ご参考資料 ピクテ・マーケット・フラッシュ 2016年5月2日 先進国 Pictet Market Flash 米国GDP:2016年1-3月期は緩やかな伸びに留まる 2016年1-3月期の米国の実質GDP(国内総生産)成長率は、前期比、年率+0.5%に留まりました。輸出と設備投資 の減少に加え、個人消費の伸び悩みが下押し圧力となりました。4-6月期以降は改善が見込まれますが、2016年 通年予想は下方修正が必要と思われます。 米国実質GDPは2四半期連続の低水準 米国の2016年1-3月期の実質GDP成長率は、ブルー ム バ ー グ が 集 計 した 市場 予想 平 均 ( 前 期比、 年率 +0.7%)に僅かに届かなかった一方で、前年同期比 ベースでは+2.0%と、国内景気が底入れした2009年46月期以降の平均(+2.1%)に並ぶ水準を維持しました。 これは、比較の基準となる2015年1-3月期が低成長 だったことから、ベース効果が寄与したためです(図表 1参照)。 1-3月期の低成長は、足元数週間のうちに発表された 経済指標から想定されていた範囲内の数値でした。ま た、ここ数年、1-3月期のGDPを下押してきた「季節要 因」の影響が今年も反映された可能性があり、公表数 値を額面通りに受け止める必要はないとも考えられま す。とはいえ、2四半期連続の低成長(2015年10-12月 期は前期比、年率+1.4%)に失望感は否めません。 個人消費の伸び悩みと、輸出や設備投 資の減少がマイナス要因に 内訳を見ると、個人消費支出は前期比、年率+1.9%と 市場予想の同+1.7%は上回ったものの、2015年10-12 月期の同+2.4%に届きませんでした(図表2参照)。ガ ソリン価格が大幅に下落し、雇用創出が拡大する環境 での消費の伸び悩みは期待外れでした。住宅投資が 同+14.8%と堅調さを保った一方で、設備投資は同 -5.9% と 振 る い ま せ ん で し た 。 知 的 財 産 投 資 は 同 +1.7%と小幅増でした。2015年10-12月期を通じて油 田の稼働リグ数が大幅減少から予想されていたとはい え、石油セクターの投資は、2015年10-12月期の同 -39.6%に続き、2016年1-3月期は同-86.0%と、予想 の範囲を超える下落でした。ただし、石油セクターの設 備投資は、減少に伴い、GDPに占める比率や寄与度 も低下しています。寄与度の低下を受け、石油セクター 投資のGDPに対する下押し圧力は、徐々に剥落して いくものと思われます。また、政府支出は前期比、年率 +1.2%と2015年10-12月期の同+0.1%を上回りました。 ピクテ投信投資顧問株式会社 図表1:米国実質GDP成長率 前期比、年率、期 間:2009年7-9月期~2016年10-12月期(予想) % 過去28四半期 の平均 2.1% 4 予想 3 2 1 0 -1 +0.5% -2 09年 Q3 10年 Q3 11年 Q3 12年 Q3 13年 Q3 14年 Q3 15年 Q3 16年 Q3 図表2:米国実質GDP成長率の内訳 前期比、年率、期間:2015年4-6月期~2016年1-3月期 2015年 10-12月期 2016年 1-3月期 +3.0% +2.4% +1.9% +8.2% +10.1% +14.8% +4.1% +2.6% -2.1% -5.9% 17.8% +2.6% +1.8% +0.1% +1.2% 比率 2015年 4-6月期 2015年 7-9月期 個人消費 68.4% +3.6% 住宅投資 3.4% +9.3% 設備投資 12.7% 政府支出 国内最終需要 102.3% +3.7% +2.9% +1.7% +1.2% 輸出 12.6% +5.1% +0.7% -2.0% -2.6% 輸入 +0.2% 15.5% +3.0% +2.3% -0.7% 在庫増 0.6% +0.0% -0.7% -0.2% -0.3% 実質GDP 100% +3.9% +2.0% +1.4% +0.5% 出所:ピクテグループ 以上の結果、国内最終需要は同+1.2%と2015年1012月期の同+1.7%に及びませんでした(図表2参照)。 世界的な需要の減退とドル高の進行から予想された 通り、2016年1-3月期の輸出が同-2.6%と前期に続き 減少した一方で、輸入は同+0.2%となりました。純輸出 の寄与度は-0.3%でした。 <次ページに続きます> 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 1 3 ご参考資料 Pictet Market Flash 先進国 2016年の通年予想は下方修正が妥当 図表3:米GDP構成項目の寄与度 期間:2006年1-3月期~2016年1-3月期 % 2016年の米国経済に対する懸念の第一は、2015年 10-12月期、2016年1-3月期と2四半期連続で成長率 が鈍化したことです。3月から4月にかけて発表された 大方の経済指標も、雇用統計とISM製造業景況感指 数を除き、堅調とはいえません。2016年の米国経済は 4-6月期に入っても勢いに欠けるように見えますが、明 るい材料も散見されます。 ①金融情勢は総じて逼迫しており、米国の輸出や製造 業セクターを下押す状況は変わりません。その一方、 投資家のリスク選好意欲が強まり実効為替レート・ ベースでのドル安が進んだことから、米国の金融情勢 は、年初以降、大幅に緩和されています。世界経済と りわけ中国経済の減速を巡る不透明感も薄れていま す。こうした要因は、いずれも、時間のずれを伴って米 国経済を下支えするものと思われます。 ②原油価格は、ここ数週間大きく反発しており、石油セ クターの投資の安定、少なくとも、減少ペースの鈍化に つながることが期待されます。また、上述の通り、当セ クターがGDPに占める比率は一年前あるいは2014年 との比較で大きく低下しており、投資削減の負の影響 は、今後数四半期のうちに薄れる公算が高いと考えま す。住宅投資は引き続き堅調です。雇用と所得の伸び が住宅需要を支える一方で、売却可能な住宅の在庫 が低水準に留まっているからです。 ③原油価格が家計に及ぼす影響については、直近の ガソリン価格上昇の効果を広い視野で捉える必要があ ると考えます。3月のガソリン価格は、季節要因調整後 ベースで前月から2.2%上昇しており、4月から5月にか けては、更 に10% 以 上 の上 昇 が見 込まれま す が、 2015年12月の価格は7%下回っていたことには留意 が必要です。エネルギー価格の下落は、時間のずれを 伴って緩やかに家計の消費に効果を及ぼします。原油 価格の下落による可処分所得の増加分の大半が依然 として消費に回っていないことは、貯蓄率が相対的に 高水準に留まっていることから明らかですが、貯蓄率 は、今後数ヵ月のうちに低下し始める可能性もありま す。また、雇用の伸びは幾分伸び悩むとしても、底堅さ を維持することが予想され、賃金の伸びは勢いを増し そうです。したがって、個人消費の伸びにも弾みがつく ことが期待されます。 ④在庫は、3四半期連続でGDP成長率の下押し圧力と なっています。各種経済指標が示唆する通り、在庫は 高水準に留まっています。しかし、ISM製造業・非製造 業景況感指数は、正常な水準に向けて在庫の取り崩 しが急速に進んでいることを示唆しており、在庫積み増 しのペースに減速の兆しも見られます。したがって、足 ピクテ投信投資顧問株式会社 個人消費+設備投資(石油セクターを除く) 3 +2.9%ポイント 2 1 0 -1 輸出+在庫増 -2 +石油セクターの設備投資 -0.9%ポイント -3 -4 -5 06年 08年 10年 12年 14年 16年 出所:ピクテグループ 元の在庫調整が最終局面に差し掛かっている可能性 もあると考えます。GDP成長率への寄与度は、少なく ともマイナスの程度が減じ、年内に中立の水準にまで 回復する可能性もあると見ています。 上記①~④のような明るい材料もあるため、米国経済 を過度に悲観する必要はないと思われます。GDP統 計が期待に届かず、経済の下押しリスクが残る状況に は違いませんが、米国が2016年中に深刻な景気停滞 に陥る公算は低いと思われますし、4-6月期、7-9月期 には大幅な反発もあり得るでしょう。 ただし、今後の見通しを立てる上では1-3月期の低成 長を無視するわけにはいきません。仮に、4-6月期の 実質GDP成長率が前期比、年率で+2.5%以上となり、 7-9月期、10-12月期も共に同+2.0%以上の好成長を 達成したとしても、2016年の通年予想には下方修正が 必要だと考えます。2017年予想については、従来予想 を維持します。 なお、4月27日公表の米連邦市場委員会(FOMC)の 声明文は新しいメッセージを発信するものとはなりませ んでした。6月の利上げの可能性について余地を残し たものの、前回以上に利上げに前向きな討議がなされ たことを示唆してはいません。 ※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内 容が変更される場合があります。 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 2 3 ご参考資料 Pictet Market Flash 先進国 ピクテのウェブサイトで 最新情報にキャッチアップ! ピクテ http://www.pictet.co.jp Market Flash マーケット関連ニュース ヨーロッパから見た世界のマーケット関連情報 ピクテならではの分析はこちら http://www.pictet.co.jp/archives/category/news/markets Today’s Headline 今日のヘッドライン 今、マーケットで注目の話題をプロの視点でレポート 平日夕方 毎日配信中! http://www.pictet.co.jp/archives/category/news/headline Fund Watch ファンド関連ニュース ファンドの現状と日々変動するマーケットの関係を 詳しく、解りやすく解説します http://www.pictet.co.jp/archives/category/news/fundinfo 当資料をご利用にあたっての注意事項等 ●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場 の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将 来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用 目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。 ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象 ではありません。●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、 会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。 3 3
© Copyright 2024 ExpyDoc