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【沖縄大学】
【Okinawa University】
Title
地域の法律問題を考える『法学沖縄法律事情Part2』発刊
記念講座報告( 沖縄におけるトートーメー(祭祀財産承継)
問題について )
Author(s)
沖縄大学地域研究所沖縄の法班; 新城, 将孝; 前泊, 博盛;
小西, 吉呂; 川﨑, 和治; 春田, 吉備彦
Citation
沖縄大学法経学部紀要 = Okinawa University JOURNAL
OF LAW & ECONOMICS(12): 55-89
Issue Date
URL
Rights
2009-03-31
http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/okinawa/5996
沖縄大学法経学部
沖縄大学法経学部紀要
第1
2号
沖縄における トー トーメ- (
祭租財産承継)問題について
沖縄大学法経学部教授
新
城
将
孝
1.は じめに
日々の生活の中で、沖縄 のオバーたちは,毎朝お茶 をたむけ、夕 には酒 をたむけ、仏壇 に向か い
「
ウ- トー トー (
拝み ・
お願 い)
」 を しています.朝、夕 に限 らず、何 らかの報告事がある度 に、線
香 を立て、先祖への報告 を欠か しません。テ レビのコマー シャルの- コマではあるが、仏壇 の トー
トーメ-の前でのウガミ (
拝み)において、祖母 と孫 との会話 の中で、「
オ ジー にウ- トー トー して
オジー とユ ンタク しているよ」とのシー ンをもみる ことがで きます。家内安全、子孫繁栄
いるよ」「
を祈 る営みの一つであるが、コマー シャル とはいえ、ほのぼの とした、心温 まる会話 ともいえます。
一方で、 ここに、沖縄の祖先崇拝の 日常性 をも垣間見 ることがで きます。
ただ、沖縄 にお いて、この トー トー メ-承継問題は祭祀承継問題 または相続問題の象徴 ともいえ、
トー トーメーの承継は地域 によって相違はあるものの、相続財産 の承継 をも伴 うとされています。
ここに、社会問題化 の一因があるよ うにも思えます。
本報告は、 この トー トーメ-承継問題 を取 り上げます。ただ、前提 として、専門性 という視点か
ら見た とき,小生は門外漢 にあ ります。法学
沖縄法律事情
Par
tⅡ (
琉球新報社)での執筆は法
学概論での教学上での視点 においての ものである ことを予めお断 りし、本報告 もそれ をベース とし
ていることをご了解 いただきいと思 います。
また、本報告は民法の制度 を基礎 と して いるところ、「トー トー メー承継」というよ うに、「
承継」
の言葉 を統一 して使用 させて いただきます。すなわち, この 「トー トー メ一間題」 はある意味 にお
いて沖縄の社会制度的な意味合いをも帯有 してお り、「
継承」とい う言葉 も使われ、新聞等では 「
継
承」 の文字が使われています。む しろ、それが一般的 となって いる感 もあ ります。 ただ、本報告は
法律学 (
民法)の視点か らにある ところ、 「
承継」 の言葉 を使用 させていただきますo
加えて、本報告では 「
沖縄 にお ける」 という表現 を用 いますが、 ここでの 「
沖縄」 は主 に沖縄本
島中南部 を指 してお り、沖縄 の他の地域 は必ず しもこの慣習 にない ところもあ ります点 ご了解 いた
だきたいと思 います。
2.民法 における相続財産 と祭祀承継
さて、先ほど指摘のように、沖縄 の祭祀承継問題 のその多 くは相続財産 も伴 うといわれ ます。 こ
の ところ、法律学 (
民法)的にみて、大きな問題点 を帯有 しているといえます。
(1)相続財産の帰属
X
5
まず、 民法では、相続財産 につ いては相続 人間での共有、分割承継 を原則 として います民法8∈
-
7
1-
地域の法律問題を考える
条、8
9
8条)。そ して、遺産分割 においては、法律上定め られた相続分の変更が認め られるというも
のではあ りませ ん。ただ、個 々の財産 の帰属 を定めるにつ き、遺産の分割 の基準 ・考慮すべき事項
5条)。
を定めて います (
民法S
K
X
3
粂)
。勿論、相続 の放棄 に関す る規定 をみる こともできます (
民法91
