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大学入試問題の背景にある数学 第1回
向井 崇人
◆ポアンカレ予想(2008 京都大学 6)
(解)
地球の大円を C 、AB を弧とする北緯 60°を切断する円を C1 とおく。
円 C の半径を r 、飛行経路 R1 , R2 の距離をそれぞれ d1 , d 2 とする。
北緯 60°なので、 C1 の半径は
r
r
となる。ゆえに、 C1 の円周は  2    r である。
2
2
d1  r 
60 r

360 6
地球の中心(円 C の中心といっても良い)を O として、∠AOB=θとおくと、
d 2  2r 
   

360
r
,   135  75  60 より、△PAB は正三角形であることがわかる。す
2
なわち、  
r
である。
2
ここで、△OAB について、余弦定理より、
2
r
2
2
   r  r  2  r  r  cos
2
 
 cos 
r2
4  7  0.875
2
8
2r
2r 2 
当然ながら、0    180 である。この範囲において、cos は単調減少であるので、三
角比の表より、 cos 29  cos  cos 28.5 つまり、 28.5    29 であることが分かる。
d2

d1
2r 

6  12  12  29  0.9666
r
360
360
6
よって、題意である、 R2 の飛行距離は R1 の飛行距離より 3%短い。
□
【解説】
本問は 1904 年にアンリ・ポアンカレにより提出され、2006 年にグレゴリー・ペレルマン
により証明されたポアンカレ予想を背景にした問題であると思われる。ポアンカレ予想と
は
「単連結な 3 次元閉多様体は 3 次元球面 S 3 に同相である。
」
というものである。
厳密な定義を避けて、ポアンカレ予想の解説をすると、単連結とは、穴や割れ目などが
ない状態で、多様体とは、細かく切り貼りして座標空間に貼り付けることができる物体の
ことである。
題意は次のようにも言い換えても良い。
「穴の開いていない未知の物体(次元はどうでも良い)を細かく切って、くっつけて
いけば、3 次元の球にすることが出来るか」
京都大学の問題は 1 つ次元を下げた場合のポアンカレ予想である。つまり、
「地球の球面を
距離という 2 次元に落とし込んでもその距離の比率は変わらないことを示せ。
」と言う問題
である。