2015 October Special-1 東京海上日動 WINクラブ http://www.tmn-win.com/ 罹災した企業の早期復旧 昨今、台風の大型化や過去に例のない集中豪雨による水害の頻発、記録的豪雪による雪災、相次ぐ火 山の噴火等、自然災害リスクは増加傾向にあります。また一方で、日本では工場や複合施設等での火災 が年間 1 万件以上発生しており、リスクとしては自然災害よりも桁違いに高くなっていることも認識 する必要があります。 ここでは、企業が自然災害や火災事故に罹災した際、いかに事業中断期間を短縮して早期復旧を実現 していくべきか、災害復旧専門会社の活用事例をご紹介します。 Ⅰ.早期復旧戦略の検討 BCPの概念図(突発的に被害が発生するリスク) (1) 企業策定の BCP の実態 BCP の2大戦略は①「代替拠点戦略」と②「早期復旧戦 略」です。①「代替拠点戦略」はリスク分散の観点からも 有効ですが、業種によっては先行投資も必要であり、②「早 期復旧戦略」 を中心に BCP を策定せざるをえない企業も多 いものと思います。しかしながら、その②「早期復旧戦略」 も、初動対応にとどまり、真に有効な対策が十分に検討さ れていないケースが多いようです。 (2) 災害復旧専門会社の活用 日本では企業が火災事故や自然災害に罹災した場合、個々にメーカ ーや提携業者と復旧に向けた対応を実施するのが一般的ですが、欧 州・米国では、災害復旧の専門能力や資機材を有する民間の災害復旧 専門会社に依頼し、早期復旧に取り組む事例が見られます。 日本には災害復旧専門会社という企業はありませんでしたが、20 04年9月に世界最大の災害復旧専門会社BELFOR が東京海上日動 火災保険株式会社と共同出資して、ベルフォアジャパン株式会社を設 立しました。 http://www.jp.belfor.com ベルフォアジャパン株式会社は設立されてから500件以上の災 害復旧を手掛けており、その中には2011年の東日本大震災による津波被害の罹災企業も含まれてい ます。火災、水害、化学薬品の漏えい等による建屋や設備の汚損、雪害や台風の吹き込みによる設備の 水濡れ、爆発による粉塵被害や汚染物質の飛散等々の被害に対して、特殊な汚染除去技術により建屋や 機械設備をほとんど交換することなく短期間で修復することが出来ます。 物理的な破損や焼損についてはメーカーや建築業者との協業が必要ですが、汚損被害の割合が高い罹 災現場においては早期復旧に大きく寄与出来る可能性があり、早期復旧のための有効な選択肢の一つと してBCPに組み込んでおくことが重要です。 1 Copyright (c) Tokio Marine & Nichido Risk Consulting Co., Ltd. Ⅱ.早期復旧事例の紹介 (1) 酒造場の水害事例 ある酒造場が集中豪雨による河川の氾濫で、最大1mの泥水に 冠水してしまいました。ビン詰めされていた商品はほぼ全滅。店舗 も酒造場のビン詰めラインも冠水して稼働できません。 店舗や酒造場内の汚泥についてはボランティアと従業員による 清掃で何とか復旧が進んでいましたが、ビン詰めラインをはじめと する設備機器については手つかずのままでした。実は、ビン詰めさ れた商品はほぼ全滅していましたがタンク内に残っていたお酒は 無事なままであり、店舗の営業はすぐには出来ずともビン詰めライ ンさえ復旧すれば商品の出荷は何とか可能な状況だったのです。 ベルフォアは連絡を受けた翌日には現場に急行し、泥 水に冠水したビン詰めラインに対して、設備の分解・洗浄 を実施して実質5日間でビン詰めラインの復旧を成し遂 げました。メーカーに依頼すれば設備の大幅な交換を余儀 なくされ、復旧までに多大な時間を要したと推測されます。 (2) 商業ビルの火災事例 ある商業ビルの3階踊り場の飲食店で火災が発生し、6階まで 吹き抜けになっている壁面と天井面に大量のすすがこびりつい てしまいました。通常、建物のすすを除去するには高圧洗浄で洗 い流すのが一般的ですが、ビル火災だと被災階層よりも下層のフ ロアに排水が漏れてしまうリスクが高く、洗浄・排水処理→乾燥 →再塗装と作業にも多大な労力と時間を要します。 ベルフォアは「すす除去フィルム(SRF) 」という水を使用 せずに建物のすす除去をする独自技術を提案しました。SRF とは、天然ゴム主成分の白い液体を汚染された壁面に吹き付け、 一晩乾燥させてフィルム状になったものを剥がすことで、顔パ ックのようにすすや汚染物質を除去することが出来るもので す。水を使用しないため排水作業も不要で漏水リスクも無く、 且つ SRF 塗布→一晩乾燥→剥がし作業と実質3日程度で作業 が完了し短期間での汚染除去が可能です。 「ほかのテナントに迷惑をかけたくない」という商業ビルオーナーの要望に応えつつ、通常の高圧 洗浄よりも大幅に短い工期で復旧を実現した事例です。 東京海上グループのソリューション 東京海上日動はベルフォアと業務提携しており、企業向けの火災保険には全てベルフォアのサービスを安心して受け ていただくための特約が自動付帯されています。 通常の復旧方法に「ベルフォアの汚染除去技術による修復」というもう一つの選択肢を加えることにより、大幅な復 旧期間の短縮を実現する可能性が生まれます。是非、ご活用をご検討下さい。 詳細は社員または代理店にお問い合わせ下さい。 2 Copyright (c) Tokio Marine & Nichido Risk Consulting Co., Ltd.
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