Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
日銀9月会合 失望ポジションに注意
2016年8月31日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・8月CB消費者信頼感指数は101.1と市場予想(97.0)を大幅に上回り、7月(96.7)から4.4ptもの改善
を記録。2015年9月以来の高水準に到達した。やや出来過ぎの印象が否めないものの、ガソリン価格の再
下落、株価の高水準維持が寄与したとみられる。雇用統計の先行指標として注目される雇用判断指数(雇
用機会が多いから少ないを引いた数値)は+2.6と今次サイクルの最高を更新。9月雇用統計のコンセンサ
ス(NFP18. 0万人増、失業率4.8%)はどちらかというとアップサイドリスクが大きい。
CB消費者信頼感指数
140
CB消費者信頼感指数(雇用判断)
20
10
現況
120
総合
0
100
雇用機会が「十分」との
回答から「不十分」との
回答を差し引いたもの
-10
80
-20
期待
60
-30
-40
40
-50
20
07
08
09
10
11
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07
16
08
09
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(備考)Thomson Reutersにより作成
(備考)Thomson Reutersにより作成
・6月S&P・コアロジック・ケース シラー住宅価格指数は前月比▲0.07%と3ヶ月連続の低下。前年比では
+5.13%へと僅かに伸びが鈍化したが、それでも堅調な姿に変わりはない。
・8月ユーロ圏景況感指数は103.5と市場予想(104.1)を下回り、7月から1.0pt悪化。2016年入り後の8ヶ
月のうち6ヶ月で指数が低下しており、頭打ち感が鮮明。内訳は建設業(▲16.3→▲16.1)が僅かに改善
した一方、製造業(▲2.6→▲4.4)、サービス業(+11.2→+10.0)、小売業(+1.7→▲1.0)が悪化。
消費者信頼感は▲8.5と速報値に一致して7月から0.6ptの悪化を確認。ユーロ圏GDPは前期比+0.3%程
度で推移している模様。
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ユーロ圏景況感指数
ケース・シラー住宅価格指数
(%)
30
3ヶ月前比年率
15
20
10
サービス
10
5
0
0
-10
-5
前年比
-10
-20
-15
-30
-20
-40
-25
07
08
09
10
11
12
13
14
15
消費者信頼感
製造業
-50
16
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08
09
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(備考)Thomson Reutersにより作成
(備考)Thomson Reutersにより作成
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【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反落。注目されたフィッシャー副議長のインタビューはジャクソンホール・シンポジウム
の時ほど踏み込んだ内容ではなく材料視されず。ただし、為替市場でのUSDは続き、原油も下落したことか
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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ら利益確定売りが優勢。個別では欧州委員会から事実上の追徴課税を言い渡された通信機器大手が安かっ
た。WTI原油は46.35㌦(▲0.63㌦)で引け。メキシコで発生した熱帯低気圧が原油生産に与える影響が
一時的との見方が広がったほか、USD高が重荷となった。
・前日のG10通貨はUSDが全面高。フィッシャー副議長のインタビューにややUSD買いで反応した後、米消費
者信頼感指数の著しい改善を受けてUSD買いの動きが強まった。JPYは最弱となり、USD/JPYは一時103へと
上伸。EUR/USDは1.11前半へと水準を切り下げた。資源・新興国通貨も総じて弱かった。
・前日の米10年金利は1.566%(+0.7bp)で引け。欧州債市場(10年)は総じて堅調。ドイツ(▲0.091%、
▲0.8bp)、イタリア(1.106%、▲1.4bp)、ポルトガル(3.026%、▲0.7bp)が小幅な金利低下となった
一方、スペイン(0.950%、+1.4bp)が僅かに金利上昇。3ヶ国加重平均の対独スプレッドは概ね横ばい。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は米株安の流れを断ち切り高寄り後、もみ合い(10:00)。USD/JPY上昇が好感されている。
・7月鉱工業生産は前月比±0.0%と市場予想(+0.8%)および経済産業省が6月データ公表時点で試算し
ていた予測値(+0.9%)を下回った。もっとも、7月は出荷が+0.9%と伸びた一方、在庫は▲2.4%の減
少。他方、在庫率は+0.9%上昇するなど解釈が難しい。生産予測指数は8月が+4.1%、9月が▲0.7%と
均してみれば増産計画。8月の強さが目を引くが、実績は予測指数を下振れるクセが知られている。それ
を経済産業省が調整して算出した8月の予測値は+0.1%と微増。PMIの改善傾向と概ね整合的で、生産
の緩やかな増加が続くことを示唆している。
120
日本 製造業PMI
鉱工業生産指数
60
115
55
110
50
在庫率指数
105
45
100
40
95
90
35
生産指数
85
30
08
09
10
11
12
13
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(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成
80
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
14
15
16
15
16
・ジャクソンホール・シンポジウムを通過後、米利上げ観測と米景気拡大期待が併存。追加利上げを巡って
は、目先の金融政策について滅多に言及することがないフィッシャー副議長が年内2回の追加利上げにつ
いてその可能性を否定しなかったほか、米指標に目を向けるとコア資本財が2ヶ月連続で増加、CB消費
者信頼感指数が昨年9月以来の高水準を記録するなど好材料が散見される。その他では新規失業保険申請
件数、住宅関連指標が好調を維持。
・そうした地合の下でUSD/JPYは103を回復、日経平均は17000に迫っている。しかしながら、日銀9月会合が
近づくにつれて「失望」に備えるポジションが膨らむ可能性には注意したい。総括的検証の内容およびそ
れに基づく金融政策の変更について市場関係者の間では三者三様の見方が示されており、コンサンサスは
形成されていない。マネタリーベースの増加ペースについては、買い入れペース増額の予想がある一方、
現行の年間80兆円を70~90兆円に変更して事実上のテーパリングを開始するとの見方もある。また、現状
維持を選択するとの見方も根強い(筆者は現状維持を予想)。マイナス金利の深掘りについても、現状維
持と深掘り(10bp~20bp)で意見が割れているほか、ごく一部では「撤回」もありうるとの見方が示され
ている(筆者は現状維持を予想)。
・このように9月会合で示される総括検証を巡っては、その不透明感が強まっているのだが、結局のところ
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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大胆な緩和策が打ち出される可能性が低いことに変わりはない。日銀に残されたカードが少ないのは周知
の事実であり、仮に今回そのカードを使えば「打ち止め感」が広がることは間違いない。また、そもそも
名目金利の行き過ぎた低下が金融機関の収益圧迫、年金債務の膨張などを通じて経済に悪影響を与えてい
るとの指摘が多いことを踏まえれば、金融市場が(金利を下押しする)追加緩和を好感する保証はない。
追加緩和があっても円安・株高に繋がる保証はなく、追加緩和がなければ「失望」の可能性が高いという
ことだろう。リスクは円高・株安に偏っていると判断される。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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