イエレン議長が示した 4つの懸念

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北米
2016年6月7日
イエレン議長が示した4つの懸念
5月の米雇用統計の悪化を受け、今回のイエレン議長の講演では利上げ時期について言及が無く6月利上げの可
能性はほぼ消滅したと見られますが、イエレン議長は利上げ時期を模索する意向であると見られます。
イエレン議長講演:市場予想を下回った5月
の雇用統計を受け、利上げ時期は特定せず
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は2016年6月
6日の講演で、米経済について、幅広い指標に言及すること
で、回復基調を維持しているとの認識を示唆しました。しかし、
10日ほど前の5月27日の別の講演で数ヵ月内の利上げが適
切になる可能性があると語ったのに比べ、今回は利上げ時
期について言及しませんでした。
どこに注目すべきか:
設備投資、雇用統計、労働生産性、GDP
5月の米雇用統計の悪化を受け、今回のイエレン議長の講
演では利上げ時期について言及が無かったことなどから6月
利上げの可能性はほぼ消滅したと見られます。一方で、イエ
レン議長は利上げ時期を模索する意向であると見られます。
では、利上げ時期を占う上で何に注目すべきか?
今回の講演の中で景気回復の懸念、不確実な分野、として
あげた4点に、今後は注目する必要があるかもしれません。
1点目は、国内需要で特に設備投資と新たに加わった懸念
として雇用統計をあげています。講演内容からの印象として
イエレン議長も非農業部門雇用者数がこれほど減少すると
は想定していなかった模様で、例えば採用を控えるほど景
気が悪化している部門があるのかなどを慎重に精査すると
見られます。なお、毎月月初に公表される失業率や非農業
部門雇用者数などの「雇用統計」は雇用市場の動向を占う
上で重要な指標ですがイエレン議長は他の指標、例えば低
水準が続く失業保険申請件数(図表1参照)などからも雇用
市場の動向を探ることの必要性も示唆しています。
2点目は海外経済で、具体的には中国の成長減速懸念と英
国の国民投票を指摘していますが懸念のトーンは以前より
は和らいだ印象です。
3点目は(労働)生産性の低下という長期的なテーマです。
特に2008年の金融危機後、生産性低下をイメージで示すと
(分母の)雇用市場は回復している一方で、(分子の)生産
ピクテ投信投資顧問株式会社
(GDP(国内総生産))が相対的に低調となっています。生産
性が低ければ生活水準に直結する賃金も低水準となること
が想定されます。イエレン議長は過去、雇用市場回復の裏で
賃金の上昇率が低くとどまった背景として生産性低下の可能
性を指摘しています。5月の雇用統計は雇用者数が大幅に
低下しましたが、講演でも賃金(平均時給)の改善(図表1参
照)を明るい要因と指摘しています。イエレン議長は生産性
について慎重ながら楽観的(改善を見込む)と表明していま
すが、5月の雇用統計が一時的な減速の反映であれば、雇
用の伸びは今後上向き、所得の一段の増加を支えるだろうと
指摘したのも、このことが頭にあったのかもしれません。
4点目はインフレ率が目標に戻るかです。イエレン議長は条
件として2つ、石油価格の下落とドル高が無いならば1~2年
で2%に戻るだろうと自身の期待を述べています。もっとも、石
油価格もドルの動向も予想できるものではないと付け加えて
いますが、イエレン議長の見通しから判断すると、インフレ率
の低下を懸念とはしているものの、程度は以前に比べ低下し
た可能性も考えられます。
米地区連銀(アトランタとニューヨーク)が予想する2016年4-6
月期並びに7-9月期GDP(NYのみ予想)は前期比年率2%を
越えるなど、米国経済の底堅い動きが現段階では想定され
ています。少なくとも7月以降ですが、仮に雇用市場の落ち込
みが一時的と判断されれば、利上げの声も出てきそうです。
図表1: 米失業保険申請件数と平均時給の推移
(月次、期間:2011年5月~2016年5月、失業保険申請件数は週次)
45
万人
%
2.7
40
2.3
35
30
25
20
11年5月
1.9
失業保険新規申請者数 (左軸)
米平均時給(前年同月比、右軸)
13年5月
15年5月
1.5
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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