本文PDF - J

神
圭峰 宗 密 (
7 0)
会
と
宗
密
は、 華 厳 と禅 と の教 禅 一致 説 を 唱 え
竹
内
弘
道
州 先 生 ・鎌 田 茂雄 先生 を は じ め、 幾 多 の先学 に よ ってす ぐ れ
分 類 し、 直 顕 心性 宗 と し て洪 州 宗 と荷 沢 宗 の思 想 を の べ て い
す る。 ﹃禅 源 諸 詮 集 都 序 ﹄ (以下 ﹃都 序﹄)の中 で、 禅 の 各 派 を
わけ であ る が、 まず 宗 密 の説 く 神 会 の主 張 を み て いく こと に
宗 密 は荷 沢 の法 門 を﹁ 知 の 一字 衆 妙 の門﹂ と し て と ら え た
て み た い。
た研 究 が な さ れ て き て い る。 ご く 最 近 で は、 駒 沢大 学 の吉 津
た人 と し て知 ら れ て おり、 既 に この方 面 に お いて は、 高 峰 了
宜 英 先 生 に よ って、 ﹃華厳 禅 の思 想 史 的 研 究 ﹄ と題 す る 書 が
二云、諸 法如 レ
夢、諸聖同説。故妄念本寂、塵境本空。空寂之 心、
る の であ る が、 荷 沢宗 に つい て は次 の よ う にあ る。
霊知不昧。 即此空寂 之知是汝真性、任レ迷 任レ悟、 心本自知。 不二
著 わ さ れ た。 こ の書 の申 で吉 津 先 生 は、 宗 密 の思 想 を華 厳 教
学 の発 展 の中 で詳 しく 論 究 さ れ、 宗 密 は、 華 厳 の性 起 思 想 と
こ こ に﹁ 知 の 一字 衆 妙 の門﹂ と いう、 宗 密 が 荷 沢 宗 の宗 旨 を
念一
為レ宗。 (T四八 ・四〇 二 c-四〇 三 a)
覚。覚 レ之即無。修行妙 門、唯在レ此也。故錐 三
備 修二万行、唯 以二無
知 具無レ念無レ形、誰為 二
我相 人相 叩覚 二
諸相 空、心自無念。 念起 即
執二
身心為レ
我、起 二
貧瞑等念、若得二善友開 示画頓二悟空 寂 之 知 刈
籍レ縁 生納不二因レ
境起、知之 一字衆妙之門。 由二無始迷7之故、 妄
﹃円 覚 経﹄ の﹁ 本 来 成 仏﹂ を 接 続 さ せ、 禅 で も教 でも な い独
自 の華厳 禅 を 成 立 さ せ た と 結 論 さ れ て い る。 華 厳 の視 点 か ら
宗 密 を論 ず る こ と は、 も と よ り 筆 者 の任 とす る と ころ で は な
い の で、 こ こ で は、 宗 密 が 嗣 承 を 偽 って ま で そ の法 燈 を主 張
し た 荷 沢宗 の 思 想 が、 実 際 の 荷 沢 神 会 (
697-75) の思 想 と
に 本 質 的相 違 のあ る こ と は、 早 く は戦 前 に、 釘 宮 武雄 先 生や
総 括 さ せ る言 葉 が みら れ、﹁無 念 を 以 て宗 と為 す﹂ と い う 神
ど のよ う に異 って いる か を み て いき た い と思 う。 両 者 の思 想
上 田 大助 先 生 も 論 及 さ れ て いる が、 知 見 説・ 頓 悟 漸 修 説 等 を
一三
会 の有 名 な 一句 が 出 てく る。 ほ か に も﹁ 空 寂 の知﹂﹁頓 悟﹂
内)
め ぐ り、 よ り 具ハ体 的 に、 そ の思 想 の構 造 的 差 異 を 明 ら か に し
神 会 と宗 密 (竹
-481-
神会 と宗 密 (竹
内)
﹁無 念﹂ な ど、 神 会 の用 語 が 多 く みう け ら れ る が、 神 会 の主
張 そ のも の は どう だ った の で あ ろ う か。 ﹃南 陽 和 尚 頓 教 解 脱
禅 門 直 了性 壇 語 ﹄ (以下 ﹃壇語﹄)を み る と
一四
一方、 宗 密 に と って神 会 の知 は ど のよ う に 解 さ れ て い る の
であ ろ う か。 ﹃円 覚 経 大 疏 ﹄ は 玄 談 八 の﹁ 修 証階 差﹂ で 禅 宗
