重力変形斜面における地質・水文特性 - JCCA 一般社団法人建設

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第48回(平成27年度)研究発表会 論集
一般発表論文 №126
重力変形斜面における地質・水文特性
国土交通省国士技術政策総合研究所(元国土交通省近畿地方整備局紀伊山地砂防事務所) 桜井亘
国土交通省関東地方整備局(元国土交通省近畿地方整備局紀伊山地砂防事務所) 酒井良
国土交通省近畿地方整備局紀伊山地砂防事務所 奥山悠木
国土防災技術株式会社 ○澤 徹・川島正照・磯貝尚弘・小川内良人
論 文 要 旨
深層崩壊の活動が指摘されている岩盤クリープ斜面において,水文・地質構造を明らかにし,深層崩壊発生メカ
ニズムについて考察した。調査ボーリングの結果各ボーリング孔とも岩盤の緩み域が深度 50~60m にまで達してお
り,脆弱な斜面であることが明らかとなった。試錐日報解析,地下水検層では,浅層部と深層部に有圧水層が検出
され,2 つの地下水流出経路があることが示唆された。また,深層部の有水圧層検出深度は緩み域と基岩層の境界
付近と一致していた。現場透水試験では,緩み域と基岩層で透水係数が 10 倍異なり,この境界付近を多量の地下
水が流れていると推察された。酸素同位体比,水質分析の結果から,酸素同位体比は,斜面末端の湧水や山麓およ
び河岸の湧水が深層地下水の特徴を示していること,BorT-3,T-4,T-6 が深層地下水,BorT-1,T-5 が浅層地下水に分類
されることが明らかとなった。これらより,北側の尾根部と南側尾根部から流下した地下水が緩み岩盤内を流下し,
豪雨時には有圧地下水となる可能性を示唆している。また,BorT-2,5 を除き緩み域の境界付近に有圧地下水が検
出されていることから,緩み域下底面に過剰間隙水圧が作用することにより,亀裂構造が破壊され崩壊面になる可
能性が高いことが推察される。
キーワード:深層崩壊,岩盤クリープ斜面,緩み域,過剰間隙水圧
T 地区は四万十帯の花園層と美山層が分布している。花園
ま え が き
紀伊山地では,平成 23 年 9 月台風 12 号の豪雨により,
層は砂岩・頁岩および砂岩頁岩互層を主体とした堆積岩類
大規模な深層崩壊が多発し,甚大な被害が発生した(松村
であり,緑色岩類・酸性凝灰岩・チャート等を伴う。頁岩
ら,2011)1)。このような被害を軽減するためには,深層
は黒灰色のものが多いが,凝灰質の緑灰色頁岩および赤色
崩壊の発生メカニズムを明らかにし,深層崩壊の恐れのあ
頁岩もみられる。美山層は砂岩・砂岩泥岩互層・泥岩を主
る斜面の危険性の程度や発生タイミングを明らかにした
とし,チャート・緑色岩類・珪長質凝灰岩を伴う。チャー
上で,有効な対策工の検討・施工の検討を行うことが重要
ト・緑色岩類は泥質岩中の異地性岩塊として産し,周囲の
となる。近年,深層崩壊は重力によって岩盤が変形した斜
泥質岩よりも古い年代を示すことが多い。
面(以下,岩盤クリープ斜面)で発生することが指摘されて
いる(例えば,千木良,2011) 2)。木下ら(2013)は,深層崩壊
の発生の原因は,岩盤内部で発生した過剰間隙水圧による
ものとした 3)。また,桜井ら(2014)は,深層崩壊発生機構
には,地質・地形要因に加えて,水みちの存在を指摘して
対象地域
4)
いる 。しかしながら,岩盤クリープ斜面における水文・
地質的な情報を得た事例は少ない。
そこで,本研究では紀伊山地において岩盤クリープ斜面
を選定し,岩盤クリープ斜面の水文・地質構造を明らかに
した上で,深層崩壊発生メカニズムについて考察した。
1.対象地域
対象地域は紀伊山地中央に位置する T 地区である(図-1)。
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図-1 調査地付近の微地形解析図(SL-3D マップ)
