2030 年までの地域の経済・産業展望

電力中央研究所報告
経
営
2030 年までの地域の経済・産業展望
ー経済成長の牽引役となる産業は何かー
キーワード:地域経済,産業構造展望,人口減少,地域相互依存,
多地域計量経済産業連関モデル
背
報告書番号:Y15023
景
地域の人口減少は需要面では消費主体の減少、供給面では労働力減少を引き起こし、
需給の両面から地域の経済成長に対するリスク要因となっている。また、2000 年代の
国内経済を牽引した機械産業の成長がリーマン・ショック以降は停滞しており、今後の
地域経済を支える産業の将来動向も不透明な状況にある。電力需要は経済規模に加え、
産業構造の影響を受けるため、地域における電力需要を想定するためには、地域の産業
構造の変化を踏まえた経済の将来像を捉えることが重要である。
目
的
地域の電力需要想定に資するため、地域間の相互依存性を考慮した経済モデルを用
いて 2030 年までの地域経済・産業構造を展望する。
主な成果
1. 2030 年までの経済展望
国内 11 地域の地域間取引を導入した多地域計量経済産業連関モデルを利用して、地
域別の経済・産業展望を実施した(図 1)。当所のマクロ経済展望[1]の標準ケース
(2010~30 年で国内経済が年率 1.0%の経済成長)の下では、各地域の経済成長率は最
も高い首都圏(1.4%)から最も低い北海道(0.1%)まで1%ポイント以上の差異が生じ
る。人口減少率が相対的に小さく、他地域の生産増の影響を強く受ける首都圏や中部等
の経済成長率が相対的に高くなる一方、人口減少が大きく、他地域の生産増の恩恵を受
けにくい構造を持つ北海道の経済成長率は相対的に低くなる(図 2)
。
2. 成長の鍵となる労働生産性
全地域で労働力が減少する中で、2030 年までのプラスの経済成長を維持できるのは、
労働力の減少以上に労働生産性が上昇するためである。2010~30 年の労働生産性の上
昇には、各地域で資本装備率(労働力当たり資本ストック)の上昇が大きく貢献する。
資本装備率の上昇を実現するのは設備投資の回復であり、製造業の能力増強投資に加え
て、非製造業の合理化投資の増加が、各地域の投資の拡大に寄与する(図 3)
。
3. 地域の産業構造変化と経済成長
堅調な世界経済の前提の下で、輸出の増加が見込まれる機械産業が地域経済成長を
下支えし、特に機械産業のウエイトが高い中部、北関東では成長の牽引役となる。この
一方で、首都圏、関西では、商業・金融・保険・不動産、対事業所サービス等の非製造
業が成長を牽引し、沖縄も人口増加を背景に非製造業主導の経済成長を遂げる(図 4)。
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©CRIEPI
投入・産出ブロック
最終需要ブロック
1.6%
全国
輸出
輸出
部門別
国内自給率
地域間・部
門間投入産
出構造
地域内・部門別
需要
(中間+最終)
全国
民間設
備投資
民間設備
投資
供給ブロック
全国
民間住
宅投資
民間住宅
投資
地域内・部門別
供給
(産出)
需給調整
係数
全国
政府消
費・公共
投資
政府消費
公的投資
実質域内総生産成長率(2010~30年)
部門別
最終需要
首都圏
1.4%
中部
1.2%
関西
中国
0.8%
九州
北関東
0.6%
0.4%
北陸
東北
0.2%
四国
北海道
0.0%
-1.0%
民間消費
-0.5%
0.0%
0.5%
人口変化(2010~30年)
付加価値ブロック
地域内
粗付加価値
沖縄
地域計
1.0%
地域所得
人口ブロック
年齢・性別死亡率
年齢別出生率
年齢・性別転出率
全国マク
ロモデル
出力値
内生変数
地域別年齢別
人口
・自然増減
・社会増減
図 2 地域の人口変化と実質経済成長率
(2010~30 年・年率)
外生変数
図 1 多地域・多部門計量経済モデルの概要
1.2%
2.0%
労働生産性上昇率
1.0%
1.5%
0.8%
1.0%
0.6%
0.5%
0.4%
0.2%
0.0%
0.0%
-0.5%
沖縄
地域計
九州
中国
関西
北陸
中部
首都圏
東北
北関東
北海道
四国
四国
九州
沖縄
地域計
労働力減少率
-1.5%
北海道
東北
北関東
首都圏
中部
北陸
関西
中国
-0.2%
-1.0%
農林水産,鉱業,建設
素材製造
機械製造
その他製造業
労働力投入
商業,金融・保険,不動産
公共・公益サービス
労働生産性:全要素生産性
対事業所サービス※
対個人サービス
労働生産性:資本装備率貢献分
医療・保健・介護
産出増加率
経済成長率
※対事業所サービスには運輸、情報・通信を含む
図 3 労働生産性の変化要因と経済成長率
図 4 産出増加率の産業別寄与度
への影響(2010~30 年・年率)
(2010~30・年率)
関連報告書:
[1] Y14017「2030 年までのマクロ経済・産業構造展望-エネルギー需給展望に向けた日本経済の成長力の見方
-」
(2015.04)
[1] Y14017「
2030 年までのマクロ経済・産業構造展望-エネルギー需給展望に向
関連研究報告書
けた日本経済の成長力の見方-」(2015.04)
研究担当者
田口 裕史(社会経済研究所 事業制度・経済分析領域)
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問い合わせ先
電力中央研究所 社会経済研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 03-3201-6601(代) E-mail:[email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる] © 2016 CRIEPI 平成28年6月発行
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