ゲーム理論・ゲーム理論Ⅰ (第6回) 第4章 戦略形ゲームの応用 2014年5月16日 担当 古川徹也 2014/05/16 1 今日の講義 • 教科書第4章「戦略形ゲームの応用」 4.1 弱支配戦略と支配されないナッシュ均衡 4.2 4.3 4.4 支配された戦略の繰り返し削除 【応用】オークション 【実践】インターネットオークション 2014/05/16 2 (弱)支配とゲームの解 • 支配戦略がある場合は,それを選択する と言うことが直ちに言える。 • 3つ以上戦略がある場合,支配戦略はな かったとしても,ある戦略に支配される 戦略がある場合,支配される戦略を削除 することでゲームの解を絞り込むことが できる。そのことを確認する。 • この考え方をオークションのモデルに応 用することを考える。 2014/05/16 3 4.1 弱支配戦略と 支配されないナッシュ均衡 4.1.1 戦略の支配関係 • 定義4.1(戦略の支配関係) あるプレイヤーの2つの戦略xとyを比べた ときに,自分以外のプレイヤーがどんな戦 略を選択しても,xのほうがyより高い利得 を与える場合,そのプレイヤーの戦略はxは yを支配すると言う。 • 2つの戦略の間の関係であることに注意。 支配戦略とは異なる。 2014/05/16 4 図4.1 戦略の支配関係 2 1 x2 y2 z2 x1 (4,3) (3,1) (2,2) y1 (3,2) (2,1) (1,1) z1 (2,3) (1,2) (0,1) ・x1はy1を支配する。y1はz1を支配している。した がって,x1はz1を支配している。 ・x1は支配戦略である。 2014/05/16 5 図4.1 戦略の支配関係(続き) 2 1 x2 y2 z2 x1 (4,3) (3,1) (2,2) y1 (3,2) (2,1) (1,1) z1 (2,3) (1,2) (0,1) ・合理的なプレイヤーであれば支配される戦略を選 ばない。支配戦略があればそれを選択する。 2014/05/16 6 4.1.2 弱支配と弱支配戦略 定義4.2(戦略の弱支配関係) あるプレイヤーの2つの戦略xとyを比べたとき に,そのプレイヤー以外がどんな戦略を選んで も,xの利得がy以上であり,なおかつ他のプレ イヤーの少なくとも1つの選択に対してはxの利 得がyの利得より高いとき,そのプレイヤーの 戦略xは戦略yを弱支配すると言う。 ・戦略xがyを支配するならば,xはyを弱支配す るが,xがyを弱支配するとき,xがyを支配する とは限らない。 2014/05/16 7 図4.2 弱支配関係 2 x2 y2 x1 (2,0) (3,1) y1 (1,1) (3,0) 1 戦略x1は戦略y1を弱支配する。 2014/05/16 8 弱支配戦略 • 定義4.3(弱支配戦略) あるプレイヤーの戦略xが他のすべての戦略 を弱支配するとき,そのプレイヤーの戦略x を弱支配戦略と呼ぶ。 • 合理的なプレイヤーは,弱支配された戦 略を選択しないと考える。 • もし弱支配戦略があれば,それを選択す る。 2014/05/16 9 4.1.3 支配されないナッシュ均衡と ナッシュ均衡の精緻化(図4.3) 2 x2 y2 x1 (2,1) (3,0) y1 (1,0) (3,1) 1 弱支配の考え方を利用すれば,ゲームの解 は(x1,x2)のみがもっともらしい。 しかし,ナッシュ均衡は(x1,x2)と(y1,y2) 2014/05/16 10 支配されないナッシュ均衡 • 定義4.4(支配されないナッシュ均衡) ナッシュ均衡の中で,すべてのプレイヤー の戦略がそのプレイヤーのどの戦略にも弱 支配されていないとき,そのナッシュ均衡 を支配されないナッシュ均衡と呼ぶ。 • ナッシュ均衡の中で,支配されないナッ シュ均衡をゲームの解として考える。 2014/05/16 11 均衡の精緻化(refinement) • ナッシュ均衡は,ゲームの解が持つべき 最低限の性質しか持っていないと考えら れる。 • したがって,ナッシュ均衡の定義だけで は,ゲームの種類によってはおかしな戦 略の組み合わせもナッシュ均衡として認 められてしまう。 • ナッシュ均衡の中から,より望ましいと 思われる性質をもつ戦略の組み合わせに 絞り込むことを,均衡の精緻化と呼ぶ。 2014/05/16 12 4.2 支配された戦略の繰り返し削除 • 「支配された戦略は合理的プレイヤーに よって選択されない」ということを利用 して,大きなゲームを小さなゲームに変 形する。 • それを繰り返すことによって,唯一の戦 略の組み合わせに到達できれば,それを ゲームの解と考えることができる(合理 的なプレイヤーがプレイした結果)。 • ただし,いつも唯一の戦略の組み合わせ にたどりつけるわけではない。 2014/05/16 13 図4.5 支配された戦略の繰り返し削除(1) 2 1 x2 y2 z2 x1 (2,3) (2,1) (1,2) y1 (1,2) (1,6) (8,1) x2がz2を支配する→z2を削除 2014/05/16 14 図4.5 支配された戦略の繰り返し削除(2) 2 1 x2 y2 x1 (2,3) (2,1) y1 (1,2) (1,6) x1がy1を支配する→y1を削除 2014/05/16 15 図4.5 支配された戦略の繰り返し削除(3) 2 1 x1 x2 y2 (2,3) (2,1) x2がy2を支配する→y2を削除 唯一残る組み合わせは(x1,x2) これはもとのゲームの唯一のナッシュ均衡とも なっている。 2014/05/16 16 (x1,x2)がナッシュ均衡であることの確認 2 1 x2 y2 z2 x1 (2,3) (2,1) (1,2) y1 (1,2) (1,6) (8,1) 2014/05/16 17 図4.6 弱支配された戦略の繰り返し削除(1-1) 2 x2 y2 x1 (8,3) (0,3) y1 (4,2) (0,1) z1 (8,1) (-8,2) 1 x1がz1を弱支配する→z1を削除 2014/05/16 18 図4.6 弱支配された戦略の繰り返し削除(1-2) 2 x2 y2 x1 (8,3) (0,3) y1 (4,2) (0,1) 1 x2がy2を弱支配する→y2を削除 2014/05/16 19 図4.6 弱支配された戦略の繰り返し削除(1-3) 2 1 x2 x1 (8,3) y1 (4,2) x1がy1を支配する→y1を削除 残るのは(x1,x2) 2014/05/16 20 図4.6 弱支配された戦略の繰り返し削除(2-1) 2 x2 y2 x1 (8,3) (0,3) y1 (4,2) (0,1) z1 (8,1) (-8,2) 1 x1がy1を弱支配する→y1を削除 2014/05/16 21 図4.6 弱支配された戦略の繰り返し削除(2-2) 2 x2 y2 x1 (8,3) (0,3) z1 (8,1) (-8,2) 1 y2がx2を弱支配する→x2を削除 2014/05/16 22 図4.6 弱支配された戦略の繰り返し削除(2-3) 2 1 y2 x1 (0,3) z1 (-8,2) x1がz1を支配する→z1を削除 (x1,y2)がゲームの解 2014/05/16 23 図4.6のナッシュ均衡 2 x2 y2 x1 (8,3) (0,3) y1 (4,2) (0,1) z1 (8,1) (-8,2) 1 (x1,x2),(x1,y2)がナッシュ均衡 2014/05/16 24 均衡の精緻化と今日の議論 • ナッシュ均衡の条件だけでは,ゲームの 解が複数出てくる可能性がある。これは 予測として問題がある。 • そこで,ナッシュ均衡の条件以外の要件 を付け加え,その要件「も」満たす解は ないかを考えるのが均衡の精緻化。 • 「(弱)支配される戦略の繰り返し削除 でも生き残る」という要件を加えて考え たのが今日の議論。 2014/05/16 25 「繰り返し削除」でわかること • 「支配される戦略の繰り返し削除」で絞り込 みが成功するとは限らない(そのような戦略 がないゲームもたくさんあるから) • 「(強い意味の)支配される戦略の繰り返し 削除」によって唯一の解が得られた場合,そ れはもともと唯一のナッシュ均衡として得ら れるものだから,絞り込みという観点からは 弱い。 • 「弱支配される戦略の繰り返し削除」で唯一 の解が得られた場合,それは複数のナッシュ 均衡からの絞り込みとなっている。しかし, 削除の順番で別のナッシュ均衡にたどり着く ことがある,という問題点を抱えている。 2014/05/16 26 確認:今日の議論の意味 • 戦略的相互依存関係が存在する合理的な主体 (プレイヤー)の間で「ゲーム」が行われた ときに,どのような状況が起こるかを予測す ることが,ゲームを解くと言うこと。 • ゲームの解が満たすべき条件の基本がナッ シュ均衡の条件。 • ナッシュ均衡の条件だけでは予測として弱い 可能性があるので,新しい条件を付け加えた 解を考える必要がある。 • 今日の「繰り返し削除」は,合理的なプレイ ヤーの間のゲームの解が満たすべき要件の1 つの例。 2014/05/16 27
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