Page 1 Page 2 ニホンザルの採餌行動に関する実験的研究 伊正人

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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ニホンザル野生群のコドモの採食行動(III 共同利用研究
2.研究成果)
橋本, 千絵
霊長類研究所年報 (1990), 20: 72-73
1990-08-07
http://hdl.handle.net/2433/164104
Right
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Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
を再検討する必要性が示験された。
二ホンザルの採餌行動に関する実験的研究
伊藤正人 ・桑 田 繁 ・大山真理子
(
大阪市立大学 ・文)
a
r
n
o
v(
1
9
7
6
)の最適食事
採餌行動に関するCh
モデルでは,採餌者は単位時間あた りの総エネル
ギ一畳取得を最大に し,処理時間に対す るエネル
ギー量の比で各餌を評価すると佼走 している。本
研究はオペラン ト条件づけの手法によって餌選択
場面を実験室内で再現 し,処理時間とェネルギー
量 (
強化孟) との等価点を求めることに よって,
これ らの効果を検討することを 目的 とした。
被験体 :6- 8才の 3頭の雄のニホンザルを使
.
2
-l
l
.
5
k
gであ り,実験 中はそ
用 した。体重は9
5
-9
0
%に維持 した。
の8
6
5×55×70
装 置 :防音箱を兼ねた実験箱 (
c
m) を用いた。前面パネルの高 さ3
8
c
mに 2つのキ
6
c
mの間隔で付加 され,左キイには白色光 ・
イが2
青色光 .右には赤色光 ・線色光が点灯可能であっ
た。
手続き:2種の餌をサツマイモの小片 1個 (
約
2
7
0
m
g) と 3個で定義 し,捜索 ・選択 ・処理事態
か らなる採餌スケジュールを使用 した。捜索事態
では左キイに白色光が点灯 し,キイ押 し反応によ
り,平均 5秒で右キイに赤あるいは緑色光が点灯
した。選択事態では餌捕獲のためには 2回の右キ
イ押 し反応.餌を拒否 し捜索事態に戻るためには
2回の左キイ (
青色光)押 し反応あるいは3
0
秒間
の無反応が要求 された。描捜後の処理事態では所
定時間経過後の反応に対 して強化子が皇示 された。
ただ し処理事態に入った後でも左キイへの 2回の
反応で餌をキャンセル し,捜索事態に戻 ることが
0
秒に国定
できた。小さい餌の処理時間は常に1
0
-1
5
-3
0
-5
0
-7
0
し.大 きい餌の処理時間を1
9
0
秒 とランダムな順序で変化させた。
結果 ・考察 :3頭のデータをまとめると1
0・1
5
秒条件では大 きい餌だけ ,3
0・5
0・7
0
秒条件では
0
秒条件では小 さい餌だけが描接され
両方の餌,9
た。大 きい餌だけの捕獲か ら両方の餌の捕獲への
0
秒の
切 り替えの理論値は大 きい餌の処理時間が2
時であ り,小さい餌だけの描狂への切 り替えの値
0
秒であるが,本実験での実測値の中央値は前
は6
0
秒,後者は約7
8
秒であった。ニホンザル
者は約2
タイワンザル (
波浮 A群)の社会と行動について
の研究
川村俊戚
昨年につづ き, 4- 5月 , 9月 ,l
l
-1
2月 ,
1- 2月の 4次,実質で41日の調査活動を行い,
他に台湾の太平山で 2次 ,計 2ヶ月調査 した。 こ
5
回,3
6
5
3
分の接鯛があった。
の うち波浮A群 とは3
対象群以外の大島のタイ ワンザルについては ,22
回,約3
0
0
分の接解があった。
波浮 A群は春および初秋の調査時には,落石防
a
)には出現 しなかった。日
止用金網部分 (
約 4h
射を避けること,金網中央の下部にある水場を利
用する必要のないこと,植物被覆が薄 く食物の少
ないことなどが理由であろ う。逆に初冬および冬
には,時間はまちまちであるが連 日金網部を利用
し,依存度の高さを示 した。台湾の墾丁公園の群
れの遊動パターンと酷似 してお り,ニホンザルに
一般的なパターンと甚大な差がある。ホームレイ
ンジの狭 さ,日遊動距離の短かさと無論関係があ
ると考える。
群れ構成では,昨年度調査時に 2頭であったオ
あるいは 9)頭に増えた
トナオスが,一気に 8 (
が,昨年の 2頭は健在で,群れ外オスが多数加
わったと考える。もとソリタリーとして記録 され
た中の 2頭が群れに加わっていた。
オス間には普通 5m以上の間隔があ り.一方的
0
分以上の相互毛づ くろいも
な抗争 もおこるが ,3
観察され,群れ外オスの侵入時には,2-3頭が
攻撃に加わ り.他の者も威嚇動作をすることが多
かった。 しか しこのさいメス ・コ ドその参加する
ことも多 く,対人間行動の場合と共通性質が認め
られる。
2
-3
5
頭で,オスのほぼ
群れの全構成員は現在3
全部 ・メス ・コ ドモの一部が個体識別 された。オ
0
頭で,オスとほぼ同数である。
トナメスは 8-1
研究の第-階程が終 り,いよいよ本格的な資料採
取段階に入ろ うとしている。
=ホンザル野生群のコ ドモの採宜行動
の採餌行動は従来の研究結果 と概ね一致 したが,
小 さい餌だけの捕獲への切 り替えに関してモデル
- 72-
橋本千絵 (
京大 ・霊長研)
宮城県金華山島のニホンザル野生群を対象に.