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T 地区には稜線下に 2 つの馬蹄形の崖地形があり,その
直下には緩傾斜面が広がり,斜面中腹から斜面下部では比
表-1 試錐日報解析判定図
較的急勾配を呈する。崖の高さは 50m と大規模であり,地
湧漏水率
判定
すべり地形にも判別されるが,末端では大きな押し出し地
R≧+20%
有水圧層
形がみられないことから,大規模な重力変形斜面(岩盤ク
+20%≧R≧-5%
難透水層
リープ斜面)と判断される。岩盤クリープ斜面内には遷急
-5%≧R≧-20%
一部漏水層
線と遷緩線が交互に判読され,重力変形が進行していると
-20%≧R≧-80%
部分漏水層
考えられる。
斜面の裾部(岩盤クリープ斜面の末端付近)には小崩壊
2.3 地下水検層
地形の痕跡が見られる。また,常時湧水が確認された。調査
崩壊に関わる地下水流動面の確認,地下水流動面ごとの
の実施期間は平成 26 年 9 月~平成 27 年 3 月で寡雨期では
地下水水頭の推定を目的とし,地下水検層を行った。地下
あるが,積雪が頻繁にあり,積雪融解によって湧水や沢の
水検層は,ボーリング孔内水の電気抵抗値を電解物質(食
流量は比較的多かった。
塩)にて低下させ,透水位置の電気抵抗値が通過する地下
水によって変化する状況を地下水検層器によって測定し,
2.調査方法
2.1 ボーリング調査
地下水の流動層の位置及び流動状況を垂直的に解析する
手 法 で あ る 。 測 定 機 器 に は KYOUWA 製 電 導 度 計
斜面内部の水文地質構造を把握するため,乱れの少ない
KCM-200C(デジタル地下水検層測定器)を,測定ゾンデ
コア採取により,正確な地質状況・水文状況を確認した。
はサンスイエンジニアリング製 GWL-P(100m地下水検層
ボーリング調査は全部で 6 孔である(図-2)
。いずれも孔径
ゾンデ)を用いた。測定回数は,バックグラウンド 1 回,
66mm で,削孔方向は,鉛直である。表層のルーズな砂質
ステップ検層では食塩投入直後および,その後 2 回~5 回
土は無水掘削(シングル)とし,風化岩や岩盤は,コアの
,自然・汲上水位検層では食塩
測定(30 分~1 時間程度)
品質を考慮してダブルコアチューブを用いた清水掘りと
投入直後および,その後 6 回~10 回測定(2 時間程度)と
した。
し,25cm 間隔で測定を行った。なお,地下水検層はボー
リング削孔中に実施するステップ式とした。
2.4 現場透水試験(湧水圧試験)
岩盤内の透水性を直接的に把握するため,湧水圧試験を
行った。湧水圧試験は,地盤工学会の「湧水圧による岩盤
の浸水試験方法(JGS1321)」に従った。ボーリング孔内
にパッカーとトリップバルブを先端部に取り付けた水位
測定管を挿入し,パッカーを膨らませて任意の試験区間に
区切った後,トリップバルブを開放して水位測定管内の水
位を回復させ,同管内の水位回復と時間の関係から式(2),
(3)より透水係数を求める。
図-2 ボーリング位置
2.2 試錐日報解析
ボーリング調査中の掘削区間ごとの透水性を推定し,水
k
(2.3de) 2
2L
log( )a
8L
D ------(2)
a
log( s1 / s 2)
t 2  t1
-------(3)
文地質判定の補助資料とした。式(1)より湧漏水率を算出し,
ここで,de:水位測定管の有効断面積,D:試験区間の孔径(m),
表-1 の試錐日報解析判定表に示す基準に基づいて判定す
L:試験区間の長さ(m)
る。
2.5 酸素同位体比・水質分析
R=(W1-W2)/(D-W1)------(1)
崩壊に影響する地下水の流下経路を把握するため,調査
ボーリング孔内水,対象地域周辺の河川・湧水の水質分析
ここに,R:湧漏水率(%),W1:前日作業後水位(m),W2:当日
を実施した。採水箇所を図-3 に示す。成分分析の室内試験
朝水位,D:孔底深度(m)
