ノート

数学 A2
§11 重積分
関数の定積分に相当するものを多変数で考えるのが重積分である.ここでは
2 変数関数の重積分である 2 重積分について考える.
11.1 2重積分の定義
D は a ≦ x ≦ b , c ≦ y ≦ d で表される長方形の領域とし,D において
f (x, y) ≧ 0 とする.f (x, y)
z = f (x, y)
の領域 D における 2 重積分
z
∫∫
f (x, y) dxdy
D
を,曲面 z = f (x, y) が D の上
下で xy 平面と囲む立体の体積
として定義しよう.
y
分割 区間 [a, b] を m 個の小区
d
間に,区間 [c, d] を n 個の小区
間に分けて,D を小さな長方形
c
Dij に分割する.
a
b
x
近似 “柱状の小立体”を集めて V を近似する.
Dij 内の1点を (ξij , ηij ) とし,∆xi = xi − xi−1 , ∆yj = yj − yj−1 とおくと
1
極限
∆xi → 0, ∆yj → 0 となるように,分割 {Dij } を限りなく細かくするとき,
極限が分割によらず一定の値に近づくならば,
と表し,f (x, y) は D において,2 重積分可能という.このとき D を積分領
域いう.領域 D で必ずしも正でない関数 f (x, y) の 2 重積分も,同じ式で定
義する.f (x, y) ≦ 0 のときは曲面が囲む立体の体積の −1 倍の値になる.
11.2 2重積分の計算
D : a ≦ x ≦ b ,
c ≦ y ≦ d とする.x だけを変数と考えたときの
∫ b
z = f (x, y) の a から b までの定積分を S(y) =
f (x, y) dx とする.重積
a
分の定義式で (ξij , ηij ) = (xi , yj ) とすると,
∫∫
f (x, y) dxdy = lim
lim
∆xi →0 ∆yi →0
D
= lim
∆yi →0
= lim
∆yi →0
∫
=
n
∑
(
m ∑
n
∑
f (xi , yj ) ∆xi ∆yj
i=1 j=1
)
∆yj
j=1
n [
∑
]
∆yj
j=1
d
S(y) dy =
c
2
z = f (x, y)
z
z = f (x, yj )
z
S(yj )
d
yj
c
∆yj
a
a
b
b
x
このような積分を [
] という.すなわち,体積を断面
積の積分として求めている.同様に x と y の役割を入れ替えることもでき,次
の公式を得る.
公式
D が a ≦ x ≦ b, c ≦ y ≦ d で表される領域のとき
∫∫
∫ d {∫ b
∫
}
f (x, y) dxdy =
f (x, y) dx dy =
D
c
a
∫ b {∫
=
注.
}
d
c
f (x, y) dx
∫
a
∫
b
dx
a
累次積分を上の右のような形で表すこともある.
3
b
dy
c
f (x, y) dy dx =
a
∫
d
d
f (x, y) dy
c
x
[例題 11.1]
D が 1 ≦ x ≦ 2, 0 ≦ y ≦ 3 で表される領域のとき,次の値を求めよ.
∫∫
I=
(x + xy − y 2 ) dxdy
D
∫ 3 {∫
2
I=
∫
0
3
1
∫
3
=
z
}
(x + xy − y ) dx dy
2
2
(x + xy − y 2 ) dx
dy
0
1
D
=
1
(別解) 積分順序を変更すると
∫ 2 ∫ 3
I=
dx
(x + xy − y 2 ) dy =
1
0
[例題 11.2]
∫∫
(y 2 − x2 ) dxdy
D : 0 ≦ x ≦ 1, 1 ≦ y ≦ 2
D
4
2
x