為替トピックス2月5日号 (PDF/308KB)

2015/
為替トピックス
2/5
投資情報部
FX ストラテジスト
五十嵐 聡
RBAの1年半ぶりの利下げに豪ドルは急落
 豪州準備銀行(RBA)は2/3の金融政策会合において、2013年8月以来1年半ぶりに政策金
利を0.25%引き下げ2.25%にすると発表。市場では利下げの思惑が強まっていたものの、予
想より早い政策変更を受けて、豪ドル相場は一時急落する展開となった。
 声明では、国内需要の弱さや失業率の上昇、交易条件の悪化による所得の伸び抑制、インフ
レ率の落ち着き等を指摘。「最近の一連の情報と見通しの改定を考慮に入れ、政策金利の更
なる引き下げが適切」として、利下げに踏み切った経緯を示した。
 RBAは追加利下げの可能性を明示していないが、少ない利下げ余地を効果的に使用するた
め、今後もタイミングを計った追加利下げの可能性が残る。失業率等の経済指標や鉄鉱石
価格の今後の動向等を引き続き注視していく必要がある。
 豪ドル相場は昨年末にかけての商品市況下落、1月中旬以降の各国による相次ぐ利下げ等
から、急速に利下げを織り込む動きとなり下げ幅が拡大した。その意味ではある程度織り込
みが進んでおり、直後の反応は限られたが、今後もしばらくは下値を探る動きが続く公算。
RBAは 予想外の 利
下げを実施
豪州準備銀行(RBA)は2/3に開催された金融政策会合において、予想に反し
て政策金利であるオフィシャル・キャッシュレート(OCR)を0.25%引き下げ
2.25%にすると発表した。
RBAは2013年8月に利下げを実施した後、1年半にわたり政策金利を据え置き、
昨年初からは声明で「金利安定の期間を設けることが賢明」として、中立的
な金融政策スタンスを維持してきた。今回も市場予想の大勢は金利据え置き
となっていただけに、結果はサプライズとなり、豪ドルの対米ドル相場は発
表直後に0.78ドル台前半から0.76ドル台半ばまで急落する展開となった。
予想より早い政策変更を受けて豪ドル売りの反応となったが、その後はリス
ク回避姿勢の後退もあり、発表前水準に戻っている。一部では今回の利下げ
の可能性を指摘する声も聞かれ、金利先物市場では利下げを織り込む動きと
なっていたこと、声明では今後の追加利下げの可能性や時期について明らか
にしなかったこと等が、下げ渋る動きにつながったとみられる。
今後は2/6に公表される四半期に1度の金融政策報告(SMP)において、経済・
物価見通しがどの程度改定されるかに焦点が移ることになる。ただ、豪ドル
相場下落を主導した商品市況については、中国を中心とした需要の減速や大
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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為替トピックス
幅な供給超過の状況等を踏まえれば、今後もしばらくの間は低調な推移が続
くと予想され、豪州経済に与える悪影響への懸念から、豪ドル相場も当面は
下値探りの展開が続く公算が大きいだろう。
豪ドルの推移
(週次:2005/1/7~2015/2/4)
(1豪ドル=円)
110
(1豪ドル=ドル)
1.15
豪
ド
1.10
ル
1.05
高
100
1.00
90
0.95
0.90
80
0.85
0.80
70
0.75
対円(左目盛)
60
0.70
対ドル(右目盛)
0.65
0.60
50
05/1
06/1
07/1
08/1
09/1
10/1
11/1
12/1
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
声明では内需や交易
条件の悪化、インフ
レの安定を指摘
13/1
14/1
15/1
豪
ド
ル
安
(年/月)
RBAは今回の声明で、豪州経済の今後の見通しに関するトーンを後退させた。
前回、昨年12月会合の声明では、豪州経済の動向について「大半の指標は緩
やかな経済成長を示唆」
「資源部門の投資は大幅に減少し始める一方、民間需
要のその他の部門はさまざまなペースで拡大している」としたうえで、今後
については「緩和的な金融政策の継続が需要を支援するとともに、今後の成
長加速に寄与するだろう」として、基調的には楽観的な見方を維持した。
しかし、今回の声明では「内需の拡大は総じて非常に弱く、トレンドを下回
るペースの成長が続いている。結果として失業率はこの1年間で徐々に上昇
した」「エネルギー価格の下落は個人消費の大きな支援材料となる見込みだ
が、同時に、交易条件の悪化で所得の伸びは抑制される」と述べたうえ、
「生
産の伸びは恐らく、これまでの想定よりもいく分か長期にわたってトレンド
を下回り続け、失業率のピークはやや高めの水準となろう」として、成長率
見通しの下方修正を示唆している。
これらは、これまで主にプラス面を指摘してきた金融緩和効果が一巡し始め
た可能性や、鉄鉱石価格をはじめとする主要商品価格の大幅な下落により、
交易条件が当初の想定以上に悪化する可能性を指摘したものと受け取れる。
また、インフレ率についても原油価格下落の影響から当初の見通しよりも低
い伸びになる可能性を示唆している。声明ではエネルギー価格の下落が世界
的に「インフレ率を一時的に押し下げる」としたうえ、2014年の豪州のCPI上
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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為替トピックス
