都市計画マスタープランと市街化調整区域の地区計画の連動による

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第48回(平成27年度)研究発表会 論集
一般発表論文 №116
都市計画マスタープランと市街化調整区域の地区計画の連動による
市街地縁辺部の土地利用コントロールについて
株式会社エイト日本技術開発
橋本 秀昭
株式会社エイト日本技術開発
中井 二郎
株式会社エイト日本技術開発
戸田 公一
株式会社エイト日本技術開発
○髙木 悠里
論 文 要 旨
本稿では、都市計画マスタープランと市街化調整区域の地区計画を連動させて市街地縁辺部の土地利用コントロー
ルを図っている事例として、徳島県北島町での取組みを報告する。
北島町は現在も人口が増加しており、無秩序な開発が進行する怖れがあった。都市計画マスタープランでは、市街
化区域縁辺部の市街化調整区域を「緩やかに都市化を図るエリア」とし、
「市街化保留地」に設定することで、それ
以外の市街化調整区域の開発抑制を目指した。また「市街化保留地」の土地利用転換を図る具体的な手法として「市
街化調整区域の地区計画」を提案した。これを根拠に市街化保留地の一部である「中村地区」に地区計画を検討、策
定した。都市計画マスタ―プランの段階からまちの実態を的確に捉え、将来を見据えて検討を行っていたことで都市
計画マスタープランと市街化調整区域の地区計画が連動し、具体的な土地利用コントロールに至ったものである。
キーワード:都市計画マスタープラン、市街化調整区域の地区計画、土地利用コントロール
1.概要
1)北島町及び中村地区の概要
ま え が き
1992 年、都市計画法(以下、
「都計法」
)の改正により市
街化調整区域(以下、
「調整区域」
)においても地区計画(市
北島町は徳島県の北東部に位置し、町の南は徳島市に接
街化調整区域の地区計画、以下、
「調地区」
)が可能となり、
する、徳島県で最も面積が小さい自治体である(8.74km2 )。
地区整備計画に定められた内容に適合する建築物、開発行
役場から徳島市(徳島県庁)まで約 8km、徳島駅前までバ
為が認められるようになった。
スで約 20 分と便利な位置にある。近年は徳島市のベッド
地区計画を含む市町村の定める都市計画は、市町村の都
タウンとして発展し、2010 年現在の人口は 21,658 人、2020
市計画に関する基本方針(都市計画マスタープラン、以下、
年の将来推計人口は 22,181 人と、現在でも人口増加が続い
「都市マス」
)に即したものでなければならない(都計法
ている 2)。町全域が線引き都市計画域である徳島東部都市
第 18 条の 2 の第 4 項)
。これについて、
「都市計画運用指
計画区域に含まれており、市街化区域が 432.3ha(49.3%)、
針」
(国土交通省)では、
「都市マスにおいては、地区計画
調整区域が 444.7ha(50.7%)となっている。
中村地区は北島町の中心部、市街化区域に接する調整区
の活用を念頭におきつつ、地域別のあるべき市街地像を具
1)
体的に示すことが望ましい」としている 。
徳島県板野郡北島町は、2014 年 3 月に「北島町都市計画
マスタープラン」を策定し、都市マスにおける「土地利用
域に位置する。主要地方道徳島・鳴門線と主要地方道松
茂・吉野線が交差する位置にあり、交通利便性の高い地区
である。従来は農地として土地利用されている。
と市街地整備の方針」では「市街化区域縁辺部の調整区域
には調地区を運用していく」ことを明示している。続く
主)徳島・鳴門線
2015 年 3 月には、都市マスに基づき開発誘導型の調地区で
ある「北島町中村地区地区計画」を策定し、都市マスと調
地区を連動して市街地縁辺部の土地利用コントロールを
北島町
図っている。弊社は、北島町都市計画マスタープラン策定
中村地区
主)松茂・吉野線
業務及び北島町中村地区地区計画策定業務をコンサルタ
ントとして委託されたものである。
図 1 北島町の位置
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図 2 中村地区の位置
