ が こ の 『ギブ&テイクのルール』です。
このキャッチコピーをみて、こんなことを考えたことはありませんか?
『売り手側は大量に返品されたら、商売が成り立たなくなるんじゃないかな
ぁ・・・』
しかし、売り手側は、そんな心配をしていません。
なぜなら、返品がほとんどこないを知っているからです。
この場合、売り手側は始めに、あなたに“無料で商品を使用してもらう”
・
という恩を与えています。あなたは売り手のこのオファーを受けたときから、
無意識に、
『この恩に報いなければ』と感じます。
『ほんとかなぁ・・・?』とお思いの方は、一度この保証付きの商品を購入して
みるとわかるでしょう。
購入の段階で、まず感情に変化があらわれるはずです。
19
その感情とは、言葉にできないが、
『本当に買ってもいいのだろうか…?』とい
う不安です。
これは『ギブ&テイクのルール』により導かれる不安です。
つまり、
『これを購入して粗悪品だったとき、返品可とあっても、返品しにくくな
るんじゃないかなぁ・・・あんまり、こんな恩を受けたくないなぁ・・・』ということ
です。言語化はできませんが、あなたの無意識は不安を感じるのです。
セールストークはたくみに、そして一気に行動させるように書かれていますが、
少し立ち止まってその時の感情を味わってみてください。
そして、不安も無視して購入してみましょう。
数日のお試しの後、価格と商品の質が釣り合っていないと感じたら、返品を試
みてください。
できないはずです。
なぜか、あなたの行動にはストップがかかるでしょう。
そのときは、
『めんどくさい』とか『まあ、それなりのものかな…』など、
意識上では、さまざまな理由が出てくると思いますが、
これは間違いなく『ギブ&テイクのルール』の影響を受けています。
20
つまり、
『もしここで返品すれば、私は、今後恩知らずのとんでもないやつと思
われるのではないだろうか…』と無意識に不安を感じているのです。
そして、返品という行動をストップすることにより、この不安から逃げようする
のです。商品の価値が価格に不釣合いなものであったとしても。
■
『ギブ&テイクのルール』のヴァリエーション
ま た 『ギブ&テイクのルール』を応用して相手から“イエス”導く方法があり
ます。
これは最初に相手に何かを与えて、その見返りを期待する代わりに、
“最初にこちらが譲歩して、そのお返しとして相手の譲歩を引き出す”というも
のです。
これは、あなたも日常生活でよく使っている方法です。
誰かにこんな頼み方をしたことがありませんか?
あなた 『ねえ、あなたにAという用事をお願いしたいんだけど。
』
相 手 『う∼ん、それはちょっと・・・』
あなた 『
(Aより簡単なBを取り出して、
)じゃあBならお願いできる?』
相 手 『・・・まあ、それならやってあげてもいいよ』
あなた 『ありがとう!』
21
このように、始めに確実に拒否されるだろうという提案を出して、
次にそれより小さな提案に引き下げていくという交渉は、いたるところで見られ
ます。
この交渉で、こちら側の提案の引き下げは、相手にとっては譲歩に見られます。
そして、
『向こうも譲歩したんだし、こちらもこの辺で折り合いをつけておかない
とダメかな…』という圧力が相手にはかかります。
これによって、引き下げた小さな提案に対して『イエス』を言う可能性が強まり
ます。
■
『拒否されたら譲歩』法のやっかいな点
先ほど述べた『拒否されたら譲歩』という方法には、私達にとってもう1つ
やっかいな点があります。
それは、この方法によって、
『イエス』を引き出された相手は、その後も同じ
ような提案に『イエス』出す傾向が強くなってしまうことです。
なぜ、そうなるのか?
それは、
『イエス』を引き出された方は、実際には相手に意図的に『イエス』を
引き出されたにもかかわらず、そうは感じていないことが多いからです。
22
彼らはこう思います。
『自分の交渉の仕方がうまかったので、相手の譲歩を引き出すことができた』と。
そして、交渉を取り仕切ったと感じ、交渉の結果に強く責任を感じるようになる
のです。おまけに、自分のうまい交渉の結果、相手の譲歩を引き出し、自分が『イ
エス』を示したということに、非常に満足を感じるものです。
ある交渉に満足を感じた人が、その後も繰り返し同じような交渉を受け入れる
ということは、納得のいく話です。
インターネット上では、
『あの人気商品が2万円から値下げ
→
今なら1万5千円!お早めに!』
などとセールスされることがよく見られます。
このキャッチコピーにはこの『拒否されたら譲歩』法が利用されています。
どういうことかと言いますと、
まず売り手はあなたに対して、ある商品『2万円』という提案を持ちかけます。
あなたは、それに対して“購入しない”という手段をもって、売り手の提案を
拒否します。売り手は、売れないことから、あなたに拒否されたと判断し、価格
を引き下げるという譲歩を持ちかけます。そこで、あなたは少し満足感を得ます。
23
つまり、
『やっぱり、2万円が高い!という私の判断は正しかった。売れないこ
とがわかって、1万5千円に値下げしたのね。それなら購入を検討してもいいか
しら・・・』
こういう行動をする人は、新しいものが出てもすぐに飛びつくことは少ないで
すが、値が下がると、自分の“待つ”という無言の交渉が成功したと満足感を得、
購入へ一歩近づくことになります。
恐るべきことに、この値下げも、このように反応する人たちがいるということ
をすべて知った上で、行われているのです。知った上での仕掛けでなければ、
極端に稼ぐことはできません。
■
『ギブ&テイクのルール』を悪用しようとする人たちから身を守るために
『ギブ&テイクのルール』を悪用しようとする人たちは、
私達にとってはすごく手ごわい相手となります。
悪意ある人たちのから受ける恩恵や譲歩は、私たちに『恩義を受けた。だから
返さなければ』という心理的圧力をかけてきます。そんな中で、相手の望みどお
りに『イエス』を出せば、この『ギブ&テイクのルール』の前に屈することにな
24
ります。逆に、相手の望みを拒否すれば、
『ギブ&テイクのルール』は私たちが子
どものころからすり込まれている、公正感や義務感を攻撃してきます。
そして、とても不快な気分におちいってしまいます。
そんな状況の中で、どんな選択ができるでしょうか。
その方法をお教えしましょう。
もし相手から受けとったものや譲歩が、純粋な贈りものでないと気付いたとき
は、
“これらすべては、贈りものではなく、セールスのための手段である”
と心の中で考え直すのです。
そうすれば、もはやこれらは贈りものでもなんでもなくなります。
ですからあなたが、
『ギブ&テイクのルール』の影響を受けることはありません。
そして相手のセールスに対し、体よく断るも(もしくは受け入れるも)あなたの
自由になります。
ま た 、相 手 の 贈 り も の が 、あ な た か ら 利 益 を 引 き 出 す た め の 手 段 に 間
違 い な い と 思 う の な ら 、あ な た は そ の 贈 り も の を 自 分 自 身 の 利 益 の た め
だけに使ってしまうこともいいかもしれませんね。
25
26
第3章
■
一貫性のへの欲求
人が求める一貫性への欲求とは
一 貫 性 ・・・始 め か ら 終 わ り ま で 同 じ 1 つ の 方 針・考 え に よ っ て い る こ と 。
私 た ち に は 、自 分 の 言 葉 、信 念 、行 動 を 一 貫 し た い と い う 欲 求 が あ り
ます。また、他の人からそう見られたいと考えます。
一貫性を保ちたいというのは、人間の行動を動機付ける大きな力の
1つです。
競馬場での話です。
馬 券 を 買 っ た 人 は 、買 う 前 よ り も 自 分 が か け た 馬 が 勝 つ 可 能 性 を 強 く
信 じ る よ う に な る と い う の で す 。当 然 の こ と で す が 、現 実 に は そ の 馬 が
勝つ可能性は、馬券の購入前後で全く変わっていません。
し か し 、一 度 馬 券 を 買 っ て し ま う と 、 買 っ た 人 の 心 の 中 で は 、 明 ら か
に買った馬が勝つ見込みが高まっているのです。
つ ま り 、馬 券 を 買 う と い う 行 為 が 、自 分 の か け た 馬 が 勝 つ と い う 思 い
を強めているのです。つまりこういうことです。
27
『Aという馬が勝つと予想した』 ⇒ 『そして馬券を買った』 ⇒
『やはりAという馬が勝つ』
こ の 一 貫 し た 流 れ を 保 ち た い と い う 欲 求 が 、馬 券 を 購 入 後 、A と い う
馬が勝つという思いを無意識に強めているのです。
■
なぜ一貫性を保ちたいと感じるのだろうか?
