5.電磁力と電磁誘導2(電磁誘導、電磁エネルギー、インダクタンス)

電気工学 講義資料
5.電磁力と電磁誘導2(電磁誘導、電磁エネルギー、インダクタンス)
5.1 電磁誘導
磁界中にある導体を移動させると、導体には起電力が発生する。これを電磁誘導といい、発電機
や変圧器はこの現象を利用した代表的な電気機器である。この電磁誘導により発生する起電力の方
向及び大きさについては、次のようなことが知られている。
(a)ファラデーの電磁誘導の法則
電磁誘導による起電力、すなわち磁界中にある導体を移動させたとき、導体に発生する起電力の
大きさと方向について、1821 年にイギリスの化学者、物理学者であったマイケル・ファラデー(英、
1791~1867)により発見された。
図1に示すように、1ターンのコイル面をコイル面に垂直に磁束Φ(Wb)が通過するとき、コイルに発
生する起電力 e (V)は、次式で与えられる。
e
d
dt
(1)
ただし、起電力 e と磁束Φの正方向は、図示のように互いに右回りの方向とする。
e
Φ
図1 ファラデーの法則における磁束と起電力の正方向
例題1
図2に示すように、コイルに磁石を近づけたときと、遠ざけたときに発生する起電力の方向を求めよ。
S
S
N
(移動)
N
(移動)
e
e
Φ
(b)
(a)
Φ
図2 磁石の移動と起電力の発生
(1) 磁石のN極を近づけたとき:コイル面を通過する磁束Φは増加するため、時間変化率 d dt は
正値となる。従って、起電力 e は、(1)式より負値となるため、図1に示す起電力の方向とは逆方
向(図2(a))に発生する。
(2) 磁石のN極を遠ざけたとき:コイル面を通過する磁束Φは減少するため、時間変化率 d dt は
負値となる。したがって、起電力 e は、(1)式より正値となり、図1に示す起電力の方向とは同じ方
向(図2(b))に発生する。
例題2
図3(a)に示すように、一定の磁界中(磁束密度 B(T))で長さ l (m)の直線導体を、磁界と直角の方
向に v(m/s)の速度で移動させたとき、導体の発生する起電力を求めよ。
図3(b)に時刻 dt (s)後の状態を示す。導体が 1-1’から 2-2’の位置に移動したとき、導体を通過する
-1-
1'
l [m]
1
1'
v [m/s]
2'
l [m]
v [m/s]
B [T]
1
(b)
B [T]
2
(b)
vdt [m]
図3 磁界中で直線導体を移動させた場合の誘導起電力
磁束Φ(Wb)は、斜線部の面積が l vdt (m2)であるため、
Bl vdt (Wb)の増加である。従って、導
線に発生する起電力 e (V)は(1)式より、次式のように得られる。
e
d
dt
Bl vdt
dt
Bvl (V)
(2)
なお、2-2’の位置で磁束に対して右回りの方向が図示の点線矢印の方向であるため、実際の起電
力の方向はこれと逆方向である。
(b)フレミングの右手の法則
図4に示すように、人差し指の方向に磁界があるとき、親指の方向に導体を移動させると、中指の
方向に起電力が発生する。これをフレミングの右手の法則といい、この法則を利用すれば容易(直感
的)に電磁誘導による起電力の方向を知ることができる場合がある。(例えば、例題2)
図4 フレミングの右手の法則
課題
例題1をフレミングの右手の法則を用いて求めよ。
5.2 自己誘導と自己インダクタンス
図5に示すように、N回巻かれたコイルに電流 I (A)を流すと、フレミングの右ねじの法則に従って、
図示の ○
×印の向きに磁界、すなわち磁束Φ(Wb)が発生する。
一方、コイルの面を磁束Φが通過すると、ファラデーの電磁誘導の法則に従って、コイルには起電
力 e(V)が図の矢印の向き(電流 I を妨げる方向)に発生する。この現象を、自分自身の電流により発
生する電磁誘導の意味で、自己誘導という。
自己誘導では、磁束Φが自己の電流 I によりつくられるため、磁束Φは電流 I に比例すると考える
と、(1)式より、次式が成り立つ。
-2-
N
H[A/m]
I[A]
l[m]
I
[A]
e [V]
Φ [Wb]
