2015/3/16修正版

斉次不等式の判別式
安藤哲哉 (千葉大 理学研究科)
2015 年 3 月 16 日修正版
¡
¢
n + 1 変数 d 次斉次多項式全体の集合 H 0 PnR , O(d) の部分ベクトル空間
e 6= 0 に対し,閉凸錐
H 6= 0 と,Rn+1 内の閉凸錐 A
¯
©
ª
e H) := f ∈ H ¯ 任意の a ∈ A
e に対して f (a) = 0
D = D(A,
を考える.その境界 ∂D の部分集合 Y に対し,Y のザリスキー閉包を Y として,
Y ∩ (∂D) の ∂D における開核の閉包が Y と一致するとき,Y は D の,あるい
e ⊂ Pn とおく.線形系 H が定める有
は,∂D の面成分であると言おう.A = P(A)
R
n
N
∨
理写像を Φ: PR · · · → PR = P(H ) (N := dim H − 1) とし,X := Φ(A − Bs H)
を (A, H) の特性多様体と呼ぶことにする.s ∈ A に対して,
¯
©
ª
Ls := f ∈ ∂D ¯ f (s) = 0 ⊂ ∂D
とおき,P = Φ(s) ∈ X に対して,LP := Ls と定義する.LP を点 P における
局所錐と呼ぼう.
[
[
LP である.
Ls であり,Bs H = ∅ ならば,∂D =
命題 1. ∂D =
s∈A
命題&定義 2. F◦ :=
[
P ∈X
LP とし ,D における F◦ の解析的位相に関
P ∈Reg(X)
e H) とおく.dim F = N のとき,F は D の面成分で
する閉包を F = F(A,
ある.F を ∂D
[の主成分と呼ぼ う.また C := ∂X が一定の条件を満たすと
◦
き,E :=
LP とし ,E◦ の H における解析的位相に関する閉包を
P ∈Reg(C)
e H) とすると,E も D の面成分になる.E を ∂D の端成分と呼ぼう.
E = E(A,
¯
©
ª
G は 3 次巡回群とし,自然に R3 に作用させる.R+ := t ∈ R ¯ t = 0 ,
¯
¡
¢G
©
ª
Hd := H 0 P2R , O(d) , H0d := f ∈ Hd ¯ f (1, 1, 1) = 0 ,
+
3
0
3
Dd = D(R3 , Hd ), Cd = D(R3 , H0d ), D+
d = D(R+ , Hd ), Cd = D(R+ , Hd )
とおく.G が対称群の version もあるが,紙面の都合で割愛する.(P2R )G = {(1 :
1 : 1)} なので,Sing(P3R /G) = {π(1 : 1 : 1)} である.
Hd の元 f は,その Sd := xd + y d + z d の係数が 1 であるときモニックと呼
び,f が Sd の項を持たないとき,f は無限遠点にあると言うことにする.
¯
¯
©
ª
©
ª
H̆d := f ∈ Hd ¯ f はモニック , H∞
f ∈ Hd ¯ f は無限遠点にある
d :=
とおく.主成分,端成分のザリスキー閉包と H̆d の共通部分の定義方程式を,Dd ,
D+
d 等の判別式と呼ぶのが妥当と思う.
e = R3 のとき P2 /G ∼
e = R3+ のとき P2+ /G ∼
命題 3. d = 3 とする.A
= X, A
=X
R
が成り立つ.
この命題により,特性多様体 X の特異点は孤立特異点 1 点のみであることが
わかるが,このことが,次の定理を導く.
定理 4. d = 3 とする.
(1) d が偶数のとき,∂Cd = F(R3 , H0d ) であって,∂Cd は唯一の面成分から
成る.
(2) d が偶数のとき,∂Dd は F(R3 , Hd ) と Cd の合併集合で,この 2 つの面成
分から成る.
+∞
3
0
3
0
(3) ∂C+
:= L(0,0,1) の高々3 つの面成
d は F(R+ , Hd ), E(R+ , Hd ), および Cd
分の和集合である.
+
+∞
3
3
(4) ∂D+
:= L(0,0,1) の高々4 つ
d は F(R+ , Hd ), E(R+ , Hd ), Cd , および Dd
の面成分の和集合である.
+∞
C+∞
を無限遠成分と呼ぼ う.これらは無限遠超平面 H∞
d 内の凸錐で
d , Dd
ある.対称不等式の凸錐についても,同様な定理が得られている.
d = 3, 4 の場合には,判別式はすべて決定されていて,かなりの部分は拙著
「不等式」数学書房 に書いてある.また,1 年前の学会でも,その続報をお話し
た.その後得られた結果としては,例えば ,以下の定理がある.記号の意味は,
最後に紹介する文献を参照してほしい.
定理 5. disc4 を D4 の判別式とする (非常に長い多項式である).f = S4 +
pT3,1 + rS2,2 + (v − 1 − 2p − r)U S1 ∈ H̆4 について,任意の a, b, c ∈ R に対し
て f (a, b, c) = 0 が成り立つための必要十分条件は,v = 0 であって,次の条件
(1) または (2) または (3) が成り立つことである.
(1) v = 0 かつ r = p2 − 1.
√
(2) 0 < v 5 27 かつ disc4 (p, p, r, v) = 0 かつ r = p2 − (v + 2 3v + 1).
p2
(3) v > 27 かつ disc4 (p, p, r, v) = 0 かつ r =
+ 2.
4
d = 5, 6 の場合にも,一部の判別式は計算済みである.D+
5 あたりになると,
LP のザリスキー閉包 LP を線形系と考えたとき,それが定める特性多様体が代
数曲面になるので,局所錐 LP が主成分 FP や端成分 EP を持つ.その構造も
だんだん解明されつつある.
詳細はとても長いのでプレプリントを参照してほしい.プレプリントは千葉大
の私のホームページにあるので,[安藤哲哉] で検索し,
http://www.math.s.chiba-u.ac.jp/˜ando/index.html
を見つけてもらい,論文・プレプリコーナーの論文 [9] を download してほしい.
「不等式」正誤表にも,ほぼ,同等な内容が書いてある.