有二寂知指レ体、無念為ワ宗。 (z 一四 ・一一九 c)
の七家 を の べ て、 そ の最 後 に神 会 の説 を 次 のよ う に 記 す。
﹃円 覚 経 大 疏 砂 ﹄ で は こ の箇 所 を注 釈 し て い る の で、 よ り 詳
和上言、心既無住。知二心無住 一不。答、知。知不レ知。 答、知。
今推到二無住処 一
立レ知、作没。無住是寂静、寂静体即名為レ定。従二
しく 宗 密 の神 会 理 解 を知 る こと が で き る。
真智、亦名 二
菩 提浬梨 殉⋮⋮中略⋮⋮此是 一切衆生本源清 浄心也。
大師所伝。謂万 法既空、心体本寂。寂即 法身。即レ寂 而 知。 知 即
疏有二寂知指レ体、無 念為 7宗 者、即第 七家也。 是南宗第七祖 荷沢
体上一有二自然智 画能知二本寂静体輔 名為レ慧、此是定慧等。経 云、
無住、更無二余知殉浬架経云、定多慧少、増二長無明 殉慧多定少、
是自然本有之 法。(z 一四 ・二七九D)
寂上起レ照。此義 如レ是。無住 心不レ離レ知、知不レ離二無住 幻知二心
増二長邸見相定慧等者、明見二仏性殉今推到二無住処 一
便 立レ
知。知二
とあ る よ う に、 知 は 分 別 では な く、 真 心本 体 であ る と規 定 し
〇 ・四三七 b)
知是当体表顕義、不レ同二分別 一
也。唯此方 為二真 心本 体 幻(z 一一
図 ﹄ (以下 ﹃承襲図﹄)に
であ る の に対 し、 宗 密 に あ って は ﹃中 華 伝 心地 禅 門 師 資 承 襲
と、 知 は空 寂 の体 上 か ら 世間 に は た らく 妙 用 と し て の善 分 別
(
﹃壇語 ﹄同 p二三九)
本体 空寂。 従二空寂体 上一起レ知、善分二別世間青黄赤 白、 是 慧。
換 さ れ て いる こ とが わ か る。 神 会 にお いて は 次 のよ う に
の作 用 と し て と ら え ら れ て い た知 が、 本源 と し て の知 へと転
法 と解 さ れ て いる。 神 会 に お い て は、 自然 智 か ら 生 ず る、 慧
こ こで知 は真 智 であ り、 一切 衆 生 の本 源 であ り、 自然 本 有 の
心空寂、即是用処。(﹃神会和尚遺集﹄ p二三七- 二三八)
こ こ で神会 は無 住 を寂 静 と いい、 寂 静 の体 を定 と 名 づ け、 こ
の体 上 に 自然 智 が あ って体 そ れ自 身 を知 り、 こ の こ とを 慧 と
名 づ け る と し て い る。 つま り、 神 会 に お いて は、 知 は慧 の は
た ら き、 作 用 を 示 し て いる ので あ る。 こ の知 が よ って出 る と
ころ の無 住 ・寂 静 と は、 ま た 自本 清 浄 心 と 名 づ け ら れ て い る
の であ る が、 そ れ は 次 のご と く 説 か れ て いる。
知識、各用レ心諦聴、柳 二簡自本清浄 心殉聞レ説 二
菩 提、 不レ作レ意レ
取二菩提 殉聞レ説二浬盤、 不レ作レ意レ取 二
浬盤 殉聞 レ説レ浄、不レ作レ意レ
取レ浄。聞レ説レ空、不レ作 レ意レ取 レ空。聞 レ説 レ定、不レ作レ意レ取レ
定。如レ是用レ心、即寂静 浬繋。 (
﹃壇語 ﹄同 p二三五)
自 本 清 浄 心 は、 菩 提 や 浬葉 を求 め る 心 を も 捨 て て、 心 を住 す
る対 象 を 一切 も た な い境 界 そ の も のを 示 し て い る の で あ り、
こ こが﹁ 無 念﹂ と も 名 づ け ら れ て いる の であ る。
-482-
四、真智真知異 者、空宗以二分別 一
為レ知、無分別為レ智。智深知 浅。
で、 宗 密 の批 判 す る空 宗 と、 自 ら の よ って立 つ性 宗 と の相 違
性宗以下能証二聖理 一
之妙 慧上為レ智、以下該二於理智、通二於 凡聖 一之
を 明 す 段 に、
真心本体有三 一
