Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
無風通過(FOMC)
クリントン氏ならイエレン路線継続(大統領選)
2016年11月4日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・10月FOMCは大方の予想どおり政策金利の据え置きを決定。詳細は後述。
・10月ISM非製造業景況指数は54.8と市場予想(56.0)を下回り、9月から2.3pt悪化。最近この指標は振
れが大きく基調が把握しにくいが、均してみれば改善傾向にある。こうした姿はマークイット版サービス
業PMIでみても変わらない。
・米新規失業保険申請件数は26.5万件と前週から0.7万件増加。4週移動平均は26.1万件と3週連続の増加と
なった。依然として低水準を維持しているものの、減少モメンタムは鈍化している。
・BOEの10月MPCでは金融政策の現状維持が決定された。政策金利は+0.25%で据え置かれ、資産購入
枠は4350億ポンドで変わらず。もっとも、BOEが発したメッセージは非常にタカ派であった。将来の政
策スタンスを「金融政策はいずれの方向にも対応可能」として、利下げバイアスを取り除くと同時に利上
げの可能性すら仄めかした。BREXIT決定以降のGBP下落によって輸入物価が急上昇したため、ボードメンバ
ーのコンセンサスが一段の金融緩和が望ましくないとの方向に傾斜したのだろう。実際、BOEが示す1
年後のインフレ予想は+2.7%と、現在の1.0%から大幅な加速が見込まれており、これまでとは反対に物
価の上振れリスクが意識されている。
ISM非製造業
60
新規失業保険申請件数
(千件)
420
390
55
360
50
330
45
300
40
270
240
35
07
08
09
10
11
12
13
14
15
12
16
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均
(備考)Thomson Reutersにより作成
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は6日続落。大統領選を巡る不透明感が意識されるなか、原油価格の下落もあって利益確定
売りが優勢。WTI原油は44.66㌦(▲0.68㌦)で引け。米石油在庫統計で原油在庫が急増したことが嫌気
された。
・前日のG10 通貨はGBPの強さが目立った以外に大きな動きはみられなかった。GBPの強さはBOEのタカ派な
メッセージを受けたもの。USD/JPYはトランプ氏の巻き返しが意識され、リスクオフムードが強まる中で
103を割れた。
・前日の米10年金利は1.812%(+0.9bp)で引け。BOEのメッセージを受けたギルト債下落に追随。欧州債市
場(10年)も総じて軟調。ドイツ(0.158%、+2.7bp)、イタリア(1.694%、+3.0bp)、スペイン
(1.233%、+2.7bp)、ポルトガル(3.252%、+1.0bp)が揃って金利上昇。周縁3ヶ国加重平均の対独
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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スプレッドはワイドニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は米株下落、USD/JPY下落を受けて安寄り後、日経平均の17000円割れをきっかけに買い戻しが入り、
下落幅縮小(前引け時点)。
<#10月FOMC #next meeting挿入されず #大統領選>
・10月FOMCは大方の予想どおり政策金利の据え置きを決定。多くの経済指標が追加利上げを正当化して
いるとはいえ、大統領選を翌週に控える中ではさすがに様子見が無難との判断だろう。ほぼ全ての市場参
加者の予想どおりで違和感のない結果であった。なお、今回もジョージ・カンザスシティ連銀総裁とメス
ター・クリーブランド連銀総裁が利上げを主張、2票の反対票が投じられた。
・今回注目されたのは声明文に12月FOMCの追加利上げを示唆する文言が挿入されるか否かであった。
2015年12月の利上げ時には、その直前にあたる10月FOMC声明分に“next meeting”というキーワード
が挿入され、あからさまに利上げの地均しが施されていた。しかしながら、今回はそれに該当する文言が
見当たらなかった。大統領選を巡る不透明感を考慮したとみられるほか、既に12月の追加利上げがコンセ
ンサスになっていることから、敢えて“next meeting”という文言を挿入する必要性に乏しいと判断した
のだろう。この点において、今回のメッセージはハト派であったと言えよう。
・来週8日はいよいよ米大統領選の投開票日。ここへ来てトランプ氏の巻き返しが報じられたこともあって
市場参加者のセンチメントが幾分悪化している様子だ。市場はここ数日の「トランプリスク」に米株下
落・米金利低下・USD売りで反応、トリプル安の様相を呈している。ここで大統領選結果の初期反応を整理
すると①クリントン氏勝利なら政策不透明感の後退から「米株高・米金利上昇・USD高」、②トランプ氏勝
利なら政策不透明感の増幅に加えて、金融政策への関与が強まるとの見方から「米株安・米金利低下・USD
売り」となろう。トランプ氏は超緩和的な金融緩和策の採用に積極的であることが知られており、金融引
き締めを実施しているイエレン議長の再任を容認しない構えをみせている。その場合、市場では利上げ打
ち止め、実質ゼロ金利政策、QEの再開といった超緩和的な金融政策の再開が意識される可能性がある。
クリントン氏と比較して保護主義的な経済政策を選好しているイメージが強いこともあり、USD売りが誘発
されそうだ。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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