一 貫 性 を 保 ち た い と い う 欲 求 は 、私 た ち の 行 動 に 強 く 影 響 を 及 ぼ し て
きます。
では、なぜ私たちにとって、一貫性を保つことが大切なのでしょう
か?それは、つぎの2つの理由によります。
<理由1>
一貫性を保つことにより、社会のから高い評価を得ることができる。
一貫していない性格は通常好ましくないと考えられています。
例えば…
・すぐに心変わりをする女性は、軽はずみだとみなされます。
・ 他 人 の 意 見 に 左 右 さ れ て 、自 分 の 意 見 を す ぐ に 変 え て し ま う 男 性 は
優柔不断で意思が弱いとみなされます。
28
考 え て い る こ と や 言 っ て い る こ と と 、実 際 の 行 動 と が 一 致 し な い 人 は 、
裏 表 の あ る 人 だ と か 、頭 が お か し い の で は な い か と 、敬 遠 さ れ て し ま い
ます。
反 対 に 、一 貫 性 の あ る 行 動 を と る 人 は 、人 間 的 に も 、知 的 に も す ぐ れ て
いると評価されます。
<理由2>
一貫性のある行動は、日常生活において多くのメリットがある。
あ る 出 来 事 が 起 こ っ た と き 、常 に 正 確 に 対 応 し よ う と す れ ば 、情 報 の
波 に も ま な が ら も 、真 剣 に 考 え な け れ ば な ら ず 、と て も 大 き な 精 神 的 労
力を必要とします。
し か し 、過 去 の 似 た よ う な 状 況 を 思 い 出 し 、そ れ と 同 じ よ う に 対 応 す
れば、何も考える必要がなくなります。
つ ま り 、『 以 前 も こ う や っ て 切 り 抜 け た ぞ 。 だ か ら 今 回 も そ う し よ う 。』
と 、過 去 の 行 動 に 現 在 の 行 動 を 一 貫 さ せ る だ け で 、考 え る と い う 労 働 か
ら解放され、とても楽に対応することができます。
29
だいたいは過去の体験通り対処すればうまくいくことが多いので、
この方法はとても効率的だといえます。
■
一貫性にしがみつくことの愚かさ
考えることは、とてもしんどいことです。
過 去 の 行 動 に 一 貫 し て 行 動 を と る こ と で 、こ の し ん ど い 思 考 と い う 労
働から逃げることができます。これが一貫性を保つ大きな魅力です。
そ し て 、こ の『 一 貫 性 を 保 つ 』こ と に は 、も う 1 つ の 魅 力 的 な 果 実 が
あ り ま す 。先 ほ ど 述 べ た 、< 理 由 2 > を も う 少 し 深 く 考 え て み ま し ょ う 。
あ る 出 来 事 に つ い て 、ま た 、現 状 に つ い て よ く 考 え て み ま す 。そ う す
る と 、時 と し て 自 分 の 知 り た く な い 嫌 な 結 論 に た ど り 着 く こ と が あ り ま
す 。自 分 が 置 か れ て い る 状 況 や 、自 分 が と っ て い る 行 動 が ま ち が っ て い
るということに気付かされるときがあるということです。
こ れ は と て も つ ら い こ と で す 。と て も 傷 つ き ま す 。な ぜ な ら 、 自 分 自
身の思考で、自分自身を傷つけてしまうからです。
30
そうです、私たちにとって考えることはしんどいことなのです。
で す が 、そ れ 以 上 に 、考 え る こ と に よ っ て 厳 し い 結 果 を 知 る こ と の 方 が
はるかに苦痛なのです。
反 射 的 に 過 去 の 経 験 に 一 貫 し て 行 動 を と る と い う こ と は 、よ く 考 え な
い で 行 動 す る と い う 方 法 で す 。一 見 お ろ か な こ の 方 法 で す が 、そ の 結 果 、
『 嫌 な こ と を 知 ら な い で す ま せ ら れ る 』と い う と て も 大 き な メ リ ッ ト 受
けることができます。
言 い 換 え る と 、反 射 的 に 過 去 の 経 験 に 一 貫 し て 行 動 す る こ と で 、思 考
によって傷つくことから身を守っているのです。
このような例はいたるところにあります。
例えば、
・バブル時代のやり方からまだ抜け出せない団塊世代
・明らかに間違った活動をしている宗教団体への信仰を
止められない信者
など
31
彼 ら は 、自 分 の 置 か れ た 状 況 を よ く 考 え る と い う こ と を 避 け て 、現 在
もまだ過去の行動に一貫して行動しています。
第 三 者 的 に 見 る と 、 お か し な 話 で す 。 し か し 、『 現 在 や 未 来 が 、 過 去
の 思 考 ・ 行 動 と 一 貫 し て い な い 』、 と 感 じ る こ と は 、 彼 ら に と っ て 、
とても大きな苦痛なのです。
そ う 考 え る と 彼 ら が 、な ぜ 愚 か な ま で に 一 貫 性 に し が み つ く の か 納 得
のいく話です。
有名なイギリスの画家ジョシュア・レイノルズ卿はこう言っています。
『考えるという本当の労働を避けるために、
人はどんな手段にも訴える』
32
■
一貫性への欲求を引き起こすスイッチ
こ れ ま で み て き た よ う に 、一 貫 性 を 保 つ た め に 私 た ち は 、反 射 的 に 行
動 し て し ま い ま す 。そ う す る と 、こ の よ う な 一 貫 性 へ の 欲 求 を た く み に
利 用 し て 、私 た ち か ら う ま く 『 イ エ ス 』 を 導 き だ そ う と す る 人 た ち が い
るということも想像に難くないでしょう。
さて、一貫性への欲求という力は、どうやって生じるのでしょうか。
その答えは、コミットメントです。
コ ミ ッ ト メ ン ト と は 、『 自 分 の 立 場 を 公 言 す る 、 明 確 に す る 』 と い う
こ と で す 。人 は 、 あ る こ と に 対 し て コ ミ ッ ト メ ン ト す る と 、 さ ら に そ の
立場を固めるためにコミットメントに一貫した行動をしようとする
傾向が、自然に生じてきます。
コミットメントする
⇒
それに一貫した行動をとるようになる
この事実を知っているアフェリエイターやセールスマンは、
自分の都合のよい方向へ私たちをコミットメントさせようとします。
彼 ら は 、ど の よ う に 私 た ち に コ ミ ッ ト メ ン ト さ せ よ う と す る の で し ょ う
か?
