禁色の闇姫 番外編 - タテ書き小説ネット

禁色の闇姫 番外編
ときおう慧実
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
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番外編
︻小説タイトル︼
禁色の闇姫
︻Nコード︼
N5588BX
︻作者名︼
ときおう慧実
︻あらすじ︼
本編番外編に入れるほどじゃないSSです。
1
セラフィーナとイシュメル︵前書き︶
本編番外編﹁友情と親愛、そして﹂の半年前になります。
2
セラフィーナとイシュメル
足を海辺にちゃぷんと浸すと、たゆとう温さが伝わってきた。
﹁気持ちいー⋮⋮﹂
王都から遠く離れた、隣国との国境近くにある海。そのごくごく
一部は低温の温泉が湧いている。湯治に最適だった。
だからと言って、公爵令嬢たるセラフィーナが簡単に来られる地
ではない。ましてや、正妃だったならば。
﹃半年後には、お前はもう公爵令嬢ですらなくなる﹄
立場から逃げることは出来ない。ならばなる前にせめて、思い出
を。
それでも、逃げなくてはいけないことがあったら︱︱
﹁イシュ﹂
後ろを向きながら控えている友に声をかける。夕日を見ながら。
﹁手を、貸して、ね﹂
これから益々息苦しくなるだろう。それでも。
﹁安心しろ。地獄でも一緒してやるよ﹂
迷うことなく答えてくれる貴方たちがいるうちは、走ることが出
来るだろう。
3
﹁寒いね﹂
温かいけど、自然と呟いていた。
4
セラフィーナとコンラッド
目の前でなにが起こっているのか。認めることを脳が拒否した。
なにかを掴もうともがく手を見たとき。音が聞こえなくなった。
無音の世界で、水が飛沫を上げる。白い肌がどんどん見えなくなる。
右側から熱が消えて、川に一際大きな飛沫が飛び散る。五秒弱を
置いて二つの金色が水面を突き破り、ようやく音が戻ってきた。
私はただ、動けないでいた。
何時ぶりだかわからない涙を流しながら、びしょ濡れの二人に抱
き着く。
﹁ごめんなさいごめんなさい! 私、なにも出来なかった⋮⋮!﹂
同い年なのに。同じ地位なのに。
ブラウン
すると、赤銅色の瞳を持つ少年が苦笑した。
﹁セフィ、私、足を痛めているんです﹂
隣国の大公子たるコンラッドの発言に固まった後、すぐに魔法を
展開する。セラフィーナたち三人は共通して使える属性だが、体力
が第一だ。まだ濡れているイシュメルや溺れた本人であるコンラッ
ドに使わせられる筈がない。
患部に手を当て、内部を探る。痛みと同調しながら、まだ無詠唱
では出来ない呪文を唱える。
5
﹁︻半回復︼﹂
快復は出来ない。してはいけない︵・・・・・・・︶。その代わ
り私たち人間は、回復を許される。
ゆらゆらと時間を立てて組織の修復をしている間に、イシュメル
が自身とコンラッドの上着を絞っていた。薄手の肌着だけ濡れたま
ま着直しながら﹁火か風の使い手がいればな﹂と何度目かわからな
い言葉。
少しずつ落ち着いてクリアになっていく世界で、コンラッドは微
笑んでいた。
﹁私やセフィは泳げません。だけど、光魔法を使うことが出来ます﹂
各々が出来ることをすればいいでしょう、と言われたところで治
療が完了した。軽く痛むだろうが、歩ける筈だ。
三人揃って立ち上がり、それぞれの契約竜の元へ歩く。イシュメ
ルとコンラッドは軽口を交わしているが、セラフィーナは納得が出
来ない。先ほど最も痛感したのは、すべきことさえ言われなければ
出来ない自分なのだから。
セレドニオの背に乗ろうとして、コンラッドの声に振り向く。そ
こではエリシアにしがみ付くようにして乗っていた。
﹁セフィ、急いではいけないと教えたのは貴女ですよ﹂
