離婚が出生数に与える影響 -都道府県データを用いた計量分析 富山大学 経済学部 経済学科 10530120 八木 恵 2015/9/30 1 1.はじめに -背景 人口統計にみられる傾向 ・合計特殊出生率の減少 平成17年は1.26と過去最低 ・離婚率の増加 ただし、2002~2006年は年金分割 制度の導入を直前に控えているため減少 2015/9/30 2 1.はじめに -先行研究の紹介 ・吉田(2004) 離婚が増加すると合計特殊出生率もまた 増加することを示している。 問題点 本来、離婚割合の説明要因となるはずの 女性の機会費用・母親の労働力率・男女間 の相対所得が、離婚割合とともに説明変数 となっている。 →多重共線性が生じている可能性がある。 2015/9/30 3 1.はじめに -論文の目的 単回帰分析によって離婚率と合計特殊出 生率の関係を検証 両者が正の相関をもつか、負の相関を もつかを、再考する。 2015/9/30 4 1.はじめに -論文の目的 『人口動態統計調査』の数十年間のデータを 時系列データとして眺めた場合 →両者には負の相関関係があると予想される。 ある一時点の都道府県のクロスセクション データを使い、同様の傾向が観察され るかを検討する。 2015/9/30 5 1.はじめに -正と負の相関関係 正の影響の理由 ・熟年離婚の比率が増加する場合 ・離婚と再婚を繰り返す女性が多い場合 負の影響の理由 ・出産前に離婚し、その後に再婚や出産を しない女性が多い場合 2015/9/30 6 2.データ -『人口動態統計調査』 厚生労働省の『人口動態統計調査』 ・日本における日本人が対象 ・出生、死亡、婚姻、離婚及び死産について、 各種届出書等から収集し集計したもの 2015/9/30 7 2.データ -『人口動態統計調査』 合計特殊出生率 ・1人の女性が一生の間に出産する子ども の平均人数を推定する値 ・15歳から49歳までの女性の出生率を合計 したもの ・人口統計上の指標として将来の人口予測 などに用いられている。 2015/9/30 8 2.データ -『人口動態統計調査』 離婚率 ・人口1000人当たりの数字 ここでの分析では直近の2005年の合計 特殊出生率と離婚率の都道府県データ を使用する。 2015/9/30 9 3.分析 -分析にあたって 離婚率と合計特殊出生率の散布図と回帰 分析から両者の関係を検証する。 沖縄県は分析では除く →歴史的要因が他の都道府県と異なるため。 2015/9/30 10 3.分析 -分析結果 表1 分析で使用したデータの基本統計量 2015/9/30 変数 平均 分散 最小 最大 離婚率 1.98 0.05 1.49 2.43 合計特殊出生率 1.35 0.01 1.00 1.50 11 3.分析 -分析結果 図1 離婚率と合計特殊出生率の散布図 →負の相関関係がある。 1.6 合計特殊出生率 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 1 2 3 離婚率 2015/9/30 12 3.分析 -分析結果 回帰分析の結果 Yは合計特殊出生率、Xは離婚率、( )内の数値はt値を表 している。 Y = 1.73 – 0.19 X 調整済R2=0.13 (12.38) (-2.76) ・離婚率が説明変数として1%の有意水準で有意。 ・離婚率が限界的に1%上昇すると合計特殊出生 率が0.19%減少する。 2015/9/30 13 4.結論と今後の課題 -結論 離婚率が上昇すると合計特殊出生率が 減少する。 ・出産前に離婚し、その後に再婚や出産をしな い女性が多い。 ・離婚率の上昇が出生率の減少に大きなイン パクトを与えている。 2015/9/30 14 4.結論と今後の課題 -今後の課題 離婚率以外の説明要因にも着目すること など。 2015/9/30 15 5.参考文献 吉田千鶴 (2004) 「日本における 低出生力水準と離婚母子世帯」 『経済系』、第221集、pp.32-44 2015/9/30 16
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