│ 辛い時期乗り越えると見えるものが︵富田英太／取材・文︶世界中の生命保険・金融サービス専門職の毎年トップクラスのメンバーで構成されるＭＤＲＴ︵ Million Dollar Round Table ︶。その日本会会長を２００６年に務めていたのが河村昭代氏だ。河村氏が保険業界に飛び込んだのは歳のときと遅い。それでも、国内トップクラスの販売実績を積み上げ、いまでは押しも押される存在に。現在は、独立系のファイナンシャルサービス会社である株式会社ボンヌの代表取締役を務める。不屈の精神で保険業界の最先端を走り続ける河村氏に迫った。 │ 27 20 │ │ 15 ▲ ろん、わたし自身もその自覚はありました。ですが、その会社は年目で一度破綻しているんです。当時、わたしが一番売っていた時期でしたから、当然担当していた顧客も多く、休む暇はないくらいその対応に追われていました。破綻したときには、業界の経験も十分ありましたから、他社からのスカウトも多かったんです。そのときに、辞めた人もたくさんいたのですが、わたしは辞めようと思いませんでした。正確には、そのゆとりがありませんでしたね。関わらないわけにはいかないお客さまがたくさんいらっしゃいましたから。どんな小さな保険の契約であっても、そのお客さまからすれば、ものすごく大事なお金を毎月払っているわけです。わたしの担っている責任はとても大きい。お恥ずかしながら、その破綻の経験のなかで、はじめてその責任の重さに気が付き、自分のやるべきことが明確化したのです。ですので、そのときは、顧客のためにがむしゃらに前だけを見て頑張りました。その後ですね。そういった苦境を乗り越えたことにより得た信頼や、そういう状況でわたしたちを助けてくださった方々の「飛び込み営業は辛いがそこから信頼関係を築く」１期生を募集していました。それに応募したのが、いまの保険業界に入ったきっかけです。保険の営業というと、厳しい業界というイメージですが？河村おっしゃる通りです。いまは改善されているかもしれませんが、外資系の大手企業でも残存率は２年程度といわれていましたね。わたしも、いわゆる飛び込み営業も毎日やっていましたし、絶対続けていくのは無理だと思っていました。でも、過去の仕事で経験してきたことや、仕事がなかったときのことを考えると、続けるという選択肢しかありませんでした。﹁やるしかない﹂という感じでしたね。これが社会経験の少ない歳代であれば、辞めていたかも知れません。しかし、その辛い時期を乗り越えると、色んなことが見えてきました。楽というと語弊がありますが、やるべきことの感覚が自然と身についているんですね。最初は保険業界で働くことには嫌なイメージを持っていましたが、やっていくうちに、また勉強をしていくうちに、これほどすばらしい仕事はないと思うようになりました。その後独立されるわけですが、そのきっかけは？河村その保険会社には年いたのですが、年くらい経ったころから独立したいなと思っていました。年以上も同じ会社にいますと、会社にとっては、大事なベテラン社員なわけですから、簡単な理由では辞めさせてもらえません。もち │ （かわむらあきよ）東京都出身。武蔵野美術短期大学工芸工業デザイン科卒業。株式会社ボンヌ代表取締役。27 年間１社専属の営業で連続 M Ⅴ P 獲得。2006 年度の MDRT 日本会会長。編集記者、デザイン会社を経験後。40 歳から保険会社の営業を始め、㈱ボンヌを設立。ファイナンシャルプランナーとして独立、活躍中。ホームページ http://www.bonne-inc.com/ 河村わたしがこの保険業界に入ったのは、特別な意思があったわけではなく偶然です。昭和年に生命保険業界に入ったんですが、それまでは編集記者の仕事や、友人との共同経営でアクセサリーなど工芸のデザイン関係の仕事をしていました。デザイン関係の順調でしたが、その事業が軌道に乗り始めたときに、身体を壊してその仕事は辞めてしまいました。それから、何の仕事をしようかなと探したのですが、そのとき、わたしは歳で、いまも就職難と言われていますが、当時も簡単に就職が見つかる状況じゃありませんでした。そのときに初めて求人雑誌を見たのですが、そこである生命保険会社が企業専門の女性保険営業マンの 57 40 現在の主な業務内容を教えてください。河村個人や法人で抱える問題発見から、その解決策の提供、ファイナンシャル相談、金融、生命保険の見直し相談。そのほかセミナーの企画と運営、企業診断、リスクファイナンシングなどを行っています。会社名の由来は？河村ボンヌという言葉は、フランス語で、①善良な、有徳な②正確な、正しい、健全な、立派な③信頼できる、安全なーなどの意味があります。お客さまの夢の実現に向けてベストなものを提供したいという意味を込めて、この名前にしました。保険業界に入ったきっかけを教えてください。 40 河村昭代会長元ＭＤＲＴ株式会社ボンヌ代表取締役社長 20 20 （10） ( 第三種郵便物認可 ) 第３１２３号２０１０年（平成２２年）５月２５日（月曜日） 40歳で保険業界に国内トップを走り続ける秘訣 │ │ アドバイスやお力添えのおかげで、夢であった独立をしようと決心したのです。顧客を増やすコツはありますか？河村どんな業界も同じだと思いますが、やはり紹介、口コミですかね。最初に飛び込み営業を経験して分かったのですが、名簿片手に飛び込み営業するのって本当に辛いですよね。でも不思議なもので、何度も訪問すると、訪問先企業さまの中で行きやすいところが出てくるんです。また、人間関係と同じで、うるさいと言われながらも情が生まれるんです。そうすると、そこで少しずつでも信頼関係ができてくれば、お仲間を紹介してもらえたりします。でも、その一歩を作るのが大変であって、ほとんどの人は、それまでにあきらめてしまうんです。ですから、最初は大変だと思いますが、数をこなしてコツをつかむことが大切です。コツは経験の中でしかつかめませんから。最後に、読者の方へひと言お願いします。河村やはり失敗を恐れないことですかね。成長というのは、失敗したことをどう修正していくかだけだと思うんです。経営者の方々なんてとくに、失敗を経験していない人は一人もいないんじゃないですかね？わたしは、失敗の上でしか人は成長できないと思っています。失敗をすることによって、知恵や工夫が生まれて、それが成長につながる。ときに若いうちはがむしゃらにやればいいと思うんです。わたしは、いまでも常に失敗を恐れず成長がしたい。成功者よりも成長者になりたいといつも思っています。取材・文／富田英太︵とみた︶㈱アひでひろチーブメントストラテジー社代表取締役・店舗経営黒字化コンサルタント。これまでに１千店を黒字化。著書に﹁お金をかけずに繁盛店に変える本﹂︵日本実業出版社︶などがある。