33
具体的に例をあげてみまあしょう。
<例1>
とにかく仮契約セールス法
こ の 方 法 は 、と に か く 仮 契 約 書 に サ イ ン を し て も ら う と い う 方 法 で す 。
仮 契 約 書 に サ イ ン す る と い う こ と は 、自 分 の 立 場 を 明 確 に す る( コ ミ ッ
トメントする)ということです。
仮契約書サイン ⇒ 本契約
というのが一貫した流れになりますの
で 、仮 契 約 書 に サ イ ン し た 人 は 、一 貫 性 へ の 欲 求 が 無 意 識 に 生 じ て き ま
す 。 そ の 結 果 、“ 本 契 約 に サ イ ン す る ” と い う 行 動 へ の 圧 力 が か か り 、
動かされやすくなります。
強引なセールス法ですが、今でもよく使われている方法です。
セ ー ル ス マ ン は 、サ イ ン さ せ る こ と に よ り 、一 貫 性 へ の ス イ ッ チ が は
いることを知っているのです。
< 例 2 >『 お 知 ら せ を 送 ら せ て い た だ い て も い い で す か ? 』セ ー ル ス 法
こ ち ら は 、例 1 よ り も も っ と 巧 妙 な 手 口 で す が 、同 じ く ら い に 効 果 が
あります。インターネットでもこの方法がよく用いられています。
34
い き な り 契 約 を 要 求 す る の で は な く 、『 小 さ な イ エ ス を も ら う 』 と い う
方法です。
具 体 的 に は 、『 お 得 な お 知 ら せ を 送 ら せ て い た だ い て も よ ろ し い で し
ょうか?』というものです。
無料のオファーに何気なくサインしたことはあるのではないでしょう
か?これも小さいですが、コミットメント(立場を明らかにする)の
1つです。
お知らせ ⇒ 商品の検討 ⇒ 無料お試し ⇒ 購入
こ れ が 一 貫 し た 流 れ で す の で 、『 小 さ な イ エ ス 』 を す る だ け で 、
このような一貫した行動を無意識でとりやすくなってしまいます。
<例3> 『アンケートにご協力ください』セールス法
例2よりもさらに巧妙な方法です。
文字通り景品などをエサにアンケートに記入してもらうというもの
で す 。ア ン ケ ー ト 記 入 は 、商 品 購 入 と は 、一 見 何 の 関 連 も 内 容 に 見 え ま
す。
35
し か し 、相 手 の 小 さ な 要 求 に あ な た は『 イ エ ス 』を コ ミ ッ ト メ ン ト し
た の で す 。そ の 結 果 、今 後 も 相 手 の 要 求 に 耳 を 貸 す 傾 向 が 大 き く な り ま
す 。例 を あ げ れ ば き り が あ り ま せ ん が 、こ の よ う に 小 さ な 注 文 か ら 初 め
て、そこから商品全体へと拡大していくための道を開いていくのです。
小 さ な 要 求 に 対 し て『 イ エ ス 』と コ ミ ッ ト メ ン ト す る こ と で 、自 己 の
イ メ ー ジ が 少 し 変 わ り ま す 。 つ ま り 、『 相 手 の 要 求 を 受 け 入 れ た と い う
自 分 』が 新 し く 生 ま れ る と い う こ と で す 。そ の 結 果 、こ の 新 し い 自 己 の
イ メ ー ジ を 保 ち た い と い う 一 貫 性 へ の 欲 求 が 生 じ 、し だ い に 大 き な 要 求
へもコミットメントしやすくなっていくのです。
そ し て 、そ れ ば か り で は な く 、最 初 に『 イ エ ス 』を 示 し た 小 さ な 要 求
( ア ン ケ ー ト や 無 料 体 験 )と は ほ と ん ど 関 係 な い 、他 の 様 々 な 種 類 の 大
き な 要 求 ま で 受 け 入 れ や す く な っ て い く の で す 。小 さ な コ ミ ッ ト メ ン ト
の裏に隠されたこの影響力。これこそが恐るべきものなのです。
■
コミットメントが行動に影響を及ぼすための 4 つの条件
小さなコミットメントにより、新しい自己イメージが誕生します。
そ し て 、新 し い 自 己 イ メ ー ジ に 一 貫 し た あ ら ゆ る 範 囲 の 要 求 を 受 け 入 れ
るようになっていきます。
36
し か し 、す べ て の コ ミ ッ ト メ ン ト が 自 己 の イ メ ー ジ に 影 響 を 及 ぼ す と
い う わ け で は あ り ま せ ん 。効 果 的 に 影 響 を 及 ぼ す た め に は 次 の 4 つ の 条
件がそろっていることが必要です。
∼コミットメントが自己のイメージに効果的に影響を
及ぼすための4つの条件∼
条件1
行動させる
条件2
その行動を周囲に知らせる
条件3
努力させる
条件4
外部からの圧力を受けずに、自分で行動を選択してもらう
では 1 つずつ見ていきましょう。
<条件1>
行動させる
コ ミ ッ ト メ ン ト は 口 約 束 で は 効 果 が 薄 い で す 。実 際 に 何 ら か の 行 動 を
さ せ な け れ ば な り ま せ ん 。 具 体 的 に は 、『 文 字 に 書 か せ る 』 と い う こ と
があげられます。
こ れ が 効 果 的 な の は 、行 動( 文 字 に 書 か せ る )す れ ば 、そ れ が コ ミ ッ
ト メ ン ト し た と い う 物 理 的 証 拠 と 残 る か ら で す 。証 拠 が 残 っ て い る も の
を 、自 分 は そ ん な こ と を し て い な い 、と 思 い 込 む こ と は 非 常 に 難 し い で
しょう。
37
たとえば“反省文”がわかりやすい例ではないでしょうか。
学 校 の 先 生 が 、子 ど も に 強 制 的 に 書 か せ る 反 省 文 。ち っ と も 反 省 し て
い な い 子 ど も で も 反 省 文 を 書 く と い う こ と で 、無 意 識 の 中 に 反 省 し て い
る 自 己 の イ メ ー ジ が で き ま す 。そ の 結 果 、新 し く で き た 自 己 の イ メ ー ジ
に一貫した行動を、自然ととりやすくなってしまうのです。
ア フ ェ リ エ イ ト を は じ め と す る 物 販 で は 、“ お 客 様 の 感 想 ” を 集 め る
と い う も の が あ り ま す 。お 客 様 の 感 想 を 集 め る こ と に 成 功 す る と 、感 想
を 提 供 し て く れ た お 客 様 は 、よ り 一 層 ア フ ェ リ エ イ タ ー や お 店 の フ ァ ン
になってくれるということが起きます。
どういうことかと言いますと、
推薦文を書くことで『ある商品やお店を推薦している自分』という
自 己 の イ メ ー ジ が 生 ま れ 、そ れ に 一 貫 し た 行 動 を と り や す く な る の で す 。
<条件2>
その行動を周囲に知らせる
そ し て 、こ の よ う に 意 見 を 書 き 記 す こ と に は も う 1 つ 利 点 が あ り ま す 。
それは、それを他人に見せることができるという点です。
見 せ ら れ た 周 囲 の 人 は 、書 い た 人 に 対 し て 、書 き 記 さ れ た 通 り の イ メ
38
ー ジ を そ の 人 に 抱 き ま す 。他 人 に 見 え る よ う な 形 で 、自 分 の 立 場 を 明 確
に し て し ま う と 、周 囲 の 人 か ら 一 貫 し た 人 間 に 見 ら れ た い と い う 欲 求 が
生 じ て き ま す の で 、そ の 結 果 、周 囲 の 人 が 自 分 に 抱 く イ メ ー ジ に 行 動 を
あわせなければという圧力がかかります。
お ま け に 、こ れ は 、他 人 を 説 得 す る と い う こ と に も 非 常 に 有 効 に 使 え
ま す 。 な ぜ な ら 、『 書 か れ た 意 見 は 、 書 い た 人 の 真 の 態 度 を 示 し て い る 』
と、人は自然に考える傾向があるからです。
行 動 を 含 む コ ミ ッ ト メ ン ト を し て し ま う と 、二 重 の 圧 力 が か か る こ と
に な り ま す 。内 か ら は『 新 し く 生 ま れ た 自 己 の イ メ ー ジ に 行 動 を あ わ せ
な け れ ば 』と い う 圧 力 。そ し て 、外 部 か ら は『 周 囲 が 自 分 に 対 し て 抱 い
て い る イ メ ー ジ に 、自 己 の イ メ ー ジ を あ わ せ て な け れ ば 』と い う 圧 力 が
かかるのです。
<条件3>
努力させる
書き記すという形のコミットメントが効果的な理由はさらにもう1
つあります。それは、口約束よりも努力を必要とするということです。
39
コ ミ ッ ト メ ン ト に 労 力 が 必 要 で あ れ ば あ る ほ ど 、コ ミ ッ ト メ ン ト し た
人 の 行 動 に 強 く 影 響 を 与 え る の で す 。苦 労 し て 手 に 入 れ た も の は 、そ れ
が必要でなくなっても手放すことができないという経験を誰でも持っ
ていると思います。つまりそういうことです。
ここで、第1章の内容を思い出してください。
第 1 章 で 、『 高 価 値 = 高 値 』 と 人 は 無 意 識 に 判 断 す る 傾 向 が あ る と い
うお話をしました。覚えていますか?
