山岳地における工事用道路設計 - JCCA 一般社団法人建設

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第48回(平成27年度)研究発表会 論集
一般発表論文 №113
山岳地における工事用道路設計
(株)オリエンタルコンサルタンツ 関西支店 国土技術部 ○宮崎 吉孝
(株)オリエンタルコンサルタンツ 関西支店 国土技術部
西垣 昌俊
論 文 要 旨
急峻な山岳地における道路計画は尾根部での切土計画、谷部での橋梁・擁壁計画等により構造規模が大きくなり、
道路コスト及び施工工期の増加の要因となる。公共事業のコスト縮減及び事業のスピードアップが求められる昨今
では、地形条件に伴う構造規模増加が懸念されるような道路計画においては、道路幾何構造条件、土工構造物の最
適工法の検討を実施し、コスト縮減、工期短縮に努める必要がある。
本稿では、山岳地におけるダム事業に伴う付替県道・町道施工のための工事用道路についてコスト縮減、工期短
縮を目的とした道路詳細設計について述べる。
キーワード:工事用道路設計、道路詳細設計、擁壁設計、切土補強土工設計
ま え が き
本業務はダム事業における現況県道及び町道の付替道
路計画に対する工事用道路の詳細設計である。付替道路計
画はダム水位を縦断コントロールとした計画であること
から、現況道路との高低差が大きく、現道から施工対象(付
替道路)への接続を行う工事用道路は縦断距離を長く確保
した線形が必要となり、業務対象箇所は急峻地形であるこ
とから、構造物規模の増大が懸念される。
図-1 工事用道路設計 検討フロー
公共事業のコスト縮減及び事業スピードアップが求め
られる昨今では、工事用道路としての機能を確保しつつ、
2.設計条件の整理
本道路は付替県道及び町道の工事用道路であり、一般車
経済性、施工性に優れた工事用道路計画が求められる。
両の通行は無く、工事用車両のみの通行であることから
1.概要
「土木工事 仮設計画ガイドブック(全日本建設技術協会
コスト縮減、工期短縮を目的とした工事用道路設計及び
切土補強土工、谷側擁壁等の構造物設計を行った。
平成 23 年 3 月)」を参考として設計条件の設定を行った。
本工事用道路の施工対象は PC 橋、橋梁施工用の仮桟橋及
工事用道路設計は施工時に通行が考えられる工事用車
両を設定し、工事用道路としての機能を確保したうえでの
び土工(切土補強土工、補強土壁工)であり、工事用車両は
セミトレーラーとクローラークレーン(50t)を想定した。
幾何構造(道路幅員、平面・縦断線形)の検討を行った。
設定した工事用道路の幾何構造条件にて最適な工事用
道路ルート選定を行うルート比較検討を実施し、最適ルー
設計条件は経済性を考慮し、工事用車両が徐行で通行で
きる最小の幾何構造とした。以下に本業務で採用した幅員
構成、幾何構造条件を示す。
トについて道路詳細設計を実施した。
構造物設計(切土補強土工、谷側擁壁工)では、代表箇所
において構造物形式の比較検討を実施し、最適な構造物形
・幅員構成:W=4.0m(セミトレーラー通行区間)
:W=5.0m(クローラークレーン通行区間)
・最小平面曲線半径:R=12m
式の選定を行った。
・最急縦断勾配
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:I=12.0%
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一般発表論文 №113
事用道路の最急縦断勾配は、I=15.0%2)となっているが、本
(1)幅員構成
本工事用道路の幅員は、設計対象車両(セミトレーラー、
工事用道路は橋梁上部工 PC コンポ桁の搬入等、積載重量
クローラークレーン(50t))の通行が可能な幅員とした。本
の大きいものの運搬が考えられることから、施工時の安全
工事用道路は、工事用道路途中でクローラークレーンの組
性を考慮して採用する最急勾配は I=12.0%とした。
立ヤードを設けるため、セミトレーラーのみの通行となる
区間、セミトレーラーとクローラークレーンの通行が考え
3.工事用道路ルート検討
られる区間があり、車両幅より、前者の工事用道路幅員は
(1)コントロール条件
本工事用道路は付替県道及び町道計画に支障しないよ
4.0m、後者の工事用道路幅員は 5.0m とする。
うに計画することを基本とする。また、現況砂防堰堤及び