は,JIS K 0101,JIS K 0102,及び ICP 発光分光分析法によ
り実施した。
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す。BorT-3 では地表から GL-53.40m まで緩み域が広がり緩
み域と基岩層の境界には φ2~5mm の礫を含んだ礫混り粘
土が挾在する。GL-40.45m までコアが褐色を帯び,全体的
に風化されておりハンマーの打撃で容易に粉砕する。基岩
層に達した後,概ね堅硬なコアになるが,GL-64.40m のよ
うに擦痕及び鏡肌を有すコアも見られる。その他の孔でも,
同様な傾向を示し,深部まで緩み域が認められる(表-2)
表-2 各ボーリング孔での緩み域深度
図-3 採水箇所
3.調査結果
3.1 ボーリング調査
孔番
緩み域深度(GL-m)
BorT-1
63.00
BorT-2
70.00
BorT-3
53.40
BorT-4
50.95
BorT-5
16.64
BorT-6
35.00
代表的な例として BorT-3 のボーリングコアを図-4 に示
風化層
GL-40.40m までコ
アが茶褐色を帯
緩み域
び,全体的に風化
されている。
基岩層
緩み域と基岩層の
境界付近である
GL-53.27m では φ2
~5mm の礫を含ん
だ礫混り粘土が挾
在する。
図-4 BorT-3 のボーリングコア
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3.2 試錐日報解析
抗値が戻った(図-7)。BorT-6 のステップ検層時にも同様な
各孔の透水層検出最深深度と有圧地下水層を表-3 に示
傾向が見られたため,深部に大量の地下水が存在すること
す。
が明らかとなった。
BorT-2 を除いた全ての孔において GL-50.00m以深で有
圧地下水層が判定された。特に BorT-6 では GL-55.00~
GL-60.00m の当日朝水位が前日夕水位よりも回復しており,
有圧地下水層
有圧地下水があることが認められる(図-5)。
また,BorT-3,5,6 では浅層で有圧地下水層が判定され
たのに対して BorT-1 では 65.32m,BorT-2 では 62.50m まで
図-6 BorT-3 におけるステップ検層
水位は形成されず,浅層の地下水は認められなかった。
表-3 透水層検出最深深度と有圧地下水層検出深度
孔番
透水層検出
最
有圧地下水層
終深度(GL-m)
検出深度(GL-m)
BorT-1
62.55
66.45~70.00
BorT-2
70.00
なし
BorT-3
51.35
BorT-4
50.95
BorT-5
有圧地下水層
図-7 BorT-1 における汲上水位検層
31.80~38.20
3.4 現場透水試験
52.2~055.50
16.64
64.30~70.00
現場透水試験の結果を表-4 に示す。緩み域内の平均透水
23.33~26.40
係数は 5.29×10-5 m/sec であり,基岩内の平均透水係数は
4.28×10-6 m/sec であった。緩み域のオーダーが 10-5 に対し
28.20~31.25
て基岩内が 10-6 であるため,緩み域内の方が 10 倍程度,
32.10~35.00
BorT-6
透水性に差があった。
19.00~21.09
35.00
45.60~-55.00
表-4 現場透水試験結果
水位上昇
孔番
実施深度(m)
区別
透水係数
m/sec
Bor-T-1
63.5~70.0
基岩内
1.33E-05
Bor-T-2
64.0~70.0
―
―
Bor-T-3
39.0~42.5
緩み域
2.63E-07
Bor-T-4
67.0~70.0
基岩内
2.75E-06
24.0~25.0
緩み域
1.58E-04
43.0~45.0
緩み域
3.32E-05
42.0~45.6
緩み域
4.17E-07
52.0~55.0
基岩内
