砂州及び高水敷上の河道内樹木の流水抵抗特性に関する研究

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第48回(平成27年度)研究発表会 論集
学生発表アブストラクト №304
砂州及び高水敷上の河道内樹木の流水抵抗特性に関する研究
明石工業高等専門学校 専攻科 建築・都市システム工学専攻
明石工業高等専門学校 都市システム工学科
‫ۑ‬入江良幸
ࠉ神田佳一
1. はじめに
諸外国に比べ勾配の急な河川が多く、また南シナ海で発生す
る台風の通り道となる日本では、地形的・気象学的に河川の洪
水災害が発生しやすい状況下にある。発生する洪水災害から人
命や財産などを水害から守るために堤防や護岸など、古来より
様々な治水事業が重要視されてきた。このため、掃流力が低水
路に集中し、砂州や高水敷は流水にさらされにくい高さとなっ
て草地となり、砂州に生育した草が砂を補足し砂州自体が上昇
する。この結果、砂州における相対的な冠水頻度が低下し、河
道内における樹林化が進行することとなる。そこで本研究では、
実際の河川を想定し、直線および交互砂州状に低水敷を引き、
図—3 樹木の配置
複断面水路を実験水路で再現し、樹木群の密生度λと樹径D、流
表—1 実験条件
量Qをパラメーターとして換算粗度係数nおよび抗力係数CDを
等流水深Hの測定から求め、それらの変化特性について評価す
る。ここで換算粗度係数とは水路壁面に加えて樹木模型表面を
含めた粗度係数、抗力係数とは、樹木模型に作用する流体力と
断面平均流速の比から表される指標である。
2.模型実験の概要
図—1に示す既設の全長9.4m、幅1.0mの長方形断面開水路に
樹木模型を配置したものを用い、流量を電磁流量計、等流水深
をポイントゲージにより測定し、式(2)および式(3)を用いて換
算粗度係数および抗力係数を算出する。樹木条件、実験条件を
以下に示す。図-2および図-3のように,樹木を全面千鳥配置し、
密生度、樹径を変化させたCase-a、b、cおよび交互砂州型樹木
veg 
配置のCase-d、直線状に樹木を配置したCase-eの5つの条件で実
Dh
D
 2
2
S h S
(1)
n
R 2 3i 1 2
QBH
(2)
gAi - gnS U 2 B  2H R -1 3
CD  2
U 2 HD
験を行った。
2
整流板
樹木模型
(3)
Z
3.実験結果および考察
X
水路勾配 i=1/1000
水位調整板
ており、等流水深の実験結果の場合と同じく、それぞれ●でプ
PP
EE
電磁流量計
換算粗度係数の実験結果を図-4に示す。実験結果は、縦軸に
換算粗度係数n(m-1/3/s)横軸に流量Q(m3/s)をとったグラフで表し
ロットしている。○で示す点は冠水流量を示している。
ポンプ
換算粗度係数は式(2)に示すマニングの式を用いて算出してい
図—1 実験水路側面図
る。樹木の影響面積がCase-cに比べて複断面水路は小さくなっ
Flow
ているため、換算粗度係数の値も小さくなっている。Case-a、
水路長 9.4
Case-bの実験結果と違い、Case-c、Case-d、Case-eの実験結果が
冠水流量でピークを迎えた後、一定値にならずに減少している
1.0
Y
のは密生度が高くなると流量の増加に対する水深の増加量が大
きくなり、樹木の影響が小さくなるのが早いからであると考え
X
1.84
られる。
6.86
図—2 実験水路平面図
0.70
図-5に抗力係数の実験結果を示す。実験結果は、縦軸に抗力
係数、横軸に流量Q(m3/s)をとったグラフで表しており、それぞ
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れ●でプロットしている。○で示す点は冠水流量を示している。
抗力係数は交互砂州状配置、直線状配置ではほとんど差異がな
く、抗力係数はCase-cよりも小さくなった。これも、等流水深
や換算粗度係数の実験結果で述べたように樹木の影響面積が小
さくなったのが主な原因ではないかと考えられる。
(a)Q=8.9[l/s]
図—4 換算粗度係数の実験結果
(b)Q=14.4[l/s]
図—6 交互砂州状配置の表面流速
(a)Q=8.3[l/s]
図—5 抗力係数の実験結果
PIV画像解析による表面流速の解析結果を図-6、図-7に示す。
図-6は交互砂州状配置の実験結果、図-7は直線状配置の実験結
果である。また、(a)は樹木が冠水前の流量であり、(b)は冠水
後の流量である。茶色の◯は樹木模型を表している。
交互砂州状配置では、冠水前の流量では水路の形状に合わせ
(b)Q=17.9[l/s]
て流れが蛇行しているが、冠水後は樹木の影響がなくなり、流
れが直線状になっている。
直線状配置では冠水前の流量では、樹木模型の抵抗により流
れが中央に集中しているが、冠水後は対照的に樹木模型の上部
において流速が速くなっている。
図—7 直線状状配置の表面流速
力係数および流速特性を測定することによって河道内樹木群の
基本的な抗力特性および複断面水路の抗力特性を評価した。
参考文献
1)川合茂・和田清・神田佳一・鈴木正人:河川工学,コロナ社,
4. まとめ
河道内樹木群について、模型実験を行い、換算粗度係数、抗
pp.2-3,2002.
2)米谷駿一他:樹木粗度を有する交互砂州地形の相当粗度,201
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