これ らの ことは、実際の実務 においては相続 人間での話 し合 いの余地 を残 していることを示唆 して
いるもののよ うにも思 えます。
%条は 「
相続人は、相続開始の時か ら、被相続 人の財産 に属 した一切の権利義務
具体的に、民法8
を承継す る」 としています。 これは相続の一般的効果 を定めてお り、被相続人に属 していた権利義
務 の包括承継 を意味 し、 当然承継、すなわち、法律上当然 に権利義務の包括承継が行われるものと
して います。そ して、民法8
9
8条は 「
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」と
I
して いますC これ は、法8
9
9条 とともに、相続財産 の共 同承継 を定めるもの とされて います。民法
8
9
9条は、 「
各共同相続 人は、その相続分 に応 じて被相続人の権利義務 を承継す る」 とし、特 に相続
分 に応 じた権利義務 の承継 を明 らか に して います。そ して、民法9
03
条は 「
遺産 の分割 は、遺産 に属
す る物又は権利の種類及び 性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活 の状況その他一切の
事情 を考慮 して これ をす る」 として います。基本的に、 同条は相続分 に従 った分割 を行 う際の指針
を示 した もの といわれ ます。従 って、審判 で相続分の変更はそれが裁判所 における行為であるとこ
家月1
9巻 6号5
5頁、最高裁判所事務総局家
ろか らは不可能 と理解できます (
東京高決昭42・1・11
巻 2号7
9貢)。ただ、裁判所の関与がな く、当
庭局 「
昭和42年 3月開催家事審判官会合同概要」家月21
事者の話 し合 いによる協議 の場合 においては、一般 に、共 同相続人の 自由な意思の下での遺産分割
は法定 の相続分 に従わな くて もよい と理解 されています。 これは、法定相続分 に反す る遺産分割の
有効性が認め られ るとい うことを意味 して います。 民法91
5条は熟慮期間 (3ケ月)をもうけ、相続
の承認又は放棄 について定 めていますが、相続分やその内容 の柔軟な調整 といった、事実上の相続
放棄 も認め られ ます。 また、相続 によって一度承継 した (
遺産相続 によ り取得 した権利である)共
3
8条の家庭裁判所への申述の
有持分権 を放棄す る ことは、遺産相続 の放棄 とは異なるもので、民法9
手続 きは必要ない もの と理解 されて います (
大判大 9・9・4民録26輯 1
3
0
7頁)。 また、特別受益 を
3条参照)
、そ
受 けた として、その証明書 を作成 し、提 出す る ことによる事実上の相続放棄 (
民法Ⅸ)
れか ら,相続分 をゼ ロとする遺産分割 も、相続権 を放棄す るものではな く、相続分 の権利の放棄で
あるところか ら、可能 と理解 されています (
大阪高決昭5
3・1・1
4家月3
0巻 8号5
3頁)。 いずれ にせ
よ、 これ ら事実上の相続放棄 は、仮 に特別の受益等がなか った として も、相続分の放棄 の意思があ
れ ば無効 とはな らない とす るのが今 日的理解 にあ ります。
(2)祭祀承継
次 に、祭紀承継ですが、民法 にお いて、祭紀財産は相続財産か ら切 り離 され、区別 され ます。戦
前の家制度 の下では、祭紀財産は家督相続 の特権 に属す るもの とされて いたよ うですCそ こで、家
督相続人が独 占的 に祭祀財産 も承継 (
継承) していた模様です。戦後 において、家督相続が廃止さ
れ、祭紀財産 は相続財産 と切 り離 され る こととな りま した。理 由は、家制度 の廃止 に伴 い、祭稚財
産 の承継 にも封建的要素の一掃 を図 りたい というところにあったよ うですOただ、祭紀は極めて国
民感情 とも大 き くかかわ ります。民法は従来 の慣行や国民感情への配慮か ら、慣習 に従 った祭祀主
宰者の決定 を承認 した もの といわれて います。 この点が、 まさに、祖先崇拝 と結びついた家制度 の
-72-
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第1
2
号
慣行 を温存するもの との批判 を伴 うことにな ります。
が、ともあれ、具体的 に、民法8