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一般発表論文 №116
2)都市マス・調地区の策定背景
2)都市計画マスタープランの検討プロセス
北島町は農地と住宅地が広がり、田園都市的な土地利用
北島町都市計画マスタープランの検討プロセスを示す。
が多く、土地利用現況は農地が約 30%、住宅地が約 25%
町民意向を把握しながら検討作業を進めるとともに、その
を占めている(図 3)。しかし、北島町では現在でも人口
結果は都市マス策定委員会に諮りながら検討を進めた。
増加が続いており、優良な農地の宅地化がモザイク状に進
検討作業
行するなど、無秩序な市街地の拡大が進行しつつあった
町民意向把握
(図 4)。これを問題視した北島町は、2012 年より都市マ
北島町の現況整理
スの検討を開始し、将来の都市構造・土地利用の方針等を
都市整備の方針の検討
土地利用の方針に
「市街化保留地」を提案
農地, 32.2%
商業用地,
4.1%
住宅用地,
25.2%
水面, 7.0%
図 3 土地利用の構成比
2013.5
「まちづくり
に関する
要望書」
地域別構想の検討
地域別
ワークショップ
実現化方策の検討
図 4 住宅と農地が
混在する様子
調地区を提案
2013.12~ パブリックコメント
一方、2013 年頃より食品スーパーを主とした複合商業施
2014.3~ 都市マス策定
設の出店意向が中村地区にあった。中村地区の住民・地権
第2回
(2013.7)
・全体構想案に
ついて
将来都市像と基本理念
に「要望書」の内容を反映
山林, 0.1%
第1回
(2013.2)
・都市マスの主
旨、今後の方
向性について
将来都市像と基本理念の検討
その他, 4.1%
工業用地,
8.0%
町民
アンケート
全体構想の検討
明確にすることで対応を図ることとした。
道路用地,
公益用地, 14.8%
4.5%
策定委員会
2012.7~:検討開始
第3回
(2013.11)
・都市マス案に
ついて
第4回
(2014.1)
・都市マス承認
図 6 北島町都市計画マスタープランの検討プロセス
者はこれを歓迎したと考え、町へ「まちづくりに関する要
望書(以下、「要望書」)」を提出した。これを受け、検
(1)現況の整理
討中の都市マスと要望書の目指す方向性が重なることを
初めに北島町の現況整理を行い、北島町の課題と今後の
確認の上、中村地区への調地区策定を想定し、都市マスに
方向性を整理した。また町民アンケートを実施し、現況整
調地区の活用を位置づけることとした。
理及び以降の検討に反映した。
2014 年 3 月に都市マスを策定した後、調地区の検討を開
(2)全体構想の検討
始し、2015 年 3 月に中村地区地区計画を策定した。
次に全体構想の検討を行った。都市整備の方針における
「土地利用と市街地整備の方針」では、今後も人口増加が
2.北島町都市計画マスタープランの策定
1)都市計画マスタープランの概要
見込まれることを踏まえ、市街化区域縁辺部の調整区域に
「市街化保留地」を示すことを提案した。
北島町都市計画マスタープランは以下の構成からなる。
(3)中村地区への施設出店意向と要望書の提出
一方、同時期に中村地区へ複合商業施設の出店意向があ
序章 都市計画マスタープランについて
・策定の趣旨、計画の位置づけと役割、目標年次
り、要望書が提出された。中村地区は「市街化保留地」の
第1章 北島町の現況
範囲に含まれることから、都市マスで検討している内容と
・北島町の現況、時代潮流、関連計画、町民意向
合致するものであったため、これを都市マスに反映するこ
ととした。具体的には、将来都市像における「将来都市構
全体構想
造図」に中村地区周辺を「商業拠点」として明示するとと
第2章 将来都市像と理念
・将来都市像
・将来都市構造
地域別構想
第4章 地域別構想
第3章 都市整備の方針
・土地利用と市街地整備の方針
・分野別整備方針
(道路、上下水道、公園緑地
等)
・地域の区分
(北部・中部・南部)
・地域別の特性
・地域別の将来像
と整備方針
もに、実現化方策に「調地区の活用」を記載した。
(4)地域別構想の検討