一部、用地未買収箇所を避けた平面計画とする。
付替町道
砂防堰堤
用地未買収箇所
付替県道
現況町道
図-4 コントロール条件
図-2 セミトレーラー通行区間の幅員構成
(2)工事用道路ルート検討
1)検討案設定
前述の設計条件及びコントロール条件を考慮して工事
用道路のルート検討を行った。検討を行うルートは付替町
道の橋梁計画となる沢部の山側を通るルート案、谷側を通
るルート案について土工主体、桟橋主体等の検討案を設定
し、比較検討を行った。
付替町道橋
(山側ルート案)
クローラークレーン
組立ヤード
山側ルート
谷側ルート
(谷側ルート案)
クローラークレーン
組立ヤード
図-3 セミトレーラー通行区間の幅員構成
図-5 ルート検討案
(2)最小平面曲線半径
最小曲線半径は「道路構造令の解説と運用(日本道路協
土工案(パイロット案)
⇒ 第1案
桟橋案
⇒ 第2案
山側ルート
会 平成 16 年 2 月)」に示されるセミトレーラーの最小曲
1)
線半径より、「R=12m」 とした。
谷側ルート
(3)最急縦断勾配
最急縦断勾配は、「土工工事 仮設計画ガイドブック(全
日本建設技術協会 平成 23 年 3 月)」に記載されている工
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土工案
⇒ 第3案
桟橋案
⇒ 第4案
現道切回案 ⇒ 第 5 案
図-6 ルート検討フロー
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2)検討案概要
3)比較検討結果
前述で設定した各検討案の概要は、下図に示すとおりで
ある。
検討案について、経済性、施工性及び利便性を評価項目
として比較検討を行った。検討の結果、全項目に優れる「第
2 案(山側ルート 桟橋案)」を最適ルートとした。
<案の設定主旨>
クローラークレーンの
付替町道計画内にパイロット道路を
組立ヤード設置
計画し、擁壁・桟橋規模を抑える案
表―1 工事用道路ルート比較検討結果
検討案
第1案
(山側
土工案)
第2案
(山側
桟橋案)
第3案
(谷側
土工案)
第4案
(谷側
桟橋案)
第5案
(谷側
現道切回案)
4段程度の切土
(1:0.5)
図-7 第1案(山側ルート 土工案)
<案の設定主旨>
桟橋を用いて町道1号橋桁下空間を
通行し、切土規模を抑える案
桟橋・擁壁構造
クローラークレーンの
組立ヤード設置
経済性
(%)
施工性
利便性
総合評価
102%
大規模な切土
が施工生じる
-
△
100%
擁壁。桟橋施工
が施工必要
-
○
128%
大規模な盛土
擁壁、切土施工
が必要
-
△
209%
大規模な桟橋
施工が必要
-
△
106%
中規模な仮橋
施工が必要
現道の切回
しが必要
△
図-8 第2案(山側ルート 桟橋案)
4.切土補強土工設計
<案の設定主旨>
極力、土工構造として
桟橋規模を小さくする案
クローラークレーンの
組立ヤード設置
(1)設計概要
当該箇所は急峻な山岳地であり、切土のり面を安定勾配
で掘削を行った場合、計画の付替町道計画に支障する。よ
って、切土部は急勾配掘削を行うこととし、切土のり面の
大規模盛土
(H=20m 程度の直擁壁)
4段程度の切土(1:0.5)
安定を確保するため、切土補強土工を計画した。
図-9 第3案(谷側ルート 土工案)
大規模な桟橋構造
クローラークレーンの
組立ヤード設置
(2)設計条件
設計条件は以下のとおりとなる。
・安定勾配:崖錐堆積層、強風化花崗岩 → 1:1.2
<案の設定主旨>
桟橋構造を主体とし、直線的な道路線形とする案
・計画安全率:Fs≧1.2(本工事用道路の存置期間が 2 年
以上であることから、仮設ではなく本設の計画安全率
図-10 第4案(谷側ルート 桟橋案)
現道を嵩上げし、工事用
道路縦断高さを上げる
を確保する)
クローラークレーンの
組立ヤード設置
・地盤定数:下表のとおりとする。
表―2 地盤定数(町道橋南東橋台付近以外)
<案の設定主旨>
現道の嵩上げを行い、縦断高さを確保する案
(現道の切回しが必要となる)
図-11 第5案(谷側ルート 現道切回案)
現道迂回路
表―3 地盤定数(町道橋南東橋台付近)
現道幅
図-12 第5案 現道切回部 横断図
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(3)切土補強土工 工法検討
付替町道への影響
を回避
切土補強土工の工法比較は、在来工法である「鉄筋挿入
