線形代数学 第1章 ベクトル 1.1 ベクトル空間 1.2 ベクトルの一次独立性 1.3 部分ベクトル空間 平成16年6月3日(木) 谷津 哲平 n次元数ベクトル 定義1.1 n次元数ベクトル n個の実数または複素数 a1, a2,…, an を順序も考えて横に並べた列 ( a1, a2,…, an ) (1.1) 2次元実ベクトル( a1, a2 ) ⇒ 平面上の位置ベクトル 3次元実ベクトル( a1, a2, a3 ) ⇒ 空間の位置ベクトル 加法と数乗法 n n次元の実数ベクトルの全体の作る集合R の要素の間 には次の演算が考えられる 加法 (a1, a2, …,an) + (b1, b2, …,bn) = (a1 +b1, a2 +b2, …,an +bn) 数乗法 λ・(a1, a2, …,an) = (λa1, λa2, …, λan) n n R の任意の要素にこの演算をほどこしても, R から出 てしまうことは無い ベクトル空間の公理 1 a+b=b+a 2 (a + b) + c = a + (b + c) 3 a+0=a この性質を持つ元 0 が どんな a にも存在する 4 a+x=0 この性質を持つ元 x が a に応じて存在する 5 1・a=a 6 λ・(μ・a) = (λμ)・a 7 (λ+μ)・a = λ・a +μ・a 8 λ・(a + b) = λ・a + λ・b ベクトルとスカラー ベクトル…ベクトル空間の元 スカラー…数乗法に用いられる数 係数体(スカラー体)…スカラー全体の作る集合 (その中で四則演算ができる集合) ※スカラー体は実数全体 Rか,複素数全体 Cをとることが多い どちらでも通用するときK 例)K上のベクトル空間 ベクトルの1次結合 x = c1 a1 + c2 a2 + ……+ck ak (1.3) ベクトル x を a1, a2,…..,ak の1次結合という (張られている) c1 a1 + c2 a2 + ……+ck ak + (-1)・x = 0 (1.4) ベクトルの1次従属 c1 a1 + c2 a2 + ……+ck ak + (-1)・x = 0 (1.4) 定義1.2 a1, a2,…..,ak が1次従属である すべては 0 でないあるスカラー c1,c2, ….,ckによって 次が成り立つ c1 a1 + c2 a2 + ……+ck ak = 0 (1.5) 1次従属と1次結合 c1 a1 + c2 a2 + ……+ck ak = 0 (1.5) a1, a2,…..,ak が1次従属ならばc1,c2, ….,ckのうちどれかは0でない -ci ai = c1 a1 + … +ci-1 ai-1 + ci+1 ai+1 + …+ck ak 0でないスカラー ai = (-1/ ci )(c1 a1 + … +ci-1 ai-1 + ci+1 ai+1 + …+ck ak ) ai は a1,…ai-1, ai+1, … akの1次結合!! ベクトルの1次独立 1次従属 でなければ 1次独立 定義1.3 a1, a2,…..,ak が1次独立である c1 = c2=….=ck = 0 によって次が成り立つ c1 a1 + c2 a2 + ……+ck ak = 0 (1.5) 部分ベクトル空間 n R の部分集合Eが,スカラー乗法に関して“閉じて”いるとき n 2 E を R の部分ベクトル空間という R では原点を通る直線 3 R では原点を通る直線や平面 Eが 部分ベクトル空間 であることをいうには 「任意のa, b∈E とλ,μ∈Rに対し,λa +μb∈E 」 をいえばよい ベクトルa1,….,akから決まる E を a1,….,ak-1で張られる部分ベクトル空間といい次のようにかく E = [a1,….,ak-1] 部分空間の基底 a1, a2,…..,ak が1次従属ならば ある一つ例えばakは他のa1,….,ak-1で張られている →Eはa1,….,ak-1で張られている a1, a2,…..,ak が1次独立で,かつ, E=[a1,….,ak-1] ならば a1,….,ak-1をEの基底という. k は E の次元 まとめ c1 a1 + c2 a2 + ……+ck ak = 0 (1.5) 0 でないスカラーc があるなら 1次従属 c がすべて 0 なら 1次独立 a1,…, akが 1次従属 であることと, そのうちのどれか1つが 他の 1次結合 であることは同じ概念 <基底> 1.それらは1次独立 2.任意のベクトルはそれらの1次結合の形に表せる 宿題 1. 次のベクトルは1次独立か否か. (1) a1 = ( 1, 1, -1), a2 = ( 2, 1, 0), a3 = ( 0, -2, 5) (2) a1 = ( 1, 0, 1, 0), a2 = ( 2, 1, 1, 1), a3 = ( 0, 1, 2, 3) 2. n次元ベクトルが (n+1) 個以上あればそれらは1次従属であることを示せ. 3 3. 次のR の平面は部分ベクトルである.基底をつくれ. (1) x + 3y – z = 0 (2) 2x – y = 0
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