第5章 セカンダリー・マーケットのCBA

6. セカンダリー・マーケットのCBA
政策評価(07,11,14)三井
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6.1 効率的セカンダリー・マーケット
6.2 歪みのあるセカンダリー・マーケット
6.3 地域社会の観点からの
セカンダリー・マーケットの影響
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6.1 効率的セカンダリー・マーケット
• セカンダリー・マーケットはどのように考慮すべきか。
• セカンダリー・マーケットでプライマリー・マーケットを捉えること
ができるか。
⇒ それは、補完財であるか代替財であるかに依存する。
(例)
プライマリー・マーケット=釣りの市場
セカンダリー・マーケット=釣り道具の市場&ゴルフの市場
釣りvs.釣具= 補完財
釣りvs.ゴルフ=代替財
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価格変化を伴わない効率的なセカンダリー・マーケット
<釣りの市場=プライマリー・マーケット>
qF=釣りに行く回数(日数) = access price
PF=釣りに1回行く実効価格(effective price)
PF
MCF0=放流プロジェクト前の限界費用
MCF1=放流プロジェクト後の限界費用
実効価格=移動時間の機会費用+運賃+・・・
PFO= MCF0
PF1= MCF1
DF
qF0
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qF1
qF
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価格変化を伴わない効率的なセカンダリー・マーケット
<釣りの市場=プライマリー・マーケット>
ΔCS= Ⅰ+Ⅱ
B= ΔCS= Ⅰ+Ⅱ
PF
PF0
Ⅰ
Ⅱ
PF1
DF
qF0
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qF1
qF
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<釣具の市場=セカンダリー・マーケット>
qE =釣具の量
PE
PE =釣具の価格
DE0 =放流前の釣具の需要曲線
DE1 =放流後の釣具の需要曲線
PE = PE0 ; 水平な供給曲線
PE0
DE0
qE0
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DE1
qE1
qE
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<釣具の市場=セカンダリー・マーケット>
B= ΔCS= (Ⅰ+Ⅱ)+(Ⅲ+Ⅳ)
PE
と計算してよいであろうか。
⇒ No
⇒ 補完財のときは重複計算である。
Ⅲ
Ⅳ
PE0
DE0
qE0
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DE1
qE1
qE
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<セカンダリー市場が
プライマリー市場の便益を重複計算する例>
u=min(qF, qE) ; 効用関数
PFqF+PEqE=M ; 予算制約式
PE0=1 ; セカンダリー財の価格は1
PF0=放流前の釣りの実効価格
PF1=放流後の釣りの実効価格
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等価変分EVと補償変分CV
qE
qE=qF
M/PE0
M/(PF0+PE0)
PF0qF+PE0qE=M
PF0 / PE0
qF
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等価変分EVと補償変分CV
状態0: PF=PF0
Equivalent Valuation
状態1: PF=PF1
Contingent Valuation
PE=PE0=1 のケース
qE
qE=qF
EV=M(PF0-PF1)/(PF1+1)
CV=M(PF0-PF1)/(PF0+1)
EV
M
CV
M/(PF1+1)
M/(PF0+1)
PF0
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PF0qF+qE=M
PF1
qF
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プライマリー・マーケットにおけるCV, ΔCS, EV
qF=M/(PF0+1)
PF
qF=M/(PF1+1)
Ⅰ= M(PF0-PF1)/(PF0+1)=CV
Ⅰ+Ⅱ= ΔCS
Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ= M(PF0-PF1)/(PF1+1)=EV
・
PF0
Ⅰ
PF1
Ⅱ
Ⅲ
・
qF =M/(PF+1)
M/(PF0+1) M/(PF1+1)
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qF
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セカンダリー・マーケットにおけるCV, ΔCS, EV
Ⅳ= M(PF0-PF1)/(PF0+1)=Ⅰ= CV
PE
Ⅳ+Ⅴ= Ⅰ+Ⅱ= ΔCS
←(注1)or(注2)
Ⅳ+Ⅴ+Ⅵ= M(PF0-PF1)/(PF1+1)=EV
Ⅳ
Ⅴ
PE0 =1
Ⅵ
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M/(PF0+1)
PE= =(M/qE)-PF1
qE =M/(PF0+PE)
PE= =(M/qE)-PF0
qE1
=
=
qE0
qE =M/(PF1+PE)
M/(PF1+1)
qE
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(注1)
qE =M/(PF1+PE)を(qF,PF)平面に描く。
qF =M/(PF+1)はqF =M/(PF1+PF)をPF方向
にPF1– 1だけ平行移動した曲線である。
PF
Ⅴ=Ⅱ
PF0
PF1
PF0 –PF1 + 1
Ⅱ
qF =M/(PF+1)
Ⅴ
PE0 =1
qF =M/(PF1+PF)
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M/(PF0+1)
qE1
=
=
qE0
M/(PF1+1)
qF
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(注2)
積分を用いれば(注1)の議論は次のように示すことができる。
 M


