電磁気学C Electromagnetics C 7/17講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁 点電荷の運動方程式 ここでは、電子のような点電荷によって放射される電磁波のエネルギーを求める。 点電荷 e の電荷密度は、 e ( x, t ) e 3 ( x z(t )) (1) 点電荷 +e で表される。 ここで、z(t)は、点電荷の軌道関数である。 このとき、電気双極子モーメントは、 p(t ) e x' 3 ( x' z (t )) d 3 x' ez (t ) V (2) で与えられ、従ってその時間微分はそれぞれ、 p (t ) ez(t ), p(t ) ez(t ) (3) これを、先週導出した以下の式(37) に代入する。 P(t ) 0 p(t0 )2 6c 軌道 z(t) (37 ) ラモーアの公式 点電荷から放射される単位時間当たりの電磁波エネルギーは、 0 0 e 2 2 P(t ) ( p(t0 )) (z(t0 ))2 6c 6c (4) で与えられる。 ここで t0 は、 t0 t x z (t0 ) c の解として決められる点電荷からの発信時刻 (5) 式(4) より、電磁波は、点電荷が加速された時に放射されることが分かる。 ただし、式(4), (5) が成立するのは、点電荷の速度が光速に比べて十分小さい時 このとき、観測点での時刻 t と点電荷の時刻 t0 とはほぼ同一と見なせるので、 0 e 2 P(t0 ) (z(t0 ))2 6c (6) この式は、点電荷の単位加速時間当たりの放射エネルギーを与えると解釈する ことができる。この式をラモーア(Larmor)の公式という。 点電荷からの放射エネルギー いま、質量 m, 電荷 +e の点電荷が、 mz(t ) m02 z(t ) (7) の運動方程式に従って、角振動数 0 で単振動をしているとする。 式(7) の解は、 z(t ) z 0 sin 0t (8) と書くことができる。 このとき式(6) は、 0 e 2 4 2 2 P(t0 ) 0 z0 sin (0t0 ) 6c (9) となる。そこで、この単振動の1周期 T = 2 /0 当たりの平均値を求めると、 0e2 4 2 0 P 0 z0 6c 2 2 / 0 0 sin (0t0 )dt0 2 e2 12 0c 3 04 z02 を得る。これは、点電荷の単位加速時間当たりの平均放射エネルギー (10) ラザフォード原子模型の寿命 ラザフォードが1911年に提唱した原子模型は、中心に 正電荷をもつ重い原子核があり、その周りを負の電荷 を有する軽い電子が回っているというもの。 電子 -e 原子核 ところが、原子核の周りを回転している電子は、加速度 運動をしているから、それに伴い電磁波が放射される。 すると、回転している電子の運動エネルギーは次第に 減少し、電子は原子核に向かって落ち込んでいくはず。 +e ラザフォードの水素原子の模型 即ち、古典物理学の法則に従えば、ラザフォードの原子 は不安定で、ある一定の寿命で消滅するはずである。 以下では、古典物理学の法則に基づき、水素原子の寿命を計算してみる。 今簡単のために、電子は陽子とのクーロン力によってのみ引かれて、原子核の 周りを回っているものとする。 ラザフォード原子模型の寿命 このとき、質量 m, 電荷 –e の電子の回転半径を r, その速さを v, 回転の角速度を とする。 すると、この電子の動径方向の運動方程式は、 v 電子 -e m 陽子 2 1 e mr 2 4 0 r 2 (11) r +e また、電子のエネルギー W は、 1 2 1 e2 W mv 2 4 0 r (12) ラザフォードの水素原子の模型 で表される。ここで v = r の関係に注意して、式(11) を式(12) に代入すると、 1 e2 W 8 0 r を得る。 (13) ラザフォード原子模型の寿命 一方、単位時間に電子が放射する電磁波のエネルギーは、式(6) と式(11) より、 e2 2 ( 加速度 ) 3 3 2 6 0 c 6 0 c 4 0 m r e2 e2 2 (14) で与えられる。 従って、単位時間当りに電子の失うエネルギーは、 e2 dW e 3 2 dt 6 0 c 4 0 m r 2 によって与えられる。 2 (15) 式(15) の左辺に式(13) を代入すると、 e2 1 dr 2 e6 1 8 0 r 2 dt 3 (4 0c)3 m2 r 4 (16) となる。 そこで、はじめの時刻 t = 0 における電子の回転半径が a であったとし、それが原 子核に落ち込んでしまうまでの時間を t とすると、式(16) を積分することにより、 ラザフォード原子模型の寿命 3 2 3 0 dt 4 m c t e2 4 0 2 0 r 2 dr a (17) を得る。 これから、 1 m2c 3a 3 t 4 (e2 / 4 0 ) 2 (18) が得られる。 これに電子の電荷の大きさ e = 1.602×10-19 C, その質量 m = 9.11×10-31 kg お よび原子半径 a = 5.29×10-11 m の数値を代入すると、およそ t ~ 1011 s (19) となる。 従って、原子は約10 psという非常に短い時間で潰れてしまうことになり、この矛盾 から、ボーアの原子模型、さらには量子力学が誕生することとなる。 レポート問題の解説 自由空間での電磁波 x (Ex) E y = E z= 0 E z yH (Hy) 導波管内での電磁波 x H Hx = Hz = 0 H (Hy) TMモード Ez z y Ex E E x H Hz E z y Hx H E (Ey) TEモード レポート問題の解説 TEモードの分散特性 lb /a m2 + n2 = 2 m2 + n2 = 4 m2 + n2 = 1 2 単 一 モ ー ド 条 件 2 0 1 2 カットオフ領域 つまり、l >2a の電磁波は TEモードとして本導波管を 伝搬することはできない 2 l/a 半年間ご聴講いただき ありがとうございました
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