2011 年度 3EC 応用物理 I (力学) 補助プリント No.13 質点系で成り立つ関係式について 群馬高専 一般教科 (自然科学) 小林晋平 2011. 12. 09. 講義で説明したように,質点系で重心とそこからの相対位置に着目すると成り立つ様々な関係式があり ます.証明は講義で配布した手書きのプリントにある通りですが,ここにその証明でポイントとなる事 柄をまとめておきます.非常に初歩的な計算規則もありますが,意外と理解せずに使っている人が多い かと思うので,これを参考に復習して下さい. 考えている状況の確認 • N 個の質点の集まり(質点系という) • 質量はそれぞれ m1 , m2 , · · · , mN • 位置を表す位置ベクトルはそれぞれ r 1 , r 2 , · · · , r N • 質点 i は j に内力 F ij を及ぼす.同時に質点 j は i に内力 F ji を及ぼす. 作用反作用の関係から F ji = −F ij が成り立つ(大きさが同じで互いに逆向き). • 系の外から,外力 F 1 , F 2 , · · · , F N がそれぞれ質点 1, 2, · · · , N に働く. 何がポイントだったか? 質点系の運動をどう調べるかを知りたい → 1 個の質点でこれまでやってきたことや,2体問題でやったことを参考にする • 運動方程式 : ma = F (もしくは m • 運動方程式(回転) : d2 r dv dp =F ⇔m 2 =F ⇔ = F) dt dt dt dL =N dt • 保存則(運動量保存則,角運動量保存則,力学的エネルギー保存則) これらを質点系(つまり,3 個以上の質点があるとき)に拡張すればよい. 基礎事項の復習(しつこいようですが何度も書きます) 1. 重心の定義 N ∑ mi r i m1 r 1 + · · · + mN r N m1 r 1 + · · · + mN r N rG = = i=1 = N m1 + · · · + mN M ∑ mi i=1 ただし M = m1 + · · · + mN = N ∑ i=1 1 mi : 全質量 この定義の分母の M を払った形 M r G = m1 r 1 + · · · + mN r N は頻繁に使うので要注意である. 2. 重心からの相対位置ベクトル r ′i = r i − r G 3. r ′i の和について成り立つ式 N ∑ mi r ′i N ∑ = 0 および mi ṙ ′i = 0 i=1 i=1 一般の例だとわかりにくいが,同じ質量の質点 2 個が軽くて丈夫な棒の先についている状況を考えて みるとわかりやすい.そのときは,重心は明らかに 2 つの質点の中心であり,そこから見ると 2 つの 質点がいつも互いに反対方向に同じ速さで動いて見えるのは当たり前だろう. 4. 超基本の確認 • 定数は微分の内と外へ出し入れ自由 d d (af (t)) = a (f (t)), dt dt 使用例 : またはドットで書くと (af (t))· = af˙(t) (a は定数) d d (mi r i ) = mi (r i ) = mi ṙ i , dt dt mi は定数 • 和に関する添字がついていない量はシグマの外へ出してよい N ∑ afi = a i=1 N ∑ fi i=1 この式が言っているのは 4 ∑ afi = af1 + af2 + af3 + af4 = a(f1 + f2 + f3 + f4 ) = a i=1 4 ∑ fi i=1 というだけのことなので,すぐ理解できると思う. • シグマと微分の順序は交換してよい d dt 使用例 : N ∑ ( N ∑ ) fi (t) i=1 = N ∑ dfi (t) i=1 mi ṙ i = i=1 N ∑ i=1 dt dr i d mi = dt dt (N ∑ ) mi r i i=1 この式が言っているのは, 「足してから微分するのと,微分してから足すのは同じ結果になる」 ということ.例えば f (x), g(x) という2つの関数について (足してから微分する) = (f (x) + g(x))′ , (微分してから足す) = f ′ (x) + g ′ (x) であり,これについて (f (x) + g(x))′ = f ′ (x) + g ′ (x) である,と言っている.証明できるかはともかく,ずっと使ってきたはず. 2 • ベクトルの大きさと内積 ベクトル a の大きさ a は a2 = |a|2 = a · a のように自分自身との内積で定義されている. 質点系について成り立つ式 重心の位置ベクトルとそこからの相対位置ベクトルを考えると以下の 7 つの関係式が導ける. 1. 系の全運動量 P と重心の運動量 pG について P = pG また,運動方程式は dP dpG = = F tot , dt dt (F tot : 系に働く外力の和) 2. F tot = 0 のとき P = 一定: (系の全運動量が保存する) ⇔ M dr G = 一定: (重心は等速度運動する) dt (以下の式については次回の補助プリントで詳しく説明する.) 3. 系の全運動エネルギー K について K = KG + K ′ 4. 系の全角運動量 L について L = LG + L′ 5. 系全体の回転についての運動方程式 dL = N , (N : 系に働く,外力による力のモーメントの合計) dt 6. 系に働く,外力による力のモーメントの合計 N がゼロのとき dL = 0 より L = 一定 (系の全角運動量が保存することを表す) dt つまり,系に働くトルク(力のモーメント)が全て打ち消し合って消えるようなときは,角運動量が 一定に保たれるということ.楕円軌道だと想像しにくいが,観覧車のように軸から同じ半径のところ に質点が等間隔についているような状況を想定すれば,トルクが働かなければずっと同じ速さで観覧 車が回り続けるということを言っている.現実には摩擦や重力の関係でトルクを全て消すのは難し いが. 7. 系に働く,外力による力のモーメントの合計 N について N = NG + N′ および dLG = NG dt 3
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