20140808(FRI) 大津市 吾妻川源流域のガウジ、シュードタキライト、鏡肌– 2 引き続き、吾妻川の断層、ガウジ、シュードタキライト、鏡肌について述べる。今回は主 に、左岸のそれについて述べる。 左岸を論及する前に今回の全体図を示す。 図 F-1 は吾妻川の左岸の上部から断層部を見た写 真である。つまり、川は右手から左下に流下す る。黒味を帯びた青色岩が右岸からつながる河床 が広がる。 この河床は左の部分で傾斜がきつくなり滝状に 水は流れ落ちる。 この写真からは判別できないが、この河床部の岩は右サイドは火成岩であり、傾斜がきつ くなる部分は泥岩である。そこに全体的に石英脈が走り、それは図のように大きく屈曲して いる。また屈曲部の変移量も計測可能で、地震による断層の移動距離も測定できる。 この河床域には多数の断層が存在し、その多くの部分には鏡肌と断層粘土が併存してい る。しかし、ガウジと言えるものは外観的には存在していない。従来まで、この岩石域の断 層、鏡肌などについて述べてきた。 今回述べるのは、写真 F-1 の右岸、つまり、写真の手前の部分である。上記のように吾妻 川は谷に深く切り込まれた川である。またこの場所は北面の急斜面の上、谷は杉の森からな るので日中でも薄暗い。また、そこに木の幹や枝葉も堆積し見にくかった。また、その場所 の調査をしようとすると谷川に入る事が必須となる。川の水量が多いと危険でもある。また 寒いときは動きにくい。そんなことで本格的な調査はこの夏から始めた。 最初に左岸の断層部の 写真を示す。 写真 AK-1 の中央から 右に傾斜した高い直線性 の筋が見える。これはシ ュードタキライトであ る。その右手にも帯状物 が伸びている。この部分 がガウジである。このガ ウジの部分にも黒い筋が 走っている。その右側は 硬い岩でありガウジと接 する面に鏡肌が存在す る。 なお、中央部の黒い筋 の右側にも多数の筋が存 在する。この部分は泥岩主体である。全体に脆いが所謂、ガウジほど脆くはない。 写真 AK-1 の右上部を拡 大したものが AK-2 であ る。鏨が岩とガウジの境 界面である。 岩石も直線的に下方に 延びている。ガウジの部 分の左にシュードタキラ イトが真っ直ぐに伸びて いる。鏨の頭の方にも黒 い筋があり、それも下方 に延びている。 次に、この部分の下部を見てみたい。左の岩石部、ガウジ、細いシュードタキライト、また 右サイドにもシュードタキライトが見える。 中央部の筋状構造は全体に下方に拡大し ている。 右サイドのシュードタキライト、岩とも 直線性は高い。一方、中央部の筋は湾曲 した構造である。湾曲した左上は結構硬 い岩である。一方、その下は脆く、ガウ ジに近いともいえる。 重富、林らは野島断層の構造を調べて、 筋状構造が湾曲している場合もあること を示している。 大津市の音羽山の断層の場合は極めて近傍でそうした構造が併存している。 また、左サイドには礫状の物も存在している。 ここで、直線性の高いシュードタキ ライトの表面の一例を示す。 条線、つまり、地震による大地の変 動方向が、右上から斜下方向に走行し ていることが読み取れる。また、白色 の微粒子も散在している。 なお、このシュードタキライトは固 結してはいない。 このガウジに接したシュードタキラ イトは剪断で動いた面ではあるが溶結 はしていない。 なお、残念なことに、写真 AK-2 の左サイドのシュードタキライトは取っていないのでそれ が固結しているか否かは今は不明である。 次に、下方に開いた部分の拡大写真を示す。 幾つかの丸みを帯びた構造が見られる。写真の真ん中に窪んだ丸みがある。その部分は私が 丸みの部分を取った跡である。 丸みの写真を示す。凸レンズの形をし、表面は鏡肌のように光沢と滑らかさを有するもので ある。反対面も同様につるつるでありよく反射する。 次に、ガウジと接する岩の写真を示す。この岩は硬く割れにくい。また、薄暗いので割れ目 が見つけにくい。一番上の部分を取ったら、予想外にもそこに光を高度に反射し、スベスベ の岩の表面があった。ただ、残念ながら全面が鏡肌ではなかった。しかし反射し、平滑な部 分をよく観察すると条線も確認でき、鏡肌があることが分かった。 つまり、ガウジとの境界面は鏡肌であった。 この部分の岩の表面は溶結したように見える。 上にしめしたシュードタキライトの場合は溶 結はしていない。そのシュードタキライトの 場合は、両サイドともガウジないしそれに近 い構造のため溶結しなかったのかもしれな い。 なお、写真 AK-2 に示すようにこの部分の最下部の右側には鏡肌と思われる物が見える。近 く、この部分などの観察を工夫し、ガウジとの接面の状況をより広範囲で調査したい。 以上
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