景品表示法と不当表示 - 東京海上日動WINクラブ

2016 July Special-1
東京海上日動 WINクラブ
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景品表示法と不当表示
我が国では 2013 年に頻発したホテルや百貨店等の産地偽装問題を契機に、商品・サービスの表示、広告、宣伝に
関する取締りを強化する方向にあります。本稿では不当表示を規制する法律の 1 つである「景品表示法」について解説
いたします。
Ⅰ.景品表示法とは
「景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)
」は、一般消費者の利益の保護を目的に、
「不当表示」や
「過大な景品類の提供」といった不当な顧客誘引を禁止するための法律です。このうち「不当表示」とは、一般消費者
に商品やサービスの品質や価格について実際のものより著しく優良または有利であると誤認される表示をいい、
「優良誤
認表示」
「有利誤認表示」
「その他誤認されるおそれのある表示」の 3 種類があります(図表 1)
。
2013 年の産地偽装問題を受けて、2014 年 12 月と 2016 年 4 月に景品表示法が改正され、事業者の表示管理
体制が強化されるとともに、違反事案に対する取締り・罰則が強化されています。
【図表 1:不当表示の種類】
種類
概要
具体例
優良誤認表示
商品やサービスの品質、規格などの内容につい
て、実際のものや事実に相違して競争事業者の
ものより著しく優良であると一般消費者に誤
認される表示の禁止
・ブランド牛ではない牛肉をブランド牛の肉と偽る
・中古自動車の走行距離を少なく表示する
・予備校の合格実績について他校と適正な比較をしていないにも
かかわらず「合格実績 No.1」等と広告する
価格を著しく安くみせかけるなど取引条件を
著しく有利にみせかける表示の禁止
・携帯電話通信の料金を自社に不利な条件を除外した比較を用い
て「自社が最も安い」と表示する
・商品の内容量が実際は他社と同程度にも関わらず「他社の 2
倍」であるかのように表示する
・家電量販店の店頭価格について競合店の平均価格から値引きす
ると表示しながら、その平均価格を実際よりも高く設定する
右記 6 つについて告示が定められている
①
②
③
④
⑤
⑥
有利誤認表示
その他、誤認される
おそれのある表示
無果汁清涼飲料水等についての表示
商品の原産国に関する不当な表示
消費者信用の融資費用に関する不当な表示
不動産のおとり広告に関する表示
おとり広告に関する表示
有料老人ホームに関する不当な表示
出典:消費者庁「事例でわかる景品表示法」より弊社作成
Ⅱ.景品表示法違反による措置命令と課徴金納付命令
景品表示法に違反する行為が認められた場合、違反行為の差し止めなどの措置命令や課徴金の納付が命じられます。
措置命令とは、景品表示法違反の疑いがある場合、消費者庁が事業者への事情聴取等の調査を実施し、消費者に与えた
誤認の排除や、再発防止策、違反行為のとりやめ等を命じることです。課徴金制度は、事業者が優良・有利誤認表示を
行った場合に、消費者庁長官が課徴金の納付を命じる制度で、2016 年 4 月から導入されました。優良・有利誤認表
示を行った事業者には、その商品やサービスの売上金額の 3%相当額が課徴金として賦課されます。消費者の被害の回
復を促進する観点から、所定の手続に沿って消費者に自主返金を行った場合には、返金相当額が課徴金額から減額され
ます。対象商品・役務の売上額が 5,000 万円未満の場合は課徴金の対象外となります。なお、課徴金納付の命令前に
は弁明の機会が付与されます。
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Ⅲ.事業者の講じるべき措置とは
景品表示法の 2014 年 12 月の改正で、事業者は「表示等の適正な管理のため必要な体制の整備その他の必要な措
置を講じなければならない」とされ、その適切かつ有効な実施を図るための7つの指針が定められました(図表 2)
