京都駅ビルの経済価値と景観問題 2006年12月2日 プロジェクト研究EB 毛利 拓斗 1 アウトライン １ はじめに ２ 京都の概要 ３ トラベルコスト法 ４ アンケート調査の概要 ５ アンケート調査の集計結果 ６ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価 ７ 結論と今後の課題 2 １ はじめに ２ 京都の概要 ３ トラベルコスト法 ４ アンケート調査の概要 ５ アンケート調査の集計結果 ６ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価 ７ 結論と今後の課題 3 １．はじめに 京都駅ビルの住民の景観に対する意識と経済価値を明らかにする 経済価値 景観問題 都市景観と歴史景観の調和 デ ザ イ ン と 景 観 建設当初の狙い 玄関口としてふさわしいか JRの狙い 今後の京都駅周辺の開発について 景観との調和 現 状 の 年 間 価 値 駅 ビ ル 以 外 の 年 間 価 値 駅 ビ ル の 年 間 価 値 アンケートを用いて明らかにする 今後の開発におけるひとつの指標となるだろう 4 １ はじめに ２ 京都の概要 ３ トラベルコスト法 ４ アンケート調査の概要 ５ アンケート調査の集計結果 ６ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価 ７ 結論と今後の課題 5 2．京都の概要 歴史的景観と都市的景観の共存する町 歴史的景観 都市的景観 古くから歴史の 中心として栄え現 在でも多くの重要 文化財が残され ている 関西第３の経済 規模を持ち、経済 産業の発展を遂 げ便利な社会をも たらしている １９８４年 平安遷都１２００ 年を記念して、 京都駅ビル建設 の構想が固まる １９９７年 周辺の景色を映し こむように前面ガラ ス張りなど目立た ないようにデザイン を施す 参照URL：http://www.kiyomizudera.or.jp/ http://www.kyoto-station-building.co.jp/ 現在 京都駅ビルは京都 のシンボルとして京 都市民に受け入れら れ京都の玄関口とし て存在している 6 １ はじめに ２ 京都の概要 ３ トラベルコスト法 ４ アンケート調査の概要 ５ アンケート調査の集計結果 ６ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価 ７ 結論と今後の課題 7 ３.1 環境評価手法 市場がなく、価格がついていない非市場財を貨幣的に評価するための手法 表明選好法 顕示選好法 CVM トラベルコスト法 コンジョイント分析 ヘドニック法 市場がなく、価格がついていない非市場財を貨幣的に評価することが可能 8 ３.２-１ トラベルコスト法 レクリエーション地についての価値を測るのに適した手法 レクリエーション地に訪れる年間の訪問回数はそこまでの距離と旅行費用に依存する レクリエーション地に訪れる距離、すなわち旅行費用が高ければ訪れる回数も少なくなる レクリエーションサービスに関する価格を旅行費用で代用し需要曲線を描くことが可能 例 往復600円 ３０ｋｍ 往復1200円 ６０ｋｍ Aさん 自宅からビルまでの距離３０ｋｍ 旅行費用往復６００円 年間訪問回数４回 Bさん 自宅からビルまでの距離６０ｋｍ 旅行費用往復１２００円 年間訪問回数２回 9 ３.２-２ トラベルコスト法 訪問回数と旅行費用からレクリエーション地の需要曲線を描く Aさん 往復600円 自宅からビルまでの距離３０ｋｍ 旅行費用往復６００円 年間訪問回数４回 ３０ｋｍ 往復1200円 Bさん 自宅からビルまでの距離６０ｋｍ 旅行費用往復１２００円 年間訪問回数２回 ６０ｋｍ 旅行費用 レクリエーション地が失われるこ とによる、Ｂさんの消費者余剰の 減少分→Ｂさんの費用 １２００ レクリエーション地が失われるこ とによる、Ａさんの消費者余剰の 減少分→Ａさんの費用 ６００ ２ ４ 訪問回数 10 ３.３ 仮想トラベルコスト法 環境質の変化を考慮したトラベルコスト法 建造物の損失や水質の悪化と言った仮想的な環境質を回答者に提示する その状況下で従来と同じように訪問回数を尋ねる 旅行費用 Ｄ 消費者余剰（ＣＳ）台形ＡＢＣＤ の面積 Ｃ Ｐ 仮にレクリエーション地がなくなっ た場合、曲線は左下にシフトする Ｂ Ａ 訪問回数 11 ３.