高 い 値 段 の も の を 購 入 す る と き は 、す ご い 労 力 が い り ま す 。そ の 結 果
得 た も の は 、そ れ が 自 分 の 望 む も の で な か っ た と し て も 、購 入 を 決 定 し
たということに思考を一貫させるために、正当化したくなるのです。
高 い 買 い 物 を し て 、そ れ が 失 敗 だ っ た と 考 え る の は と て も つ ら い こ と で
すからね。
<条件4>
外 部 か ら の 圧 力 を 受 け ず に 、自 分 で 行 動 を 選 択 し て も ら う
社 会 心 理 学 で は 、人 は 外 部 か ら 強 い 圧 力 を 受 け ず に あ る 行 動 を 選 択 す
る と 、そ の 行 動 の 責 任 は 自 分 に あ る こ と を 認 め る よ う に な る 、と 明 言 し
ています。
40
実 は 、価 値 あ る 報 酬 と い う の も 外 部 か ら の 圧 力 の 1 つ と さ れ て い ま す 。
仮 に あ な た が 、あ る 人 に 高 い 報 酬 を 提 示 し 、行 動 を 要 求 し た と し ま し ょ
う 。そ の 人 は 、 行 動 す る か も し れ ま せ ん が 、 そ の 行 動 が 失 敗 に 終 っ た 時
に 、そ の 人 に 責 任 を 感 じ さ せ る こ と は で き ま せ ん 。そ の 責 任 は ど こ に 向
けられるのか?そう、高い報酬を提示したあなたに向けられるのです。
お ど
あ お
お ど
ま た 、強 い 脅 し や 煽 り に つ い て も 同 じ こ と が 言 え ま す 。強 く 脅 し た り
あ お
煽 っ た り す れ ば 、そ の 時 は『 イ エ ス 』を 導 け る か も し れ ま せ ん が 、長 期
的 に コ ミ ッ ト メ ン ト を 生 み 出 す こ と は で き ま せ ん 。近 頃 の 個 人 ネ ッ ト ビ
ジネス事情では、このような悪い状況を見ることがありますね。
相 手 に コ ミ ッ ト メ ン ト を 求 め る 時 、圧 力 を 感 じ さ せ な い よ う な 理 由 を
提 示 す る の は 、非 常 に 難 し い こ と で す 。そ れ は 、小 手 先 の テ ク ニ ッ ク で
な ん と か な る よ う な も の で は あ り ま せ ん 。し か し 、し っ か り と し た 信 頼
関 係 を 結 ぶ な ど 、努 力 す れ ば 、長 期 間 に わ た る コ ミ ッ ト メ ン ト を 生 み 出
す こ と が で き る は ず で す 。個 人 で ネ ッ ト ビ ジ ネ ス に 取 り 組 ん で い く た め
には、このような努力をすることが絶対に必要だと思います。
イ ギ リ ス の 作 家 サ ミ ュ エ ル ・ バ ト ラ ー は 、次 の よ う な 言 葉 を 残 し て い
ま す 。『 自 分 の 意 志 に 反 し て 賛 同 し た 者 は 、も と の 意 見 を 持 ち つ づ け る 』
41
■
まとめ
∼
一貫性への欲求が利用される3つの理由
∼
多 く の ア フ ェ リ エ イ タ ー や セ ー ル ス マ ン は 、心 の 中 の 変 化 を 引 き 起 こ
す
コミットメントをとるという方法を好んで用います。
最後に、この理由を次の3つにまとめておきます。
<第1の理由>
コミットメントすることで心の中に変化が引き起こされ、
その変化は最初に起こった状況だけに影響するのではなく、
関連するあらゆる状況にも当てはまっていくため。
<第2の理由>
う ま く 条 件 を 満 た せ ば 、心 の 中 の 変 化 に と も な う 効 果 が 長 続 き す る か ら 。
<第3の理由>
コ ミ ッ ト メ ン ト に よ り 一 度 生 じ た 心 の 変 化 を 、さ ら に 強 化 し よ う と し て
大 きな労力を払う必要がないから。コミットメントをした人が、一貫性への欲求
から、すすんで心の変化を強化しようとしてくれるからです。
42
第4章
■
やさしい泥棒
好意を武器にするセールスマン
人 は 自 分 が 好 意 を 抱 い て い る 相 手 に 対 し て は 、イ エ ス を 言 い や す い 傾
向 が あ り ま す 。抜 群 に 売 る セ ー ル ス マ ン は 、こ れ を よ く 理 解 し て い ま す 。
最 近 ネ ッ ト ビ ジ ネ ス で も よ う や く『 ブ ラ ン デ ィ ン グ が 大 切 だ 』と 聞 く
よ う に な り ま し た 。そ れ は 、好 意 を 抱 い て も ら う こ と に よ っ て 、相 手 か
らイエスを導きやすくなるからです。
そ う で す 。好 意 と い う の は 相 手 か ら イ エ ス を 導 く 道 具 と し て 用 い ら れ
る こ と が よ く あ る の で す 。で は 好 意 と い う 名 の 優 し い 泥 棒 に つ い て 見 て
いくことにしましょう。
■
ハロー効果
ある人が、自分にとって望ましい特徴を持っていることは、その人への見方に
大きな影響を与えます。こ れ を ハ ロ ー 効 果 と 言 い ま す 。
カ ン タ ン に 説 明 し ま す と 、見 た 目 の 良 い 人 は 、才 能 、親 切 心 、誠 実 さ 、
知 性 と い っ た 一 般 的 に 望 ま し い 特 徴 を も 持 っ て い る と 私 た ち は 、無 意 識
に考えてしまうということです。
43
魅 力 的 な 外 見 の 有 利 さ は 、私 た ち が 考 え て い る 以 上 の 効 果 が あ り ま す 。
も し あ な た が 外 見 に 少 し で も 自 信 が あ る の な ら 、ネ ッ ト 上 で 写 真 を 公 開
するのはとても有効な手段です。
『いやー、顔には自信がないなぁ・・・』という場合でも、服装や、
ポ ー ズ 、写 真 を 取 る 角 度 な ど に 気 を 配 っ て 写 真 を 作 れ ば い い と 思 い ま す 。
『いやいや、それもイヤ!』という場合は、アバターなど使って、
望ましい特徴を作り上げるというのも一つの手段です。
『しょせんアバターでしょ』っていうのは理性的な判断。
そ れ を 見 た 人 は そ れ が 自 分 の 好 み に 合 っ て い れ ば 、無 意 識 で 好 意 を 抱 い
てしまうのです。バカにできない戦略です。
■
類似性と好意
見た目以外で相手に好意を抱かせる方法もあります。それは類似性です。
つ ま り 、『 私 は あ な た に 似 て い ま す よ 』 っ て 思 わ せ る こ と で す 。
44
人は、自分に似た人を好む傾向があります。
す べ て が 似 て い る 必 要 は あ り ま せ ん 。ほ ん の わ ず か な 類 似 点 で も 効 果
はあります。例えば、意見、身体的特徴、経歴、生活習慣、趣味、ファ
ッションなどのいずれかが類似しているだけでいいのです。
具体的な例として、車のセールスマンのこんな裏話があります。
車 の セ ー ル ス マ ン は 、お 客 さ ん の 下 取 り の 車 を 調 べ て い る 間 に 自 分 と
お客さんのとの共通点を探します。
例 え ば 、 ト ラ ン ク の 中 に キ ャ ン プ 用 品 が 入 っ て い れ ば 、『 自 分 も ア ウ
ト ド ア が 好 き な ん で す 』と 話 す で し ょ う 。 ま た 、 ゴ ル フ ボ ー ル が 転 が っ
ていたら、ゴルフに興味のあるそぶりを見せるでしょう。
類 似 点 が 見 つ か れ ば み つ か る ほ ど 、無 意 識 で お 客 さ ん は セ ー ル ス マ ン
に好意を抱くようになり、その結果、成約率が高まります。
ネ ッ ト ビ ジ ネ ス に お い て も 、セ ー ル ス レ タ ー で こ ん な 書 き 方 を 見 た こ
とがあるでしょう。
『私も以前は●●だったんです・・』っていうコピー。
45
こ の よ う な 表 現 を と り 、読 み 手 に 対 し て 、私 は あ な た と よ く 似 て い ま
すよと暗に言っているのです。
他 に も 方 法 は あ り ま す 。例 え ば 売 れ っ 子 ア フ ィ リ エ イ タ ー は 、必 ず プ
ロフィールも載せています。なぜだかわかりますか?
