ECB議事要旨に見る今後の金融政策

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欧州
2016年4月8日
ECB議事要旨に見る今後の金融政策
ECB政策理事会は、終了後のドラギ総裁の記者会見の内容が詳しいため、議事要旨に新たな内容が乏しいこともあ
りますが、今回の議事要旨ではマイナス金利と政策パッケージの評価について、やや目新しい内容が見られました。
ECB3月議事要旨:マイナス金利適用除外と
より大幅な利下げの可能性を協議
欧州中央銀行(ECB)は2016年4月7日に、3月9~10日に開
催された金融政策理事会の議事要旨を公表しました。
今回の議事要旨により、3月理事会で政策金利について、よ
り大幅な利下げと、中銀預金の一部についてマイナス金利
の適用を除外する案が協議されたことが示唆されました。
また、議事要旨は政策委員会メンバーが追加措置の必要性
について総じて同意したものの、パッケージの各項目への支
持の度合いがまちまちだったことが示されています。
どこに注目すべきか:
ECB議事要旨、マイナス金利政策、TLTRO
ECBの政策理事会は、終了後に行われるドラギ総裁の記
者会見で内容が詳しく説明されるため、議事要旨には新た
な内容に乏しいこともあります。しかし、今回の議事要旨で
はマイナス金利と政策パッケージへの評価について、やや
目新しい内容が見られました。
まず、マイナス金利政策について、ドラギ総裁は一段の利
下げが必要だとは考えておらず、政策金利に下限がないと
いう印象を与えたくないことを示唆したため、ECBは政策の
重点をマイナス金利拡大から量的金融緩和へシフトさせる
と捉えていました。
しかし、議事要旨ではマイナス金利拡大についてインフレ見
通しが悪化した場合追加利下げを排除しないとも述べられ
るなどドラギ総裁のトーンよりマイナス金利拡大に若干前向
きな印象です。また、日銀が金融機関の負担に配慮して導
入した階層方式(金融機関が保有する当座預金への適用
金利を複数とする)の採用をECBが見送ったのは政策金利
に下限がないという印象を与えたくないためと見られていま
したが、議事要旨ではオペレーション上の複雑さがネックと
なっていた点も指摘されています。マイナス金利拡大と解釈
されるのを抑えるためだけに階層方式を見送ったという見
方については改める必要があるのかもしれません。
ピクテ投信投資顧問株式会社
次に、3月の政策理事会では政策金利の引下げ(図表1参照)
に加え、主に3つの政策パッケージが発表されました。議事要
旨では各パッケージへの評価が示されています。
最も評価(期待)が高いのは(的を絞った)長期資金供給オペ
(TLTROⅡ)でした。貸出残高を増加させた(頑張った)銀行は
貸出金利を中銀預金金利と同じマイナス0.4%にまで下げ得る
案が非常に幅広い支持を得ています。
次に、資産購入金額の拡大は広い支持を得たものの、既に購
入規模、ECBの国債保有残高は巨額となっているため、購入
金額拡大に懸念が示されています。
最後に、資産購入の対象に社債を含める案は(単に)幅広い支
持を得たという消極的な表現にとどまりました。社債購入に批
判的な意見を見ると、欧州の社債市場は流動性、規模が十分
に巨大とは言えず、仮にECBが(条件が適合する)投資適格社
債を機械的に購入した場合、市場の価格メカニズムがゆがむ
恐れが懸念されます。先のTLTROⅡでは実際に融資をする
かしないかに民間銀行の裁量が含まれる面もあり、市場メカ
ニズムの点でTLTROⅡへの期待が高いのかもしれません。
以上、今回の議事要旨から、ECBはマイナス金利拡大の可能
性がゼロではないことは確認されました。ただし、普通預金金
利をマイナスとするのは困難で、現金への逃避が懸念される
という制約下、マイナス金利を大幅に拡大することは、やはり
想像しにくい面も見られます。ECBは政策の重心をマイナス金
利から他のパッケージへ徐々に移行するものと思われます。
図表1:ユーロ圏の主要政策金利の過去3年の推移
(日次、期間:2013年4月8日~2016年4月7日)
1.5
主要政策金利
預金ファシリティ(下限)
貸出ファシリティ(上限)
%
1.0
0.5
0.0
-0.5
13年4月
14年4月
15年4月
16年4月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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