種用納一者 自性本用、二者随縁応用。⋮⋮中略 ⋮⋮
て いる の であ る。 しか し宗 密 は真 心 の本 体 に 二種 の用 も 認 め
以喩二心常寂是自性 体、 心常知是自性 用、 此能語言、 能分別動作
真性上為レ知。知 通智局。(T四八 ・四〇六b)
て次 の よう に いう、
等是随縁 応用鱒今洪 州指 二示能語 言等、但是随縁用閾二自性用 一
也。
と い い、 宗 密 の と る性 宗 の知 が 凡 と聖 に通 ず る、 よ り 根源 的
と は、 こ こ で宗 密 が、 空 宗 の見 解 と し て批判 し て い る知 と智
な 位 置付 け を さ れ て いる こ とが わ か る。 さ ら に注 目 す べき こ
(﹃承襲 図﹄ z 一一〇 ・四三七D)
て いる ので あ る が、 こ こで も自 性 の用 であ る知 は、 現 実 に お
り、 宗 密 ほど 絶 対 的 な 位 置 付 け は さ れ て は い な い と い え よ
の所 詮 の義 理 を、 ﹃起 信 論 ﹄ の 五重 の本 末、 一心 ・二 門・ 二
ら ば、 ﹃円 覚 経 大 疏 ﹄ の﹁ 第 四分 斉 幽 深﹂ の中 で、 ﹃円 覚 経 ﹄
宗 密 が いう と ころ の凡 聖 に 通 ず る 知 と は、 表 現 を 変 え る な
造 であ る と いう こ とで あ る。
の関 係 は、 先 に神 会 の説 と し てあ げ た 知 と智 の関 係 と 同 じ構
洪 州 禅 を 自性 の用、 つま り知 を欠 い た随 縁 の応 用 と決 め付 け
け る言 語 分 別 と は明 確 に分 け ら れ て い る こ とが わ か る。
う。 神 会 はむ し ろ、 徹 底 し て見 の思 想 を 鼓 吹 す る の であ る。
神 会 に お い て は、 知 は寂 静 の体 上 の自 然 智 か ら の作 用 であ
神 会 は見 と知 の関 係 を の べ て
覚 ・三細 ・六鹿 を立 て て示 す段 に
(z 一四 ・二 六 B-C)
初唯 一心為二本源 ↓是 心則摂 二世出世 間 法等 叩即 此 円 覚 妙 心也。
知識、自身中有 二
仏性、未 二能了了見殉何 以故。喩 如下此処各各思二
此名為レ知、不二名為7見。若行到 二
宅 中画見下如二上所7説之物上即名
一五
上根 の菩 薩 のた め の﹁ 化 儀 頓﹂ で は な く、 ﹃円覚 経 ﹄ 等 を 中
す る。 宗 密 の説 く頓 悟 と は、 ﹃華厳 経 ﹄ の究 極 の立 場 で あ る、
次 に頓 悟 漸 修 に関 す る神 会 と宗 密 の違 いを み て いく こ と に
本 来 成 仏 の実 現 と し て解 さ れ る の であ る。
(1)
ず、 ま さ しく 宗 密 の説 く 頓 悟 漸 修 は、 この 一心を 本源 と した
と、 説 く と ころ の、 世 間 出 世 間 を 摂 す る 唯 一心 に ほ か な ら
量家中住宅、衣服 ・臥具ハ・及 一切等物、具ハ
知レ有、 更不占生レ疑。
為レ見、不二名為7知⋮⋮申略 ⋮⋮畢寛見不レ離レ知、知 不レ難レ見。
(﹃壇語﹄同 P二四九)
と い い、 知 と 見 の不 離 を い いな が ら も、 た だ 自 身 に仏 性 あ る
こ とを 理 と し て 知 って い る だ け では な く、 実 際 に 即 今 見 よ
と、 よ り実 践 的、 具体 的 な 見 を 主 唱 し て いる。
内)
一方、 宗 密 に お け る智 と 知 の関 係 を み る と、 ﹃都 序 ﹄ の 中
神会 と宗 密 (
竹
-483-
内)
一六
処、端身正意、不レ依二気息形色、乃至唯心無二外境界、(T四八・
神 会 と宗 密 (
竹
四〇五b)
(2)
心 とす る、 凡夫 の上 根 利 智 を 対 象 に し た﹁ 逐 機 頓﹂、つ ま り