9
7条はその第 1項本文では(
D慣習 に従 って祖先の祭紀 を主催すべ
き者が承継す るとし、その但 し書 きでは、(
む被相続人の指定 によ り祖先の祭紀 を主宰すべき者があ
萱
Xi
)
の慣習が明 らかでない ときは、家庭裁判所が
るときは、その者が承継す る とし、第 2項では、(
定めるもの としています。
周知のように、相続財産 につ いては相続 人間での共有、分割承継が原則です。祭紀財産 の承継は
確かに多 くは、ない しは慣習上は一人での承継 というのがほ とん どと思われ ます。 しか し、 この祭
祀財産の承継 も、共同承継 という場合 も勿論 あ ります。 民法上、特 に承継資格 についての制約はあ
りません。そ こで、被相続人が承継者の指定 を行 うとき、 自然人のみな らず、法人 を承継者 として
指定することもできるといえます。 また、系譜、祭具、墳墓の祭祀財産 の承継者 をそれぞれ別人 と
する ことも可能 といえます。ただ、相続人の合意 によって承継者 の指定がで きるかにつ いては、見
解が分かれ ます。例えば、相続人による指定が慣習 となっている地域であれ ば、慣習 によ り相続人
の合意 による承継者の指定は可能 といえますが、そのよ うな地域でない ときは不可能な い しは家庭
裁判所 に判断 して もらって とい うことになるか も知れ ません。
留意すべきは、祭祀財産の承継には承継の承認、放棄 の規定がないということです。そ こで、祭
紀財産は相続財産 でないところか ら、辞退、放棄 はで きな いと理解 されて います。理 由は、祭祀承
継者は祭祀 をなす義務 を負 うもので もな く、祭紀財産 も自由に処分で きるか らとの説明 にあ りま
す.ですか ら、祭紀承継者の意思が最大限に重視 され る というもので もあ りませ ん。仮 に相続 を放
棄 した として も祭紀承継者 となることもあ りえます。ただ、祭祀財産 とはいえ、人の意思 に反 して
権利や義務 を承継す るという考 え方は今後 における検討課題 といえます。
また、 ここでいう 「
慣習」 ですが、 これは当然家督相続時代の ものでな いことは確 かです (
大阪
4・
1
0・
2
9
家月 2・2・
1
5
)
。戦後 の、新 民法施行後の 「
慣習」 であることに疑 いはあ りませ
高決昭2
ん。現在では,氏が同 じであるとか、親等が近いとか、長男であるととかが祭祀承継者 の決め手 と
はな りません。被相続人 との親和関係、共同生活関係、祭祀のある場所 (
管理可能性),同居 の有無、
喪主であったか,承継の意思等の判断要素か ら、祭稚財産 を承継す るにふ さわ しい と考 え られ る者
4・
1
0・
2
9家月 2.
が承継することにな ります。例えば、生活 を共 に して きた内縁の妻 (
大阪高決昭2
2
1
5
)とか、長男、長女 を排除 した、次女 による祭祀承継が認め られています (
名古屋高決昭3
7・
4・1家月1
4・11・1
1
1
)
。ただ、民法8
9
7
条が慣習 に従 って祭祀承継者 を定めるところか らは、慣習
な どによって被相続人の意思 を血縁者 として推認 した り、慣習等か ら血縁関係 を重視す る可能性 の
ある ことは否定できない ところもあろうと思われ ます。
.
3.沖縄 における祭紀承継の慣習 と民法
(1)沖縄 における祭能 (卜- トーメー)承継
沖縄 において, トー トー メ-は祭祀権 のシンボル とされ、 シジ (
血筋 -家系)承継 の、物的証拠
としての意義が認め られるとされ ます.そ して、 トー トーメ-の承継の権利 は原則 として長男 にあ
り、男系血統主義にあるとされ ます。特筆すべき特色は、(
∋長男承継、(
参相続権 を伴 う、(
彰特別 の
事情で長男承継ができなかった ときの、その承継方法にあるとされ ます。具体的には、 4つの禁制
- 73-
地域の法律問題を考える
に基づ く承継が行われる ところにあ ります。 この承継方法の特色は、徹底 した男系血族主義 といえ
ます。本土 の事例 にみるよ うに、例 えば、その家の娘 との結婚 を伴 う婿養子 による祭紀承継 (
家督
相続) は認め られていません。男系のシジ (
血統) をた どった男系承継 にあ りますo
禁制) をみる ことにします。(
カタティマ ジクイ ・ここで、 4つのタブー (
