ここにも離脱騒動、インド中銀総裁

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アジア
2016年6月21日
ここにも離脱騒動、インド中銀総裁
ラジャン氏がインド中銀総裁に就任した当時、インドは「フラジャイル5」などと呼ばれていましたが、同氏の就任後、イ
ンドのインフレ率は低下、外貨準備高は増加しています。同氏の退任を踏まえインド経済の問題点に注目します。
インド中銀ラジャン総裁が退任:与党内での
批判の後で
インド準備銀行(RBI)は2016年6月18日、ラジャン総裁が9月
に迎える3年の任期満了をもって退任する旨を公表しました。
ジャイトリー財務相は、インド政府はラジャン総裁の業績を高
く評価すると述べています。また財務相はラジャン氏の後任
を近く発表する予定だとも述べています。
任期満了とはいえ過去のインド中銀総裁4人が任期を延期さ
れていたことに比べると退任は異例です。報道では同氏と対
立するヒンズー教至上主義団体の声に、同団体を支持基盤
とするモディ首相が突き上げられたとも伝えています。
どこに注目すべきか:
ラジャン総裁、固定資本形成、不良債権
ラジャン氏がインド中銀総裁に就任したのは2013年9月当時
インドは「フラジャイル5」(脆弱な5ヵ国)などと呼ばれていま
したが、同氏の就任後、インドのインフレ率は低下、外貨準
備高は増加(図表1参照)しています。ラジャン総裁の退任を
踏まえ、改めてインド経済の問題点に注目します。
最初に、インドの経済成長はまずまずの数字が予想されて
います。例えば、国際通貨基金(IMF)は2016年の成長率を
7.5%と予想、中国を上回ります。しかし、成長の内訳は問題
で、インドは社会資本の蓄積が求められる状況でありながら
固定資本形成の伸びが低水準で推移、経済成長は主に消
費に依存する構造となっています。インドの投資は直接投資
の流入などで2000年代前半は2桁の伸びを記録するなど好
調でしたが、足元軟調です。理由の一つに需要低下の問題
もありますが、供給サイド、銀行の貸出が不良債権の増加
などを受け下落傾向となっていること(図表2参照)も抑制要
因と見られます。ラジャン総裁は退任のメッセージでやり残
した2つの課題をあげました。1つ目は金融政策委員会での
合議制の導入、もう1つが銀行のバランスシートの信頼性向
上で、手始めに銀行資産の質の査定(AQR)を目論んでいま
した。ラジャン総裁は、銀行のバランスシートには抜本的な
ピクテ投信投資顧問株式会社
外科手術が必要だとし、2017年3月までにすべての不良債権
を開示し、引き当てを求めるなど厳正に問題に取り組む姿勢
を示していました。現状、インドの銀行の開示は不十分で不
良債権の実態は不透明です。最近一部の民間銀行が想定
以上の不良債権を公表したことで、ムーディーズ・インベス
ターズ・サービスなど格付会社は不良債権比率の見積もりを
引き上げています。成長率予想はまずまずのインド経済です
が、不良債権には注意が必要と見ています。
今後の注目点は、後任者で、インド経済の問題に取り組んで
いたラジャン総裁の流れを受ける人であるかどうかが判断の
分かれ目と見ています。ラジャン総裁が拒否された格好なだ
けにラジャン総裁と反対の人が選ばれた場合には市場へマ
イナスの影響を及ぼす展開も想定されます。
図表1:インド消費者物価指数と外貨準備高の推移
(月次、期間:2013年5月~2016年5月、前年同月比)
3,700
外貨準備高(左軸)
インドCPI(右軸)
億ドル
3,500
%
12
9
3,300
3,100
6
2,900
2,700
13年5月
14年5月
3
16年5月
15年5月
図表2:インド商業銀行企業向貸出残高伸び率の推移
(月次、期間:2008年4月~2016年4月、前年同月比)
40%
30%
20%
10%
0%
08年4月
10年4月
12年4月
14年4月
16年4月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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