Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
FEDは暗黙の前提を崩してくる
2017年3月7日(火)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・欧米で主要経済指標の公表はなかった。
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反落。新規の材料に乏しいなか、高値警戒感もあって利益確定売りが優勢。WTI原油は
53.20(▲0.13㌦)で引け。
・前日のG10 通貨はJPYとUSDの強さが目立った。NOK、NZDを筆頭に広範な通貨が売られ、反対にJPYが買わ
れた。USD/JPYは日本時間午前に北朝鮮のミサイル発射が一部影響したこともあって下落、114を割れた。
他方、EUR/USDは3日に急伸した反動もあってこの日はEUR売りが優勢、1.06を割れた。新興国通貨は軟調。
JPMエマージング通貨インデックスは2日ぶりに下落した。
・前日の米10年金利は2.500%(+2.2bp)で引け。3月FOMCにおける追加利上げの織り込みが進むなか、こ
の日は長・超長期ゾーンに売りが波及。カーブはスティープ化した。欧州債市場(10年)はコア堅調、周
縁国軟調。ドイツ(0.342%、▲1.4bp)が金利低下となる反面、フランス(0.965%、+2.4bp)、イタリ
ア(2.165%、+6.5bp)、スペイン(1.728%、+5.0bp)金利上昇。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は欧米株下落を受けて安く寄り付いた後、USD/JPY上昇に歩調を合わせて下落幅縮小(10:30)。
・昨日発表された1月豪小売売上高は前月比+0.4%と市場予想に一致して2ヶ月ぶりに反発。百貨店(▲
0.5%)、衣料品(▲0.4%)の落ち込みを日用品(+1.4%)、外食(+1.1%)が相殺してなお余りある
増加を示した。12月の弱さが響き3ヶ月前比年率でみたモメンタムは急激に落ち込んでいるが、その反面
前年比でみれば下げ止まりつつある。消費は底堅さを増していると判断される。
(3m/3mar、%)
20
豪
小売売上高
(前年比、%)
10
15
豪
小売売上高
8
10
6
5
4
0
2
-5
0
-10
07
09
11
13
15
17
(備考)Thomson Reutersにより作成。トレンド値の前年比
07
09
11
13
15
17
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
<#年3回の組み合わせ
#記者会見なしのFOMC
#6ヶ月は長過ぎる
>
・3月6日時点で金融先物が織り込む3月FOMCにおける利上げ確率は96.0%と、もはや利上げは既成事実化し
た印象。3月入り後にFED高官が展開した利上げキャンペーンによって、金融市場の織り込みが一気に進んだ
格好となる。3月10日発表の雇用統計でよほどのネガティブサプライズがない限り、3月の追加利上げが濃厚な
情勢だ。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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・仮に3月FOMCで追加利上げが実施された場合、市場参加者の目線は次回以降の利上げパスに集中することに
なる。そこでドットチャートで示されている年3回を前提に今後の利上げパスを予想すると、残り2回の利上げ
で真っ先に候補にあがるのは、記者会見がセットされている6、9、12月FOMCとなる。ここでそれぞれの組
み合わせを考えた場合、「3・6・9」という如何にも歪なスケジュールを除くと「3・6・12」、「3・9・
12」が有力な候補となるが、後2者は6ヶ月間(※6月から12月、3月から9月)という時間的空白が問題となる。
労働市場が完全雇用状態に近づき、インフレ率も概ねターゲットを捉え、金融政策の正常化が正当化される状況
下で、FEDが6ヵ月という時間的空白を長過ぎると考える可能性は大いにある。
・ここで記者会見なしの会合における利上げシナリオを検討したい。周知のとおり現行8回のFOMC日程では
「重要な政策変更は記者会見ありFOMCで」という暗黙の前提があり、実質的に4回しか政策変更のチャンス
がない。これがFEDの手足を縛っていることに疑いの余地はなく、FEDはこの悪しき伝統を断ち切り、政策
の自由度を高めたいという意向を持っているはずだ。だとすれば、記者会見なしのFOMCで政策変更をする
という“前例”を作ることが重要な意味を持つだろう。それを可能にするのは、筆者が従前から指摘していると
おり、記者会見ありのFOMCで「予告」した後、記者会見なしのFOMCで予告どおりそれを実行するという
戦略だ。
・以上を踏まえると、FEDが3月FOMCで利上げを決定した後、6月FOMCは敢えて利上げをスキップし、
その代わりに次回会合における利上げを「予告」、7月FOMCに予告どおりに追加利上げ、その後12月FOM
Cに3発目の利上げというシナリオが浮かび上がる。年3回という回数に拘るのであれば、これが最適に思える。
FOMC開催日程
記者会見
1月31日 2月1日
3月14-15日
○
5月2-3日
6月13-14日
○
7月25-26日
9月19-20日
○
10月31日 11月1日
12月12-13日
○
(%)
3月FOMCの利上げ確率(市場ベース)
100
80
60
40
20
0
17/01
17/02
17/03
(備考)Bloombergにより作成
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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