KURENAI : Kyoto University Research Information

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
Differentiation of choroid plexus ependymal cells into
astrocytes after grafting into the pre-lesioned spinal cord in
mice( Abstract )
Kitada, Masaaki
Kyoto University (京都大学), 2002-03-25
2002-03-25
http://hdl.handle.net/2433/149685
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【3
0
2】
5
]E=
晶
音
学位(
専攻分野)
博
士
(医
学 位 記 番 号
医
学位授与の 日付
平 成 1
4 年 3 月 25 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
医 学 研 究 科 生 理 系 専 攻
学位 論文題 目
Di
fe
r
e
nt
i
a
t
i
onofc
hor
oi
dpl
ex
u sepe
ndymalc
e
l
l
si
nt
oas
t
r
oc
yt
esaf
t
e
r
gr
af
t
i
ngl
nt
Ot
hepr
e-1
es
i
oned s
pi
nalc
or
di
n mi
c
e
氏
名
博
響
学)
第 2
455号
(マウス損傷脊髄への移植 による脈絡叢上衣細胞のアス トロサイ トへの分化)
(
主 査)
論 文調査 委 員
教 授 金 子 武 嗣
請
文
内
教 授 橋 本 信 夫
容
の
要
教 授 井 出 千 束
旨
脈絡叢 は脳脊髄液の産生部位 として機能 し,上衣細胞がその中心的役割 を果た していることは周知の ところである。 私達
はこれまでに脈絡叢上衣細胞の新 たな機能 として,軸索再生促進作用 を有することを明 らか として きた。脊髄損傷の治療 を
目的 としたラッ ト切断損傷脊髄への脈絡叢の移植実験 において,私達は以下のことを見出 した。脈絡叢上衣細胞 は脳室側 に
豊富な微繊毛や隣接する細胞 との細胞 間結合装置 を有 し,血管側 にはその直下に基底膜が存在するが,脈絡叢移植後 には移
植上衣細胞 は基底膜か ら離れ,微繊毛 を次第 に失 う。 この状態で再生軸索 と接着 し更に再生軸索 を取 り巻 く像が観察 された
ことか ら,脈絡叢上衣細胞 は形態変化 を生 じなが ら再生軸索 を支持することが明 らか となった。移植脈絡叢上衣細胞の分化
をよ り純度の高い系で確認す る為,培養脈絡叢上衣細胞 をマウス脊髄へ移植 した。
4日齢 の gr
e
e
nf
luo
r
e
s
c
e
nc
epr
o
t
e
i
n(
GFP)遺伝子導入マウス (グリーンマウス)の第四脳室脈絡叢
培養 には晴乳 7-1
を用いた。 このマウスは,β
-アクチ ンプロモーター下に GFP遺伝子 を導入 した トランスジェニ ックマウスである。 グリー
ンマウス を ドナー とし,野生型マウスをレシピェ ン トとすることで,移植細胞の同定は容易 となる。 第四脳室脈絡叢は大槽
側か ら比較的簡単 に採取することが可能であ り,脳実質組織混入の可能性 はほとんど生 じない。培養法 としては,既 に確立
されていた脳室上衣細胞培養法 を用いた。無血清培地 を用いたこの方法では,脳組織全体 を素材 として培養する場合で も,
培養 3週 間でアス トロサイ トの含有率 は 2% まで抑 えられる。 脈絡叢 にはアス トロサイ トが存在 しない為, より純度の高い
上衣細胞 を得 ることが可能 となる。 こうして 4- 6週間培養 した脈絡叢上衣細胞 を,前処置 として移植 1週間前 に部分切断
損傷 を行 ったマウス脊髄へ移植 した。移植 1,2, 3週後 に免疫組織化学法 を用い,アス トロサイ ト,オリゴデン ドロサイ
トあるいは神経細胞への分化 について検討 した。
移植上衣細胞 は多数の突起 を有する細胞- と形態変化 を生 じていた。免疫組織化学染色 により,アス トロサイ トのマーカ
ーであるグリア線維性酸性 タンパ ク質 (
GFAP)に陽性であ り,かつアス トロサイ トの機能的マーカーであるグルタミン酸
トランスポーター GLT-1も陽性である移植細胞が観察 された。 また,抗 GFP抗体及び抗 GFAP抗体 を用いた二重免疫電
顕法 により,移植細胞 は多数の突起 を有 し,微械毛や細胞間接着装置 を持たない極性のない細胞へ と形態変化 を生 じ,更に
その細胞体 ・突起 に GFAP陽性の中間径 フィラメン トを有することが明 らか となった。仝移植細胞の うち GFAP陽性細胞
の占める割合 は,移植 3週 までで 5%程度であった。脈絡叢上衣細胞のオリゴデン ドロサイ トや神経細胞-の分化 は,確認
されなかった。以上 より,少 な くとも一部の脈絡叢上衣細胞 は培養後移植することでアス トロサイ ト- と分化することが明
らか となった。 アス トロサイ トへの分化能 を有することか ら,脈絡叢上衣細胞が神経幹細胞 として機能 し得 る可能性が示唆
された。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
申請者 らはこれまでに脈絡叢上衣細胞が新 たな機能 として,軸索再生促進作用 を有することを明 らか として きた。更 に脊
- 7
5
9-
髄損傷 の治療 を目的 としたラッ ト切断損傷脊髄- の脈絡叢 の移植実験 において,脈絡叢上衣細胞 は形態変化 を生 じなが ら再
生軸索 を支持す ることを明 らか として きた。
本研 究では,GFP トランス ジェニ ックマ ウスの脈絡叢上衣細胞 を培養 し,同型野生型 マ ウスの脊髄 に移植することで,
04個
脈絡叢上衣細胞 の分化 能 を調べ た。移植 1週 間前 に前処置 として脊髄 T9レベルに部分切 断損傷 を与 え,そ こへ 4×1
の細胞 を移植 した。移植 1-3週で移植上衣細胞 は多数の突起 を有す る細胞- と形態が変化 してお り,免疫組織化学染色 に
GFAP)の発現が観察 された。 また,抗 GFP抗体及 び抗 GFAP抗体 を用いた二重
よ りアス トロサイ トのマーカー蛋 白質 (
免 疫 電顕 法 に よ り,移植 細胞 が アス トロサ イ トの微 細 形態 と類似 した像 を示 す こ とが観 察 され た。仝 移植細胞 の うち
GFAP陽性細胞 の占め る割合 は,移植 3週 までで 5%程度 であ った。脈絡叢上衣細胞 のオ リゴデ ン ドロサ イ トや神経細胞
へ の分化 は確認 されなか った。 これ らの所見 よ り,少 な くとも一部の脈絡叢上衣細胞 は培養後移植す ることでアス トロサ イ
トへ と分化す ることが明 らか となった。 アス トロサ イ ト-の分化能 を有す ることか ら,脈絡叢上衣細胞が神経幹細胞 として
機能 し得 る可能性が示唆 された。
以上の研究 は脈絡叢上衣細胞 の新 たな機能の発見 に貢献 し, グ リア細胞 の分化研究 に寄与す る ところが多い。
4年 1月2
8
したが って,本論文 は博士 (医学)の学位論文 として価値 ある もの と認める。なお,本学位授与 申請者 は平成1
日実施の論文内容 とそれに関連 した試問 を受 け,合格 と認 め られた ものである。
- 7
6
0-