言った、確かに。大公子として多くのものを背負いすぎていたコ
ンラッドに。
それでもまだ頷けないでいるセラフィーナに、コンラッドは苦笑
6
する。
﹁私たちは十歳ですが王族です。そして、王族ですが十歳の子ども
です。のんびり行きましょう﹂
じんわりと染み込んでくる言葉。それこそ魔法のようだった。
﹁⋮⋮うん﹂
はにかみながら肯定すると、イシュメルが溜息を吐いた。
﹁そんじゃあまぁ、戻って親父連中に叱られるか﹂
すぐ先の未来を的確に示す言葉に、三人揃って苦笑いしながら。
7
セラフィーナとコンラッド︵後書き︶
︻セラフィーナとコンラッド語り︼どちらかが海や川に落ちて運悪
く足を痛め溺れてしまったときについて語りましょう。http:
//shindanmaker.com/169048
特にオチもなく、ただ幼い頃のワンシーンです。
8
イシュメルとコンラッド
始まりは小さな包みだった。
﹁⋮⋮おいこら、なんだこれは﹂
連れの持ち物から覗く金色の包装をされている手の平大の箱を見
て、低い声が出た。にも関わらず、幼馴染は優雅に微笑んでいる。
﹁私からセフィへのプレゼントですよ﹂
そして予想通りの答えが返ってきて、頬を強張らせた後、腹の底
から声を出した。
﹁今年のセフィの誕生日は、二人からで贈るんじゃなかったのか!
!﹂
毎年セラフィーナへの誕生日プレゼントには、セラフィーナが如
何に気に入るかを競って彼是画策するイシュメルとコンラッド。誕
生日の三か月前から二人の間には探り合いが始まり、一か月前には
暗雲が漂う。それに怒りを爆発させたセラフィーナは、今年からは
二人揃ってのプレゼントにするようにと厳命した。
二人で買い物に出かけ、西国にある小さな金山からとれる砂金を
小粒にまとめ、さらに職人芸によって精巧に形作られた胸飾りを注
文した。すっかり日も暮れ、王都の中心地に戻るには時間がかかる
ので一休みすべく、目についた飲み屋に入る。︱︱とコンラッドか
らセラフィーナへの個人の贈り物を見つけた。
9
﹁﹃私個人からのみ﹄の贈り物が禁止等という約束はありませんよ。
あくまで﹃二人揃って﹄のものがあればいいのですから﹂
屁理屈を並べる幼馴染に怒りを覚えたのも束の間。ならば、と翌
日イシュメルの部屋には墨色の箱が増えていた。大きさは人の赤ん
坊ほどもある。
翌々日にはコンラッドの部屋に小ぶりな袋が二つ。翌々々日には
イシュメルの部屋に⋮⋮
そこまで行ったところで、セラフィーナがキレた。
﹁いい加減にしなさいこの莫迦ども!!﹂
そしてその日の晩、王都の小さな飲み屋では、寂しげに杯を傾
ける若い男が二人おりましたとさ。
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イシュメルとコンラッド︵後書き︶
イシュメルとコンラッドは、﹁夜の居酒屋﹂で登場人物が﹁くすぐ
る﹂、﹁プレゼント﹂という単語を使ったお話を考えて下さい。h
ttp://shindanmaker.com/28927
仕事が忙しくてまるで書けませんでした。
あと今回は、1000文字以内にするのに苦労して中途半端な結果
に⋮⋮
連続投稿して、本編に入りたいです。﹂
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オフィーリアとセラフィーナ︵前書き︶
︵今更ですが︶特にオチはございません。
12
オフィーリアとセラフィーナ
﹁大丈夫!?﹂
セラフィーナの悲鳴が混ざった声に対し、オフィーリアはきょと
んと目を見開いた。
随分と姿が見えない愛娘を心配してベッドから起き上がり廊下を
歩いていると、普段は使わない物置の扉が開いていた。家の角にあ
