企業行動の理論(4) 費用最小化

「初級ミクロ経済学 3」(宮澤和俊)
第 11 講
2014/11/7
企業行動の理論 (4) 費用最小化
企業は,生産要素の価格を所与として,ある生産水準を達成できる生産要素
の組合せの中から,費用が最小となるものを選択する.
(前回の復習)等量曲線 (等産出量曲線) は右下がり.原点に関して凸.
1. 限界代替率
等量曲線 q¯ = F (z1 , z2 ) の接線の傾きの絶対値を限界代替率 (marginal rate
of substitution, M RS) という.限界代替率は限界生産性の比に一致する.
M RS21 = −
dz2
F1 (z1 , z2 )
=
dz1
F2 (z1 , z2 )
(1)
M RS21 は,生産量を変えずに生産要素 1 を 1 単位増やすとき,節約でき
る生産要素 2 の投入量を表している.
例題
次の等量線の限界代替率 M RS21 を求めよ.
(1) q¯ = az1 + bz2 (a > 0, b > 0 は定数)
(2) q¯ = z11−a z2a (0 < a < 1 は定数)
1
(3) q¯ = [(1 − a)z1b + az2b ] b (0 < a < 1, b < 1 は定数)1
(解答)(1) 傾きが −a/b の直線.M RS21 = a/b.
(1) の別解
M RS21 =
F1
a
=
F2
b
(2)
M RS21 =
F1
(1 − a)z1−a z2a
1 − a z2
=
=
F2
a z1
az11−a z2a−1
(3)
M RS21 =
F1
=
F2
1
b
b 1b −1
· (1 − a)bz1b−1
b [(1 − a)z1 + az2 ]
1
1
[(1 − a)z1b + az2b ] b −1 · abz2b−1
b
=
1−a
a
µ
z2
z1
¶1−b
2. 等費用線
生産要素の価格を w1 , w2 とする.各生産要素を z1 , z2 だけ投入するときの
費用 c は,
c = w1 z1 + w2 z2
(2)
である.費用 c が一定となる生産要素の組合せ (z1 , z2 ) の軌跡を等費用線
(isocost) という.
1 CES 生産関数という.CES とは要素代替の弾力性が一定であることを指す (constant elasticity of substitution).b → 0 のとき,(2) のコブ=ダグラス型生産関数になることが知られ
ている.
1
等費用線の性質
(1) 右下がり.傾き −w1 /w2 .
(2) 費用水準 c が低いほど左下にある.
3. 費用最小化
「企業は,生産要素の価格を所与として,あ
目標とする生産水準を q とする.
る生産水準を達成できる生産要素の組合せの中から,費用が最小となるもの
を選択する」という問題は,次のように定式化される.
min
z1 , z2
c = w1 z 1 + w2 z 2
subject to q = F (z1 , z2 )
この問題の主体的均衡は,図 3.6 の点 P で表される.
最適化の条件は,
M RS21 =
w1
w2
q = F (z1 , z2 )
(3)
(4)
である.
(4) 式は均衡が等量線上にあることを意味する.(3) 式は均衡において,等
費用線と等量線が接していることを意味する.
(3), (4) 式を z1 , z2 の連立方程式とみなして解けば,均衡解 (z1∗ , z2∗ ) が求め
られる.
4. 費用関数
主体的均衡における生産要素の投入量 z1∗ , z2∗ は,要素価格 w1 , w2 と生産水準
q の関数となる.
z1∗ = z1 (w1 , w2 , q)
(5)
z2∗ = z2 (w1 , w2 , q)
(6)
(5), (6) 式を (2) 式に代入すると,主体的均衡における費用も要素価格 w1 , w2
と生産水準 q の関数となる.費用関数という.
c∗ = w1 z1∗ + w2 z2∗ = C(w1 , w2 , q)
(7)
費用関数は,一般的に,要素価格 w1 , w2 ,生産水準 q の増加関数である.
問題
生産要素の価格を w1 , w2 とし,目標とする生産水準を q とする.生産関数が
次式で与えられるとき,要素需要および費用関数を求めよ2 .
1
1
(1) q = z12 z22
(2) q = min{z1 , z2 }
講義資料
http://www1.doshisha.ac.jp/˜kmiyazaw/
2 解答は,第
7 講の講義資料にある.
2