北島町を北部地域・中部地域・南部地域の3地域に区分
し、住民参加型ワークショップを行い、全体構想を踏まえ
て地域別構想を検討した。
(5)実現化方策の検討と都市マスの策定
第5章
最後に実現化方策をとりまとめ、都市マス案を作成した。
実現化方策
・都市計画の変更・見直し
・町民を中心としたまちづくり体制
図 5 北島町都市計画マスタープランの構成
都市マス案のパブリックコメントを実施の上、北島町都市
計画マスタープランが策定された。
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一般発表論文 №116
3)北島町都市計画マスタープランの特徴
中村地区の周辺を
「商業拠点」として
明示
北島町都市計画マスタープランの特徴は、①土地利用の
方針に「市街化保留地」を明示したこと、②将来都市像に
中村地区を「商業拠点」として明示したこと、③上記2つ
を実現する土地利用コントロールの手法として、実現化方
策に調地区の活用を明示したことである。この3点の検討
について以下に記載する。
(1)土地利用の方針の検討
北島町は人口増加が続いていることから、無秩序な市街
化を抑制する方法として市街化区域の縁辺部にある調整
区域の一部を「市街化保留地」として位置づけ、この区域
で増加する人口を受け入れることとし、郊外部の調整区域
では極力開発を抑制することを提案した。また市街化保留
地は、将来的に市街化区域への編入も検討することとした。
検討にあたっては用途地域の指定状況と法適用状況(農
図 8 将来都市像
振農用地の状況)を調査し、市街化保留地を定めた。
(3)実現化方策の検討
実現化方策では、要望書等を踏まえ、中村地区への商業
施設の立地が可能となる手法を検討し、「調地区の活用」
を提案した。
北島町は住宅地と農地が混在し、田園都市的な風景が残
南北軸に対して市街化区
域が小さく、健全な市街
地の発展を阻害していた
・用途地域の指定状況を調査
農地地に指定されていない
箇所(図中黄色が農用地)
・法適用状況を調査
る。これを保全するためには、調地区を定めた上で開発を
行うことが必要であると考えた。調地区においては、地区
整備計画で形態規制等を適切に行い、北島町の風土を守り
ながら、緩やかに土地利用転換を図っていく事を想定した。
3.北島町中村地区地区計画の策定
1)北島町中村地区地区計画の概要
北島町中村地区地区計画の概要を以下に示す。中村地区
は、商業施設の立地を想定する A 地区(近隣商業地域並み)
と、住宅地としての活用を想定する B 地区(準住居地域並
み)からなっている。
表 1 中村地区地区計画の概要
(区域の整・開・保の方針及び地区施設)
「市街化保留地」
を明示
名称
面積
区域の整備・開発及び保全の方針
・土地利用方針図へ反映
図 7 土地利用の方針の検討
(2)将来都市像の検討
将来都市像については、従来より土地利用の方針と合わ
地区計画の
目標
土地利用の
方針
地区施設の
整備の方針
建築物等の
整備の方針
せて検討を行っており、「市街化保留地」についても図示
に「商業拠点」を明示することとした。
地区整
備計画
していた。これに要望書の内容等を踏まえ、中村地区周辺
地区施設
- 73 -
北島町中村地区地区計画
約 4.5ha
地区の特性を活かし、適正かつ合理的な土地利用を図り都
市マスに示された商業拠点の実現を目指す。
日常利便性の向上に資する商業施設等の整備を図る。
また一部に住宅・業務地の整備も図る。
商業施設の利用者による渋滞が発生しないように、地区北
側の町道 6 号線と 26 号線からの進入を想定し、町道に地区
施設道路を配置する。この他適切に地区施設公園・地区施
設緑地を配置する。
周辺の良好な田園環境や良好な住環境を保全するため、用
途・建蔽率・高さ等を制限する。
また大規模な建築物(2,000 ㎡以上)の整備については、
大規模災害時の一時的な避難が可能となるような施設(津
波防災地域づくりに関する法律に基づく指定避難施設や基
準水位以上に床面を設け屋外階段等により外部から直接移
動ができる施設)の整備に努めること。
道路
地区施設道路 1 号、2 号
公園