り、普段は使わないためなかなか目に付きにくい部屋だ。
ははぁ、と苦笑して扉の奥を覗く。日当たりの悪いその部屋は薄
暗くて、湿度が高い。
不快な気持ちになりながらも足元を探していると、﹁かーしゃま﹂
と舌足らずな声が聞こえてきた。︱︱頭の上から。
ハッとして顔を上げると、そこでは小さい体を更に小さく丸めた、
可愛い娘。どうやって上ったのかは不明だが、セラフィーナの背よ
りも高い棚の上にいた。
﹁リア、そんなところにいたのね﹂
呆れながらも安堵から目じりを垂らすと、不意に︱︱本当に不意
に、オフィーリアが棚からクラッと落ちてきた。
思考が停止しながらも、運動神経だけで手と体とを差し出す。
次の瞬間には胸元に、そしてその後は自身の体が床に倒された。
それでも娘の安否を心配して問いかけると、最初はなにが起こった
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のかわからないようで︱︱その後、大きな声で泣き出した。
﹁あぁ、リア⋮⋮﹂
その元気な声に胸を撫で下ろしながら、涙の溢れそうな瞳のまま
伝える。
﹁こんな危ないことはもう二度としては駄目よ﹂
愛娘は、泣きながらも必死に頷いていた。
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オフィーリアとセラフィーナ︵後書き︶
オフィーリアにセラフィーナが暗い部屋で押し倒されたときの反応
は↓あきらめて身を委ねるhttp://shindanmake
r.com/133586
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オフィーリアとイシュメル︵前書き︶
十歳くらいのときでしょうか↑テキトー
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オフィーリアとイシュメル
﹁イシュ、踊って欲しいの﹂
ゆっくりと杯を傾けながら夜を楽しんでいた父親代わりにそう申
し出ると、彼にしては珍しくきょとんと目をしばたたかせた。
﹁踊り? リア、なにが踊れないんだ﹂
目をぱちくりといつもの何倍もの頻度で瞬かせながら、それでも
目と口以外は動かない。手は葡萄酒の入った杯を持ったままだ。
パタパタと全体的にまだ短い銅を短い脚で引きずってイシュメル
の目の前に本を翳す。
﹁このステップがよくわからないの﹂
開いてある頁には中級者向けの技がいくつか載っていて、オフィ
ーリアが指したのは夫婦ペアで踊る密着度の高いものだった。その
ことにイシュメルの眉間に皺が寄り、慌てて弁明する。
﹁勿論今すぐ実践という訳じゃないの。でもコンラッドが、次に来
たときにテストをするっていうから﹂
実践しようにも三人の親と自分以外は竜しかいない此処では、試
しようがない。また、普段はデロデロに甘いコンラッドもマナーや
勉強に関してはとても厳しい。
言いたいことは解ったのか、イシュメルは大きなため息を吐いて
から杯を卓に置いて立ち上がった。するりと手と腰を取られる。
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﹁リズムは﹂
﹁四分の二で﹂
端的な問いに同じように返すと、音楽も流れていないのに正確なリ
ズムでイシュメルの体が動き始めた。それに釣られ、オフィーリア
の足も動き出す。
序盤は問題なく進み、問題のステップに入る。
﹁右足を半歩後ろに引いて、そのまま左足を被せろ﹂
言葉に従って足を動かすと、いつ動いたのか︱︱イシュメルはオ
フィーリアの正面から左半身に移っていた。
﹁そのまま体重を俺に預けて﹂
体重を預ける!?