昇率が過去数年で最も低い伸びになった理由について、
「年末の原油価格急落
と炭素税廃止が影響している」と述べている。
ただ、今後の見通しについては「為替相場の下落があったとしても、インフ
レ率は向こう1∼2年間にわたり引き続き目標と一致した水準になる可能性が
高いとみられる」としており、極端な下振れを想定してはいないようである。
実際、1/28に発表された昨年10-12月期のCPIは前期比+0.2%と予想(同+0.3%)
を下回ったが、基調インフレ率は同+0.7%と予想(同+0.5%)を上回った。原
油安の影響でガソリン価格が大幅に下落(同▲6.8%)した一方、物品税引き
上げによるタバコ(同+4.8%)や新築住宅(同+1.1%)、国内旅行(同+5.8)等
の上昇が相殺している。それでも、前年比の伸びが鈍化している状況は事実
であり、今後ともインフレ率下振れの可能性に留意する必要があろう。
豪州の実質GDP成長率(前年同期比寄与度)
(四半期:2005/3~2016/12)
(%)
10
その他
設備投資
実質GDP
RBAスタッフ予想(14/11時点)
9
8
7
豪州消費者物価指数(前年比)と政策金利
(月次:2005/1~2016/12)
(%)
8
純輸出
個人消費
トレンド成長率
RBAインフレ目標レンジ
(2~3%)
消費者物価指数(前年比)
RBAスタッフ予想(14/11時点)
基調インフレ率(前年比)
RBAスタッフ予想(14/11時点)
政策金利
7
6
6
5
5
4
3
4
2
3
1
0
2
▲1
▲2
1
▲3
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(注) 実質GDPは2014年7-9月期まで、RBAスタッフ予想は予想レンジの
中間値で表示
出所:RBA、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
RBAは 追加利下げ
を明示せず、商品価
格や 失業率の 動向
に注視が必要な場面
に
05
16
(年)
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(注) 消費者物価指数と基調インフレ率は四半期ベースで2014年10-12
月期まで、政策金利は2/4時点、RBAスタッフ予想は予想レンジの中
間値で表示
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
(年)
市場の注目点は、RBAが追加利下げを実施するかどうかであろう。声明では、
上記のような経済・物価情勢の判断を踏まえて、「最近の一連の情報と改定さ
れた見通しを考慮し、理事会は政策金利の更なる引き下げが適切であると判
断した」として、今回利下げに至った経緯について述べている。しかし、今
後の見通しやバイアス等については一切明示しなかった。
例えば、2013年の前半にかけては、「インフレ見通しが更なる緩和余地を与
える」との文言を盛り込むことによって、追加緩和の可能性を明示していた。
しかし、今回の声明では、金融政策変更は今後発表される経済指標に依存す
るといった文言も入っておらず、RBAは市場に手掛かりを与えないやり方を選
択している。
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為替トピックス
あえて推測すれば、RBAは歴史的な金利水準の低さや過熱気味の住宅市場の
動向等を勘案して、追加利下げの幅はできるだけ最小限に抑えたいと考えて
いる公算が大きいと思われる。実際、今回の声明でも「住宅価格はシドニー
で大幅に上昇し続けている」「RBAは住宅市場に起因する経済的なリスクを評
価し、それを抑制するために関係当局と協力している」等と述べており、住
宅市場の動向に神経質になっていることがうかがえる。
また、「インフレ率は向こう1∼2年目標に一致する」とみている限り、イン
フレ率の下限は前年比+2.0%程度と考えていることになり、実質金利がマイナ
スにならない程度の政策金利を想定しているとすれば、当面の利下げ余地は
0.25%刻みで残り1回程度しかないことになる。RBAは最低限の利下げ幅で最大
の効果を得るべく、今後の利下げのタイミングを計っていくものと思われる。
その意味では、今回利下げに踏み切った理由になったと考えられる材料に今
後とも注視していく必要があろう。1つは国内需要や失業率の動向であり、今
後の経済指標に注目が集まるとともに、2/6に公表される金融政策報告(SMP)
で成長率やインフレ率の見通しがどの程度下方修正されるかも注目される。
また、交易条件の悪化による所得減少については、鉄鉱石価格の動向や需要
面で影響を与える中国景気の動向等にも注意して見ていく必要があろう。
(%)
25
(2003-04=100) (中立=100)
130
130
豪州の住宅価格
(四半期:2005/3~2014/9)
前期比(左目盛)
前年比(左目盛)
住宅価格指数(右目盛)
20
15
120
110
120
4.0
110
4.5
100
5.0
90
5.5
10
100
5
90
0
80
▲5
70
80
60
70
▲10
05
06
07
08
09
10
11
12
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