４ トラベルコスト法の問題 多くの研究者に指摘される問題点 問題点 要因 目的地が複数である旅行者の 旅費の分離が困難 ・目的地が複数の場合、指数の一つである旅行費用 の推定が難しい 長期滞在者の取り扱いが困難 ・旅費が同じでも日帰りでそのレクリエーションを 消費する旅行者もいれば、長期にわたって滞在 する旅行者もいる。 ３ 時間の機会費用の推定が困難 ・車での訪問の場合のドライブの時間、電車での 訪問の場合の乗り換え時間は時間費用になるか どのような指標を用いるか確立されていない ４ 評価対象がレクリエーション サービスに限定される ・利用価値のあるレクリエーションに限定される。 遺贈価値や非利用価値は計測されない ５ 関数形の選択に慎重に対応 する必要がある ・関数形の選択を誤った場合、貨幣価値も大きく 変わる可能性がある １ ２ 12 １ はじめに ２ 京都の概要 ３ トラベルコスト法 ４ アンケート調査の概要 ５ アンケート調査の集計結果 ６ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価 ７ 結論と今後の課題 13 ４.１アンケート調査の概要 京都に関する意識調査とトラベルコスト法に利用する数値の調査 質問項目 質問の意図 1 ・歴史景観、都市景観との調和 １．歴史景観、都市景観と調和しているか否か 2 ・玄関口としてふさわしいか否か ２．内部空間が玄関口としてふさわしいか否か 3 ・玄関口としてふさわしくない理由 ３．玄関口としてふさわしくないと考える理由 4 ・今後の京都駅周辺の開発 ４．京都駅周辺の今後の開発をどう考えているか 5 ・京都駅ビルの利用目的 ５．回答者の駅ビルに訪れた目的 6 ・京都駅ビルに訪れる頻度 ６．回答者が駅ビルに訪れる頻度 7 ・なくなった時に訪れる頻度 ７．駅ビルがない時の京都駅周辺に訪れる頻度 8 ・個人属性 ８．回答者の個人属性 14 １ はじめに ２ 京都の概要 ３ トラベルコスト法 ４ アンケート調査の概要 ５ アンケート調査の集計結果 ６ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価 ７ 結論と今後の課題 15 ５.１駅ビルに対する調査の集計結果 京都駅ビルに対する回答者の考え方や利用方法 0% 20% 40% 60% 80% 100% 古都京都としての歴史景観と は調和しており現代京都の都 市景観とも調和している 古都京都としての歴史景観と は調和しているが現代京都の 都市景観とは調和いていない 古都京都としての歴史景観と は調和していないが現代京都 の都市景観とは調和している 古都京都としての歴史景観と 調和しておらず現代京都の都 市景観とも調和していない 古都京都のイ メージに合わないから 現代京都をアピールするものとして不十分だ から その他 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図5.3京都駅ビルの空間が京都の玄関口としてふさわしくない理由についての単純集計 図5.1京都駅ビルの外観についての単純集計 さらに都市開発を進めるべき ふさわしいと思う 現在の都市開発レベルを維持するべき どちらかといえばふさわしいと思 う ふさわしくないと思う 歴史景観を保全、あるいは創造する方向に 転換すべき その他 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図5.2京都駅ビル空間が、京都の玄関口としてふさわしいか否かの単純集計 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 図5.4今後の京都駅周辺の開発についての単純集計 京都駅ビルは歴史景観と調和していないという声が多く、今後の京都駅周 辺の開発にも歴史景観の保全、創造を求める声が多いのが現状である 16 ５.２駅ビルの利用目的と個人属性 回答者の駅ビルの利用目的と回答者の個人属性を明らかにする 買い物 30.0% 20.0% 通過するだけで利用しない 10.0% 女性 男性 観光 0.0% その他 休憩 0% 20% 40% 図5.5京都駅ビルの利用目的についての単純集計 60% 80% 100% 図5.6性別についての単純集計 60.0% 50.0% 40.0% ％ 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代 年代 図5.7年齢についての単純集計 京都駅ビル周辺を利用する人は２０代が最も多い。