代数学 XC(本郷)補足プリント 高木 俊輔(東大数理) [email protected] 定理. G を有限群とし, C[G] ∼ = W1⊕m1 ⊕ · · · ⊕ Wr⊕mr を G の C 上の左正則表現の既約分解とする. (1) C 線形な(任意の λ ∈ C に対し Φ(λx) = λΦ(x) が成り立つ)環同型 Φ : C[G] ∼ = Mm (C) × Mm (C) × · · · × Mm (C) 1 r 2 が存在する. ∑ (2) mi = dimC Wi であり,|G| = ri=1 (dimC Wi )2 が成り立つ. (3) r = (G の既約表現の同値類の数) = (G の共役類の数) が成り立つ.特に G の任意の 既約表現は,同値な表現を同一視すると,G の左正則表現の既約分解に現れる. 定義. R を環とする. Z(R) := {x ∈ R | 任意の r ∈ R に対し, rx = xr} を R の中心 (center) と言う.Z(R) は R の部分環になる. 定義. 環 R の反対環 (opposite ring) Rop とは,次の 2 条件を満たす環である. (i) アーベル群としては,Rop = R. (ii) Rop の乗法 · を次のように定義する: 任意の x, y ∈ Rop = R に対し,x · y := yx ∈ R = Rop . 注意. (1) 自然な環同型 φ : Rop → EndR (R) r 7→ (x 7→ xr) が存在する.実際,φ(r)φ(s) = (x 7→ xs 7→ xsr),φ(r · s) = φ(sr) = (x 7→ xsr) なので, φ(r)φ(s) = φ(r · s) となり,φ は環準同型.φ の単射性は明らかなので,全射性を証明する. 任意の f ∈ EndR (R) に対し,f (1) = r とおく.f は R 準同型なので,任意の x ∈ R に対し, f (x) = f (x · 1) = xf (1) = xr となる.つまり,f = (x 7→ xr) なので,φ は全射. (2) K を体とすると,Mn (K)op ∼ = Mn (K). 実際,Mn (K)op → Mn (K) A 7→ t A という写像 t を考えると,A · B = BA 7→ (BA) = t At B より,これは環同型を与える. 定理の証明. (1) Vi := Wi⊕mi とおく.Schur の補題より,i ̸= j ならば HomG (Vi , Vj ) ∼ = HomG (Wi , Wj )⊕mi mj = 0 であることに注意すると, EndG (C[G]) ∼ = EndG (V1 ) × · · · × EndG (Vr ). Vi := Wi⊕mi より,Schur の補題を使うと, EndG (Vi ) ∼ = Mmi (EndG (Wi )) ∼ = Mmi (C) という環同型が得られる.以上をまとめると, op ∼ EndG (C[G])op ∼ C[G] = (C[G]op )op = = (Mn1 (C) × · · · × Mnr (C)) = Mn1 (C)op × · · · × Mnr (C)op ∼ = Mn (C) × · · · × Mn (C). 1 各同型は C 線形なので,その合成も C 線形である. (2) C ベクトル空間の同型 HomG (C[G], Wi ) ∼ = Wi (x 7→ xwi ) 7→ wi r があるので,Schur の補題より,ni = dimC HomG (C[G], Wi ) = dimC Wi が成り立つ.C[G] は {g}g∈G を基底とする C ベクトル空間であることに注意する.(1) の環同型は C ベクトル空間の ∑ 同型になっているので,両辺の C ベクトル空間としての次元を比較すると,|G| = ri=1 m2i = ∑ r 2 i=1 (dimC Wi ) が得られる. (3) まず r = (G の既約表現の同値類の数) を示す.G の任意の既約表現 (V, ρ) に対し,あ る 1 ≤ i ≤ r が存在し,V ∼ = Wi (C[G] 加群の同型)となることを示せば良い.0 ̸= v ∈ V を 1 つ固定し, φ : C[G] → V x 7→ xv という C[G] 準同型を考える.0 ̸= Im φ ⊂ V だが,V は単純 C[G] 加群なので,V = Im φ. つまり φ は全射.任意の 1 ≤ i ≤ r に対し,V ̸∼ = Wi とすると,Schur の補題より,HomG (Wi , V ) = {0}. 従って r ⊕ ∼ φ ∈ HomG (C[G], V ) = HomG (Wi , V )⊕mi = {0} i=1 となるが(真ん中は C ベクトル空間としての同型),φ は全射なのでこれは矛盾. 次に r = (G の共役類の個数) を示す.(1) の環同型の両辺の中心を比較する. Z(Mmi (C)) = {A ∈ Mmi (C) | 任意の B ∈ Mmi (C) に対し, BA = AB} = {λEn | λ ∈ C} より,C ベクトル空間として Z(Mmi (C)) ∼ = C. 従って (1) の右辺の中心は Z(Mm1 (C) × Mm2 (C) × · · · × Mmr (C)) = Z(Mm1 (C)) × · · · × Z(Mmr (C)) ∼ = Cr . ∑ 一方 g∈G ag g ∈ Z(C[G]) とすると,任意の h ∈ G に対し, ∑ ∑ ∑ ag g = h−1 ag g h = ag (h−1 gh) g∈G g∈G g∈G が成り立つ.C[G] は {g}g∈G を基底とする C ベクトル空間なので,基底の係数を比較すると, 任意の g, h ∈ G に対し ag = ah−1 gh を得る.つまり, x ∼ y ∈ G ならば, ax = ay が成り立 ⨿ ∑ つ.G の共役類の個数を s とし,G = si=1 OG (gi ) とする.c(gi ) = h∼gi 1h ∈ C[G] とおく ∑ ∑ と, g∈G ag g = si=1 agi c(gi ). ∑s 逆に i=1 bi c(gi ) ∈ C[G] (bi ∈ C) という元を考えると,任意の h ∈ G に対し, ) ( s s s ∑ ∑ ∑ h−1 bi c(gi ) h = bi (h−1 c(gi )h) = bi c(gi ). よって ∑s i=1 bi c(gi ) i=1 i=1 i=1 ∈ Z(C[G]). まとめると,(1) の左辺の中心は, { s } ∑ Z(C[G]) = ai c(gi ) ai ∈ C ∼ = Cs i=1 (最後は C ベクトル空間としての同型). 以上より,r = s を得る. □
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