Ⅴ   
 PF 1   PE 0 dqE
qE 0

 q E

qE1
M
PF 1 1
M
PF 0 1

M
PF 1 1
M
PF 0 1

 M
 
  PF 1   1dqE
 
 qE
 M
 
 PF 1   1dqF

 
 q F
Ⅱ
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放流プロジェクトのプライマリー・マーケットでの社会的
余剰の変化が測定できない場合は、セカンダリー・
マーケットにおける社会的余剰の変化で測定すること
ができる。
しかし、
その他のセカンダリー・マーケットが存在する場合(あ
るいは「釣具」が「釣り」の完全な補完財ではない場合)
は、釣り道具の市場における社会的余剰の変化分が
すべてを反映しているわけではない。
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6.2 歪みのあるセカンダリー・マーケット
• 外部性の存在するケース
– 歪みのあるセカンダリー・マーケットに生じる影響は、
プライマリー・マーケットでは補足できない部分が残る。
(例)川に落ちた釣り針
• 歪みのある課税がなされているケース
– 税収総額を一定にするという前提の下で、ある市場へ
の税金の導入は、他の市場での税率を低下させること
ができるので社会的余剰がその分増加することになる。
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6.3 地域社会の観点からの
セカンダリー・マーケットの影響
地域レクリエーション施設(スポーツスタジアムなど)
の推進派は、セカンダリー・マーケットに大きな便益
が生じる、とともにこれらのプロジェクトが乗数効果
(multiplier effects)を生むと主張することが多い。
しかし、
地域社会の中のセカンダリー・マーケットに歪みが
ない限り、地域プロジェクトによるセカンダリー・マー
ケットへの影響、および乗数効果が生み出す収入を
プロジェクトの便益として計算することには慎重でな
ければならない。
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<理由1>
プロジェクトの収入が考慮されるべきであるのは、
CBAにおいて考慮する主体がごく狭い地域の住民、
あるいは限定されたグループである場合である。
たとえば、魚の放流プロジェクトにおいて、その狭い
地域のホテルの料理屋の収入が増えるかもしれな
いが、それは他の地域での料理屋の収入の減少を
もたらしているのである。
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<理由2>
CBAにおいて考慮する主体がごく狭い地域の住民に
限定する場合は、その地域外の住民に生ずる社会的
余剰の増分は考慮の対象にならない。
たとえば、スポーツスタジアムを建設したときに、ス
ポーツチームのファンが享受する社会的余剰の増分
は便益として計算することはできない。
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<理由3>
地域プロジェクトで地域の生産物に対する需要が
増加する場合でも、価格が上昇しない限り生産者
余剰は増加しない。
ただし、地域経済の拡大は、地域企業に規模の経
済を享受できるとすれば、生産コストの低下を通じ
て生産者余剰が増加する。
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<理由4>
地域のプロジェクトが大きなプラスの便益をセカンダ
リー・マーケットに生み出すのは、地域の失業率が高
いかあるいは地域の遊休資源が存在していて、それ
らの移動には大きな障壁が存在する場合である。
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6.1 効率的セカンダリー・マーケット
6.2 歪みのあるセカンダリー・マーケット
6.3 地域社会の観点からの
セカンダリー・マーケットの影響
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