豪ドルは目先材料出
尽くし感から下げ渋
るが、下値探りの動
きが続く公算
13
14
6.0
消費者信頼感指数(左目盛)
失業率(右逆目盛)
15
(年)
(%)
3.5
豪州の消費者信頼感と失業率
(月次:2003/1~2015/1)
6.5
03
04
05
06
07
08
09
10
11
(注)失業率は2014年12月まで
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
12
13
14
15
(年)
豪ドルの対米ドル相場は、昨年末にかけて原油価格の急落や鉄鉱石価格の下
落等、商品市況の一段の下落を受けて下げ幅が拡大。さらに、年明け後は1月
中旬以降にインド、トルコ、カナダ等の新興国・資源国が相次いで利下げを実
施する中で、金利市場における利下げ観測が急速に強まるとともに、直近の
安値を更新しながら一段と下落する展開となっている。
この間、金利先物市場では利下げを織り込む動きが強まり、金融政策会合前
の段階ですでに年内に0.25%刻みで2回程度の利下げを織り込む水準に達して
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2015/2/5
為替トピックス
いた。また、IMM通貨先物市場の豪ドル売り越しポジションも徐々に積み上が
りつつあり、1/27時点で昨年1月以来の水準まで売り越し幅が拡大していた。
これらの点から見れば、市場はすでに今回の利下げをほぼ織り込んでいたこ
とになり、発表直後に大きく売り込まれた後は、むしろ買い戻しが優勢の展
開となったことも納得できる。
その意味では、当面は材料出尽くし感から下げ渋る動きが予想されるもの
の、今後の追加利下げの可能性が残る状況の中では、買い戻し以外の要因で
豪ドル相場が大きく値を戻す場面も当面の間は想定しづらいだろう。次の利
下げのタイミングを探る中で、鉄鉱石価格や経済指標に対する注目度が高ま
るものと思われる。
また、RBAは為替相場について「豪ドルは対米ドルで著しく下落した」とし
て一定の達成感を示したものの、交易条件の悪化が懸念されている以上、商
品価格の底入れが見られない間は豪ドル高を容認することも期待しづらい。
実際、声明では「豪ドルは経済ファンダメンタルズから推計される水準を引
き続き上回っている」
「豪ドルの下落が必要となる可能性が高い」と引き続き
述べている。また、鉄鉱石価格については、中国需要の減速が予想されてい
る中で、供給超過状態の解消と市況の底入れにはまだしばらく時間がかかる
公算が大きいと考えられることも、相場の上値を重いものとしよう。
もっとも、追加利下げの余地が相対的に少なくなっていることや、市場もす
でにそれをある程度織り込んでいることを前提にすれば、ここからの一段の
相場下落も限られる可能性に留意しておく必要があろう。
豪ドル相場は当面、商品市況や経済指標をにらみながら下値を探る動きが継
続する公算が大きいが、年半ば以降、商品市況が底入れするとともに利下げ
に一巡感が出てくれば、徐々に底入れから持ち直しに向かう余地が広がるこ
とが予想される。
(1バレル・トン=ドル)
170
豪州の主要輸出商品価格と豪ドル相場
(週次:2012/1/6~2015/2/4)
(1豪ドル=ドル)
160
1.05
150
140
1.00
130
120
0.95
110
100
0.90
90
80
70
60
50
40
12/1
0.94
2.6
0.92
2.5
0.90
2.4
0.88
2.3
0.86
2.2
0.84
1.9
0.80
豪ドル/米ドル(右目盛)
1.8
13/1
13/7
14/1
(注)中国輸入鉄鉱石価格は2/3時点
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
14/7
0.78
0.76
0.74
14/7
15/1
(年/月)
0.80
1.7
0.75
12/7
0.82
政策金利(左目盛)
OIS1年レート(左目盛)
金利先物 15/12限月(左目盛)
豪ドル(右目盛)
2.0
0.85
中国輸入鉄鉱石価格(左目盛)
(1豪ドル=ドル)
0.96
2.7
2.1
ブレント原油先物(左目盛)
豪ドル為替レートと豪州金利動向
(日次:2014/7/1~2015/2/4)
(%)
2.8
1.10
14/8
14/9
14/10
14/11
14/12
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
15/1
(年/月)
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2015/2/5
為替トピックス
金融商品取引法に係る重要事項
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ります。
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商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号
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一般社団法人第二種金融商品取引業協会
広告審査番号 : MG5690-150205-13
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