複合流ベッドフォームに関する実験的研究

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第48回(平成27年度)研究発表会 論集
プレゼンテーション発表アブストラクト №227
複合流ベッドフォームに関する実験的研究
三井共同建設コンサルタント株式会社 沼田 慎吾
1.はじめに
を得た。
複合流が砂床に作用することで,複合流ベッドフォーム
が形成される。複合流とは,波浪による振動流と一方向流
が重なり合った流れを指す。複合流は波浪と様々な流れ(例
えば潮流,河川流,離岸流,地衡流,沈降流,堆積物重力
流)の組み合わせからなり,沿岸域(干潟,三角江,三角
州,砂浜),陸棚,外洋,湖において極めて普遍的に存在す
る1)。
海底の粗度は土砂輸送,波浪エネルギーの減衰に影響を
図-1 実験装置模式図
与えている。複合流ベッドフォームの工学的視点からの研
究ではベッドフォームによる凹凸を現世の海底における粗
度と見なしている。この視点に立った研究では実験から水
理・堆積物条件とベッドフォームのサイズの関係を明らか
にし,波長・波高予測式を考案することが大きな目標であ
る。Tanaka and Dang2)は粒径や流速条件が異なる既往研究
の実験データを用いて,波長予測式を考案している。Tanaka
and Dang が用いた既往研究では,実験中に定常状態に達し
たベッドフォームの断面形からサイズを算出してきた。し
かし,実験において十分に時間が経過しても,ベッドフォ
ームが定常状態に至らず,サイズが変動し続ける場合が確
図-2 リップル断面模式図
認されている。このような実験ではサイズを算出すべき代
表的なベッドフォームを判断することは困難である。そこ
3.結果・考察
で本研究では一定時間経過後の全てのリップル波長から最
データの精度が高いリップル波長,RSI の最頻値(λm,
頻値を求め,波長予測式を考案することを目指した。また,
RSIm),リップル波長の標準偏差(S)について以下のこと
サイズの変動が激しくなる条件についても調べた。
が明らかになった。
RSIm は一方向流速によらず,ほぼ 1 となった。一方向流
2.実験・解析
速が大きくなれば,リップルの対称性を示す RSI は増加す
造波機付き小型循環水路を用い,細粒砂(D = 0.2 mm)
ると考えられるが,そのような傾向は見られなかった。こ
と中粒砂(D = 0.4 mm)に短周期(T = 1.0 s,1.5 s)の複合
れは RSI の定義は本来,傾斜変換点であるブリンクポイン
流(一方向流速 uu ≤ 37.0 cm/s,振動流速 uo ≤ 39.2 cm/s)を
トから谷までの水平距離だが,本研究では峰からの水平距
作用させてベッドフォームを発達させる一連の実験をおこ
離としたことが原因だと考えられる。
なった。ベッドフォームの断面形について画像解析の自動
Tanaka and Dang は既往研究のデータを用いて波長予測
化手法を開発し解析を行うことで,実験開始時から終了時
式を考案している。この波長予測式を用いて各実験から得
までの個々のリップル波長と波高,RSI(= b/a、a は峰から
られるリップル波長の理論値 λc を算出し,uu/(uu + uo)と
上流側の谷までの水平距離、b は峰から下流側の谷までの
λm/λc の関係を調べたところ一方向流速が大きくなるほど,
水平距離)の 5 s おきのデータを算出した。これらのデー
リップル波長の最頻値は理論値よりも大きくなる傾向が見
タを用いて発生発達段階以外のデータを母集団としたリッ
られた。uu/(uu + uo)と λm/λc の関係式を波長予測式に組み
プル波長・波高,RSI の最頻値,リップル波長の標準偏差
込むことで,一方向流速が大きい条件での Tanaka and Dang
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の波長予測式の精度を高める新しい波長予測式を考案した。
粒径,周期,一方向流速が大きくなるほど,リップル波
長の標準偏差(S)は大きくなる傾向が見られた。粒径,周
期,一方向流速が大きくなるほど,リップル波長はばらつ
きやすいと言える。特に粒径 0.4 mm では一方向流速が大
きい条件で標準偏差(S)が大きくなる傾向が見られたが,
これは実験条件がデューンの境界条件に近づいたためと考
えられる。
流れ
波
(a)T = 1.0 s,uu = 4.3 cm/s,uo = 25.2 cm/s
5 cm
(b)T = 1.5 s,uu = 22.8 cm/s,uo = 22.1 cm/s
5 cm
(c)T = 1.5 s,uu = 35.5 cm/s,uo = 15.3 cm/s
10 cm
図-3 ベッドフォーム断面写真
4.引用文献
1) Dumas, S., Arnott, R.W.C., and Southard, J.B., Experiments
on
oscillatory-flow
and
combined-flow
bed
forms:
implications for interpreting parts of the shallow-marine
sedimentary record. Journal of Sedimentary Research, 74,
501–513, 2005.
2) Tanaka, H., and Van To Dang, V., Geometry of sand ripples
due to combined wave-current flows. J. Wtrwy., Port, Coast,
and Oc. Engrg., ASCE, 122(6): 298– 300, 1996.
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