これを見た読み手が少しでも売り手との類似点を見つけると成約率
が 上 が る と い う こ と を 、売 れ っ 子 ア フ ィ リ エ イ タ ー は 知 っ て い る の で す 。
取 る に 足 ら な い と 思 う か も し れ ま せ ん が 、間 違 い な く 買 い 手 の 無 意 識
に影響力を及ぼしています。
あなたも、気をつけてくださいね。
『 私 と よ く 似 て い ま す ね ー 』な ん て 言 い な が ら 近 づ い て く る セ ー ル ス
マン(セールスレター)には。
■
連合の原理
∼望ましくない連合∼
さ て 突 然 で す が 、次 に 挙 げ る 人 た ち に 対 し て 、あ な た は ど ん な 印 象 を
持っていますか?
46
歯医者さん・警察官・進路指導の先生・税務署の職員
なんとなく嫌なイメージを持っている人が多いのではないでしょう
か ? 私 は 道 路 で 警 察 を 見 る た び に 、何 に も し て い な い の に ド キ ッ と し て
しまいます(笑)
こ れ ら の 人 に 共 通 す る こ と は 、悪 い ニ ュ ー ス を も た ら す 可 能 性 が あ る
人たちだということです。
人間は悪いニュースをもたらす人を嫌う傾向があります。
でもよく考えてみてください。
税 務 署 の 職 員 は 、仕 事 上 『 税 金 払 っ て ー 』 っ て 言 っ て い る だ け な ん で
す 。そ れ な の に あ ま り 好 意 は 持 て な い 。人 間 性 と 仕 事 は ま っ た く 別 だ っ
てわかっていても、感情的にはいい感じがしない。
こ れ は 悪 い 出 来 事 や ニ ュ ー ス と そ れ を 伝 え る 人 を 、無 意 識 に 結 び つ け
てしまっているからなのです。これを【連合の原理】といいます。
ここでは望ましくない連合が出来上がっているわけです。
47
人間は理性で行動しているのはありません。感情で行動しているのです。
で は 、こ の【 連 合 の 原 理 】が 、ど の よ う に セ ー ル ス に 利 用 さ れ て い る
の か ? 恐 ろ し い 話 で す が 、大 切 な こ と で す の で し っ か り 聴 い て く だ さ い 。
■
連合の原理
∼望ましい連合∼
あ な た は バ イ ク の 広 告 で 、美 女 の モ デ ル が バ イ ク の ま た が っ て 何 を し
ているんだろうと不思議に思ったことはありませんか?
広 告 主 が 期 待 し て い る こ と は 、モ デ ル に 対 し て 私 た ち( 特 に 男 性 )が
もつ、
『 キ レ イ だ な ぁ 』と か『 い い 感 じ や な ぁ 』と い う 感 情 を 無 意 識 に 、
そのバイクに付加させることです。
アメリカでこんな実験が行なわれました。
次の2種類の新車の広告を男性見てもらいます。
①
新車の写真と一緒に若く美しい女性モデルが写っている広告
②
新車のみの写真がのっている広告
48
モ デ ル 付 の 広 告 を 見 た 男 性 は 、モ デ ル な し の 同 じ 広 告 を 見 た 男 性 に く
ら べ て 、そ の 新 車 が 高 性 能 で 、魅 力 的 で 、デ ザ イ ン が 良 い と 高 い 評 価 を
しました。
後 で 聞 い て み た と こ ろ 、恐 ろ し い こ と に 、美 し い モ デ ル の 存 在 が 自 分
の判断に影響を及ぼしたとは誰も考えていませんでした。
つ ま り 、モ デ ル が 自 分 の 判 断 に 影 響 力 を 及 ぼ し て い る と い う 自 覚 が な
いということです。
こうした研究は日々行なわれています。
注 目 し な け れ ば な ら な い の は 、こ の 連 合 の 原 理 が 無 意 識 の う ち に 私 た
ちを行動させているということです。
他にも例を挙げてみましょう。
消費者金融やクレジットカードの広告になぜキレイで清楚な女性が
使われているのでしょう。それはキレイで清楚な女性への良い印象を、
クレジットカードへの印象と混同させてしまいたいからです。
49
こういった商品と別のものを連合させるという方法は、非常に効果があがります。
だから、広告主やコピーライターは、いつも必死になって自分の商品と最新の
文化的流行とを結びつけようとします。
もうひとつ広告主やコピーライターがお金と労力をかけるところは、
商 品 と 名 声 を 結 び つ け る と い う や り 方 で す 。と に か く 地 位 や 名 声 の あ る
人に商品を使ってもらう。もしくは紹介してもらう。
地位のある人がその商品を使ってシーンをみた私たちは、
商 品 に も 地 位 が あ る と 錯 覚 し て し ま い ま す 。こ こ に は 論 理 な ん て も の は
ありません。商品とただ好ましい結びつきでさえあればいいわけです。
人気のある芸能人にCM1本3000万なんていう出演料を払って
も、なお利益があがるということが何よりの証明です。
最近世界的企業になったソフトバンクの携帯電話の広告の仕方が
一番参考になるでしょう。徹底しています。
広 告 モ デ ル に 、ジ ェ ニ フ ァ ー ロ ペ ス や ブ ラ ピ を 継 続 的 に 起 用 し て い ま
す。そしていたるところに巨大広告を掲げています。
50
理屈なんてどうでもいいわけです。
ブラピがカッコよくソフトバンクの携帯を使っている広告をみると、
商 品 の 性 能 う ん ぬ ん を 抜 き に し て 、無 意 識 に い い 印 象 を 受 け て し ま い ま
す 。無 意 識 に す り こ ま れ た い い 印 象 が 、い ず れ 行 動 に つ な が る こ と を 世
界的企業はよく知っているわけです。
さて、
【連合の原理】をあなたのビジネスライフに応用するとすれば、
どのようにできるでしょうか?
