54 線形代数学 B 内積の定義について §16.1 ではベクトル空間の内積を 4 つの条件 (1)–(4) をみたすものとして定義したが, 文献によっては (2) 任意の a ∈ K と x, y ∈ V に対し, (x, ay) = a(x, y) の代わりに (2)∗ 任意の a ∈ K と x, y ∈ V に対し, (ax, y) = a(x, y) を採用していることもある. 後者の流儀で内積を定義しても, これまでに述べた定理等は同様に成り立つの だが, 修正が必要なものも少なくない. 例えば, 例 16.3 で定義した Kn の標準的な内積 (x, y) = x∗ y = n ∑ xi yi i=1 は, 条件 (2)∗ をみたすように (x, y) = t x y = n ∑ xi yi i=1 と修正しなければならない. 命題 16.14 の (2) にある x= r ∑ (xi , x) i=1 についても, x= ∥xi ∥2 r ∑ (x, xi ) i=1 ∥xi ∥2 xi xi とする必要がある. これに続く直交射影や Schmidt の直交化についても同様である. なお, R 上の計量ベクトル空間だけを考えるのであれば, 条件 (2), 条件 (2)∗ のどちらを採用しても定義 される概念は全く同じものであり, 従って定理等の修正は不要である.
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