- 父系 と異なる
他 系の男子 を承継 人に してはいけな い (
これ によ り、例 えば、娘 との結婚 を伴 う婿養子 による承継
不可)、② イナグガンス - ・- 女性が承継 してはいけない、③ チ ヤツチウシクミ - - ・長男
を排除 した、次男以下の承継は許 さない,(
むチ ョ-デーカバサイ ・・・・・兄弟の位牌 を同 じ仏壇
で並べて (
安置) はいけなL
,
)
、 となっています。 この 4つのタブーか ら、長男 による承継 を原則 と
した、女性 による承継の禁止、男子であって も次男以下の者 による承継禁止 という、徹底 した父系
男系血族 による承継 という形式 にな ります。典型事例 として、図 1、 図 2が考え られ ます。
【
図 1】
Z長男
(
死 亡)
目
ヽ
l
l/
(
養子縁組)
し_竺
」
この場合、次男 B2が祖父の トー トー メーを承継 します。本来な ら長男 Aが承継 しますが、長男
Aは子 もな く死亡 しています。そ こで、父系の男子は次男 Bがいますが、次男の承継は認め られず
(
チ ヤツチ ウシク ミ)、その長男 B lは将来次男 Bの トー トー メ-承継予定者 にある ところ承継で
きません。承継は長男 Aの トー トー メ-承継 を伴 うところ、チ ョ-デーカバサイ とな ります。そ こ
で、祖父の トー トー メ-の承継者は次男 Bの次男 B2とな ります。
-
74
-
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この場合 も、次男 Bの次男 B2が承継 しますO長男 Aには、男子 が いませ んO女性 は トー トー
メ-を承継する ことができません (
イナ グガンス).父の男系血族 をた どります と、次男 B とな りま
チ ヤツチウシクミ)、その長男 B lは将来次男 Bの
すが、次男 Bは父の トー トー メ- を承継できず (
トー トーメ-を承継す るところか ら、承継で きず (
承継す ると、チ ョウデーカバサイが生 じる可能
性 あ り)、結局、次男 B2が承継す る ことにな ります。
(
2)沖縄 の慣行 と民法
さて、 ここで、沖縄の慣行 と民法 との関係 を大雑把 にみてい くことに します。先ほ ども指摘 しま
したよ うに、民法 において、祭祀財産は相続財産か ら切 り離 され、 区別 され ます。 この点、沖縄 の
慣行は、祭紀承継 に相続財産が伴 うということでその相違 をみせ る ことにな ります。
沖縄 における祭祀承継、相続 問題 を理解す る上 にお いて、留意すべきは沖縄 (
琉球) の歴史 ・文
化は勿論の ことであると思われ ますが、近 々においては、沖縄の歩んだ戦後、そ して、そ の法制の
変容 とその特質の理解 も必要のよ うに思われ ます。
1
94
5年 4月 1日、沖縄島に上陸 した米軍は米国海軍軍政府 の設置 と同時 に、ニ ミッツ布告 (
米国
9
5
2年の対 日講和条約 に
海軍軍政府布告第 1号) を公布 しました。軍政の施行が行われ、そ して、1
よ り、沖縄は米軍統治下 におかれ ました。その下で、「
法 の雑居」状態が生 じ、特 に、米軍の 占領政
策遂行上必要な事柄以外 については不干渉の立場 にあったよ うです (
佐久川政一 「
戦後沖縄 の社会
-5
2ペー ジ)。そ こで、沖縄 にお いては、琉
変動 と家族問題」 (
新崎盛輝 ・大橋責編) アテネ書房51
9
5
7年 1月 1日の
球政府時代の当時の立法府、立法院による旧民法の改正 (
新民法 の制定)および1
施行 まで、 旧民法が効 力を有 し、 旧来 の家族法が適用 されて きています。 いわゆる、封建的家族秩
序 をもつ家制度、家督相続制が行われて いま した。
しか し、それはそれ として、新民法施行後は、勿論、祭紀承継 も新民法 によ らざるをえません。具
9
7条 (
現行) の適用 を意味 します。先ほ ども指摘 しましたよ うに、 民法8
9
7条はそ
体的 には、民法8
の第 1項本文では①慣習 に従 って祖先の祭祀 を主催すべ き者が承継す るとし、その但 し書 きでは、
(
お被相続人の指定 によ り祖先の祭紀 を主宰すべき者があるときは、その者が承継す る とし、第 2項
では、③① の慣習が明 らかでない ときは、家庭裁判所が定めるもの として います。 ここで いう 「