め る と い う こと であ り、 神 会 が ﹃定 是 非 論 ﹄ の中 で ﹃金 剛 経 ﹄
(4)
界 も なく、 心も ま た無 相 不 可 得 であ る と いう﹁ 理﹂ に 心を 止
求 め て い る。 そ れ は、 一切 法 は本 来 不 生不 滅 であ り、 外 の境
と い い、 自 ら の 一行 三 昧 の根 拠 を ﹃起 信 論 ﹄ の﹁ 止 観 門﹂ に
衆 生 の機根 に即 し た頓 の教 え であ る こ とが 知 ら れ て いる が、
﹃都 序 ﹄中 の、 い わば 悟 へ向 う 十 の段 階 を 説 いた 段 の最 初 に
一、謂有二衆 生、遇三善知識開二示上説本覚真心、宿世曾聞、今 得二
悟 解ハ 四大非レ我、五纏皆空、信二自真如及三宝徳。 (T四八 ・四
〇九C)
を宣 揚 し、 そ の般 若 の法 を 修 学 す べ き こと を 主唱 し、
是無念者、即無 一
二 境界 殉如レ有二一境界 一
者、 即与二無念 一
不二相応殉
とあ る よ う に、 宗 密 の頓 悟 は頓 解 悟、 す な わ ち、 仏 や 善 知 識
故諸知識、如実見者、了二達甚深法界 熟即是 一行三昧。(同 p三〇
八)
によ って頓 に了 解 す る こ と に ほか な らず、 こ の確 信 のも と に
(3)
漸 修 が あ り、 や が て最 後 に頓 証 悟 に至 り、 一切 衆 生 が 本 来 成
と、 無 念 が般 若 波 羅密 で あ り、 一行 三昧 であ り、 た と え空 理
仏 し て いた こと が徹 見 さ れ る の であ る。 神 会 は同 じく 頓 悟 漸
修 を い う も の の、 ﹃菩提 達 摩 南 宗 定 是 非 論﹄ (以 下 ﹃定 是 非
と本 質 的 に異 って いる。
(6)
論﹄)中 に、
に さ え も 心 を住 め な い、 一境 界 も無 い世 界 を 提 示 し て いる の
我六代大師 二 皆、言二単刀直 入剛不レ言 二
階漸 幻夫学道者、須下頓
見二仏性、漸二修因縁 輔不レ離二是生、而得中解脱加響如二母頓 生レ子、
又顕教有二比量顕、現量顕殉洪 州云下心体 不レ可二指 示、但 以二能 語
ま た宗 密 は 承 襲 図 の中 で洪 州 宗 を 批 判 し て、
と い い、 洪 州 宗 は仏 性 を 推 量 でし か 知 る こ と が でき な いが、
三七 D)
即是心、約レ知以顕レ心、是現 量顕也。洪州閾レ此。(z 一一〇・四
言等 一
験レ之、知レ有中仏 性ム是 比量顕 也。荷沢直 云二心 体能 知、知
与レ
乳、漸漸養育、其子智慧自然増長 叩頓悟見仏性者、亦復如レ是、
智慧自然漸漸増長。 (
﹃神会和尚遺集﹄ P二八七)
とあ るよ う に、 漸 修 す るも の は頓 悟 の後 の智 慧 で あ り、 悟 り
そ のも のに階 漸 は認 め て いな い ので あ る。
一行 三昧 を めぐ っても 宗 密 と神 会 の思 想 に は相 違 が み ら れ
遠法師問、禅師見二仏性 一
不。和 上答言、見。遠法師問、為是比量
量 顕 の立 場 にあ る と し て い る。 し か し神 会 は ﹃定 是 非 論 ﹄ に
荷 沢宗 は知 が即 ち 心 であ り、 心体 を 直 指 す る こ とが でき る現
問、悟 二此心 一已、如何修レ之。 ⋮ ⋮中略 ⋮⋮若 煩悩微薄、慧 解明
る宗 密 は ﹃都 序 ﹄ の中 で
利、 即依二本宗本教 一行三昧 殉如二起信 云↓若 修レ止 者、住二於 静
-484-
見、為是現量見。和上答、比量 見。又責問、何者是比、何者是量。
け る ので あ る。 こ のよ う な 宗密 の禅 宗 観 を通 し て、 当 時 の禅
(8)
和尚答、所レ言比者、比二於純陀 殉所レ言量 者、等 一
一
純陀。 (同 p二
そ のも のを も 批 判 し 超 克 す べき も のと し て と ら え て い た の で