半ば絶叫しつつも体重を投げるように努力はしてみたが、今まで
そんな経験がないオフィーリアはほぼ自分で自分の体重を支えたま
ま次のステップに入ろうとしてグラリとバランスを崩した。だが、
ぽすっと突っ込んだのは冷たい床ではなく暖かなイシュメルの胸。
﹁莫迦﹂
呆れを隠そうともしない父親代わりに、釣られてベッと舌を出し
た。
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オフィーリアとイシュメル︵後書き︶
﹃手を繋いで照れくさそうにする﹄﹃オフィーリアとイシュメル﹄
を書きましょう。http://shindanmaker.co
m/62729
この後にコンラッドが不貞腐れるのはお約束。
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オフィーリアとコンラッド
﹁キスって場所によって意味が違うのね﹂
日本人だった︻私︼には馴染みない文化を学ぶのは常のことだ。
だけど、口づけに関しては意味合い的には欧州と変わらないように
思う。家族や親しい友人らに挨拶代わりにするのだ。
突然の発言に、その場にいた教育係が全身で震え始めた。
﹁⋮⋮ダメです﹂
絞り出すように言われた言葉の意味がわからずに首を傾げると再
度﹁ダメです!!﹂と絶叫された。
﹁リアは! リアはそのままでいてください!! ずっと私たちと
生きていけばいいんです! 他の男の家族になどならなくていいん
ですーー!!﹂
いい歳をした貴公子︵公子ではないが︶と言って差支えのない美
男子が、ムンクの叫びのように両手を頬に当てて絶望の表情で打ち
震えている。あまり好まない光景に呆れながら救ってやるとする。
﹁恋人なんて考えていないわよ。ただこの前本を読んで知っただけ﹂
言うや否や、ぴたりと震えが止まったコンラッドはにっこりと意
味深に微笑んだ。
﹁そうですか、では⋮⋮﹂
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するりと伸ばされた手はオフィーリアの頭に触れ、撫でられるの
かなと思っているとそのままコンラッドの動きは途切れることなく
その上半身も続いた。距離が近くなるにつれ、軽くオフィーリアの
目が見開かれる。
ふわりと海の香りが鼻を擽る。コンラッドの匂いだ。
チュッとリップ音が耳の上で鳴る。意図を理解して、ため息がこ
ぼれる。それを見て、コンラッドは楽しそうに笑った。
﹁馬の骨にこんなことをされたら、すぐに私に言うのですよ? い
いですね﹂
もと
こんな娘莫迦の男の下に妃殿下が来てくださるのか︱︱割と本気
で心配してしまった。
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オフィーリアとコンラッド︵後書き︶
オフィーリアがコンラッドに冗談混じりに髪に思慕のキスをされる
ところを書きます。http://shindanmaker.c
om/257927
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リアとフィア︵前書き︶
ロマンティックってなんだっけ⋮⋮
23
リアとフィア
遠くから雷鳴が聞こえる。かと大きな比重のかかっているその頭
を上げて音の出所を探すと、雨雲が動き始めていた。
﹁こんな時期に雨なんて珍しいわね﹂
オフィーリアの言葉に、フィアはほっかむりの下で暫く黙った後
にポツリとこぼした。
﹁いく?﹂
﹁え?﹂
﹁私と一緒に、いく?﹂
そして指すのは、楽園の外。気持ち固くなったフィアの言葉が理
解できないまま、頭を横に振った。
ここ
﹁大丈夫よ。楽園には嵐は来ないから﹂
曇り空のせいで灰色に見える銀髪の隙間から見えたフィアの体。
その表情は見えずとも、強張っていることは伝わってきた。
オフィーリアはそっとフィアの耳元に顔を近づけた。﹁リア?﹂
と戸惑いが大きい声を耳が捉えたまま、小さく笑う。
﹁大丈夫。逃げなければいけないときは、置いて行ったりしないか
ら﹂
オフィーリアにしてみればそれは、自然災害を仮定しての言葉だ
った。ただ、安心させるためだけの。にも関わらず、フィアは一瞬
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固まった後に震えながら小さく頷いた。
どうして震えているのか。それは、教えてもらうこともできずに。
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リアとフィア︵後書き︶
リアとフィアの﹃いく?﹄という台詞を使った﹁ロマンチックな場
面﹂を作ってみましょう。http://shindanmake
r.com/74923
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n5588bx/
禁色の闇姫 番外編
2014年7月10日13時20分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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