慣
習」 に して も、 これは当然家督相続時代 のものでない ことは確かです (
大阪高決昭2
4・1
0・2
9家 月
2・2・1
5
。前述)
。戦後 の、新民法施行後 の 「
慣習」である ことに疑 いはあ りません。祭祀承継 に
ついて、現行法上の取 り扱 いについては、前述 2.(
2)祭祀承継でみた通 りです。現在では、氏が
同 じであるとか、親等が近 いとか、長男である ととか等が祭祀承継者の決め手
とはなって いません。
+
また、 当然の ことですが、前述 のよ うに、新民法下 においては、家督相続は廃止 され、祭祀財産
は相続財産 と切 り離 されています。相続財産 につ いては相続人間での共有、分割承継 を原則 として
1
誠条、8
9
8条)o
います (
民法8
そ こで、 これ までみてきた沖縄 の慣行 を考慮 した実務処理が課題 となってきますが、主な もの と
しては、先ほ どの図 1、図 2における養子縁組 を結び、そ して、贈与契約等 の締結 とい う形態 も考
え られ ます。 また、一般的には、 このよ うな実務的取 り扱 い、 あるいは折 り合 いが図 られて いる と
も聞きます。 当然、 この ことについては、結果的妥 当性 をもって論 じるのか、法の趣 旨 との適合性
との関わ りで論 じていくのか等、残 された課題 の大 きさを感 じず にはい られない ところです。
-75-
地域の法律問題を考える
4.むすびにかえて
本 当に、大雑把な、話 とな りました。詳細、そ して、専門的な箇所 についてはその道 の専門の先
生方 の研究 と解説等 を、小生 自身 もさ らに勉強 させていただきたいと思 います.
ただ、 もう一つ、沖縄の トー トーメー承継 を論ず る とき,門中が話題 として取 り上げ られ ること
が少な くあ りません。む しろ、門中制度 は トー トーメ-承継 と不分離 の要素を帯有 しているところ
さえあるよ うに思えます。 いわゆる、門中制度 を維持す るために、父系の同血族か らの養子縁組 と
いう形態が取 られた りしているともいわれ るところか らです。
門中の歴史 をた どればJ特 に、士族で門中 とい うとき、「
家譜」を同 じくす る者たち とな り、家譜
を同 じくす る者達が家譜 を中心 にまとま り、清明祭や トー トー メ一等 の習慣が始 まった といわれて
9世紀頃か らとされ、 トー ト- メーが一般 に農民の間 にもみ られる
いますo農民の門中化 の動向は1
よ うにな ったのは明治 ・大正以後 と歴史的 には新 しいもののよ うですD古来、沖縄では祖先崇拝の
念が強 く、祖先霊 を共同の神 として祭 り、共 同の墓、つ ま り、祖先の祭祀の承継、同族の結合の し
る Lとして、同一の血族 (
同 じ腹)か ら出た者 を一門 と考 え、死ぬ ときも同 じ腹 にはいるというこ
とで門中墓 を所有 し、祭祀 を行 ってきた といわれ ます (
島仲憲生 「
沖縄 の相続問題 一祭紀承継 を中
心 に -」金城共同法律事務所十周年記念誌 『
沖縄 の現状 と課題』所収 1
0
2戻)0
最高裁判所は、 この門中につき 「
慣行 によ り、有 力家の当主を代表機関 とし、・- - - 祖先
の一人 によって寄付 され た土地等 の財産 を門中財産 と して有 し、 これ を管理利用 して得 た利益 に
よって祖先の祭戒等 の行事、 門中横合その他 の相互扶助事業 を行 ってきたな ど、判示のような実態
5・2 ・8民集3
4
を有す る場合 には、そ の門中は権利能力なき社団にあたる」 とします (
最二判昭5
巻 2号 1
3
8頁)
。ただ、沖縄 にお いて、 門中 と称 されている (
あるいは称 している)団体が これほど
の組織 を有 し、社団性 を持 ち合わせているか というと、そ こまで に至 って いない団体が大多数 とい
えるか と思 います。
ある意味 にお いて、 これ までみて きた トー トーメ-承継問題は団体法領域 と個 人法領域の間際の
性格 を帯有す るものであるのか も知れ ません し、団体 を志向す る個 人法領域 に属す る事柄か も知れ
ません。今後 の検討課題 といた します。
0
8年1
1月29日の沖縄大学土曜教養講座 にお ける報告 に加筆 ・訂正 を加えた ものです。
本稿は、20
-76-