第3回講義 - Faculty Server, Faculty of Economics, Keio

第8回講義
マクロ経済学初級I タイプIIクラス
白井義昌
海外部門
国内
政府
消費
輸入
政府購入
輸出
総生産
GDP
財・サービス市場
生産者
家計
利
子
所
得
投資
労働
生産への
土地
投入 賃金・地代・利潤
要素 資本
所得
生産要素市場
貯
蓄
労働・資本
貸し出し
金融市場
資産市場
借り入れ
利払い
第8回講義の内容
• 8.1
• 8.2
• 8.3
• 8.4
IS-LM均衡
財政政策の効果
金融政策
金融政策の効果
8.1 IS-LM均衡
• 財市場の均衡は有効需要の原理によって
決まる (財市場の均衡をもたらす所得と
利子の組み合わせがIS曲線とよばれる)
• 資産市場の均衡をもたらす所得と利子の
組み合わせはLM曲線とよばれる
• 財市場と資産市場の同時均衡をもたらす
所得と利子の組み合わせをIS-LM均衡所
得および利子とよぶ。
r
IS-LM均衡
LM曲線
r*
IS曲線
Y
Y*
8.2 財政政策の効果
政府購入の増大は
GDPおよび利子率に
どのような影響をあたえるか?
政府購入の増大
• 政府購入の増大は有効需要を拡大する
• 利子率一定の下で政府購入乗数分だけ有効
需要を拡大⇒IS曲線の右シフト
r
ΔG/(1-c)
Y
政府購入の増大と
クラウディングアウト効果
• 政府購入の増大はGDPの増大をもたらし、それ
は貨幣需要の増大へつながる。利子率が一定
であれば貨幣市場は超過需要状態になる。
• 貨幣市場の均衡のためには(貨幣供給は一定)
利子率が上昇して貨幣需要の超過需要が解消
されなくてはならない。
• 利子率の上昇によって投資は減少し、そのぶん
だけ有効需要は減少する。これを政府購入が民
間投資を(押しのける)するという。クラウドアウト
政府購入のクラウディングアウト効果
r
IS1
IS2
LM
E2
E1
Y
利子率一定の場合のGDP増大効果
利子率上昇による
クラウディングアウト効果
LM曲線の傾きと
クラウディングアウト効果
• 貨幣需要の利子弾力性が小さいほど
(すなわちLM曲線の傾きが急なほど)
政府購入のクラウディングアウト効果は
大きい。
r
IS1
LM
IS2
E2
貨幣需要の
利子弾力性が
非常に小さい場合
(LM曲線の傾き
が急な場合)
E1
Y
利子率一定の場合のGDP増大効果
利子率上昇による
クラウディングアウト効果
8.3 金融政策
金融政策はどのようにして行
われるか?
•貨幣供給量のコントロール
•利子率のコントロール
金融政策当局が貨幣供給を
コントロールする方法
• M= [(q+1)/(q+s)]H
q;現金預金保有比率 S;預金準備率
H;ハイパワードマネー(マネタリーベース、
ベースマネー)
• 公開市場操作 Hを変化させる
• 公定歩合政策 公定歩合の変化を通じてH
を変化させる
• 法定準備率操作 Sを変化させる
公定歩合政策
• 公定歩合: 日本銀行が民間銀行に貸し出し
を行う際の利子率
日本銀行が決める
• 公定歩合が下落(上昇)すると民間銀行は安
い(高い)コストで日銀からの資金調達ができ
る。したがって、民間銀行はより多くの(少な
い)資金を日銀から借り入れ、貸し出しと預金
準備の両方を増やす(減らす)。すなわちハイ
パワードマネーが増大する(減少する)。
公開市場操作Open-market operations
• 公開市場操作:日本銀行が債券市場において国
債や手形を売買することでハイパワードマネーを
調節する。
• 買いオペ:日銀が国債を購入すると資金が国債を
保有していた民間銀行やその他の民間に資金が
流れハイパワードマネーが増加する
• 売りオペ:日銀が保有している国債を売却すれば
民間銀行やその他の民間が保有する資金が日銀
にもどり、ハイパワードマネーは減少する
法定準備率操作
• 通常、民間銀行は余分な資金を保有しよ
うとはしない(利子費用などがかかるた
め)。したがって、預金準備率はほとんど
法定準備率に等しい。
• 日銀が法定準備率を変化させることに
よって預金準備率を変化させ、貨幣乗数
に影響を与えることを通じて貨幣供給を
変化させることができる。
• 法定準備率の減少は預金準備率の減少、
すなわち貨幣乗数の増大をもたらし貨幣
供給を増やす。
公定歩合政策
• 公定歩合: 日本銀行が民間銀行に貸し出し
を行う際の利子率
日本銀行が決める
• 公定歩合が下落(上昇)すると民間銀行は安
い(高い)コストで日銀からの資金調達ができ
る。したがって、民間銀行はより多くの(少な
い)資金を日銀から借り入れ、貸し出しと預金
準備の両方を増やす(減らす)。すなわちハイ
パワードマネーが増大する(減少する)。
日銀の資金貸し出しルート
• 窓口貸し出し
(Discount Window Lending)
日銀の役割は「最後の貸し手」
民間銀行が預金の引き出しや預金準備
維持のため資金が急に必要になる場合
に日銀窓口から民間銀行に貸し出す。
この日銀貸し出し利子率が公定歩合
(discount rate)である。
• コール市場
民間銀行が急に資金が必要になった場合でも日
銀はなるべく窓口貸し出しをしないようにする。
民間銀行は他の民間銀行で資金に余裕のある
ものから短期的に借り入れをする。このような銀
行間短期資金貸借の場がコール市場である。こ
こで定まる利子率がコールレート
(アメリカではFed Funds rate)と呼ばれる。
日銀もこのコール市場に参加し、貸し出しを増や
してコールレートを下げたりすることができる。
8.4 金融政策の効果
貨幣供給の増大効果
貨幣供給の増大はLM曲線を右シフトさ
せ利子率の下落とGDPの増大をもたらす。
LM
IS
r
r’
Y
Y’
LM’
投資の利子弾力性が小さいときは
金融政策のGDPにたいする効果は小さい
LM LM’
IS
r
r’
YY’
流動性の罠があるときには
金融政策は効果がない
r
IS
LM
LM’
Y