第10回

物理学演習 IIB 問題 No.10 (量子力学 I)
2014 年 12 月 22 日
ˆ = −iℏ∇ に対する固有値 p の固有関数は,
1. 粒子の運動量演算子 p
φp (r) =
1
ei p·r/ℏ
(2πℏ)3/2
(1)
である。
(a) 以下の性質が成り立つことを確かめよ。
∫
ˆ φp (r) = p φp (r)
p
(固有値方程式)
d3 r φp (r)∗ φp′ (r) = δ 3 (p − p′ )
(正規直交性)
d3 p φp (r)φp (r ′ )∗ = δ 3 (r − r ′ )
(完全性)
(2)
(b) 完全性から, 任意の波動関数 ψ(r) を φp (r) の重ね合わせによって
∫
ψ(r) = d3 p cp φp (r)
(3)
∫
と表せることがわかる。係数 cp を ψ(r) を使って表せ。
2. 粒子の位置座標演算子 rˆ = r に対する固有値 a の固有関数は,
φa (r) = δ 3 (r − a)
(4)
である。
(a) 以下の性質が成り立つことを確かめよ。
∫
rˆ φa (r) = a φa (r)
(固有値方程式)
d3 r φa (r)∗ φa′ (r) = δ 3 (a − a′ )
(正規直交性)
d3 a φa (r)φa (r ′ )∗ = δ 3 (r − r ′ )
(完全性)
(5)
(b) 完全性から, 任意の波動関数 ψ(r) を φa (r) の重ね合わせによって
∫
ψ(r) = d3 a ca φa (r)
(6)
∫
と表せることがわかる。係数 ca を ψ(r) を使って表せ。
1
3. 座標演算子 x
ˆ の固有値 x の固有状態をケット・ベクトル |x⟩ で表すと,
x
ˆ |x⟩ = x |x⟩ ,
⟨x|x′ ⟩ = δ(x − x′ )
pˆ |x⟩ = iℏ
∂
|x⟩ ,
∂x
∫
∞
(正規直交性),
−∞
dx |x⟩⟨x| = ˆ1 (完全性)
(7)
が成り立つ。ここで, pˆ は運動量演算子, ˆ
1 は恒等演算子である。(注意:x
ˆ, pˆ はケット・ベクト
∂
∂
ルに作用する演算子であり, x, −iℏ ∂x
ではない。したがって, x
ˆ ∂x
=
∂
ˆ
∂x x
や pˆx = xˆ
p が成り
立つ。)
(a) 正準交換関係 [ˆ
x, pˆ] |x⟩ = iℏ |x⟩ が成り立つことを確かめよ。
(b) フーリエ変換を使って, ケット・ベクトル |p⟩ を,
∫ ∞
∫ ∞
dx ipx/ℏ
dp −ipx/ℏ
√
√
e
e
|p⟩ =
|x⟩ ,
|x⟩ =
|p⟩
2πℏ
2πℏ
−∞
−∞
(8)
によって定義する。2 番目の式は初めの式の逆変換である。(7) を使って,
pˆ |p⟩ = p |p⟩ ,
⟨p|p′ ⟩ = δ(p − p′ )
x
ˆ |p⟩ = −iℏ
∂
|p⟩ ,
∂p
∫
∞
(正規直交性),
−∞
dp |p⟩⟨p| = ˆ1
(完全性)
(9)
が成り立つことを示せ。部分積分を行う際は, 表面項は無視してよい。((9) の最初の式か
ら, |p⟩ は運動量演算子 pˆ の固有値 p の固有状態であることがわかる。)
(注意: |p⟩ は (8) によって定義された状態であり, |x⟩ で x = p としたものではない。正確に
は, |x⟩, |p⟩ を |x⟩xˆ , |p⟩pˆ などのように書き, x
ˆ の固有状態と pˆ の固有状態を区別すべきだが, こ
こでは簡単のため添字 x
ˆ, pˆ を省略して書いた。)
4. 1 次元の量子力学系の状態をケット・ベクトル |ψ⟩ で表す。問題 3 の |x⟩ を使って ψ(x) = ⟨x|ψ⟩
とおき, ψ(x) を |ψ⟩ の座標表示 (x 表示) とよぶ。(以下の問の結果からわかるように, この ψ(x)
は通常の波動関数である。)
(a) ケット・ベクトル |ψ⟩ を, |x⟩ の重ね合わせとして,
∫ ∞
|ψ⟩ =
dx |x⟩ ψ(x)
(10)
−∞
と表せることを示せ。
(b) 状態 |ψ1 ⟩ と |ψ2 ⟩ の内積 ⟨ψ1 |ψ2 ⟩ を, ψ1 (x), ψ2 (x) を使って表せ。
(c) ケット・ベクトル x
ˆ |ψ⟩, pˆ |ψ⟩ の座標表示が,
⟨x|ˆ
x|ψ⟩ = xψ(x),
⟨x|ˆ
p|ψ⟩ = −iℏ
∂
ψ(x)
∂x
(11)
となることを示せ。
(d) 状態の時間依存性 |ψ(t)⟩ は, シュレディンガー方程式
