「初級ミクロ経済学 3」(宮澤和俊) 第 15 講 2014/12/5 不完全競争 (2) 複占市場,クールノー均衡 1 つの市場で 2 つの企業が競争する市場を考える.複占という. 市場の逆需要関数を, P = a − bX d (1) とする.P は価格,X d は市場需要を表す(a > 0, b > 0 は定数). 企業 i の生産量を xi とする(i = 1, 2).市場供給は X s = x1 + x2 である. 市場均衡条件は,X s = X d .(1) 式に代入すると, P = a − b(x1 + x2 ) (2) が成り立つ. 独占企業は,市場の条件 (1) 式を利用して利潤が最大となる生産量を決定 した.複占の場合もほぼ同様.違うのはライバル企業の存在である.以下で は,各企業は,相手企業の生産量を与えられたものとして,自分の利潤が最 大となるように生産量を決定すると仮定する.クールノー競争という. 1. 利潤最大化と反応関数 企業 1 の費用関数を, C1 (x1 ) = c1 x1 (3) とする(c1 > 0 は定数).企業 1 の利潤は,(2), (3) 式より, π1 = P x1 − C1 (x1 ) = [a − b(x1 + x2 )]x1 − c1 x1 (4) である.利潤が最大となる x1 は, x∗1 = a − c1 1 − x2 2b 2 (5) である. 問題 1 (5) 式を導出せよ. (5) 式は,企業 2 の生産量 x2 と企業 1 の最適生産量 x∗1 の対応関係 x∗1 = g1 (x2 ) を表している.反応関数という.反応関数を (x1 , x2 ) 平面上に図示し たものを反応曲線という(図 6.3)1 . 問題 2 数量競争での反応曲線は一般的に右下がりである.なぜそうなるのか説明 せよ. 企業 2 の費用関数を, C2 (x2 ) = c2 x2 とする(c2 > 0 は定数). 1a > c1 , a > c2 と仮定する. 1 (6) 企業 2 の利潤 π2 = [a − b(x1 + x2 )]x2 − c2 x2 が最大となる x2 は, x∗2 = a − c2 1 − x1 2b 2 (7) である. 問題 3 (7) 式を導出せよ. 2. クールノー均衡 2 つの反応曲線の交点 E(x∗1 , x∗2 ) をクールノー均衡という(図 6.3).いったん 均衡が達成されると,どちらの企業も生産量を変更する誘因を持たない.均 衡は自己拘束的である2 . (5), (7) 式より, a − c1 1 − x∗2 2b 2 a − c2 1 x∗2 = − x∗1 2b 2 x∗1 = 辺々加えて,変形すると, X ∗ = x∗1 + x∗2 = 2a − c1 − c2 3b (8) が得られる.(2) 式より均衡価格は, P∗ = a + c1 + c2 3 (9) である. 最後に,各企業の生産量は, a + c2 − 2c1 3b a + c1 − 2c2 ∗ x2 = 3b x∗1 = (10) で与えられる. 問題 4 (8), (9), (10) 式を導出せよ. 問題 5 (比較静学分析) (1) 市場規模が拡大したとする.定数 a が大きくなったと解釈できる.各企 業の生産量および均衡価格はどのように変化するか.また,なぜそうなるの か言葉で説明せよ. (2) 企業 1 の技術が改善したとする.限界費用 c1 が低下したと解釈できる. 各企業の生産量および均衡価格はどのように変化するか.また,なぜそうな るのか言葉で説明せよ. 講義資料 http://www1.doshisha.ac.jp/˜kmiyazaw/ 2 ナッシュ均衡という.11 章でよりくわしく説明する. 2
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