2015 August Special-2 東京海上日動 WINクラブ http://www.tmn-win.com/ 企業単位での労働災害再発防止対策 今年6月より「重大な労働災害を繰り返す企業への対応」に関連する労働安全衛生法の一部を改正する法律が施行さ れました。これは国の第12次労働災害防止計画で挙げられた制度的な課題への対策を含み、社会情勢の変化や労働災 害の動向に即応し、労働者の安全と健康の確保対策の一層の充実を図るものです。 Ⅰ.今回の対応の背景 この背景には、同一企業内で安全衛生関係法令違反による同様の重大な労働災害が繰り返し発生する事案が散見され る、また繰り返し発生した後でも、企業として改善に取り組んでいないケースも見受けられる実態1があります。 【図表1:社内で横展開できておらず、同じような労働災害が繰り返されている事例】 出典:厚生労働省 第76 回労働政策審議会安全衛生分科会資料 このような事案では発生した事業場の是正だけでは対応が不十分ですが、従来の制度では上記のような事態を未然に 防止するため企業単位で改善を図らせることが制度的に困難2でした。 Ⅱ.今回の対応の対象となる判断基準 まず、この対応の対象となる判断基準を以下に示します。 ①「安全衛生関係法令3違反による重大な労働災害」とは (ア)死亡災害 (イ)負傷又は疾病により、障害等級第 1 級から第 7 級までの障害4に該当するものが生じたもの又は生じるおそれ 1 厚生労働省のレポートでは平成21年~平成23年の3年間に同一企業内で同様な労働災害が複数件発生した事例として、死亡災害10社以上、過重労働によ る健康障害約20社、ストレスによる精神障害約30社としています。 2 従来の労働安全衛生法に基づく国の対応としては、原因となった個別の法令違反に対する是正勧告・司法処分や総合的な改善が必要と認められた事業場に対す る都道府県労働局長による安全衛生改善計画の作成指示が行われていますが、 これらはいずれも個別の事案や個別の事業場ごとに対応する仕組みとなっています。 3 労働安全衛生法、作業環境測定法又はじん肺法及びこれらの法律に基づく政省令、労働基準法第36 条第1 項但書及び労働基準法施行規則第18 条(坑内労働 等有害業務制限)、労働基準法第62 条並びに年少者労働基準規則第7 条及び第8 条(年少者の有害業務制限)、労働基準法第63 条(年少者の坑内労働等禁止)、労 働基準法第64 条の2 及び女性労働基準規則第1 条(女性の坑内労働等禁止)、 労働基準法第64 条の3 及び女性労働基準規則第2 条及び第3 条(女性の危険有害 業務の禁止) 4 障害補償年金の対象となる災害であり、労働者が生涯にわたって重い障害を負うことになる重篤な災害として障害等級第7級以上としています。 1 Copyright (c) Tokio Marine & Nichido Risk Consulting Co., Ltd. のあるもの ②「重大な労働災害を繰り返す企業」とは 上記の重大な労働災害を3年間5で複数事業場で発生させた企業 (ただし同じ事業場で2回発生させた場合は、従来の制度で都道府県単位に対応するため、今回の対象としない) ③「企業として改善に取り組んでいない」とは (ア) 発生した重大な労働災害の原因を分析していない (イ) 同様の労働災害の再発防止対策を検討・策定・実施していない (ウ) 同様の重大な労働災害が起こりうる他の事業場に対して対策を横展開していない Ⅲ.今回の対応の概要 上記の条件に該当した企業は厚生労働大臣から企業単位の改善計画である特別安全衛生改善計画の作成を指示されま す。指示書に記載された期限までに、(ア)計画の対象とする事業場、(イ)計画の期間・実施体制、(ウ)重大な労働災害の 再発防止のための措置等を記載した計画を作成し、厚生労働大臣に提出しなければなりません。 また、計画の内容や進捗状況を確認して必要に応じて厚生労働大臣が勧告を行うものとして、勧告に従わない場合は 企業名を公表するものとしています。 【図表2: 「重大な労働災害を繰り返す企業への対応」の概要】 出典:厚生労働省HP 「労働安全衛生法が改正されます」 この対応は、企業単位での重大な労働災害の「防止のための取組みの促進、および防止」を図るものとされています。 企業の皆様におかれましては法改正の趣旨を踏まえて、今後は事業場の枠を超えて、企業単位で重大な労働災害の再 発を防ぐために、 本社が主体となって再発防止対策を水平展開していくことが、 より重要になってくることになります。 東京海上グループのソリューション 東京海上日動火災保険株式会社では、労働災害に備えるための各種保険をご用意しています。詳細は社員また は代理店にお問い合わせください。 5 「3年間」としている理由としては、①労災保険のメリット制が過去3年間の労働災害発生率をもとに算定しているため、労災が繰り返されているかどうかを 判断する期間として3年間としている、②労働基準法第109 条に基づく労働関係重要書類の保存義務が3年間とされている等があります。 2 Copyright (c) Tokio Marine & Nichido Risk Consulting Co., Ltd.
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