51
第5章
■
権威への服従
権威への服従がもつ魅力
ある出来事Aに対して、Bという行動をとった。
その結果、利益を得た。
この経験がくり返されると人はしだいに
『出来事A』
→
『行動B』
と無意識に反応するようになってきます。
こ れ は 悪 い こ と で は あ り ま せ ん 。な ぜ な ら 、同 じ よ う な 出 来 事 に 対 し
て 、対 処 方 法 を 毎 回 考 え て 行 動 し て い た の で は 、毎 日 起 こ る 様 々 な 出 来
事に対応していくことはできないからです。
例 え ば 、風 邪 に な っ て 病 院 に 行 く 場 合 を 考 え て み ま し ょ う 。医 者 か ら
『この薬を毎日食後に3回飲みなさい』と言われたとします。
あなたは疑うことなく、それを受け入れるでしょう。
それは医者の言うことに従うことがあなたにとって利益があること
だと知っているからです。
52
『 こ の 薬 大 丈 夫 ? 』 と か 、『 そ の 対 処 方 法 間 違 っ て な い ? 』 と か 疑 う
人 は い な い で す 。疑 っ て 、 自 分 で 調 べ な お し た り 、 実 験 を し た り し て い
る間に病気はますます悪化してしまいますよね。
例えばこんな場合もあります。
警 察 官 が 、あ な た の 運 転 す る 車 の 前 に 立 ち は だ か っ て 、
『すみません。
ち ょ っ と 降 り て い た だ け ま す か ? 』と 言 う と 、あ な た は 素 直 に 従 う で し
ょう。警察官に逆らうことは損することだと知っているからです。
こ の よ う に 、私 た ち は 、医 者 や 警 察 官 を は じ め と す る 権 威 に 対 し て 盲
目的に服従してしまう傾向があります。
こ れ は あ な が ち 悪 い こ と で は あ り ま せ ん 。む し ろ 必 要 な 反 応 と 言 え る
で し ょ う 。な ぜ な ら 日 常 生 活 に お い て 、権 威 者 の 命 令 に 対 し て 服 従 す る
ことは、実質的な利益をもたらしてくれるからです。
権 威 者 と 認 め ら れ た 人 か ら の 情 報 は 、あ る 状 況 で ど の よ う に 行 動 す る
べきかを決定するための貴重な情報であり、近道です。
し か し 、私 た ち が 権 威 に 対 し て 無 意 識 に 反 応 し て し ま う 事 実 を 巧 み に
悪用されているとしたらどうしますか?
53
■
内容よりも見た目が重要
私 た ち が 、よ く 考 え ず に 自 動 的 に 行 動 す る と き 、そ の こ と を 利 用 し て
稼いでやろうという人が必ずいます。
そ う で す 。権 威 も 使 い 方 次 第 で 、人 を 操 作 す る 道 具 に な り 得 る と い う
ことです。
し か し 、本 物 の 権 威 を 手 に 入 れ よ う と し て も 、そ れ は 並 大 抵 の 努 力 で
は 手 に 入 れ る こ と が で き ま せ ん 。誰 で も 医 者 や 弁 護 士 に な れ る わ け で は
ないですから。
ではどうするのか・・・
見せかけるのです。
いかにも権威をもっているかのように。
もう一度言います。
権 威 に 対 し て は 、人 は 盲 目 的 に 服 従 し て し ま い ま す 。そ う 行 動 す る こ
とが、一番利益のあることなので当然です。
54
し か し 、人 は 権 威 が あ る よ う に 見 え る も の に も 、同 じ よ う に 無 意 識 に
自動的に反応してしまうのです。
つまり実際には全然権威がない場合でも、
権 威 を し め す シ ン ボ ル を 見 せ ら れ る と 、私 た ち の 無 意 識 は 影 響 さ れ て し
ま う と い う こ と で す 。そ の 結 果 、深 く 考 え ず に 、ほ ぼ 自 動 的 に 行 動 し て
しまいます。
権威をしめすシンボルとは、
●肩書き
●服装
●アクセサリー
の3つを指します。
詐欺師はこれらの3つのシンボルを盛んに利用します。
詐 欺 と ま で は い か な く て も 、私 た ち の 周 り の 多 く の 場 面 で こ の 原 理 が
利 用 さ れ て い ま す 。あ な た も 意 識 は し て い な い か も し れ ま せ ん が 、利 用
したことがあるかもしれません。
55
ではビジネスの場ではどのように利用されているのかを、
これから一つ一つ見ていくことにしましょう。
■
肩書きがもつ影響力
権威とはその道の専門家と定義づけられています。
そして、肩書きとは、その専門家であるという証明です。
肩書きがもつ影響力をしめす私の身近な例をお話ししましょう。
私 の 友 人 で 、京 都 に あ る 日 本 で も 屈 指 の 有 名 大 学 院 を 修 了 し た 人 が い
ま す 。彼 は 子 ど も と 接 す る 仕 事 を し て い る の で す が 、彼 の 話 か ら 肩 書 き
のもつ影響力を知ることができます。
彼は無邪気な子どもたちに彼らの目線で接するので、子ども達には
とても人気があります。
そ ん な 彼 は 、 自 分 の 学 歴 を 話 す こ と を 嫌 が り ま す 。そ の 理 由 は 、 自 分
の 学 歴 を 話 す と 、そ の 後 の 子 ど も 達 の 彼 へ の 接 し 方 が 変 わ る か ら だ そ う
です。
56
そ れ ま で 無 邪 気 に 話 し て い た 子 ど も が 、彼 の 学 歴 を 知 る と 、ち ょ っ と
遠 慮 が ち に 、ち ょ っ と あ ら た ま っ た 言 葉 遣 い で 話 す よ う に な る と い う の
です。
『学歴と自分という人間はまったく関係ない』と彼は言います。
もっともです。
し か し 、 高 級 な 学 歴 と い う 肩 書 き が 、子 ど も 達 の 無 意 識 に 『 こ の 人 は
偉 い 人 な ん だ 。だ か ら 、あ ま り 失 礼 な 態 度 を と っ て は い け な い ぞ 。』的
な影響を与えてしまっているのは事実です。
さてさて、ビジネスの現場において肩書きは、【権威者からの推薦】
という形でよく利用されます。
・薬品の広告であれば、『●●医学博士も絶賛!』
・教育書の広告であれば、『●●教授のおすすめ!』
・自 己 啓 発 書 の コ ピ ー で あ れ ば 、『 あ の ビ ル ゲ イ ツ も 読 ん で い た ! 』
などなど。挙げればきりがありません。
57
この権威者の声は、私たちの無意識に絶大なる影響力を与えます。
権 威 者 の 推 薦 の 言 葉 が 、商 品 に つ く と 、商 品 そ の も の が 権 威 を も っ て
い る よ う に 私 た ち は 錯 覚 し て し ま い ま す 。そ し て 、私 た ち は 深 く 考 え ず 、
無意識的にその商品を受け入れてしまうのです。
さて、この権威者の声という作戦。
非常に効果が高いのですが、その道の権威から推薦をもらうのは、
なかなか難しいことです。
そんな時、どんな方法がとられているのか知っていますか?
これからのお話、あなたの身を守るためにも、
また、あなたのビジネスライフにも役に立つと思います。
■
引用を使え!
人 は【 権 威 者 か ら の 推 薦 】に は 無 意 識 的 に 動 い て し ま う と い う お 話 を
し ま し た 。し か し 、 権 威 者 も 立 場 が あ り ま す か ら 、 そ う そ う
推薦を書
く わ け に は い き ま せ ん 。ま し て や 、何 の 実 績 も な い 人 に 名 前 を 貸 す 理 由
はないです。
58
では、
【 権 威 者 か ら の 推 薦 】を も ら え な い 場 合 は 、ど う す れ ば い い の か ?
