隠れた海外 PL リスクとその対策

2014 August Special-1
東京海上日動 WINクラブ
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隠れた海外 PL リスクとその対策
昨今、新たなビジネスチャンスを求めて、海外展開を進める中堅中小企業が増加しています。下図のとおり、中小製
造業のうち、直接輸出を行っている企業数が全体に占める割合は、2001 年は約 1.5%でしたが、2011 年は約 3%
とその割合は増加しています。
海外展開に伴って、海外での製造物責任(P
直接輸出を実施している中小製造業企業数(左軸)
中小製造業全体に占める割合(右軸)
(企業)
(%)
3.5
L)事故が発生した場合、言語・文化、法制度
7,000
が日本と異なることに留意して対応する必要が
6,000
あります。中には訴訟に発展する場合もあり、
5,000
ひとたび訴訟に巻き込まれると、賠償金に加え
4,000
て、多くの時間と労力を要します。
3,000
1.5
2,000
1.0
1,000
0.5
一方、現在は自社製品を日本国内でのみ販売
している場合でも、知らないうちに製品が海外
に持ち出されて PL 事故が起きると、その日本
の企業が責任を問われる場合があります。
では、
具体的にはどのようなケースがこれにあてはま
6,196 6,303
4,603 4,702
4,342
4,838
5,348
5,937
5,920 6,336
3.0
2.5
2.0
3,568
0.0
0
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11 (年)
出典:2014年版 中小企業白書
るのでしょうか。
図 輸出企業の数と割合の推移
Ⅰ.知らないうちに海外に持ち出される製品とは?
製品を海外に輸出していない場合でも、自社製品が部品や原材料として完成品に組み込まれて、間接的に海外に輸出
される場合があります。これを『間接輸出品』といいます。この製品に起因して海外で PL 事故が発生したときは、完
成品メーカー等と同時に訴えられるケースがあり、その原因等によっては、部品や原材料メーカーが賠償責任を負担し
なければならないことがあります。
以下は、米国において部品・原材料メーカーに対して損害賠償が請求された例です。
完成品
部品
自動車
自動車ドア製造用
の鋳型
重機
運転席シート
業務用印刷機
印刷機に
取り付けられた刃
事故概要
賠償金額
観音開き式のドアの車の後部座席に乗っていた幼児が、
車両内側から
評決:$23,743,620
ドアに寄りかかったところ、
偶然ドアノブに触れてしまいドアが風の
(約 23 億 7400 万円)
影響で開いた。幼児は、車両から放り出され、脳障害および対麻痺と
(自動車メーカーは別途和解)
なった。
原告は、
自動車メーカーおよびドアの鋳型製造業者を訴えた。
原告が、木材を積み込み機械を操作していたところ、運転席シートの
評決:$2,517,030
支柱が壊れた。動揺した原告は、誤って巻き立て機のレバーを押して
(約 2 億 5200 万円)
しまい、機械から地面に投げ出された。原告はヘルニアになり、シー
トの製造業者を訴えた。
原告が、印刷機に取り付けられていた刃を交換しようとして、取替刃
評決:$328,247
の保護カバーを持ったところ、
カバーが半分に裂け、
腕に傷を負った。
(約 3300 万円)
保護カバーの欠陥を原因として、
刃の製造業者および刃を格納するユ
(刃の製造業者)
ニットを製造した業者を訴えた。
(1 ドル=100 円で換算)
1
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また、間接輸出品だけでなく、海外からの旅行者などが日本国内で購入した製品を自国に持ち帰るなどして、知らな
いうちに製品が海外に持ち出される場合があります。これを、
『グレー・マーケット製品』といいます。この場合でも、
製品の PL 事故により海外で訴えられる可能性があります。
このように、海外で発生した PL 事故について、海外で損害賠償請求を受けた場合、
「生産物賠償責任保険」
(国内 PL
保険)では補償されません。海外での PL 事故には、海外 PL 保険で備える必要があります。
Ⅱ.輸出停止後の製品の PL リスク
知らないうちに海外に持ち出される製品だけではなく、過去に輸出した製品について、輸出を停止したあとに起きた
PL 事故について、責任を問われる場合があります。その場合の海外PL保険(弊社)の補償は、下図のとおりです。
具体的な事例
:PL 事故(身体障害または財物損壊事故)の発生
$ :被害者からの損害賠償請求
輸出停止後に
海外 PL 保険を継続しなかった場合
$
輸出期間中の契約で
補償の対象※
輸 出 停 止
例1
例2
輸出停止後に
海外 PL 保険を継続した場合
$
補償の対象外
輸出停止後も海外PL保険に加
入しておくことが重要です!
$
例3
例4
$
輸出停止後もご加入の契約で
補償の対象※
※保険期間中の請求であるため、対象となります。ただし、遡及日(原則として初年度契約始期日の10 年前の応当日)より前に発生
した事故による損害賠償請求については、補償の対象外となります。
輸出を停止しても、継続して使用されている製品や在庫として残っている製品がある限り、PL リスクは残ります。ま
た、海外での PL 事故では、事故の発生後、長期間が経過してから損害賠償を請求されるケースがあります。
海外 PL 保険では、損害賠償を請求された際に加入していないと補償の対象となりません。PL リスクに備えるには、
輸出停止後も海外 PL 保険に継続して加入する必要があります。
東京海上グループのソリューション
【間接輸出品・グレー・マーケット製品による海外での PL 事故を補償】
海外 PL 保険には、間接輸出品やグレー・マーケット製品による海外での PL 事故への補償が自動的にセット
されています。直接輸出を行っておらず、日本国内のみに製品を販売している場合でも加入できます。支払われ
る保険金は、法律上の賠償責任が発生した場合における損害賠償金のほか、訴訟や示談交渉にかかる応訴費用等
も対象となります。
【海外における事故対応ネットワーク】
被保険者が損害賠償請求を受けた場合は、被保険者の防御(応訴・示談代行)を行います(現地の法令等によ
り禁止・制限されている国・地域を除きます。
)
。東京海上グループは、世界中どの国で PL 事故が発生しても迅速・
適切に事故対応ができるよう、日本・米国・欧州の 3 拠点に PL 事故対応の経験が豊富な日本人社員・専任駐在
員を配置し、世界各国での事故に機動的に対応できる体制を構築しています。また、世界各国に実績のある事故
対応会社や有能な弁護士のネットワークがあり、万全の体制で対応することができます。
詳しくは、弊社代理店・社員までご照会ください。
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