。
必要な措置を講じていないと判断された事業者は、消費者庁から指導・助言・勧告を受ける可能性があります。
以下のうち、
「③表示等に関する情報の確認」は徹底して行ってください。例えば、輸入した原材料の産地が仕様書通
りでなかったために図らずも不当な表示を行ってしまった場合でも、景品表示法違反を問われる可能性があります。
【図表 2:事業者が構ずべき景品類の提供及び表示等の管理上の措置の内容】
具体例
7 つの指針
内容
①景品表示法の考え方の周知・啓
発
景品表示法の考え方について、表示等に関
係している役員及び従業員にその職務に
応じた周知・啓発を行う。
・関係従業員等が景品表示法に関する都道府県、事業
者団体、消費者団体等が主催する社外講習会等に参
加する。
・景品表示法に関する勉強会を定期的に開催する。
②法令遵守の方針等の明確化
景品表示法を含む法令遵守の方針や法令
遵守のためにとるべき手順等を明確化す
る。
・法令遵守の方針等を社内規程、行動規範等として定
める。
・社内規程において、不当表示等が発生した場合に係
る連絡体制、具体的な回収等の方法、関係行政機関
への報告の手順等を規定する。
③表示等に関する情報の確認
景品類の提供を行う場合には、違法となら
ない景品類の価額の最高額等を、商品又は
サービスの長所や要点を一般消費者に訴
求するためにその内容等について積極的
に表示を行う場合には、当該表示の根拠と
なる情報を確認する。
・生産・製造・加工が仕様書・企画書と整合している
かどうか確認する。
・企画・設計・調達・生産・製造・加工の各段階にお
ける確認事項を集約し、表示の根拠を確認して、最
終的な表示を検証する。
④表示等に関する情報の共有
③で確認した情報を、当該表示等に関係す
る各組織部門が必要に応じて共有し確認
できるようにする。
・表示等に影響を与え得る商品又はサービスの内容の
変更を行う場合、担当部門が速やかに表示等担当部
門に当該情報を伝達する。
・社内イントラネットや共有電子ファイル等を利用し
て、関係従業員等が表示等の根拠となる情報を閲覧
できるようにしておく。
⑤表示等を管理するための担当者
等(表示等管理担当者)を定める
こと
表示等に関する事項を適正に管理するた
め、表示等を管理する担当者又は担当部門
をあらかじめ定める。
・代表者自身が表示等を管理している場合に、その代
表者を表示管理担当者と定め、代表者が表示等の内
容を確認する。
・商品カテゴリごとに異なる部門が表示等を策定して
いる場合、各部門の長を表示等管理担当者と定め、
部門長が表示等の内容を確認する。
⑥表示等の根拠となる情報を事後
的に確認するために必要な措置を
採ること
③で確認した表示等に関する情報を、表示
等の対象となる商品又はサービスが一般
消費者に供給され得ると合理的に考えら
れる期間、事後的に確認するために、例え
ば、資料の保管等必要な措置を採る。
・表示等の根拠となる情報を記録し、保存しておく。
・製造業者等に問い合わせれば足りる事項について、
製造業者等に問合せができる体制を構築しておく。
⑦不当な表示等が明らかになった
場合における迅速かつ適切な対応
特定の商品又はサービスに景品表示法違
反又はそのおそれがある事案が発生した
場合、事実関係の迅速かつ正確な確認、迅
速かつ適正な一般消費者の誤認排除、再発
防止に向けた措置を行う。
・一般消費者に対する誤認を取り除くために必要があ
る場合には、速やかに一般消費者に対する周知(例
えば新聞、自社ウェブサイト、店頭での貼り紙)及
び回収を行う。
・関係従業員等に対して必要な教育・研修等を改めて
行う。
出典:消費者庁「事例でわかる景品表示法」より弊社作成
不当表示に対する世間の目はますます厳しくなってきています。
「昔からそうやってきたから」
「業界の慣行として行
われているから」等の言い訳は通用しなくなっていることを十分に認識し、パッケージや広告の表示管理の体制を点検・
強化されることを勧めします。
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