引用を利用するのです。
権 威 者 の 書 い た 著 書 か ら 、あ な た の 商 品 を 後 押 し し て く れ そ う な 部 分
を引用し、広告やセールスレターの中に入れるのです。
引用というのは、常識の範囲で使うのであればオーケーなわけです。
も ち ろ ん そ の 際 に は 、書 名 ・出 版 社・ 出 版 日 ・ 著 者 名 を き ち ん と 明 記 し
ておくのがルールです。
こ れ を す る だ け で 、あ た か も あ な た の 商 品 を 権 威 者 が 推 薦 し て く れ て
いるように見せることができます。
も し 、あ な た が 権 威 者 の 推 薦 が も ら え な い 場 合 は 、引 用 を 利 用 し ま し
ょ う 。そ し て 反 対 に 、引 用 が 要 所 で 用 い ら れ て い る 広 告 に は 気 を つ け な
ければなりません。そういう意図で用いられているのですから。
59
■
服装とアクセサリー
∼ビックマンの実験∼
私 た ち が 無 意 識 に 、そ し て 自 動 的 に 反 応 し て し ま う 引 き 金 な る 権 威 の
シンボルの2つめは、服装とアクセサリーです。
服装やアクセサリーは権威がまとうマントです。
これをまとうだけで、人をだますのには大いに役立ちます。
詐欺師が役所の制服をきて、『役所の方から来たのですが・・・』
なんていう話はよく耳にする話です。
こ こ に 社 会 心 理 学 者 レ オ ナ ー ド・ ビ ッ ク マ ン の お も し ろ い 実 験 が あ り
ます。そのうちに一つを紹介しましょう。
彼 の 実 験 は 、権 威 の マ ン ト を ま と っ た 人 物 か ら の 要 求 に 抵 抗 す る こ と
がいかに難しいかを、証明してくれています。
ま ず 通 行 人 を 呼 び 止 め て 、十 五 メ ー ト ル 先 に あ る パ ー キ ン グ メ ー タ を
指 差 し 、『 あ そ こ の メ ー タ の そ ば に 立 っ て い る 男 の 人 が 見 え ま す ね 。 彼
は 駐 車 時 間 を 超 過 し て し ま っ た の で す が 、あ い に く 小 銭 を 持 ち 合 わ せ て
いません。彼に十セント硬貨を貸してあげてください。』と頼みます。
60
こ の 後 、こ の 依 頼 者 は 角 を 曲 が っ て 歩 き 、通 行 人 が メ ー タ に つ く 頃 に
は、自分の姿が見えないようにしました。
依 頼 者 が 見 え な く な っ た 後 、ど れ だ け の 人 が こ の
命令に服従したの
でしょうか・・・
この実験結果は、依頼者の服装によって大きく違いがでました。
依頼者が普通の服を着ているとき・・・42%
依頼者が警備員の制服を着ているとき・・・92%
依 頼 者 が 警 備 員 の 制 服 を 着 て い る と き は 、ほ と ん ど の 通 行 人 が 命 令 に
服従したのです!
この実験にはさらに興味深い発見があります。
ビ ッ ク マ ン は 自 分 の 大 学 に も ど り で 、学 生 に こ の 実 験 の 結 果 を 推 測 さ
せてみたのです。
61
その推測結果は・・・
普 通 の 服 を 着 て い る と き ・ ・ ・ 5 0 % (実 際 4 2 % )
警 備 員 の 制 服 を 着 て い る と き ・ ・ ・ 6 3 % (実 際 9 2 % )
こ の 結 果 か ら 、学 生 達 は 依 頼 者 が 警 備 員 の 制 服 を 着 て い る と き の 結 果
をかなり過小評価していることがわかります。
これは何を意味するかと言うと、
私 た ち は 理 性 で 考 え て い る よ り も 、権 威 か ら 強 い
影響力を無意識に
受 け て い る と い う こ と で す 。そ の 結 果 、自 動 的 に 行 動 し て し ま っ て い る
のです。
■
ビックマンの実験から
ビ ッ ク マ ン の 実 験 か ら わ か る こ と は 、私 た ち は 権 威 か ら 影 響 力 を 受 け
る だ け で な く 、権 威 を 象 徴 す る シ ン ボ ル ― 例 え ば 制 服 な ど ― か ら も
影響を受けているということです。
62
ネ ッ ト ビ ジ ネ ス に 置 き 換 え て 考 え て み る と 、情 報 販 売 や ソ フ ト の 販 売
を し て い る 場 合 、ホ ー ム ペ ー ジ の 見 栄 え は 見 て い る 人 に 大 き く 影 響 を あ
たえるでしょう。
私たちは、『ホームページの見栄え』=『PCのプロ』
と無意識に見なしてしまうのです。
『 い や ぁ 、中 身 が 良 か っ た ら 見 栄 え は 関 係 な い ん と ち ゃ う ん ? 』と 思
わ れ る 人 も い る か も し れ ま せ ん 。し か し 、中 身 の 良 い も の は あ な た の 商
品 だ け で は あ り ま せ ん 。世 の 中 に あ ふ れ て い ま す 。そ の 中 で 、 あ な た の
商 品 を 選 ん で も ら う た め に は 、見 た 目 を お ろ そ か に す る こ と は 良 策 と 言
えないでしょう。
あなたの商品のパッケージやホームページの見栄えをライバル商品
ともう一度比較してみてはいかかでしょうか。
■
権威を装う人たちにだまされないために
権 威 を 装 う 人 た ち に だ ま さ れ な い よ う に す る の は 、と て も 難 し い で す 。
なぜなら、権威は、私たちの無意識に強く影響力を及ぼすからです。
63
では、権威を装う人たちからどのように身を守ればいいのか?
それには次の二つの質問を自分自身に投げかけることが有効です。
1.『その人は本当に権威者か?』
2.『その権威者だと思われる人はどれだけ誠実か?』
一 つ 目 の 質 問 に 答 え る た め に は 、私 た ち は 、彼 ら か ら 権 威 者 で あ る と
い う 証 拠 を 見 つ け な け れ ば な り ま せ ん 。そ の 分 、盲 目 的 に 信 じ る と い う
危険性が減ります。
二つ目の質問に答える前に、次のことを知っておいてください。
詐 欺 的 な 人 た ち の 手 口 は 、ま ず 私 た ち の 不 安 を 煽 る よ う な こ と を 言 っ
てくるということです。
な ぜ そ う 言 う こ と を し て く る の か と 言 う と 、そ う
することによって、
その後に提供する情報を少しでも信頼おけるものと思わせることがで
き る か ら で す 。そ し て 自 分 を 誠 実 に 見 せ か け る こ と が 容 易 に な る の で す 。
64
ネットビジネス界はまだ発展途上です。
情 報 販 売 の 広 告 な ん か を よ く 見 て く だ さ い 。い か に こ の 手 口 が 多 く 用
いられているか、詐欺的情報が多いことかわかるでしょう。
あなたも権威を装う人たちにだまされないように、
真実を見抜く目を養ってください。
65
第6章
■
希少性の原理
携帯電話に支配されていませんか?
人はわずかな機会を失いそうになったり、手に入りにくい物に出会ったり
すると、その物をより価値のあるものと考えるようになります。
これを希少性の原理と言います。
この希少性の原理は、あなたの日常生活のさまざまな場面で、影響を及ぼして
います。
例えば、電話です。
友人や恋人と楽しい会話をしてる時に突然かかってくる電話。誰からともわか
らない電話にサッと出てしまいませんか?
経験があるなら、あなたの行動はこの原理に支配されています。
冷静に考えてみてください。大切な人との楽しいひと時に勝る時間などそうそ
うないはずです。いや、何よりも大切かもしれません。
しかし、どこの誰ともわからない電話にでるためにその会話を中断してしまう。
それは、目の前にいない電話の主はある特徴を持っているからです。
66
その特徴とは、
『この電話を逃せばもう話をする機会がないかもしれない』というものです。
この特徴があなたの無意識をひきつけるのです。
たいていの要件は取るに足らないもので、目の前の大切な人との楽しい時間の
方がよほど魅力的で、重要であるということをほとんどの人が考えません。
( 思い出してみてください。この電話に出ていなければ大変なことになっていた、
なんていう電話最近ありましたか?)