iℏ
d
ˆ |ψ(t)⟩
|ψ(t)⟩ = H
dt
ˆ =
によって決まる。ハミルトニアンが H
の時間依存性を決める方程式を求めよ。
2
1
2m
(12)
pˆ2 +V (ˆ
x) のとき, 座標表示 ψ(x, t) = ⟨x|ψ(t)⟩
(e) ケット・ベクトル |x′ ⟩, |p⟩ の座標表示が,
φx′ (x) ≡ ⟨x|x′ ⟩ = δ(x − x′ ),
φp (x) ≡ ⟨x|p⟩ = √
1
eipx/ℏ
2πℏ
(13)
であることを示せ。(これらは, 問題 1, 2 の固有関数 (の 1 次元版) である。)
5. 問題 4 と同様に, 1 次元の量子力学系の状態をケット・ベクトル |ψ⟩ で表す。問題 3 の |p⟩ を使っ
˜
˜
て ψ(p)
= ⟨p|ψ⟩ とおき, ψ(p)
を |ψ⟩ の運動量表示 (p 表示) とよぶ。
(a) ケット・ベクトル |ψ⟩ を, |p⟩ の重ね合わせとして,
∫ ∞
˜
|ψ⟩ =
dp |p⟩ ψ(p)
(14)
−∞
と表せることを示せ。
(b) 状態 |ψ1 ⟩ と |ψ2 ⟩ の内積 ⟨ψ1 |ψ2 ⟩ を, ψ˜1 (p), ψ˜2 (p) を使って表せ。
(c) ケット・ベクトル x
ˆ |ψ⟩, pˆ |ψ⟩ の運動量表示が,
⟨p|ˆ
x|ψ⟩ = iℏ
∂ ˜
ψ(p),
∂p
˜
⟨p|ˆ
p|ψ⟩ = pψ(p)
(15)
となることを示せ。
(d) 状態の時間依存性 |ψ(t)⟩ は, シュレディンガー方程式 (12) によって決まる。ハミルトニア
˜ t) = ⟨p|ψ(t)⟩ の時間依存性を決める方程
ˆ = 1 pˆ2 + V (ˆ
x) のとき, 運動量表示 ψ(p,
ンが H
2m
式を求めよ。
˜
(e) |ψ⟩ の運動量表示 ψ(p)
は, |ψ⟩ の座標表示 ψ(x) のフーリエ変換であること
∫ ∞
dx −ipx/ℏ
˜
√
ψ(p)
=
e
ψ(x)
2πℏ
−∞
(16)
を示せ。
[補足]
上の問題 3∼5 は, No. 1 (特に, 問題 2) で扱った線形空間と関連している。|x⟩ (−∞ < x < ∞)
は線形空間の正規直交基底 ei (i = 1, 2, · · · , N ) に対応し, (10) はベクトル v を基底の線形結合
∑N
で表した式 v = i=1 ei vi に相当する。有限個の値をとる i が連続的な値をとる x になってい
る。したがって, |x⟩ を基底とする線形空間は無限次元である。また, |p⟩ (−∞ < p < ∞) は別
∑N
の正規直交基底 e′i (i = 1, 2, · · · , N ) に対応し, (14) は v = i=1 e′i vi′ に相当する。|x⟩ と |p⟩ の
∑N
関係 (8) は, 2 つの正規直交基底の間のユニタリー変換 e′i = j=1 Uij ej に相当する。
3
6. 1 次元の無限に深い井戸型ポテンシャル
{
V (x) =
0
(0 < x < a)
+∞ (x < 0, x > a)
(17)
の中の質量 m の粒子の量子力学を考える。ハミルトニアン
2
2
ˆ 0 = − ℏ d + V (x)
H
2m dx2
の規格化された固有関数は, x < 0, x > a では 0 で, 0 < x < a では
√
( nπ )
2
ψn (x) =
sin
x
(n = 1, 2, 3, · · · )
a
a
(18)
(19)
である。
(a) 境界条件 ψn (0) = 0 = ψn (a) と規格化条件
∫∞
−∞
dx |ψn (x)|2 = 1 を満たすことを確かめよ。
ˆ 0 の固有値 En を求めよ。
(b) H
ˆ 0 に摂動 H
ˆ 1 が加わったとき, 全ハミルトニアン H
ˆ =H
ˆ 0 + Hˆ1
(c) 一般に, ハミルトニアン H
ˆ 0 の固有値 En からずれ, En + ∆En となる。摂動論の 1 次の近似では, エ
の固有値は, H
ネルギーのずれ ∆En は,
∫
∆En =
∞
−∞
ˆ 1 ψn (x)
dx ψn (x)∗ H
(20)
ˆ 0 の規格化された固有関数である。
によって与えられる。ここで, ψn (x) は H
ハミルトニアン (18) に, 摂動
ˆ 1 = gx(a − x)
H
(g は定数)
が加わった場合のエネルギーのずれ ∆En を, 摂動論の 1 次の近似で求めよ。
4
(21)