宗 の趨勢 を考 え る と き、 宗 密 は、 洪 州 宗 の み な ら ず 神 会 の禅
は な いか と いう 視 点 が、 さ ら に付 け加 え ら れ る べき も の と思
七七)
と、 仏 性 を 見 る こと は 比 量 見 で あ る と 答 え てお り、 こ の点 で
わ れ る。
2
1
釘 宮 武 雄﹁ 禅 教 一致 の可 能 性 に つ いて の疑 義﹂ (﹃仏 教 研 究 ﹄
同。 ﹃都 序﹄ (T 四 八 ・四〇 七 b- c)。
吉 津 宜 英 ﹃華 厳 禅 の思 想 史 的 研 究﹄ p 二 九 九-
(9)
も宗 密 は明 ら か に神 会 と 反対 の立 場 に あ る。
こ のよ う に 宗 密 は、 荷 沢 五世 を自 称 し、 神 会 の 用 語 を随 所
3
同、 p 六 六 四。
平 井 俊 榮 ﹃中 国 般 若 思 想 史 研 究﹄ p 六 六 一。
四ー 二)。
5
道 信、 弘 忍、 神 秀 ま で の ﹃文 殊 説 般 若 経 ﹄ に 基 づ く 二 行 三
4
に用 いな が ら、 そ こに表 明 さ れ た 思想 は、 神 会 に お け る 中 心
的 な 概 念 でさ え、 全 く異 る も の で あ る こと が 知 ら れ る のであ
る。 さ ら に 注 目 す べき こと は、 宗 密 が洪 州 宗 や空 宗 の説 と し
て批 判 す る思 想 の中 に、 神 会 の思 想 そ の も のも含 ま れ て い る
と いう こと で あ る。 宗 密 は神 会 の正 系 を標 榜 し な が ら、 自 ら
昧﹂ も、 ﹃起 信論 ﹄ の解釈 を承 け る も の で あ り、 神 会 に お い て
6
質 的 転 換 が あ った と 考 え ら れ る。 平 井 俊 榮、 同、 p 六 六 五。 小
を 直顕 真 性 宗 と い う性 宗 の立 場 に置 い て、 神 会 と大 き く異 っ
た 思 想 を の べ、 し かも 神 会 の思 想 そ のも の も批 判 し て い る と
三昧 の 意 義﹂ (
﹃印 仏 研﹄ 九- 一)。
拙 稿﹁ 初 期 禅 宗 と ﹃金 剛 般
林 圓 照﹁ 一行 三昧 私 考﹂ (
﹃禅 学 研 究 ﹄ 五 一)。﹁禅 に お け る 一行
一七
(
曹 洞 宗 宗 学 研 究 所 所 員)
れ て い る。 柳 田聖 山、 (同、 五 九)。
洪 州 宗 批 判 の背 景 に は、 宗 密 の保 唐 宗 に対 す る意 識 が 指 摘 さ
続 灯 史 の系 譜﹂ (﹃禅 学 研 究 ﹄ 六 〇)。
批 判 の対 象 は ﹃頓 悟 要 門 ﹄ か、 とす る説 あ り。 柳 田 聖 山﹁ 新
宇 井 伯 寿 ﹃禅 宗 史 研 究 ﹄ P 二 三 八- に詳 し。
若 経 ﹄﹂(
﹃曹 洞 宗 研究 紀 要 ﹄ 一五)。
いう こと にな ろう。 宗 密 が 達 磨 禅 宗 の正 系 で あ る こと を権 威
7
9
8
づ け る ため に、 偽 ってま で荷 沢 の法 系 を 主 張 し た こ と は、 こ
の時 代 ま だ神 会 の名 が、 そ れ だ け の重 さ を も って人 々 の耳 に
記 憶 さ れて いた と 考 え ら れ よ う が、 そ れ な ら ば ま た、 神 会 か
ら の これ ほ ど の逸 脱 が な ぜ許 さ れ た の であ ろ う。 宗 密 が そ の
(7)
存 在 を無 視 で き る ほ ど に、 神 会 の法 系 を 承 け る他 の人 々 の勢
力 が衰 え て いた か ら であ ろ う か。 とも かく、 宗 密 は 禅 の三宗
を立 て、最 も優 れ た 宗旨 と し て の直顕 真 性 宗 に洪 州 宗 と荷 沢
内)
宗 を 配 当 し な が ら、 洪 州 宗 に対 し て 一貫 し て攻 撃 の鋒 先 を向
神会 と宗 密 (竹
-485-