S[m2]
+ -
図5 自己誘導現象
e
N
d
dt
Φ[Wb]
N
μ
図6 無端ソレノイドの自己インダクタンス
d N
d N
dt
dI
dI
dt
N
I
dI
dt
L
dI
,
dt
L
N
I
(3)
(3)式中の L は磁気回路の状態により定まる定数であり、自己インダクタンスとよばれる。単位は、(3)
式より、(Wb/A)だがこれをヘンリー(H)としている。また、 N を、導体を鎖状に貫く磁束という意味で、
磁束鎖交数とよぶ。
自己インダクタンスを定義すると、電磁誘導の原因である磁気回路をインダクタンスという定数で表し
て電気回路の一部として扱うことができるため、回路解析が容易となる。
例題3
図6に示す断面積 S(m2)、長さ l (m)で透磁率μ(H/m)、巻線数 N の無端ソレノイドの自己インダク
タンスを求めよ。ただし、漏れ磁束を無視し、断面積は長さに比べて十分小さいものとする。
無端ソレノイドに電流 I(A)を流したとき、ソレノイド内部の磁界の強さ H(A/m)は、アンペアの周回路
の法則より、次式のように得られる。
H
NI
l
(4)
磁束鎖交数 NΦ(Wb)は、
N
N BS
N
H S
N
NI
S
l
S 2
N I
l
(5)
従って、自己インダクタンス L(H)は、(3)式及び(5)式より、次式のように求めることができる。
L
SN 2
l
(6)
(6)式より、一般に自己インダクタンスは、透磁率、断面積及び巻線数の二乗に比例し、磁路(磁束
の通路)の長さに反比例することがわかる。
5.3 電磁エネルギー
図7(a)に示すように、自己インダクタンスが L(H)のコイルに電圧を加える(スイッチSを閉じる)と、
自己誘導作用により起電力 e(V)が図の矢印の向き(電流 i を妨げる方向)に発生するため、電流 i
は図7(b)のように時間とともにゆっくりと流れる。
このとき、微小時間 dt (s)にコイルに流れ込むエネルギーdW (J)は、次式で与えられる。
dW
e i dt
-3-
(7)
このエネルギーは、自己インダクタンスを構成するコイルの抵抗が零であるため、消費されずに自己
インダクタンスに蓄えられます。
いま、スイッチSを閉じた瞬間から時刻 t(s)までに自己インダクタンスに蓄えられるエネルギーW(J)は、
時刻 t(s)における電流を I(A)とすると、(3)式及び(7)式より、次式のように計算できる。
W
dW
t
0
t
eidt
0
L
di
i dt
dt
I
0
Li di
1 2
LI
2
(8)
(8)式より、自己インダクタンス L (H)のコイルに電流 I(A)を流すと、コイルには W
磁エネルギーが蓄えられるということができる。
一方、図8に示す磁気回路では、 LI N , Hl
次式のように変形できる。
NI ,
1 2 LI 2 (J)の電
BS の関係が成り立つため、(8)式は
i
S
I
i
+
e
l[m]
L
-
Φ[Wb]
N
(a)
0
(b)
t
t
S[m2]
図7 自己インダクタンスに蓄えられるエネルギー
W
H[A/m]
I[A]
1 2
LI
2
1
LI I
2
1
N
2
1
Hl
2
I
μ
図8 磁気回路
1
BH S l
2
1
H2 S l
2
(9)
(9)式において、 S l は鉄心の体積であり、磁界が存在している部分の体積を示している。従って、
W S l は磁界中の単位体積あたりに蓄えられる磁気エネルギーを w (J/m3)とすると、w は次式の
ように得られる。
w
W
S l
1
H2
2
(10)
一般に、媒質μ(H/m)で、磁界の強さ H(A/m)の磁界中には単位体積あたり、(10)式に示す磁気エ
ネルギーが蓄えられると考えられる。
5.4 練習問題
下図に示すような、電磁石と鉄片がある。電磁石側の鉄心の断面積を S (m2)とし、電磁石及び鉄
片を通過する磁束をΦ(Wb)一定とするとき、鉄片が引きつけられる力 F(N)を求めよ。ただし、電磁
石及び鉄片からの漏れ磁束を無視する。
φ[Wb]
S [m2]
F[N]
μ0
S [m2]
-4-