6.72E-07
56.0~60.0
基岩内
4.15E-07
Bor-T-5
Bor-T-6
図-5 BorT-6 における試錐日報解析図
3.3 地下水検層
BorT-3 ではステップ検層時 G.L.-39.25m~39.50m,で有
3.5 水質分析
圧地下水層が検出された(図-6)。同様に BorT-4 の G.L.36.40
酸素同位体比,水質分析の結果を図-8 に示す。酸素同位
m~36.50m,BorT-6 の G.L.-25.00m~25.25m でも有圧地下
体比は,斜面末端の湧水や山麓および河岸の湧水が深層地
水層が検出されたため,これらの孔では浅層の地下流出経
路が存在することが明らかとなった。
また,BorT-1 では汲上水位検層時 G.L.-62.70m~63.50m
の地下水流入層の影響が大きく,120 分間で BG まで非抵
下水の特徴を示している。水質分析の結果より,地表水と
ボーリング孔内水は,炭酸カルシウム型(一般の地下水)に
分類され,水質の大きく異なる類型はない。また,ヘキサ
ダイヤグラムより Bor-T-3,T-4,T-6 で溶存イオンが相対的
に他より濃度が高い値を示した。
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和田地区 (2013.11.06-07)
② δ18O予測値残差
850
800
750
700
650
600
550
500
-9.4
-9.2
-9
-8.8
-8.6
深層地下水=10,12,14
図-8 酸素同位体比と水質分析の結果
4.考察
4.1 地質特性
い深度から地下水層の形成が認められる。このように,西
側斜面と東側斜面では水文状況が大きく異なることが明
ボーリング調査の結果から得られた主測線の地質縦断
らかとなった。
図を図-9 に示す。ボーリングコアより対象地域は頁岩優勢
地下水の流出経路に関しては BorT-3,BorT-4,BorT-6 で
互層,砂岩泥岩互層,凝灰質頁岩の順で重なっており,頁
は浅層の流入と深層の流入が検出されていることから,浅
岩優勢互層は,亀裂が上位に比べて少なく,当該斜面で基
層部と深層部の 2 通りの地下水流下経路が考えられる。浅
岩層を形成していることが明らかとなった。また,BorT-1
層部については,水質分析の結果から BorT-5 も浅層の動き
以外の全ての孔では 10~15m 程度の層厚をもつ砂岩頁岩
を捉えていると考えられることから,BorT-6→BorT-5,
互層が存在する。
BorT-3→BorT-4 にかけて 2 通りの地下水流下経路が考えら
緩み域の深度は,斜面上部に比べ斜面下部の方が深いこ
れる。深層部については,水質分析の結果より Bor-T-3,
とが明らかとなった。また,BorT-5 の G.L.-44.78m~45.00m
T-4,T-6 が深層地下水の特徴を示していることから,
では亜円礫を含み,かつての地すべり活動の痕跡と考えら
Bor-T-6→T-4→斜面末端部の擁壁湧水に向かう流下経路,
れるコアが認められることや,BorT-1 の 68.30m~68.35m
Bor-T-3→T-4→斜面末端部の擁壁湧水に向かう流下経路が
のように深い深度でも,強風化され粘土化しているコアが
想定される。また,深層地下水は緩み域の透水性が基岩層
認められることから深部まで脆弱な斜面であることが明
に比べ 10 倍以上も差があるため,この透水係数の異なる
らかとなった。
緩み域と基岩層の境界を通過することが推察される。
4.2 水文特性
4.3 深層崩壊の発生と水文地質構造の関係
西側斜面では Bor-T-1,T-2,T-3,T-4 の様に透水層が深
以上のことから,北側の尾根部と南側尾根部から流下し
度 50m 以深にまで形成され,地下水の分布もそれ以深と考
た地下水が緩み岩盤内を流下し,豪雨時には大きな有圧地
えられる。これに対し,東側では深度 20m 程度の比較的浅