地区施設公園1号
緑地
地区施設緑地1号、2号、3号、4号、5号
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2)地区計画の検討プロセス
表 2 中村地区地区計画の概要
(地区整備計画-建築物に関する事項)
名称
A 地区
B 地区
面積
約 3.5ha
約 0.5ha
中村地区地区計画の検討プロセスを以下に示す。初めに
権利者意向の調査や開発業者との協議を行い、地区計画原
次に掲げる建築物以外は建築してはならない
用途
店舗・飲食店、事務所、
病院・学校等の公共施設
案を作成した。これを徳島県とともに協議しながら検討を
住宅・共同住宅、兼用住宅、
事務所、工場・倉庫
進めた。
検討作業
60%以上
建蔽率
敷地面積
壁面の位置
500 ㎡以上
道路境界:県道及び地区施設道
路から 3m 以上
隣地境界:1m 以上
165 ㎡以上
2013.5 要望書
2014.6~:検討開始
-
中村地区の現況調査、地権者調査
絶対高さ:12m 以上
道路斜線制限:道路高さの限度は 1.25×L1(L1 は前面道路
の反対側の境界線までの水平距離)
高さ
関連手続き
地区計画原案の検討
日影による建築物の高さの制限
B 地区に一定以上日影を落と
B 地区に一定以上日影を落
さない
とさない
工作物の
設置
壁面の位置の制限を受ける範
囲内では、自家用工作物以外は
設置してはならない
-
かき又は
さくの構造
垣・柵の高さは1.2m 以下とし、
ブロック塀は禁止
B 地区との境界及び既存住宅
との境界線には目隠し遮音フェ
ンスを設置する
-
権利者の意向調査
地区計画の区域及びゾーニング
(地区整備計画の区域)の検討
徳島県との
下協議①
区域の整・開・保の方針の検討、
地区施設の検討
開発業者協議
交通処理のため、町道を地区施
設道路とし拡幅することを提案
地区整備計画(建築物の事項)の検討
徳島県との
下協議②
住民説明会
原案の縦覧
地区計画案の検討
徳島県事前協議:原案の調整・修正
地区計画条例、施行規則、要綱
の検討
2015.3~
案の作成
案の縦覧
都計審
徳島県同意
北島町中村地区地区計画 策定
図 11 中村地区地区計画の策定プロセス
現状は開発計画が具
体化していない箇所
3)中村地区地区計画の特徴
中村地区地区計画の特徴は、①開発の意図はあるものの、
現段階では具体化していない箇所も地区整備計画の区域
に含めたこと、②周辺に渋滞を発生させないために町道を
地区施設とし町道の拡幅を位置づけたこと、③「地区整備
計画」に用途・建蔽率・高さ等、比較的厳しい建築形態規
図 9 地区計画の区域及び地区整備計画の区域
制を策定したこと、④「建築物等の整備の方針」に避難場
所としての整備を明示したことが挙げられる。これについ
て、以下に記載する。
(1)地区整備計画の区域
地区整備計画の区域のうち一部分については、開発の意
図はあるものの、現段階では開発計画が具体化していない
箇所であった(図 9)。一般に、調地区では開発の確実性
を必要とするため、開発計画が確定した区域のみについて、
地区計画の方針・地区整備計画・建築条例を定めることが
多い 3)。これに対し、中村地区では、開発計画が具体化し
ていない箇所についても地権者と開発業者との間で話し
合いがなされており、地権者の意向から地区整備計画に含
めることとした。
これにより、将来的に、中村地区の区域全体で一体的に
土地利用コントロールを図っていくことが可能となった。
図 10 地区施設配置図(道路・公園・緑地)
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第48回(平成27年度)研究発表会 論集
一般発表論文 №116
4.まとめ
(2)地区施設道路の指定と交通処理対策
中村地区は主要地方道 2 路線と町道 6 号線・町道 26 号
本稿では、都市マスと調地区を連動して土地利用コント
ロールを図っている北島町の事例を紹介した。
線に囲まれ、交通至便な地区である。このため、商業施設
が立地すると入場待ちの車両が発生するおそれがあり、こ
都市マスでは、北島町の人口増を捉え、市街化区域縁辺