工(二重管削孔)」
、
「グランドアンカー工」に加え、削孔と
補強材注入の同時施工が可能である「削孔同時注入工」に
て比較検討を行った。比較検討の結果、経済性及び施工性
に優れる「削孔同時注入工」を最適案とした。
谷側擁壁構造
表―4 切土補強土工 工法比較検討
図-13 擁壁計画箇所
第1案
鉄筋挿入工
(二重管削孔)
第2案
削孔同時注入工
105%
100%
120%
施工性
二重管削孔と
なるため、単管
堀りより工期
は長くなる。
削孔と補強材注
入の同時施工が
可能であり、二重
管より工期は短
くなる。
アンカー体硬化
の強度発生後に
緊張、定着を行う
為、工期が長くな
る。
総合評価
△
○
△
経済性
(1m 当りの
直工費)
第3案
グランド
アンカー工
(2)擁壁の重要度
本擁壁設計における重要度は、当該道路が工事用道路で
あること、擁壁損傷時に影響を及ぼす施設が無いことから、
「重要度2」
(常時、降雨時作用:性能 1、L1 地震動:性
能 2、L2 地震動:性能 3 を満足)とする。
(3)補強土壁工法 比較検討
補強土壁工法の比較検討は、NETIS 登録されており、
(4)表面保護工 工法検討
施工実績の多い、「帯状鋼材工法(コンクリートパネル)」、
当該設計箇所の地質条件は、土砂層(崖錐堆積層、強風
「帯状鋼材工法(メッシュパネル)」、
「アンカープレート付
化岩層)が厚いことから、切土のり面の安定のため表面保
鉄筋子法」
、
「ジオテキスタイル工法」にて比較検討を行っ
護工を実施した。表面保護工は下表に示す工法について比
た。検討の結果、経済性及び施工性に優れる、「帯状鋼材
較検討を行った結果、経済性に優れる「グリーンパネル工
工法(メッシュパネル)」を最適案とした。
法」を最適案とした。
表―7 補強土壁工 工法比較検討(その1)
表―5 表面保護工 工法比較検討(その1)
コンクリート
張工法
ミニフィット
フレーム工法
吹付法枠工法
経済性
(㎡当り)
112%
121%
137%
総合評価
△
△
△
帯状鋼材工法
(コンクリートパネル)
帯状鋼材工法
(メッシュパネル)
経済性
(m当り)
109%
100%
施工性
・パネル設置のために大型
重機が必要となる。
・部罪数、基本工程が少な
いため、施工性は良い
・壁面設置が人力施工が可
能である。
・部罪数、基本工程が少な
いため、施工性は良い
総合評価
△
○
表―6 表面保護工 工法比較検討(その2)
KIT フレーム
工法
グリーンパネル
工法
パンウォール
工法
経済性
(㎡当り)
116%
100%
187%
総合評価
△
○
表―7 補強土壁工 工法比較検討(その2)
経済性
(m当り)
△
アンカープレート付
鉄筋工法
ジオテキスタイル工法
108%
135%
・パネル設置のために大型
重機が必要となる。
・パネル設置のために大型
重機が必要となる。
・補強材を現地にて調整
し、緊張をかける必要が
あり施工性に劣る。
△
△
施工性
5.擁壁工設計
(1)設計概要
総合評価
工事用道路終点部については、付替町道への支障を避け
るため、谷側へ張出す構造とした。その結果、谷側に擁壁
設置が必要となる。当該地形は急峻地形であることから、
直壁タイプの擁壁、底版幅が極力小さい擁壁工法が望まし
いことから補強土壁工法を採用した。
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あとがき
急峻な山岳地での道路設計は、地形の特質上、大規模切
土、盛土(擁壁)構造となることが多く、経済性及び施工性
に優れた道路線形及び構造物計画に留意する必要がある。
本設計は工事用道路であったことから、徐行を前提として
規格を落とした幾何構造設定が可能であり、構造物規模縮
減を図ることが可能となった。一般車両の通行がある本設
道路計画であれば、線形検討時から、必要な地質調査、適
用構造の検討を実施し、経済的な道路計画に考慮する必要
がある。
最後に、本計画の実施及び本稿を作成するにあたりご指
導、ご助力頂きました関係者の方々に感謝を申し上げます。
参考文献(引用文献)
1)(社)日本道路協会:道路構造令の解説と運用,H16.3
155p.
2)全日本建設技術協会:土木工事仮設計画ガイドブック
(Ⅱ)平成 23 年改訂版,H23.3 7p.
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