下水に変化して斜面が不安定になる可能性を示唆してい
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る。また,BorT-2,5 を除き緩み域の境界付近に有圧地下
向かう流下経路が想定される。また深層地下水は透
水が検出されていることから,緩み域の深度が崩壊面にな
水係数の大きく異なる基岩層と緩み層の境界付近を
る可能性が高いことが推察される。BorT-2 に関しては孔底
流れている。
である 70.00m まで緩み域であり,基岩層に達していない
3) 末端付近では多量の湧水がみられ,斜面内の排水施
ことも考えられるため,70.00m 以深に崩壊面が検出される
設の役割をなしている。しかし,豪雨時には斜面内
可能性がある。
に蓄えられた地下水を排除できず,末端付近に非常
末端付近では多量の湧水がみられたことから,末端付近
に大きな地下水圧を作用させることが予想される。
湧水口は,緩み岩盤内の地下水の出口,すなわち,この斜
このことが多量の岩塊を押し動かす原動力となるこ
面内の排水施設的な役割をなしている。しかし,豪雨時に
とが推察される。
は多量の地下水は排除できず,末端付近に非常に大きな地
4) 今後は地下水位や湧水量の観測を行い,豪雨期の地
下水圧(間隙水圧)を作用させることが予想される。これ
下水の挙動や過剰間隙水圧の発生状況を把握するす
により,緩み域下底面の亀裂帯に水圧が作用し,亀裂構造
る必要がある。
の破壊とせん断がおこり,崩壊が発生するといったシナリ
オが考えられる。ただし,現時点では実際に過剰間隙水圧
最後に,本研究および原稿執筆にあたり,多くの関係者
にご指導とご協力等を頂いた。感謝申し上げます。
を確認できていないため,今後は地下水位や湧水量の観測
を行い,豪雨期の地下水の挙動や過剰間隙水圧の発生状況
引用文献
を把握するする必要がある。
1) 松村 和樹・藤田 正治・山田 孝・権田 豊・沼本 晋
也・堤 大三・中谷 加奈・今泉 文寿・島田 徹・海堀
正博・鈴木 浩二・徳永 博・柏原 佳明・長野 英次・
横山 修・鈴木 拓郎・武澤 永純・大野 亮一・長山 孝
彦・池島 剛・土屋 智;2011 年 9 月台風 12 号による
紀伊半島で発生した土砂災害,砂防学会誌,2011,
Vol.64,No.5,p.43-53
2) 千木良雅弘;深層崩壊-どこが崩れるのか-,近未来社,
2013,232pp
緩
み
域
3) 木下篤彦・小川内良人・眞弓孝之・柴崎達也;平成 23
:浅層の有圧地下水層
:深層の有圧地下水層
年台風 12 号で発生した深層崩壊の地質的素因と崩壊
面の土質特性,砂防学会誌,2013,Vol.66,No.3,p.3-12
4) 桜井 亘・酒井 良・岩田孝治・小杉賢一朗・小川内良
人・横山 修・佐藤美波;紀伊山地に分布する四万十
図-9 地質特性と水文特性の関係
帯で抽出された岩盤クリープ斜面の地質および水文
特性について,2014,第 63 回平成 26 年度砂防学会研
あ と が き
究発表会概要集,p.A-26-27
深層崩壊の発生メカニズムを明らかにするために,岩盤
クリープ斜面の水文・地質特性の把握を行った結果,以下
のことが明らかになった。
1) T 地区の岩盤クリープ斜面において,重力変形による
岩盤の緩み深度はおよそ 50~60m にまで達しており,
崩壊に至った場合はこの深度で崩れることが推察さ
れる。
2) 西側斜面と東側斜面では水文状況が大きく異なるこ
とが明らかとなった。また,地下水は浅層部と深層
部の 2 種類存在し,浅層部では BorT-6→BorT-5,
BorT-3→BorT-4 に 向 か う 流下経 路 ,深 層部 では
Bor-T-6→T-4→斜面末端部の擁壁湧水に向かう流下
経路,および Bor-T-3→T-4→斜面末端部の擁壁湧水に
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