これは京都駅周辺が 若者に人気のスポットであることを示している。 17 １ はじめに ２ 京都の概要 ３ トラベルコスト法 ４ アンケート調査の概要 ５ アンケート調査の集計結果 ６ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価 ７ 結論と今後の課題 18 ６.１現状の需要関数の推定 現在の京都駅ビル周辺に対するレクリエーション需要関数を推定する 訪問回数：V 定数項 旅行費用 ln V α βTC V f (TC) 旅行費用：TC 係数 ｔ値 1.543394 8.038665 -0.00012 -4.53366 旅 25000 行 20000 費 用 15000 （ 10000 Ｔ 5000 Ｃ 0 ） 0 10 20 30 40 50 60 70 訪問回数（Ｖ） 決定係数 0.252435052 個人iの訪問１回あたりの 消費者余剰 eαβa CSi β 図6.1旅行費用と訪問回数の散布図 TC=aのとき V=eα+βa 個人iの訪問１回あたりの 消費者余剰 CSi 1 αβa β e 現在の京都駅ビル周辺の経済価値は約３９８２億円 19 ６.２仮想状態での需要関数の推定 京都駅ビルがなくなった場合の京都駅周辺に対するレクリエーション需要関数を推定する ln V α βTC 定数項 係数 ｔ値 1.092079905 5.704714 旅行費用 -0.000089976351 -3.4662 旅 25000 行 費 20000 用 15000 （ 10000 Ｔ 5000 Ｃ 0 ） 0 10 20 30 40 50 60 70 訪問回数（Ｖ） 決定係数 0.159597148 個人iの訪問１回あたりの 消費者余剰 eαβa CSi β 図6.2仮想状態の旅行費用と訪問回数の散布図 TC=aのとき V=eα+βa 個人iの訪問１回あたりの 消費者余剰 CSi 1 β eαβa 20 ６.３京都駅ビルの経済価値 現状の曲線と仮想状態での曲線の差から経済価値を推定する 駅ビルがなくなった場合の京都駅周辺への訪問1回あたりの消費者余剰は11114円 平均旅行費用は4432円 この平均旅行費用を持つ人の訪問回数は現状では２．７７回、仮想状態では2.00回 旅行費用 約215億円 Ｄ 4700万×２．００／２．７７＝３３８９１８１７人 １１１１４×３３８９１８１７＝3767億 3982億-3767億＝215億 Ｃ 京都駅ビルの経済価値は年間約215億円 Ｐ 4432円 Ｂ 2.00 Ａ 2.77 訪問回数 21 １ はじめに ２ 京都の概要 ３ トラベルコスト法 ４ アンケート調査の概要 ５ アンケート調査の集計結果 ６ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価 ７ 結論と今後の課題 22 ７ 結論と今後の課題 京都駅ビルの経済価値が明らかになった今、住民の声を反映させた政策を行う必要がある 都市景観調和 歴史景観調和 玄関口として 今後の周辺開発 経済価値 分析の応用 駅 ビ ル に 対 す る 意 識 と 経 済 価 値 を 明 ら か に す る 評価されている 評価されていない 都市景観は評価されている 歴史景観の保全 年間約２１５億円 開発が話題の地域への併用 ※本論文で得られた推定結果は京都駅ビルを事例としたものであり、一般論とし て用いられるには更なる分析が必要である 23 ご清聴ありがとうございました 24 引用・参考文献 大石卓史・渡邉正英（2002）「仮想トラベルコスト法～環境質の変化を考慮した公共事業の事 前評価のために～」『UFJ Institute REPORT』、Vol.7、pp.51~56。 吉田友美（2002）「トラベルコスト法による歴史的町並みの経済評価－近江八幡の事例―」 『立命館大学環境デザインインスティテュート3回生論文集』 朝日新聞朝刊（1997年 10月09日） 京都駅ビルホームページ http://www.kyoto-station-building.co.jp/ 京都府ホームページ http://www.pref.kyoto.jp/tokei/ 西日本旅客鉄道（ＪＲ西日本）ホームページ http://www.westjr.co.jp/ 25
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