れによる影響を主要地方道へ与えないような配慮が必要
部の調整区域に「市街化保留地」を設定した。これに中村
であった。そこで、入場待ちの車両は町道 6 号・26 号で処
地区のまちづくり意向を反映し、中村地区を「商業拠点」
理することとした。町道は現況幅員が 4m~6m であったた
として明示し、具体策として調地区の活用を都市マスに位
め、これを拡幅することとし、地区施設道路として位置づ
置づけた。都市マスの検討段階から北島町の実態を的確に
けた(図 12)。
捉え、将来を見据えていた成果である。
地区計画では、都市マスの流れを受け、建築形態規制を
検討することができた。この他、現状開発計画が具体化し
ていない箇所も地区整備計画に含め、一体的な土地利用コ
ントロールを図った。さらに町道を活かした交通処理や、
立地する施設の一時避難場所としての活用等を検討した。
一般に市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域とさ
れるが、計画的で良好な開発や、既存コミュニティの維持
に必要な開発は許容される。そのため、北島町のように人
口増が続く都市では、無計画な市街地拡散や、地域住民と
の合意形成が無いままでの店舗出店等のおそれがある。
今回のケースでは、都市の将来を見据えながら、住民意
向も反映し都市マスの検討を行っていた事で、都市マスと
調地区がうまく連動し、北島町の風土を保全しながら開発
図 12 交通処理対策の検討
を進めるための調地区を策定することができたと考える。
(3)建築形態規制の検討
あ と が き
中村地区の周辺の良好な田園景観や、良好な居住環境を
都市マス等の策定においては、長期的な見通しを持って
保全するため、地区整備計画にはできるだけ厳しい建築形
都市の将来像を描き、将来像の具体的な実現策を位置づけ
態規制を検討した。
これは、田園都市的風景が残る北島町において、これを
ていく必要がある。しかし、これまでの都市マスは、将来
保全するために緩やかな土地利用転換を図る手法として
を見通せないままに具体性を欠いたものも多かったと考
都市マスに調地区を位置づけたためである。都市マスでの
える。北島町では、都市マスと調地区のタイミングが重な
想定を中村地区で具体化したものといえる。
ったという偶発的な面があるものの、都市マスでは将来を
(4)避難場所としての整備の明示
見据え、これと連動して調地区を策定することができた。
都市を巡る情勢は複雑さを増す一方、立地適正化計画の
北島町は吉野川に近く、紀伊水道にも近いものの、町内
に山は無く、地震発生時には津波による被害が想定される。
策定等、新しい取組みが必要とされている。このような中
では、将来を見据えた都市計画がさらに重要となる。
そこで、徳島県の要望により、A地区に整備される商業
最後に、本業務及び本論執筆に際して指導・協力頂いた
施設の屋上を津波発災時の一時避難場所として、また近年
北島町建設課の方々に感謝申し上げます。
多発するゲリラ豪雨時の一時避難場所として活用できる
旨を「建築物等の整備の方針」に位置づけることとした。
参考文献等
なお、当初は地区整備計画に「形態又は意匠の制限」を
設け、大規模な建築物は屋上が一時的な避難場所として利
1) 国土交通省(2015)
「都市計画運用指針 第 8 版」
用できるように通路を確保する等、形態の制限を設けるこ
2) 国立社会保障・人口問題研究所(2013)
「日本の地域別
将来推計人口」
とを検討した。しかし、徳島県との協議の結果、運用の難
しさから地区整備計画に位置づけることは困難とされた。
このため、これについて建築物等の整備の方針に示すとと
もに、別途中村地区地区計画の運用に関する要綱を定め、
これにより具体的な運用を図ることとした。
3) 元大阪府都市計画課長・総合計画課長へのヒアリング
より
4) 小林・秋本・石飛(2009)
「市街化調整区域の地区計画
と都市計画マスタープランの整合性に関する研究」
,日
本都市計画学会,都市計画論文集,No44-2,pp32-40
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