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NEA-GaAsカソードにおける量子効率
と表面ポテンシャルについての研究
広島大学大学院先端物質科学研究科
ビーム物理研究室
増元勇騎
概要
• NEA状態と真空準位の変化
• 実験装置の紹介
• 実験①~活性化中のQ.E.スペクトラム測定~
• 実験②~活性化後のQ.E.スペクトラム測定~
• 実験結果の考察
• まとめ
エネルギー回収型線形加速器
(Energy Recovery Linac:ERL)
ERLの基本概念図
大電流・低エミッタンスの電子
ビームを供給する電子源
・平均電流
・規格化エミッタンス
10~100mA
0.1~1μm・rad
NEA光陰極を用いた
DC電子銃
NEA-GaAsからの電子放出
量子効率の低下
p-GaAsからの電子放出
NEA表面破壊や残留ガス吸着は真空準位を
放出
真空準位
遷移
上昇させると考えられている
波長の異なる光を入射し、量子効率の時間変化を調
べて閾値エネルギーの変化を観測
伝導帯
⇒NEA状態と量子効率低下の関連を明らかにする
実験結果予想グラフ
NEA
Eg=1.42 eV
バンドギャップ程度のエネルギーを持った光で電子を
フェルミ準位
励起させると低エミッタンス電子ビームの生成が可能
価電子帯
光学吸収
半導体
―Cs―O
・NEA表面破壊
・残留ガス吸着
真空
実験装置
実験装置は真空チェンバーと光学系から構成
・
真空チェンバー
光学系
6.0  10 9
波長ごとに量子効率を測定
Pa
・NEA表面の形成 (CsとO2を蒸着)
・Xeランプの光を分光
・光電子生成
・フィルタ
(2次光カット)
・シャッター (暗電流測定)
チェンバー断面図
光学系
実験手順
1.
NEA表面の活性化
量子効率のpeakを形成しながらCsとO2を蒸着
①. Csを蒸着し、量子効率のpeakを形成
②. O2を蒸着し、量子効率を増加
③. Csを蒸着し、量子効率を減少
④. ②、③を繰り返し、量子効率が飽和したところで活性化終了
2. NEA表面からの光電子取り出し
NEA表面の活性化~
実験結果①
活性化時の量子効率スペクトラムの時間変化をグラフに示す。
波長ごとの量子効率(O
片対数表示 2蒸着後)
● 1回目
● 2
● 3
● 4
● 5
•蒸着を行う毎に量子効率スペクトラムは増加
•活性化が進むにつれてスペクトラムの傾きが変化
実験結果②
活性化終了後の量子効率スペクトラムの時間変化をグラフに示す。
波長ごとの量子効率(活性化後)
● 1時間後
● 2
● 85
● 197
● 231
•時間が進むにつれて量子効率スペクトラムは減少
•実験結果①と時系列が逆の変化
規格化した量子効率の変化
1.8 eVの量子効率で規格化した量子効率を示す
⇒ 立ち上がりの光子エネルギー変わらない
⇒ 規格化量子効率のスペクトラムの傾きがO2蒸着ごとに小さ
くなる(活性化終了後、時間とともに大きくなる)
活性化時の規格化した量子効率の
スペクトラム変化
活性化終了後の規格化した量子効率の
スペクトラム変化
実験結果①、②の考察
NEA-GaAsの量子効率低下の原因は真空準位の上昇と考えられていた。
実験結果
⇒量子効率スペクトラムの閾値エネルギーは推移していない。
⇒時間とともに量子効率スペクトラムの傾きが変化している。
量子効率の低下には真空準位の上昇ではなく,別の要因が
大きく影響している。
解析
量子効率低下の原因を探るためNEA-GaAsの電子放出モデル
を構築
電子放出モデル
光が入射してから電子が放出されるまで、光による電子の遷移、励起した
電子の角度分散、表面に到達するまでの再結合、表面ポテンシャルバリアの
透過率を考慮して、計算をおこなった。
角度分散
表面ポテンシャル透過
励起した電子が向かう方向
再結合
移送距離に依存して一部の
電子が再結合
光学吸収
波長と状態密度に依存
0.310 3


0
dz
Ec

1
Ec z 2
4 Ec E z
z 2  2510  6
角度分散
 T[Vh , Vw , Vn , E b , E z ]  R[E z , E c , z , L]    Exp[ z ]dE z
トンネル確率
再結合
遷移
計算結果
実験結果
ポテンシャルバリアの形状の変化
・Vh、Vwを増加させると量子効率スペクトラム低下、傾きが増加
⇒実験データ(スペクトラムの時間変化)と定性的に一致
まとめと今後の展望
まとめ
• NEA状態と量子効率の低下の関連を調べるため、波長ごとの量子効率と
その時間推移の測定をした。
• 実験結果から真空準位の変化以外に量子効率を変化させる要因があると
考え、光学吸収、分散、再結合、障壁の透過を考慮した電子放出モデルを
計算した。
• バリアの高さと厚さが増加すると、量子効率はスペクトラムは低下し、傾き
が大きくなった。この変化は量子効率スペクトラムの実験結果と定性的に
同じ。
今後の展望
・電子放出モデルの検証実験(ex.ドープ量の異なるp-GaAsで測定 etc)
・量子効率の低下を定量的に明らかにする。
kz
2
Ee 
(k 2x  k 2y  k 2z )
2m
cos  
Ez
Ee
d

ky
2E e

kx
Transmission
1.0
0.8
0.6
a[nm]={ 0.4 , 0.8, 1.2, 1.6 }
0.4
0.2
P hotonEnergy
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
①散乱なし
②フォノン散乱
など
伝導帯
f
Vw’=1.5×Vw nm

T( v h , v w , E)  T' ( v'h , v' w , E)2
T( v h , v w , E)
2
●: 0  f  10  2
■: 10  2  f  10 1
1
▲: 10  f  1
Vw nm
0.8
0.6
0.4
0.2
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
Vh eV
dE