電話のベルを聞き流すたびに、それだけ電話でやりとりできるチャンスを
失ってしまうように感じてしまう。そう感じた瞬間、他の誰との会話よりも電話
の相手と話したくなってしまうのです。
私たちは手に入りくい希少性の高いものを目の前に出されると、無意識に手に
入れたい!という感情が高まってきます。それが行動に移させます。
・・・お気付きかもしれませんね。
感情が高まり、無意識に行動してしまう時、これを利用する人間が必ずいるの
です。では、この希少性の原理がどのように利用、悪用されているのかを見てい
くこととしましょう。
67
■
数少ないものがベスト
電話のベルのように、『これを逃せばもう自分の手には入らないのではない
か?』という希少性の原理がはたらいている場面は私たちの周りに結構あります。
。
吉野家の牛丼。一昔前までは、一杯 200 円ちょっとで、
『もう牛丼はええわ』っ
ていう人もたくさんいたと思います。
ですが、牛肉輸入ストップ後、牛肉の供給に限りがあると知らされると、値上
げされたにもかかわらず、ならんでまでも食べに行こうとするわけです。
骨董品、コイン、切手、各種カードなどの収集家は希少性の原理をよく理解し
ています。
『数が少ないもの』=『価値のあるもの』
コインや切手の世界では、二度打ちされたコイン、二重印刷された切手にもの
すごい価値がついたりします。それ自体はまったく不完全で、使えないにもかか
わらず数が少ないという理由だけで動かされているのです。
68
ヤフーオークションなんか覗いてみてください。一枚10円もしないようなカ
ードが数千円、時には数万円で取引されているのですから。↓
http://list4.auctions.yahoo.co.jp/jp/25826category.html?alocale=0jp
■
数量限定の影響力
希少性の原理が、人の無意識に強く働きかけて行動させるなら、これを利用し
て一儲けしてやろうなんて考える人がでてくるわけです。
最もよく使われている作戦が『数量限定』ではないでしょうか。
本当は数量の限定なんてないのに、●個限定と表示しておくだけで売れるのです。
あー、その言葉に弱いんだよな・・・っていうあなたは、infotop のアフィリエ
イター登録してみてください。裏側が丸見えですから。うんざりしますよ。
こういう販売方法で売上を上げているのは家電業界ですね。
特売品のうろついていて興味を示している客がいたら、店員は近づいてこう言
うのです。
『この商品がご希望でしょうか?この値段で出ているのはおそらく内だけだと
思いますよ。とてもお買い得になっています。ですが、申し訳ございません。
最後の1つはつい10分ほど前に売れてしまい売切れてしまいました・・・』
69
これを聞いた客はガクーンと失望します。もう手に入らないと思うことで、
より一層その商品が魅力的に思えてくるのです。
そこで客は、
『もう在庫はないのか?他店には置いていないのか?』と店員に尋ねます。
店員は、
『もしかしたら、あるかもしれません。調べて参りますのでしばらくお待ちいた
だけますでしょうか?もし残っていれば、このお値段でお買い上げいただくとい
うことでよろしいでしょうか?』
おわかりですね。そうです、はじめから在庫は残っているのです。
そして、5分後に店員はその商品を持って戻ってきます。
在庫があるとわかった瞬間に、その商品の魅力は半減してしまうのですが、
いったんほしいといった手前断りにくくなり、結局レジまで連れて行かれること
になります。
70
■
期間限定の影響力
希少性の原理を利用したもう 1 つの策は、期間を限定する作戦です。
商売人はこの期間限定が好きです。最近では、何にでもこの期間限定シールが
貼り付けられています。
コンビニのお菓子売り場に行ってみてください。どれだけたくさんの期間限定
商品があることか。
でも、少し食べたくなりませんか?
味はたいしたことがないとわかっていても。
私も以前はこの作戦にまんまと引っかかってしまった苦い経験があります。
私が会社を立ち上げて間もない頃、オフィス機器リースのセールスマンがやっ
て来たのです。
彼のセールス方法はこうでした。
セールスマン 『今月は決算月になっていまして、今月残り3日間
だけはこの特別価格でコピーのリースをご提供できる
のですが、いかがでしょう』
私 『検討したいので、少し待っていただけないでしょうか』
71
セールスマン 『もちろん結構ですが、他の営業も動いていますので
3日以内に在庫がなくなる恐れがあるんです。
どうでしょう、仮申し込み書だけでもご記入
いただければ1台確保しておくことができるので、
ご記入いただけないでしょうか。
』
私 『じゃあ、とりあえず押さえておいてください。
』
こうやって書いてみて、そして読んでいるあなたは、バカらしいやり取りだと
思うかもしれません。私も今はそう思います。しかし実際現場で、後だったら入
手できないかもしれないことを匂わされ、取り引きにあれこれ考える時間を与え
られないと、冷静な判断ができなくなるものです。
■
個数限定・期間限定が有効な理由
個数限定や期間限定は、矛盾しない正当な理由を作ることができれば、
すごい威力を発揮します。
なぜなのでしょう?
72
これには2つの理由が存在しています。
1つは私たちの常識的な判断基準にあります。
私たちは、手に入りやすさでその物の価値を判断してきました。実際に手に入
りにくものは、価値の高いものがほとんどです。
『手に入りにくいもの』=『価値の高いもの』
その物が本当にいいものであるかを調べようとすると、膨大な時間と労力がか
かってしまいます。この判断基準を用いることで、ほとんどの場合、私たちはそ
の物の質の良さを早くかつ正確に判断するすることができるという恩恵を受ける
ことができます。
もう1つは、個数や期間が限定されることで、だんだん選択の余地がなくなっ
てきて、自由が奪われていくところにあります。
心理学者のジャック・ブレ―ムによると、私たちは自由な選択が制限されたり、
脅かされたりすると、その自由を回復しようとする欲求が強く生まれるそうです。
そして、制限された自由(=商品)を、制限される前よりもずっと欲するよう
になるのです。
73
■
希少性の原理が最も作用する条件
人はわずかな機会を失いそうになったり、手に入りにくい物に出合ったりする
と、その物を、より価値のあるものと考えるようになります。
これを希少性の原理といい、これまでお話してきました。
数量が限定されているもの、期間が限定されているものに、より価値があると
感じるのは、この原理が作用するからです。
この希少性の原理は、ある2つの条件下で最もよく作用します。
その2つの条件とは・・・
【第1条件】
はじめから希少なものより、新たに希少になったものの方が価値を感じる。
つまり、はじめから数量や期間に限定がかけられているものよりも、新たに制
限されるようになったものの方により価値を感じるということです。
【第2条件】
競争相手がいるときの方が、希少なものにより価値を感じる。
オークションがわかりやすい例ですね。入札数が多ければ多いほど、つまり競
争相手が多いほどそのものに価値を感じるということです。
74
このような2つの条件のもとで、希少性の原理が利用されている場合は要注意
です。無意識にかなり強力に作用してきます。
頭にカッと血がのぼって行動しないように、本当に必要なものなのかを自問し
てください。
75
終わりに
この教材を読み終えたあなたは、世の中を見る目が変わってしまったことでし
ょう。そして、あなたが書くコピーも格段にレベルアップしているはずです。な
ぜならコピーライティングのスキルが、読み手の心理にどういった効果をもたら
すかが理解できたからです。
人は理性で動くのはなく、無意識によって動かされています。
ですからこの教材に書かれている知識を悪用して、何も知らない人々から搾取し
ている人が世の中にはたくさんいます。
だからこれらの知識、テクニックは非道徳的なものだというわけではありませ
ん。あなたが本当に伝えたいこと、届けたい商品があるときこれらの知識やテク
ニックを使うことは、とても重要だと思います。
この教材が、あなたのビジネスをゆるぎないものにしてくれることを願ってい
ます。最後まで読んでいただきありがとうございました。
今中 優美
76