大規模災害時の通信手段 - 東京海上日動WINクラブ

2016 February Special-2
東京海上日動 WINクラブ
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大規模災害時の通信手段
地震や洪水など大規模災害が発生した際には、通信設備の損壊により長期間にわたる通信途絶が発生する恐れがあり
ます。企業では、どのような通信手段を準備しておくべきなのでしょうか。
Ⅰ.大規模災害時における通信環境
2011 年の東日本大震災では、地震発生直後より固定電話ならびに携帯電話が繋がりにくくなり、メール送受信も困
難になりました。この地震により、東北地方から関東地方までの広い地域にわたり、固定電話では約 115 万回線以上
が影響を受け、携帯電話は約 1 万 5000 ヶ所の通信基地局が止まりました。
特に東北地方では、地震の揺れや津波による通信設備の損壊に加え、家族や親族の安否を確認するために、平常時の
約9倍∼約40倍の電話連絡が全国各地から集中したため、通信回線の輻輳(回線パンク)が発生しました。このため、
通信会社各社は、地震当日から数日間にわたり東北地方への電話連絡を規制する対応策を行いました。
大規模な混乱や通信規制のため、従業員の安否や取引先などの被害状況を確認することが困難となり、企業の復旧活
動や被災者支援活動に混乱や遅れが生じる結果となりました。
東日本大震災により、
大規模災害時の通信手段の確保が、
企業の事業継続にとっての“生命線”となることがあらためて認識されました。
図表1:東日本大震災における固定電話の影響回線数の推移
影響回線数【 回線 】
停電戸数【 万戸 】
【出典】総務省 大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検討会 最終とりまとめ報告書
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Ⅱ.大規模災害時に必要となる通信とは
大規模災害時には通信設備の損壊や通信規制のため、被災地と
図表2:大規模災害時における主な通信例
頻繁に通信を行うことが難しくなります。そのため、本社と各拠
点との間で情報の錯そうが生じ、本社は被害状況や従業員の安否
を把握しにくくなります。また、災害対策本部からの指示が周知
できなくなれば、従業員を危険にさらす恐れもあります。
通信困難な状況下でもできるだけ混乱を避けるよう、あらかじ
め通信を行うタイミングや内容などを整理し、計画表などにまと
めておくことが有効です。
計画表を作成する際には、
“①いつまでに”
、
“②どの情報を集め
るのか/どのような指示を連絡するのか”
、
“③誰から誰に連絡す
るのか”を、順を追って決めておくことが肝要です。
【出典】東日本大震災時の各企業対応記録などをもとに、弊社作成
Ⅲ.企業における通信手段の備え
東日本大震災直後には、多くの企業にて衛星携帯電話など災害時の通信手段を拡充する動きがありました。しかし、
震災直後に購入した衛星携帯電話などを一度も使わないまま、防災倉庫などに保管しているケースも多いのではないで
しょうか。
大震災以降、災害時の通信手段も技術革新が進み、さまざまな通信手段やサービスが提供されるようになりました。
下図のとおり、通信手段には、通信形態や通信規制による影響の受けやすさなどに特徴があります。前述の計画表など
をもとに、通信内容や通信する際の相手先数などに適した通信手段を選択していくとよいでしょう。また、1つの通信
手段のみに頼るのではなく、複数の通信手段を組み合わせて利用することが、通信の途絶対策に有効です。
震災から5年を迎える今、災害時の通信手段の備えを見直されることをお奨めします。
図表3:主な災害時の通信手段と特徴
【出典】総務省 大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検討会資料および、通信各社サービス案内をもとに弊社作成
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