黄の少年の話 山本屋 葉介 タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト http://pdfnovels.net/ 注意事項 このPDFファイルは﹁小説家になろう﹂で掲載中の小説を﹁タ テ書き小説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。 この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また は﹁小説家になろう﹂および﹁タテ書き小説ネット﹂を運営するヒ ナプロジェクトに無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範 囲を超える形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致し きだか ます。小説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。 ︻小説タイトル︼ 黄の少年の話 ︻Nコード︼ N6231K ︻作者名︼ 山本屋 葉介 ︻あらすじ︼ 俺︵黒の少年︶が今回語るのは同級生の黄高について。黄高は病 的なお人好し&優柔不断で⋮⋮腹が立つので今回は俺も結構しゃべ ってます。 1 ︵前書き︶ 初めての方はこの話を読む前に、前二作品を読んでもらえると、ど んな流れできているか少しは分かるようになっていると思います。 ※読まなくても内容的には通じるように努力しました。 2 きだか ﹁黄高ぁー。ジュース買って来てぇー﹂ ﹁あ、オレもこんにゃくシリーズのどれか買って来て!ココアでも 可!﹂ ﹁つか、次数学じゃん!今日確実に当てられるし!馬ヅラとか本気 うぜー!黄高、ノート貸して﹂ 一日一回は必ず聞く、黄高コール。ことに、昼休み後半は酷い。 俺のクラスにいじめは無い。︵と、言いたい︶クラスは至って平和 だ。要するにみんな、相手がノーと言えばそれが聴ける程度の脳み そを持ち合わせているということだ。 ︵未だに﹁馬ヅラ﹂が気になっているそこのお前。我らが数学教師 のあだ名です。顔が馬っぽくて、実はヅラ被ってるという噂がある の。︶ 何がいいたいかって? 黄高が極度のお人好しだってことだよ。 黄高が困り笑いをしながらノートを取り出す。俺は正直イラついた。 ﹁はい。答え合ってるかわかんないけど﹂ ﹁おーぅ、答えさえ書いてあればOKよ﹂ ノートを受け取った奴の隣から、ジュース代が差し出される。黄高 はそれをつかんでから、 ﹁他にいるならついでだから買って来るけど?﹂ とクラス内を見渡す。 クラスの中で一番背が高い黄高は、灯台のように見える。︵細いか ら標識かもしれない︶ 3 そんな奴がパシリ紛いなことをやっている姿は、滑稽だった。だか ら俺は余計に腹が立ったのかもしれない。アタシもお願いー、と数 人の追加注文が入る。黄高は教室を出た。 他の奴は次の数学に備え、雑談を交えつつ黄高のノートに集ってい た。 俺が食休みの仮眠を取り終えたとき、予鈴と同時に黄高が戻ってき た。クラスの奴らに熱烈歓迎を受けている。 遅ぇーよありがと、五分で飲めるか!!でもサンキュ、⋮︱︱︱ま あ、大事にされているということだけはよく分かるが。 俺と黄高は小学校が一緒で、簡単に言えば友人である。︵難しく言 っても結論は変わらない気もするが。︶中学で一度、親の都合から 別の私学に通っていた。高校で再会を果たしたわけだが、この通り お人好し部分が倍増していた。人に親切なのはいっこうに構わない。 ただ、自分でできるだろということまで人にしてやらなくていいと 俺は思う。︵基本俺はだるいことはしない︶ 朝、靴箱で黄高と鉢合わせた。その日俺は珍しく早起きし、黄高は 寝坊したと言う。︵ん?︶ 俺の靴箱が自分の体で塞がれていると気づいた黄高は、わざわざ上 履きを取ってよこした。 どうも⋮。 ︱︱︱︱爽やかな朝の空気が流れ込んでくる前に、俺の肺はイライ ラで膜を張ってしまった。 ﹁黄高はそうやって誰にでもいい顔するけど、それ別に相手の為に なってねえから﹂ 4 その膜を破ろうと、俺はキツイ口調で言う。黄高は一瞬意外そうな 顔をした後、人に頼みごとをされた時と同じように困り笑いをした。 ﹁反論しろよ。ムカつく﹂ 俺は自分の靴を靴箱に入れた。横へ退けた黄高は気まずそうに頭を 掻いた。遠くで子供達が騒ぐ声がしている。小学生はこの時間に登 校しているのだろうか。 ﹁うん。たぶん、なってないかも﹂ 俺は短くはっと息を吐き捨てると、廊下の方に目をやった。俺らよ り後に来た奴らが会話しながら通り過ぎていく。 ﹁優しいねぇ﹂ そっけなく呟いた俺を見て、黄高があはは⋮と笑いながら俯いた。 ﹁そういうの、優柔不断って言うんだぜ﹂ ﹁⋮うん。よく言われるよ﹂ 俯いたまま返答する。その様子を俺は横目で見て、次々入ってくる 生徒達に目をやりながら言う。 ﹁それは時として、人を傷つける﹂ 俺が教室に向かって歩き始めると、少し遅れて黄高がついてきた。 しばらく間が空いて、返答があった。黄高が既に俯いていないこと に気づいた。 ﹁うん﹂ 俺は急速にイライラが失せていくのを感じた。真顔で頷かれても困 る。 ﹁知ってるなら、もう何も言わねえ。⋮お先に。﹂ 急に気まずくなって、足早に階段を上っていく。別に用事などない が。︵仮眠とろう︶ 黄高が俺を見上げ、大きめの声をあげた。驚いた。 ﹁僕は⋮優しいんじゃなくて、弱いんだ﹂ 俺は片手を挙げて挨拶をし、そのまま階段を駆け上る。 5 黄高が俺に挨拶を返しているのがちらりと見えた。 その日の昼休みにやはり、お決まりの黄高コール。 黄高が俺の方を見た後、ノートをねだるクラスの奴に向って ﹁今日まだノート作ってないから、一緒に書かせてよ﹂ と、久しぶりに純粋に笑ってみせた。クラスの奴らは意外そうな声 をあげはしたものの、俺が思ったとおり脳みそのある反応をした。 ︵小坊や中坊より素直な生き物が多いようだ︶ノートを持ち寄って いつもと変わらない雑談が飛び交う。 今度は俺に気を遣っただけじゃないか。思わず苦笑してしまった。 ︱︱︱︱︱︱︱黄の少年は優柔不断で、お人好しだ。こればっかり はどうにもできないようだ。 もう諦めるしかないだろう。周りの奴がしてやれる のは怒るか、 せめて楽しいように何か工夫してやるくらいだ。 ︵あんた自身が黄の少年なら申し訳ないが、適度な お人悪しになれるよう努めろ。 この話を読んでくれている人間の数などたかが知れ ているのだから。︶ 6 困り笑いなんて高度技術を身につける暇があるなら 漫才でも見て大笑いしていたほうがずっと楽しいと思う。 俺は黄高ではないから、どんな気持ちでそうなっているのかわから んが、 常に優しくしてもらえなければ相手を嫌う人間などほっておけばい いと思う。 甘えてはいけない。 黄の少年はお人好しであるだけで、スーパーマンとかではないのだ から。 ︱︱︱︱︱︱⋮じゃ、そちらの黄の少年によろしく。 7 PDF小説ネット発足にあたって http://ncode.syosetu.com/n6231k/ 黄の少年の話 2012年10月18日14時21分発行 ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。 たんのう 公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、 など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ 行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版 小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流 ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、 PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。 8
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