ウィークリーレポート 2016/05/23-2016/05/27 提供:新生銀行 市場金融部 伊勢志摩サミットを契機にドル円は上抜けとなるか 国内では伊勢志摩サミット後の財政出動、消費増税延期の有無に、海外では米 6 月利上げをどの程度織込みにいくのかに 注目。 (先週の振り返り) 先週は米国の FOMC 議事録発表をきっかけに市場が 6 月の米利上げの可能性を急速に織込みにいったことが目立つ週となり ました。特にドル円に関しては心理的節目となっていた 110 円を突破し上昇。週を通して軒並み堅調な米国の経済指標や、英国 国民投票の結果が EU 残留に傾く可能性が高いとの報道が出ていたことで市場のセンチメントが好転しドル円の下値は比較的支 えられていました。ただ上値で週末の G7 サミットで米国側から再度為替介入に関しての牽制が発せられるとの思惑から重く推移 しました。 FOMC 議事録では議事録発表当日まで大半の Fed メンバーが比較的タカ派的な発言を繰り返していたことから、多少ハト派寄 りの内容となり市場のバランスをとってくるとの見方が優勢でしたが、議事録は大半のメンバーが 6 月の FOMC 会合での米利上げ の可能性が高いと判断していることが明らかとなりました。そのため市場は急速に 6 月の米国利上げを織込みにいく格好となり、 利上げ警戒で株式市場は下落することとはなりましたが、高値圏で推移していた米国債が大きく売り込まれたことにより米金利が 大幅に上昇。ドルが多様な通貨に対して強含みとなりました。ドル円も心理的節目であった 110 円を突破しました。 もっとも、110 円突破後は週末に G7 会合を控えていたことに加えて、110 円という水準が波乱のゴールデンウィークのドル円下 落以来本邦の輸出勢にとって切望していたレベルであったこともあり、売り需要が大きく観測され積極的に上値を追っていくような 展開とはなりませんでした。ただ、110 円を割り込んだ水準では投機勢を中心とした買い戻し需要が出始めたことで底堅い値動き を見せつつ週を終えました。 (今週の見通し) 今週は市場が待ち望んでいた伊勢志摩サミットが開催されます。サミット後の本邦の財政出動及び消費増税延期の発表が期 待されており、実際にそうなった場合には株式市場が堅調に推移することが予想され、これに加えて 6 月の米利上げへ向けて米 金利が上昇しやすいと予想されるためドル円は心理的節目である 110 円をサポートに上値を追っていく展開が予想されます。仮 に伊勢志摩サミットにおいて上記のことがなかった場合でも、一時的に株価下落、円高となる可能性はありますが、6 月 6 日に控 えているイエレン FRB 議長の講演までは米 6 月利上げが意識されやすいことからドルは底堅く推移することが予想されます。 ドルが米金利上昇効果で対円以外のその他通貨に関してもドル高地合いとなりやすいことに加えて、原油先物価格が 1 バレル =50 ドルという大きな心理的節目にさしかかっているため、そろそろ反落するとの見方も増えており、豪ドルやカナダドルなどは下 落しやすい展開が予想されます。そのため、豪ドル円といったクロス円は米 6 月利上げを意識したドル中心の相場環境で大きく上 下どちらかに動くことは考えにくく狭いレンジ内での取引となるのではないでしょうか。その他では依然として英ポンドドルの行き先 が市場のセンチメントを変え得る材料となることが予想され、日々の残留・離脱の事前予想観測で市場全体のリスクオン・オフの 雰囲気が醸成される可能性を常に頭の中に入れておかなければいけないかもしれません。
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