オ トナの採食行動と比較 したコ ドその採食行動の
特徴を明らかにするために調査を行った。
4.採食個体の密度は①ケヤキ採食時はイヌシデ
採食時に比べて高 く,②ケヤキ採食中に,ケヤキ
高頻度出現地域ではそれ以外の場所に比べ低か っ
オ トナメスと 4才 メス ・2才メスでは ,3者の
体の大きさの速いか ら予想されるような採食時間
の蓮はなかった。調査期間における食物品 目の う
ち,上位 3品 目 (レモンエゴマ範子 ・カヤ種子 ・
チヂ ミザサ基板)について採食速度を測ったが,
た。敵対的交渉の頻度は採食個体の密度 と正の相
関を示 した。また,ケヤキ採食時に生起 した交渉
は他の場合に比べ優位個体の激 しい攻乱 逆に劣
位個体の過敏な反応を含むものが多 く,穏やかな
才メ
レモンエゴマではオ トナメス,4才 メス,2
スの順に採食速度が低下する傾向がみられた。 こ
5.以上の結果から.低順位個体はケヤキの利用
れはロの大 きさの速いにより一 口で採食できる畳
に益があるため と思われた。食物品 目数は,ほぼ
3着に差がなか ったが,コ ドモにのみ採食が観察
された食物品 目があった。 レモンエゴマでは.負
物の質が低下 しオ トナが採食を しな くなって以後
もコ ドモは採食を続け,その結果 コ ドモの採食効
率が低下 していたと思われた。
これらのことにより.① レモンエゴマの採食速
度の原田と考えられる身体的条件の違いや技術的
・経験的な未熟 さに由来する採食効率の悪 さ.②
コ ドモ特有な行動パターソ (
採食効率にとらわれ
ない食物品 目の選択)に由来する採食効率の悪 さ
のために,コ ドモはエネルギー要求丑か ら予想さ
れるよりも長 く採食時間に当てていると考えられ
た。
野生ニホンザルの採食行動 ・個体問関係が個体に
与える影響についての考察
斉藤千映菜 (
東京大学)
1.野生ニホソザルを対象に.個体の採食行動が
「
単位時間当 りのカロリー摂取丑最大化」に従 う
か,また個体間の優劣関係が採食行動にどのよう
な彫響を与えるか検討 した。
2.調査は1
9
8
8
年来 ,宮城県金華山島で行われて
いる。今回は,個体追跡法を用いたオ トナメスの
データの うち,利用可能食物が少な く主要 2品 目
(ケヤキ種子,イヌシデ種子)が全採食時間の 7
割を占めた1
9
8
9
年冬季のものを分析 した。
3.採食速度か ら採食立を穿定 したところ,高順
位個体は主要 2品目を単位採食時間当た りのカロ
1
)-摂取J
a
:
が殺大となるよう選択 していた (この
場合,ケヤキ種子が より好まれた)
。一方,低順位
「
接近-退却」は少なかった。
可能皮が低 く従って敵対的交渉の起 きやすい場所
では高順位個体 との伴食を避け.イヌシデを代替
採食 したことがわかる。優劣関係のもた らすス ト
レスが大きい時.低順位個体は 「
カロリー摂取盈
最大化」を行わないことが示 された。
霊長矧 こおける血液型物質の退伝進化学的研究
中島たみ子 ・矢沖
仲 ・古川 研
(
群馬大 ・医)
霊長塀におけるABH抗原は赤血球や各臓器中
に分布 してお り.
,
進化別に抗原の発現性を異に し
ていた。また,これまでにサル血清中には 0型 ヒ
ト血球を受容体 とした型変換法によりA及び B型
he
n
ylβ-D-一
合成酵素が存在すること,更に p
PβGal
)
を受容体 とした Fu
c
o
s
eの取
ga
l
a
c
t
o
s
i
de(
り込みからH合成酵素が存在 していることをそれ
ぞれ証明した。今回は更に多数のサル血清中の
ABH合成酵素生活性を測定す ると共に ,H合成
酵素の性状について調べた。サル血清中のA及び
B合成酵素は原故や新旧世 界ザ ル で は ヒ トの
A2
-Ai
nt
,
Bw∼Bi
nt
の泣きに相当 し,類人猿では
nt
e
r
me
di
a
t
eの強 さに一致 して い
ほぼ Aや Bの i
た。また ,0型のブタオザル血球を受容体 とし.
Aや B型のサル及びヒ ト血桁を酵素源 とした型変
換から,0型のブタオザルはAや B型に型変換す
ることが証明され,サルの ABH抗原の化学榊迫
はヒ トのものと頒似 してお り,ヒ トと同様の合成
系路によって産生されることが推測 された。H合
個体はケヤキ出現朔度の高い地域を通過 した 日に
は同様の憤向を示 したが.それ以外の日にはイヌ
成酵素活性は原泣く新世界ザル<旧世界ザル<摂
人猿の順に増強 していることが確認 された。頼人
猿では,チンパンジーの一部 とオランウータンが
ヒ トと同程度の辞索活性を示 し,シロテ及びアジ
.
7
-2
.
8
倍強い酵素活性
ルテナガザルではヒ トの1
を示 した。 シロテテナガザル とヒ トのⅡ合成酵素
シデ種子を代替的に選択 していた。
の反応性を比較すると,シロテテナガザルは基質
-7
3-